正座。それは極東の島国、ジパングに伝わるという両脚をそろえて膝を折り、足首からかかとの上に尻を乗せる座り方である。そしてこの座り方は血行の悪化、それによる足のしびれ、加えて膝を痛める原因になるなど様々な苦痛を強いる。
諸説あるがこれを礼儀とした徳川将軍家は、それらの特徴を利用し家臣たちの足を痺れさせ、謀反を物理的に封殺していたのではないかと囁かれている。
それらの事からこの座位は、人体に対して責め苦として扱われる場合が多々ある。
それを今、ワタシはカルデアの召喚陣の前で天草四郎とともに強いられていた。
原因は単純明快。天草四郎。彼に唆されたワタシがやらかしたのである。
チート転生者たるもの、一度くらいは何か凄いことをして『俺、何かやっちゃいました?』とニチャついたドヤ顔を披露するノルマがあると思うのだが、本気で何かやってしまうのは頂けない。
さすがにサーヴァントを座に強制退去させるような出来事は、お叱りを受けてしかるべき案件だった。
「ダメですよ天草さん。話が通じるからってそこの女神さまに集ったら」
「ですがマスター」
「ダメだ、天草。ダメダメ」
ことの発端は、ワタシの持っていたマグカップ……もとい聖杯である。
聖杯、天草、何も起きないはずがなく……。
与え、回収したという逸話の関係でワタシは軽々に他人に何かを譲ると、取り立てが起きると警戒されていたのも過去の話。うっかり鰤の3枚おろしを物欲しそうな目で見ていたパラケルススに譲っても、何も起きなかったのである。
そこから逆算して、何が要因かを思い返せば、ちょっと引くほどいい笑顔でお礼を言われたな……と。ほかにも来たばかりのころ、マスターにアイスティーをお出ししたりもした。少なくともあれもワタシの裁量で利用できる所有の範疇になるはずだ。つまり感謝の気持ちを忘れるな(ちょっぴりのジェスチャー)というわけだ。
それがわかってからの行動は早かった。
睡眠不足と間食で不摂生極まったドクターにサーっと睡眠薬を盛り、ナーサリー・ライムを筆頭に子供サーヴァントにお菓子を配り、自己顕示欲や自尊心を存分に満たしにかかった。さして苦労せず尊敬が集まるこの感じ、たまらねえぜ……。
特に子供は無邪気でいい。なんかちょっとツノゼミの抜け殻くれたり、きれいな石探しに付き合わされたり、ムシキング決定戦の審判させられたりするけれど。安いもんだ、片手間くらい。
そんなチート転生者ムーブをして油断していたのだ。
マスターがキャメロットの攻略を終えてしばらくした頃、彼は召喚された。
すべての人類の救済を求めた理想の追求者。聖杯を世界平和のためと欲したルール違反ルーラーこと天草四郎だが、神職であっただけに神といわず他者に取り入ることに長けていた。
そんな彼の目の前に、自己顕示欲ジャンキーと化した聖杯を持った原始人。どうなるかなど火を見るより明らかで、うっかり
譲り先の当人も物凄く嬉しそうにお礼言ってくれたし、良いことしたな。とか思った翌日に天草四郎退去事件が起きた。
さすがにサメトレが過ぎたらしく、ちょっとしたものなら兎も角、生前の所持品関連は絶対に譲らないよう先ほどマスターからもお叱りを受けて正座中。ワタシは水槽の中のグッピーだったようだ。
そんなわけで、退去した天草四郎を再召喚。
そこで更なる問題が起きた。彼の霊基がきれいにリセットされていたのだ。
対して、ワタシの霊基は召喚時に再臨状態まで引き上げられた。取り立てが起きたらしい。
カルデアの技術をもってしても、そこのリソースをサーヴァント間で融通する手段はない。
「うーん、こうなるとどうしようか……。あ、ザヴァングはダ・ヴィンチちゃんのところで検査受けてね」
「わかりました、ごめんなさい」
さすがに、ワタシも事の重大さは分かっているつもりである。
とぼとぼと廊下を歩き、会議室の前を通り過ぎ、食堂を抜けてダ・ヴィンチ工房へ。ノックして扉を開けば、何やら機材と記録媒体、あとなぜかカメラを用意して準備万端といった様子のダ・ヴィンチちゃんが待ち構えていた。
「おや、思ったより早かったね。待っていたよ」
手をワキワキと動かす動作が、何やら不穏なものを感じさせる。
再臨状態になった、といってもメタな認識だがワタシの場合は配布サーヴァント扱いなのか衣装が変わる様子はない。今後も恐らくないだろう。
あれよあれよという間に服をひん剥かれ、『同性だからいいだろう?』という万能カードを連打され、気づいた時には艶々したダ・ヴィンチちゃんが色っぽい雰囲気を醸しながら自分の指先に舌を這わせていた。もうお嫁にいけない。
時間停止とかそんなチャチなもんじゃ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
そうして収集したデータから要点を抽出し、コンペアしてシラリティをハント。アザーなディファレンスから、ディフをピックアップするらしい。つまりどういうことだってばよ?
そうしてディスプレイを走る文字列を眺めているダ・ヴィンチちゃんの顔が徐々に険しいものになっていく。
「何かまずいことでも起きましたか?」
「……うーん、不味いっていうか。そうじゃないんだけど」
キーボードを叩けば、プリンターが何やら動き出し一枚の資料を吐き出した。
その資料に目を通せば、神秘の項目になにやら数字が記載されている。
「数字的には一般サーヴァントより少し低いくらいだけど、君の神秘は今まで完全にゼロだった項目だ。再臨状態が進んだことで神秘性が顕在化したのなら、今後の再臨でもこの数字は上がるはず。だけどその理由の見当がつかないんだよね」
「……なるほど?」
「さては君、よくわかってないな?」
ダ・ヴィンチちゃんの説明によれば神秘というのは過去に遡るほど濃くなる。たとえるなら人類が世界を理解することで晴れていく霧のようなものらしい。魔術師という人種は神秘の霧の先にある根源を目指すが、人類は発展するほどにその霧を払うのだという。同じように思えるが、霧の先にあるものと霧を払った後にあるものは別なんだとか。
ワタシ自身のことを言えば、来歴からくる妙な権能を除いてほとんど人間と大差ないらしい。
実際のところパワーは並みのサーヴァントを凌駕するものの、ダメージを与えるという面においては無力も無力。件の槍を握ってようやくダメージを入れられる、スタートラインに立てるという有様だった。
とまあ、ものすごく言葉を尽くしてご説明いただいた。天才って馬鹿にものを教えるのも上手なんだなって。
すまない、理解力がなくてすまない……。
「一応、仮説はあるんだ。検証にちょっとこの紙で何か作ってみてよ」
「わかりました。ジャパニーズ折り鶴ってやつを見せてやりますよ」
「なんでこんな変な知識は大量に備えてるのかな君ってやつは……」
呆れられながらも、慣れた手つきで渡された紙を折っていく。
そして出来上がったそれを見て、合点がいったようにダ・ヴィンチちゃんは頷いた。そしてすかさず魔術処理を施し溢れ出しているらしい神秘を抑え込む。
「自覚があるかはわからないけれど、少なくなっているね」
検証の結果、ワタシ自身の神秘が向上。それに反して制作物の神秘は薄れていた。
仮説段階だけど、とダ・ヴィンチちゃんが前置きした。
曰く、同胞に神秘を感じるか? というところからこの仮説は始まる。
神秘的な人といくら言ったところで同族から、仲間が産んだ子供に未知を感じるかと言われればNOだ。つまりワタシの正体は最初から分かり切っていて、そこに神秘が介在する余地はない。
逆にワタシのもたらした新たなものは、完全に理解するまで『よくわからないが有用な存在』である。つまり神秘を帯びるのだ。
「おそらく、この変化は君の変遷を反映している。時が流れるにつれて君は神格化され、そして与えたものは理解されて神秘を失った。たぶん、そういうことじゃないかな?」
それはワタシは再臨するごとに自分の知らない、ザヴァングという神に近づいていくという宣告だった。
休みだからとゴールデンカムイと謎丸を二窓してたせいで遅くなりました
天草の聖杯が二階堂のモルヒネみたいになってるのはまあ、そういうことです
日勤と夜勤がコロコロ変わると生活リズムがくるって自律神経おかしなるて……
あといくらか日常パートを挟んで二部に突入し、遼遠栄達文明イリーマミュル・ギディムを開始する予定です
もうしばらくはドラえもんで言うのび太の部屋でピー助やキー坊、フゥ子が一緒にワイワイやってるフェーズをやる予定です
この作品はドラえもんを参考に制作されております
天草と聖杯とマグ王を指摘されていたんで飛ばして次やろうか迷った挙句、説明の整合性取れなくなるんでそのまま投げ込むことになりました。考察がどうこう、で飛ばすことはしないことにしましたのでご安心ください
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