その日、カルデアに警報が鳴り響いた。
自室で芽を出したヤマモモを眺めていれば、突如として突入してくるマシュとカルデア戦闘服を着こんだマスター。後に続いて魔術系サーヴァントたちが詰めかけてきたのだが、何事だろうか。
マスターが恐る恐るガイガーカウンター染みた機械をヤマモモに向ければ、けたたましい警報音が部屋中に響き渡った。
「メディアさん、あれを確保してください!」
「承知したわ!」
マスターの指示が飛び、あれよあれよという間にヤマモモはメディアさんの手の中に。
その後、事情を聴けば『カルデア内に正体不明の高濃度の神秘を纏った存在が出現した』らしく、その発生元があのヤマモモだったとか。古いものほど神秘が宿ると言っていたが、まさかあれに神秘なんてものが付加されていたとは思わなかった。
集落で栽培してたやつなんだけど。
あくる日、カルデアで警報が響き渡った。
今度は何事だろうか。自室でコーヒーブレイクを終えてマグカップを洗っていると、突如として突入してくるマシュとカルデア戦闘服を着こんだマスター。後に続いてメディアさんが詰めかけてきた。今回は他の魔術系サーヴァントの皆さんは居ないらしい。
マスターが困惑した様子でガイガーカウンター染みた機械をマグカップに向ければ、けたたましい警報音が部屋中に響き渡った。
あれ、なんだか見た覚えのある光景だぞ。
「メディアさん、あれを確保してください!」
「承知したわ」
マスターの指示が飛び、あれよあれよという間にマグカップはメディアさんの手の中に。
その後、事情を聴けば『カルデア内に突如、聖杯が出現した』らしく、それがあのマグカップだったとか。確かに持ち物の中では珍しい金属杯ではあるけれど、おまえ聖杯だったのか……。
そしてその翌日、カルデアに警報が鳴り響く。
さすがに三度目ともなればワタシも学習する。
枕代わりにしていた毛皮のクッションをストレージに収納しようとしたその瞬間、もはや慣れた様子で突入してくるマシュとカルデア戦闘服を着こんだマスター。あとついでのようにメディアさん。どうやらこちらも学習しているらしい。
マスターが半ば呆れた様子でガイガーカウンターをクッションに向ければ、それはけたたましい警報音を部屋中に響かせた。
「あなた、ほかにも持ってるものをすべて出しなさい! 持ち物検査をします!!」
キレるメディアさん。そらそうだ。
クッションはベッドから毟り取るようにメディアさんの手の中に。毎度マスターたちに同行しているあたり、神秘に対する扱いを心得てるサーヴァントとして適任なのだろう。流石はアルゴー号のドラえもんというべきか。
「ないです」
「ないわけないでしょう!!」
三度も前科が重なると信用してもらえなくなるのは当然か。
しかしこちらにも言い分はある。こちとら魔術の魔の字すら見たことのない原始人。まさか作ったものが神秘を帯びてるなんて思うわけないじゃない。
「ワタシ、悪くないもん」
「悪いわよ! ほら、出すもん出しなさい!」
完全に言動が不良のそれだ。話に聞く金持ってるんだろジャンプしてみろよ、である。
なお、後で聞いたのだが今回の騒ぎでは『カルデア内に幻獣種が出現した反応があった』らしい。こいつ、毛皮になってもまだ生きてたのか……。
仕方なしにストレージをひっくり返せば再び警報が鳴り響く。
しかしそれも数秒で鳴り止み、それはもう呆れた様子のダ・ヴィンチちゃんが追加でやってきた。
「そういうものを持ってるだろうとは思っていたけれど、さすがに私もこれは想定外だったかな……」
「神代の神秘が霞んで見えるわね」
次々と取り出される毛皮、骨、石器、火打石、宝石、粘土板、飲料水、果物、薬草、魚……。
「これは?」
「これはツノゼミの抜け殻ですね」
「なんでそんなもの入ってるんだ……」
困惑するマスター。呆れた様子で抜け殻に魔術処理をするメディアさん。
最初に神霊なんて言われた時の威厳はどこへやら。ワタシからヤマモモを回収する時に緊張していたメディアさんはもういない。それはもう遠慮というものがない。
「こっちは?」
「河原で拾ったなんかきれいな石」
「なんかきれいな石」
リピートするメディアさん。ガイガーカウンターを向けるマスター。なんかきれいな石からも警報音が鳴った。
「仕方ない。私物出すときはシミュレーター使ってね」
「はい」
ダ・ヴィンチちゃんからの通告。
こうしてワタシが私物を取り出すときはシミュレーターに入ることが義務付けられた。
「ということがありまして」
「あの警報オマエかよ!」
食堂にて、相席したクー・フーリンはパンをモシャモシャと咀嚼しながら器用にも大声を上げた。あれのせいで戦闘系サーヴァントも警戒状態で待機させられたらしい。悪いことをしたな。
食事中の会話というのは、一般的に行儀が悪いといわれる行為だ。けれどどういうわけか、人類は食事中に会話をしたがる。
同じランサーというだけでシンパシーを感じて近寄ってきたケルトの大英雄も例に漏れず、食事中に会話したがるタイプだったらしい。
「そうは言われましても、ワタシとしては特に問題ないものだと思っていたんですよ。生前、当たり前に身の回りにあったものですし、神秘が宿ってるといわれてもピンとこないんです」
「あー、まあ確かにわからんでもない。だとしても鈍すぎねえか?」
「遠慮なさすぎません?」
「事実だろ」
そういって、クー・フーリンは蜂蜜酒を口に勢いよく流し込んだ。
「私もまさか君が三日立て続けにカルデアで問題を起こすとは思わなかったよ」
「二人してなんだか辛辣ではないですか?」
調理場から出てきたエミヤまで肩をすくめてそう言い放った。
この二人、神霊に対する礼儀がなっていないのでは? 我神霊ぞ?
「しかし本人からはほとんど神秘を感じないというのに持ち物からは高濃度の神秘が検出されるとは」
「クラススキルがなんか悪さしてんじゃねえの?」
「だとしてもそんな食物を摂取していたなら彼女にも神秘が宿るのではないか?」
言い争うことの多いこの二人だが、意見が合うと途端に息が合う。仲良しか?
「なら、一つ試してみるとしよう。ザヴァング、少し手伝いをしてくれるか」
「わかりました。何をしましょうか」
「それなんだが、何か調理をするのに際して得意なことはあるかね」
「魚を捌くのは得意ですよ」
「そうか、では一つお手並み拝見といこう」
流れるようなやり取りの後、調理場へ。
そして包丁を一振り渡され、今目の前には一尾の鰤が鎮座している。おおきい。
「刺身でも焼き魚でも構わない、ある程度手を加えて調理してみてくれ。君が手を加えることで神秘性が発現するかの実験だ」
「なるほど、そういうことでしたら」
魚をさばくのは得意だ。何せ原始人時代は主食だったのだから。日本人が米を研ぐようなものだ。
エラから切り込みを入れ首を落とし、そこから肛門へ向けて刃を走らせる。腹を開いて内臓を剥がし、ズルっと引っ張り出す。気分はプレデター。
水で流しながら血合いを掃除して、腹側から骨に触れるまで包丁を通す。
エミヤが後方腕組みしているのだが、どう考えても手際の良さを品定めされている。神秘云々の話はどうした。
細かな作業風景は割愛するが、3枚に下したところでそれは起きた。
警報が、鳴ったのである。
マシュを先頭に厨房へ駆け込んでくるマスター。あとメディアさんとダ・ヴィンチちゃん。
全員もれなく呆れた様子を醸しているが違うんだ、ワタシではない。この弓兵が悪い。
エミヤに視線を向け、無実を主張するが後の祭り。神秘に満ちた三枚の魚に、メディアさんは何かあり得ない馬鹿を見るような視線を向けていた。
わかる、神秘に満ちた魚の切り身って意味わからないよね。
そうこうしているとマスターが神妙な顔で令呪を掲げ、こちらに視線を向けた。
「…………令呪を以て命じる。ザヴァング、おとなしくしろ」
こうしてワタシは何かを作る時はキャスターのサーヴァント同伴で行うことが義務付けられたのだった。
人類悪ZANGYOによって私のライフが尽きました
明日の更新は期待しないでください(遺言)
この頃は感想欄の考察を見て、なんでわかるの……と戦々恐々としております
一番驚いたのはメタ的なザヴァングの名称がThe vang(uard)だとバレたことです
作中では水でザバーン、握るときのグっていう擬音ということになってます。雑
誤解を生んでいるようなので補足です
神秘が宿るのは自分以外のために制作した時だけです。誰かのために何か作ると問答無用で神秘の塊になります
今回はエミヤの手伝い、つまりその後自分で食べるという認識ではなかったため神秘的な切り身になりました
現実準拠の掲示板回について
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