TRANSFORMERS:INVASION OF THE SPRITS 作:Kyontyu
まぁ、ね。気づいたら一か月経ってました。本当にもうしわけない!
と、いうわけで、謝ったし、始めていいよね?
〈フラクシナス〉内のある一室。薄暗い部屋に十三の台座と、台座に刺さった十二の色とりどりの剣がスポットライトで照らされていた。
『第十精霊の封印は、お疲れ様だったな』
「は」
中心に立っていたのは赤いジャケットを着た琴里だった。
『左様。これで我々の目的に一歩近づいたというもの』
『しかし、一人では効率が悪い。やはり……』
「それには及びません」
琴里は言葉を遮って、そう言い切った。
「我々の目的のためなら、彼一人で十分です」
『しかしだ、司令。今回の一件で、時間と金をどれくらい使ったと思っているんだね? それに、諜報部によればASTには死傷者が出たとも聞いている。それを、どう思うかね? 我々の目的は、精霊を封印することではない。全人類の救済だ。精霊の封印は、その一環でしかない』
「それは……」
琴里は思わず目を伏せた。先の戦闘で十香が見せた『結界炸裂』。精霊の周囲には常時『精霊結界』と呼ばれる随意領域(テリトリー)のようなものを張っており、この結界内には高密度の霊波が充満している。そしてこの霊波のエネルギーを一気に解き放つことで空間震以上の空間崩壊を引き起こすことができるのである。それにより精霊は一定時間霊装の防御力が低下するが、それを差し引いてもおつりがくるほどの威力を『結界炸裂』は持っている。
『そういうことだ。司令。我々は、新しい人柱を半年以内に用意するつもりだ。もっと効率の良いものをな』
「そんなものが?」
『無論だ』
「…………そうですか」
『そうだ。では、我々はこれで失礼する』
スポットライトが消えて部屋は真っ暗になった。
「司令。これでいいんですか?」
隣には神無月が立っていた。
「いいわけないでしょ。私たちには士道しかいないの。他の人間にはやらせるわけにはいかないのよ。私たちの目的の為にはね」
「ま、そうですね」
神無月は苦笑した。
「行くわよ。神無月。そろそろ次の精霊が出るはずよ」
琴里は踵を返して部屋から出ていった。
「了解。五河司令」
◆◇◆
久留間運転免許試験場の駐車場で、アクセルは令音のことを待っていた。彼女は今、運転免許証の更新を行っているのだ。
ふと隣を見てみた。そこには真っ赤なスポーツカーが一台止まっていた。見たことのない車体だな、とアクセルが思っていると、スポーツカーの中にあるベルトのようなもののディスプレイがこちらを向いた。
「……なにかようですか?」
そう問いかけるとベルトは驚いたような顔をして、こう言った。
〈驚いたな。君は喋れるのかね〉
「そりゃあこっちのセリフですよ」
〈ふむ……〉
ベルトはそう言うと少し体(?)を揺らした。
「おーい、ベルトさん! 待たせて悪かったな」
すると、運転免許試験場の建物からスーツを着た若者が手を振りながらベルトに話しかけた。
〈進之介! 遅かったじゃないか〉
「ああ、ごめん。でも、すぐ行かないと」
進之介と呼ばれた若者がスポーツカーに乗り込んだ。
〈そうだな。Start your engine!〉
ベルトの掛け声に合わせて、スポーツカーはどこかに走り去ってしまった。
「なんだったんだろうな、今の……」
「アクセル。またせたな」
「あ、令音さん」
左を見ると、運転席のドアに手をかけた令音がいた。ただ、かがみこむような姿勢になっているので、胸が、ちょっと、ヤバい。
「思ったより時間がかかってな」
ドアを開けて、ステアリングを握った。
「そうなんですか。ちなみに、最後に車を運転したのはいつなんです?」
それを聞いた令音は困ったように肩をすくめて、
「……忘れたな」
と言った。
「えぇ……」
ギアを入れて、アクセルペダルを踏み込むのと同時にアクセルはタイヤを鳴らして急発進した。
◆◇◆
街のとあるショッピングプラザで、機械のような二体の怪人――ロイミュードが暴れまわっていた。
そこに、先ほどの真っ赤なスポーツカー――トライドロンが止まった。
進之介がベルトを持って車から出ると、それを自分の腰に巻き付けた。
「おっと、進兄さん。抜け駆けは許さないよ」
バック転してあらわれたのは白いジャケットを着た男だった。その男も自分の腰にベルトを巻き付けた。
「ああ、剛。行くぞ!」
「オーケイ!」
進之介はベルトのキーを回す。すると変身待機音が鳴り始めた。そして赤いミニカーの形をしたシフトスピードを取り出し、レバーモードに変形させ、シフトブレスに装填した。剛は白いバイクの形をしたシグナルマッハを取り出し、マッハドライバーのレバーを上げて、そこに装填した。
「レッツ」剛がそう言うと、
『変身ッ!』
と同時に叫んだ。
〈ドライブ! ターイプスピード!〉
「ひとっ走り付き合えよ!」
進之介は赤いライダー。仮面ライダードライブに変身した。
〈ライダー! マッハ!〉
「追跡、撲滅、いずれもー、マッハー!」
剛は白いライダー。仮面ライダーマッハに変身した。
「剛! 俺は左のをやる! 右のは頼んだぞ!」
「オッケー。さぁ、行くぜ!」
ドライブは飛び上がると左側のロイミュードに右ストレートを喰らわせた。ストレートを左頬にめり込ませたロイミュードはそのまますっ飛んだ。ドライブはすぐにシフトブレスのシフトスピードを抜き取ると、紫色のシフトカー、ミッドナイトシャドーを装填した。
〈タイヤコウカーン! ミッドナイトシャドー!〉
トライドロンの左前輪に紫色のタイヤが現れ、本体と分離するとドライブの胴体のタイヤが外れ、そこに収まった。そして間髪入れずに両手に手裏剣型のエネルギーを出現させると、それを投げつけた。
一方マッハは、ゼンリンシューターのタイヤ部分を回転させると、それで相手を殴り飛ばした。ロイミュードはよろよろと立ち上がると、背中にコウモリのような羽を生えさせ、空に浮かび始めた。
「おっと、逃がさないよ」
マッハはマッハドライバーからシグナルマッハを抜き取ると、青い車体のシグナルカクサーンを取り出し、ドライバーに装填した。
〈シグナルバイク! シグナルコウカーン、カクサーン!〉
右肩のタイヤ部分のシグナルが変わる。そしてゼンリンシューターの銃口をロイミュードに向けると、引き金を引いた。同時にドライバーのボタンを押す。
〈カクサーン!〉
放たれた一発の弾丸はシグナルカクサーンの能力によっていくつにも分裂し、エネルギーの雨となってロイミュードに降り注いだ。それをまともに喰らったロイミュードは地面に落下した。
「よし、一気に決めるぞ!」
進之介は叫ぶと、シフトブレスに再びシフトスピードを装填し、ベルトのレバーを回してシフトブレスのボタンを押した。
〈ヒッサーツ! フルスロットール!〉
すると倒れていたロイミュードの周りにタイヤが現れ、ロイミュードを挟み込むと、前に弾き飛ばした。そしてトライドロンがドライブの周りをウィリー走行しながらぐるぐる回り始めた。ドライブは回るトライドロンを足場に使って何度も蹴りを加え、ロイミュードを貫いた。爆発したロイミュードからナンバーのようなものが現れ、ふらふら飛んだかと思うと爆発した。
「よぉし、こっちも、決めちゃおうか」
ドライバーにシグナルマッハを装填し、レバーを下げずにボタンを押すと、レバーを下げた。
〈ヒッサツフルスロットル! マッハ!〉
マッハは飛び上がると、エネルギーを纏ったまま、立ち上がろうとしていたロイミュードを貫いた。そして爆発すると、ドライブが倒したものと同じようにナンバーが爆発した。
ふと、ドライブが上を見上げた。するとそこには長い黒髪の少女が手すりの上からこちらを見下ろしていた。髪には、黒いアゲハチョウの髪飾りがついていた。
「あれは……?」
シフトブレスからシフトスピードを抜き取り、変身を解除した。
〈Nice Drive〉
「どうしたんだい? 進兄さん」
そこに同じく変身を解除した剛か駆け寄った。
「ああ、あそこに女の子が……」
指先で示そうとすると、そこに先ほどの少女はいなかった。
「……消えた?」
「なんだよ進兄さん。最近疲れてんじゃないの?」と剛は進之介の肩に手を置いた。
「ああ、そうかもな」
進之介は頷くと、トライドロンに乗り込んだ。
◆◇◆
令音に少々危なっかしいドライブにつき合わされたアクセルは、目的地に到着した。
「ここって……天宮駐屯地……?」
「ああ、そうだ」車窓から駐屯地を見ていた令音が頷く。
「何の用があるんですか?」
「アクセル、このことは他言無用でお願いしたい」
「『このこと』って、ここに来たこと、ですか?」
「そうだ」
「まぁ、構いませんけど」
「助かるよ」
そう言うと令音はドアを開け、外に出た。
令音が外に出ると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「おーい。もしかして、令音?」
「遼子か。久しぶりだな」
令音に声をかけたのは日下部遼子だった。右腕にはギプスをはめられ、それを首から吊っていた。
「でもどうして急にこんな所に?」
「娘に会いに来たのさ。ここにいるんだろ?」
すると遼子は困惑したような表情を見せ、「え、えっと……」と何を言おうか迷う素振りを見せ始めた。
「ASTのことなら心配しなくていい」
「なッ! なんでそれを!?」
動揺する遼子をよそに、令音は落ち着き払った様子で、「娘のことくらい、大体わかるさ」と言った。
その言葉に遼子は思わず苦笑いを浮かべた。
「バレたら、令音、死刑になっちゃうよ?」
「承知の上だ」
あきれたように遼子はため息をつくと、肩をすくめた。
「あなたはなんでも見透かすのね……まぁ、いいわ。ついてきて。案内するわ」
二人は宿舎の廊下を歩いていた。
「あの子、ずっと部屋から出てこないの。なんでも、彼女のお兄さんを撃ったとか……でも、彼は生きていた。陽電子砲のエネルギーをまともに受けて、生きてる人間なんて存在しない。それに、あの戦闘……何か別の勢力が干渉してきている……令音、何か知ってるんじゃないの?」
「……残念だが、今それを言うことは――」その時、令音は自分のこめかみに冷たいものが当てられるのを感じた。遼子が、拳銃を構えていた。
「――言って。今すぐ」
「それが旧友に対する態度なのかい?」
「私は、私が守りたいものの為になら、引き金を引けるわ。たとえ相手が自分の親友でも」
遼子はグリップを握る手に力を込めた。
「大した献身ぶりだ。昔とは変わったんだな」
「何もかもが変わったわよ。私だけじゃない。この世界もね」
令音は、フッと笑うと、銃身を掴んで自分の額に当てた。
「そうか――じゃあ撃てばいい」
「ッ!! あなた何をッ!?」
「大丈夫だ。あの子たちは強い。私がいなくても、やっていけるだろう」
「何言って……」
「撃つなら撃て。それだけの覚悟がなければ、これから先は、生き延びられないぞ」
「クッ……」
遼子は引き金に指をかけ、それを引こうとした。そして、一気に脱力し、腕をダランと下げた。
「駄目ね。やっぱ、私には撃てないや」
「……そうか」
「先を急ぎましょうか」
203号室。そこが真那の部屋だった。
「はい。これ鍵」
令音は遼子から鍵を受け取ると、それを鍵穴に差し込んだ。
「ねぇ、一つだけ聞かせて」
「なんだ?」
「どうして……真那をASTに入れたの?」
「……あの子の為さ」
そう言って鍵を開けた。