ダンジョンでモンスターと戦うのは間違っているだろうか 作:アイル123321
久しぶりすぎたので、AIの力借りました。
誤字、脱字、変なところあれば報告お願いします。
迷宮都市オラリオ、その中心にそびえ立つ巨大なバベルの地下。冒険者たちの喧騒が響くギルドのロビーで、サポーターの少女リリルカ・アーデは、いつものように愛らしい、どこか幼さを残した笑みを浮かべて提案した。
「ベル様、テリー様。今日は思い切って、第10階層まで行ってみませんか?」
その言葉に、ベル・クラネルは一瞬、足を止めて眉を寄せた。
「10階層……。うーん、でもリリ。ついこの前、7階層でリリに助けてもらったばかりじゃないか。それに、10階層からはオークみたいな大型のモンスターも出てくるって聞くし、今の僕たちにはまだ厳しいんじゃないかな?」
ベルの懸念はもっともだった。彼は驚異的な速度で成長しているとはいえ、まだレベル1の冒険者だ。ましてや、10歳のテリーを連れての深追いはリスクが高い。
「大丈夫ですよ! ベル様には強力な魔法もありますし、何よりこのリリが保証します。リリはこれでも11階層まで行ったことがあるんですから!」
リリは自信満々に胸を張り、小さな手でベルの腕を軽く叩いた。その瞳は期待に満ちているように見えたが、その奥底に潜む「濁り」に気づく者は誰もいなかった。
テリーは二人のやり取りを横で見ながら、心の中で別の算段を立てていた。
(10階層……オーク。それに、運が良ければ他の強力なモンスターも……)
テリーがこの世界に来てから、まだ日は浅い。だが、彼女の心は常に「新しい仲間」を求めていた。ルゥ(コボルト)とフロッピー(フロッグ・シューター)という心強い仲間はいるが、パーティの戦力を底上げするには、より強力な「肉壁」や「アタッカー」が必要だと感じていたのだ。
「ベルさん、リリちゃんがこんなに言ってくれてるんだし、行ってみない? 私も、リリちゃんが保証してくれるなら大丈夫だと思うな!」
「テリーちゃんまで……。うーん、わかったよ。二人がそこまで言うなら、無理をしない範囲で挑戦してみよう」
ベルは苦笑しながら承諾した。テリーは内心でガッツポーズを作る。
(よし! 新しいモンスター、スカウトできるかな……!)
そんな無邪気な期待とは裏腹に、リリの口角がわずかに、冷酷に吊り上がったことを、テリーは見逃していた。
2. 第10階層の洗礼
第10階層。
そこは、上層とは明らかに空気が違っていた。湿り気を帯びた重い沈黙が通路を支配し、壁の隙間からは大型モンスター特有の、獣臭い体臭が漂ってくる。
「……出た。オークだ!」
ベルの声と同時に、通路の先から巨大な影が現れた。身長はベルの優に1.5倍はあるだろうか。醜悪な豚の頭部を持ち、盛り上がった筋肉を震わせる亜人型モンスター。それが二体、棍棒を振り回しながら迫ってくる。
「はあぁぁぁっ!!」
ベルが地を蹴った。彼の『敏捷』はもはやレベル1の枠を飛び越えつつある。オークの鈍重な一撃を紙一重でかわし、予備の短剣でその懐を裂く。一体目のオークが苦鳴を上げてよろめいた。
しかし、テリーは動けなかった。
これまでのゴブリンやコボルトとは次元が違う圧迫感。オークが放つ殺気が、10歳の少女の体を金縛りにあわせる。ステータスの絶対的な差。テリーが攻撃に移ろうとしても、足がすくみ、呼吸が浅くなる。
(ダメだ……。私のステータスじゃ、あの一撃に反応できない……っ。私がここまで来ようって言ったのに……!)
「ベル様、あっちにもう一体来ます!!」
リリの鋭い叫び声。ベルは一体目を仕留めきれないまま、後方から迫る二体目に対処せざるを得なくなる。
「ファイアボルト!!」
ベルの手のひらから白光の炎が放たれ、二体目のオークの顔面を直撃した。オークが絶叫を上げ、灰に変わっていく。その隙にベルは一体目の首筋を深く切り裂き、ようやく戦闘を終わらせた。
「ふぅ……。リリ、助かったよ。教えてくれなかっ――」
ベルが感謝を伝えようと振り返った時、そこにリリの姿はなかった。
「……リリちゃん?」
テリーも周囲を見渡す。だが、霧が立ち込め始めた通路に彼女の影は見当たらない。代わりに、鼻を突くような、甘ったるくも不快な臭いが漂ってきた。
「何、この匂い……。すごく嫌な感じがする」
テリーが鼻を押さえる。ベルが足元を見て、顔を青ざめさせた。
「……『魔物寄せの香』!? 誰がこんなものを!?」
その疑問に答えるように、壁の向こうから、天井の穴から、地鳴りのような咆哮が響き渡った。オーク、ダンジョン・リザード、さらに多数のキラーアント。香りに狂わされた魔物たちが、逃げ場のない袋小路へと殺到してくる。
「っ、テリーちゃん、僕の後ろに!!」
ベルが叫ぶが、敵の数は優に二十を超えている。多勢に無勢。絶望的な状況。
「今は周りを気にしてられない! 私も戦う!!」
テリーは覚悟を決めた。リリがいない今、この場にはベルしかいない。彼なら、自分の力を信じてくれる。
テリーは虚空に向けて手をかざし、喉が裂けんばかりに叫んだ。
「ゲートオープン!! 来て、ルゥ! フロッピー!!」
その瞬間、空間に青白い亀裂が走り、二体の影が飛び出した。
「ワォォォォンッ!!」
「ゲロォォォォッ!!」
一体は、鋭い爪を光らせるコボルトのルゥ。もう一体は、巨大な単眼を持つカエル、フロッグ・シューターのフロッピー。
「……っ!? テリー様がモンスターを……!?」
物陰からその光景を覗いていたリリは、驚愕に目を見開いた。モンスターを従え、的確に指示を出す10歳の少女。だが、リリの目的は揺るがない。
彼女は混乱に乗じてベルに接近すると、その腰から『ヘスティア・ナイフ』を鮮やかな手つきで奪い取り、暗闇へと消えた。
「……っ!? フロッグ・シューター!?」
戦いながらもベルが驚愕の声を上げる。
「ルゥ、ベルさんの背中を頼む! フロッピー、長い舌でオークの動きを止めて! 私は弓で援護する!!」
テリーの指示は的確だった。
ルゥは小柄な体を活かしてキラーアントの波をすり抜け、その急所を次々と引き裂いていく。一方、フロッピーは壁に張り付き、鞭のような舌を放ってオークの腕を絡め取った。
「す、すごい……! これならいける!」
ベルの動きに精彩が戻る。前衛をルゥとフロッピーが担い、テリーが後方から矢を射る。ベルはその間隙を縫って、最も危険な個体を確実に仕留めていく。
それはもはや「冒険者とサポーター」の戦いではない。一つの「軍勢」としての連携だった。
「ファイアボルトォォッ!!」
ベルの魔法が、最後の一体のオークを焼き尽くす。辺りには静寂が戻り、大量の魔石だけが床に転がっていた。
「はぁ、はぁ……。テリーちゃん、助かった。……ルゥも、それからその大きいカエルさんも。ありがとう」
ベルがルゥの頭を撫でようと手を伸ばすと、ルゥは嬉しそうにしっぽを振った。フロッピーは「ゲコッ」と短く鳴き、テリーの隣に鎮座する。
「……ベルさん、リリちゃんがいない。それに、ベルさんのナイフも……」
「……ああ。追いかけよう。リリは、僕の大切なサポーターだから。……それに、こんな危ない場所に一人にしておけない」
テリーはベルの横顔を見て、小さく頷いた。
「……うん。リリちゃんを、連れ戻そう」
その頃、リリは絶望の淵にいた。
ベルから奪ったナイフを手に逃げ延びた先で、彼女を待っていたのは「仲間」による裏切りだった。
「おいおい、いいもん持ってんじゃねえか。ガキの分際で、こんな高級品を独り占めしようってのか?」
そこにいたのは、ソーマ・ファミリアの冒険者たち。リリがこれまで必死に貯めてきた金も、奪ったばかりの業物も、彼らは嘲笑いながら奪い去っていった。それどころか、彼らはリリを始末するために、瀕死のキラーアントをその場に放置していった。
キラーアントは、死に際に仲間を呼ぶ。
「カチ、カチカチカチッ!!」
周囲の壁から、無数の赤い蟻が溢れ出す。武器もなく、足も踏み潰されたリリには、抗う術などなかった。
(……ああ、やっぱり。リリは、ここで死ぬんだ。ゴミみたいに捨てられて、誰にも気づかれずに……)
リリが死を覚悟し、瞳を閉じた。
その瞬間。
「リリちゃんに、触るなーーーーっ!!!」
頭上から、強烈な重圧が降ってきた。
ドォォォォンッ!!
巨大な影――フロッピーが天井から飛び降り、リリを包囲していたキラーアントを圧殺したのだ。
「え……?」
リリが目を開けると、そこにはフロッピーの背に乗ったテリーがいた。彼女は弓を構え、震える手で次々と蟻を射抜いていく。そして、その横を白い閃光が駆け抜けた。
「はああぁぁぁっ!!」
ベルの予備の短剣が、リリに迫っていた最後の一体を一刀両断する。
「リリ! 無事か!?」
ベルのナイフが、リリを襲おうとした蟻を切り裂く。あっという間に周囲の魔物を片付けると、二人はリリに駆け寄った。
「リリちゃん、大丈夫!? 怪我はない?」
テリーが心配そうに覗き込む。リリはその優しさに、耐えきれず感情を爆発させた。
「……どうして。どうして、助けに来たんですか……っ! リリは、お二人を騙して、殺そうとしたんですよ!?」
リリの声が震える。彼女は、自分の中に溜まっていたどす黒い感情を、すべてぶちまけるように叫んだ。
換金の際に端数をちょろまかしていたこと。ベルたちの分け前を奪っていたこと。これまでのすべての嘘を、涙ながらに告白した。
「そんな、最低の裏切り者を……どうして助けるんですか! わけがわからないですよ!!」
リリの問いに、ベルとテリーは顔を見合わせた。そして、示し合わせたわけでもなく、同時に答えた。
「女の子だから」
「友達だから!」
その瞬間、現場に奇妙な沈黙が流れた。
テリーが、隣に立つベルの横顔を、じとーっとした目で見つめる。
「……ベルさん。今の答えは、ちょっと引くよ。女の子なら、誰でも良かったの?」
「えっ!? いや、テリーちゃん、そういう意味じゃなくて……!」
リリもまた、涙を溜めたまま呆然としていたが、次の瞬間には顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
「……バカ! 変態! すけこまし! 女たらし! スケベ冒険者!! 女の子なら誰でも助けるんですか! この最低の女たらし!!」
「わあああっ! 違うんだ、リリ! 言い方が悪かっただけで、僕が言いたいのは……!」
ベルは必死に手を振りながら、真剣な眼差しでリリを見つめた。
「……『リリだから』助けたかったんだ。リリが、僕たちのサポーターだから。リリと一緒に冒険するのが、楽しかったから。……だから、いなくなってほしくないんだ」
リリの叫びが止まった。大きな瞳から、大粒の涙が溢れ出す。
そこに、テリーがフロッピーから飛び降りて、リリの小さな体に抱き着いた。
「……リリちゃん。私も、リリちゃんと一緒じゃなきゃ嫌だよ! リリちゃんが教えてくれるダンジョンの話、大好きだったんだから。……これからは、嘘なしで、本当の仲間になろう?」
「テリー、さま……。ベル、さま……っ」
リリは、二人の温もりに触れ、ようやく自分を縛っていた「呪い」が解けるのを感じた。
「……っ、うわあああああああん!!」
ダンジョンの通路に、少女の慟哭が響き渡る。それは、リリが本当の意味で「自分」を取り戻した瞬間だった。
翌朝。
迷宮都市を照らす朝日が、広場の噴水をキラキラと輝かせていた。
リリは噴水のふちに腰掛け、暗い顔で地面を見つめていた。昨日の涙が嘘だったかのように、不安が彼女を襲う。
(……本当に、あんな裏切りをしたリリを、また受け入れてくれるんでしょうか)
「リリちゃん!」
聞き慣れた声に顔を上げると、そこには昨日と変わらない笑顔のベルとテリーがいた。
二人はリリの前に立つと、同時に右手を差し出した。
「リリ、また一緒に冒険に行こう」
「リリちゃん、遅刻だよ! 早く行こう!」
リリはその手を見つめ、昨夜の温もりを思い出す。
彼女はもう、一人ではない。
誰よりもお人好しな2人がいる。
リリは、昨日までの自分を脱ぎ捨てるように、最高の笑顔でその手を取った。
「……はいっ!! どこまでも、お供しますっ!!」
青空の下、三人の新しい冒険が、今ここから始まった。