TRANSFORMERS:INVASION OF THE SPRITS   作:Kyontyu

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第四話「見えた真実」

「ようこそ。〈フラクシナス〉へ」

 琴里はニヤリと笑った。士道はこの顔に見覚えがあった。

 ――ドッキリに成功した時の顔だ。

「ふ、〈フラクシナス〉? ってかなんでお前がここにいるんだよ……テレビ局にでもスカウトされたか?」

「ま、これがドラマの中の話だったらいいんだけど」

 周囲にはただならぬ空気が漂っている。まるで何か、重大な事に直面しているかのような。今やクルーの顔は全て士道に向けられている。

「なんだよ……・ホント。もうワケ分からねぇ」

 士道は俯いて顔を手で覆った。

「確かに、そうかもしれないが、今はそんな悠長な事を言っている暇は無いんだ」

 令音が士道の肩に手を置く。

「母さん……」

「そうよ士道。理解するのは後でいいから、とりあえず話は聞いて。まず、あなたが遭遇した『精霊』だけど――」

 そして艦橋の一番大きいモニターの画面が切り替わり、士道が先ほど会った長い黒髪と紫のドレスに身を包む少女が映し出された。

「――あ、待って。精霊? あれがあの女の子の名前か?」

「んー、名前というよりはああいう生命体を指す言葉ね。彼女の識別名は〈プリンセス〉」

「ああいうって――」

「――今から説明するから少し黙ってくれない?」

「サーセン」

 凄い剣幕。いつものあの可愛い妹とは大違いだ。どこのビフォーアフターだ。どこの匠だ。

「災害特殊指定生命体、通称『精霊』は本来この世界に存在していない――いや、『してはいけない』ものなのよ。さっき見たかもしれないけど、精霊は空間震の原因で、戦闘力は強大。その気になれば一晩で一国を滅ぼすことだって可能よ」

 士道はゴクリと唾を飲み込んだ。それと同時に画面が切り替わり、荒い画像が三つ表示された。

「今確認できているのは全部で五種類。それぞれ、〈ハーミット〉、〈ナイトメア〉、〈ベルセルク〉。あとは、〈イフリート〉と〈ディーヴァ〉。まぁ、後の二つは写真が無いんだけど」

「そんなに沢山……って何でそんな重要な事を知らせてくれないんだ? 今初めて聞いたぞ。精霊なんて」

「そりゃあ、発表したら大パニックになるにきまってるでしょう?」

 そうか、今考えてみればパニックに陥りそうな気もする。自分もそうだったかもしれない。

「それでも、隠しきれなかったりするのよ」

 再び画面が切り替わり、デモ行進のようにプラカードを掲げて行進する集団が映し出された。

「これが、その例。オーストラリアで起きたデモ行進の様子。政府の情報隠匿にみんな怒ってるのよ」

「そんなのニュースでもやってなかったぞ」

「報道規制が強いられているんだ。当然のことさ」令音が言った。

「報道規制って、戦前じゃあるまいし」

「残念だが、これが事実なんだ」

「そ。令音が言ったようにもうこの世界は士道の知ってる世界じゃないの」

 士道は「マジかよ……」と弱弱しく唇を動かした。

「空間震まで話は戻すけど、規模はその時起こってみなきゃ分からないのよ。今回生き残れた士道はラッキーってことね」

『オイオイ、救ったのはオレだぞ?』

 その時唐突に艦橋に男の声が響いた。

「ああ、そうだったかしらね。アクセル」

『ったく、酷いぜ――おう、少年。元気か』

「え? 誰?」

 士道はあたりを見回してみるが、声の主は見つからない。

「アクセルよ。ホラ、あんたが乗ってた車」

「あ」

 あの灰色の車か。でも運転手は?

『オレはアクセル。KSIが開発した人工トランスフォーマーのプロトタイプだ。そんで、あんたのボディーガードだ。よろしくな。士道』

「は、はぁ……」

 脳の許容量を遥かに超える情報に士道は困惑するばかりだ。

「んじゃ、士道は検査があるからさっさと出なさい」

「あ……そういやお前、ファミレスの前にいなかったか?」

「だからか……なんで警報鳴ったのに外にいるのよバカ、とか思ってたけど、それが原因か」

『面倒な約束をしてくれたモンだぜ』

「あなたにとっては好都合だったでしょ? アクセル」

『まぁな。だって艦長、周波数教えてくれなかったんだから』

「え、どういう事だよ……?」

 士道には会話の意味が分からない。むしろ質問の答えにすらなってなかった。

「だってここが、『ファミレスの上』なんですもの」

「へ?」

 すると天井の全天周モニターが起動し、真っ青な空が映し出された。

「う、ウワァッ!」

 思わず尻もちをつく。

「あんま騒がないで。外の風景を映してるだけなんだから」

「外の景色ってさ……」

「そ。この艦、〈フラクシナス〉は上空一万五千メートルに浮かぶ空中艦よ」

「マジ?」

「大マジ」

「えぇ……」

 遂に理解の範疇を超えてしまった士道は全身から力を抜いた。

「時間がないから次行くわよ――さっきあの精霊を撃ってきたのは精霊の『処理』を専門とする政府の特務組織、通称『AST』よ」

 特務組織AST? 人造人間で戦うあの機関の間違いじゃないのか。

「『処理』って……」

「まぁ、一言で言うと、精霊を武力で以って殲滅する――殺すってことね」

 『殺す』という言葉が士道の頭の中で弾けた。

「そんな……! なんで殺さなくちゃならないんだよ! おかしいだろ!」

「みんながみんな、あんたみたいに甘ちゃんじゃないのよこの棒付きキャンディー」

 もはや生物ですらない。

「うっ……じゃ、じゃあ、殺す以外にも何か方法は無いのか……? ほら、和解とかさ」

 琴里は背もたれによりかかって溜息をつく。

「それが出来てたらそもそも空間震すら起きてないわよ。今頃」

「そか、それもそか」

「でも、手は無いわけじゃない」

 士道は「ほんとか!」と顔を上げた。

「じゃ、どんな手があると思う?」

「えー、どんな手って……」

「はい、時間切れ!」琴里は胸の前でバツの字を作る。

「いや、全然わかんねぇんだけど」

「んもー、しょうがないなぁー、じゃあ教えてあげるよー」

 某青狸のように頭を掻く。もはやキャラが崩壊し過ぎている。

「――精霊の対処方は大きく分けて二つ。まず一つはさっきみたいに力づくで昇天させる」

「っ……・」

 士道は息を呑んだ。一体何をするのだろうか。

「二つ目は、精霊と対話するっていう方法。――私達〈ラタトスク〉はそのための組織よ。対話して、一滴の血も流さずに空間震を解消する。これが私たちのやり方よ」

「じゃあ最初からやればよかったじゃないか」

「そうは問屋が卸さないのが現実、っていうか、そもそもの前提が違うのよ。私たちは精霊と直接対話するんじゃなくて、対話する人類代表である、士道をサポートするために作られた組織なのよ。これが」

 ……いや、待てよ。今の話を聞く限り、このSF映画秘密結社は俺の為に作られたってワケか? ますますありえねぇ。

「マジねぇわ……」

「残念ながら本当。これは士道にしか出来ないからね」

 口の中で飴を転がす琴里。

「んで、具体的に何をしろと?」

「お、ついに乗り気になった?」

「ちげーよ。とりあえず話は聞いてやろうと思っただけだ」

「あらやだ。男のツンデレなんて見てる人の目が腐るだけよ」

「俺はツンデレじゃねぇ!」

「んで、具体的な方法は――」

「――話を戻すな恥ずかしい!」

 せっかく人が乗ってやったのにこの扱いは酷い。

「まぁ、簡単に言うと、」

 琴里は一息ついて、こう言った。

 

「――精霊に、恋をさせるの」

 

 あぁ、そういうパターンね。どうやら俺はとんでもないドッキリ作戦にはまってしまうところだったらしいな。そんなどこぞのギャルゲーのようなこと、現実であるはずがない。

 そう士道が考えた瞬間、脳裏にさきほどの少女の悲しそうな顔がよぎった。

「あら意外。あんまし驚かないのね」

「本当なんだろうな?」

「ん?」

 琴里は可愛げに小首を傾げる。

「これは、本当に俺が、俺たちが出来る最善の方法なのか?」

「そうね。今できる中では、多分これが一番最善ね。あくまで平和的に説得し、空間震を止める。現状ではこれよりいい作戦が思いつかないわね」

 少しの間の後、

「俺、やるよ」

 と、士道はきっぱりと言い放った。

「本当に? もしかしたらあんたの一生棒に振るかもしれないけど、それなりの覚悟はある?」

「ああ、やってやるさ。どんな結果になっても最後までやり通してやるよ」

 それを聞いた琴里はニッコリ笑って言った。

「じゃあ、明日から訓練ね。おつかれやまでしたー。犬養さん、お願い」

「え? お願い?」

「じゃあはい、士道君、今から検査だから、ついて来て」

 純子が手招きする。士道は純子について艦橋を出た。

「よろしいのですか? 司令」恭平が訊ねる。

「何がよ?」

「お兄様を戦場に送りだす事です」

「やってもらわなきゃ困るのよ。そうじゃなきゃ、ここまでしてきた意味がないわ」

「ま、それもそうですね」

 精霊に恋をさせる為の秘密結社の司令と副司令は士道が出ていったドアを見つめた。

 

◆◇◆

 

 次の日。

 

『これより、第一回シンクロテストを開始します』

『了解。パイロットと〈キュプクロス〉の仮想シンクロを開始。シンクロ率は90パーセントで固定』

 陸自の天宮駐屯地に作られた特設フィールド。魔力処理が施された障害物の中に、白に黄色のラインが入った一つ目の機械の巨人が立っている。

『仮想シンクロ完了。通信強度安定。続いてシンクロ第二段階に入ります』

『パイロット、〈キュプクロス〉共に正常。シンクロ開始』

 〈キュプクロス〉の単眼式センサー(モノアイ)に火が灯る。

『シンクロ完了しました』

「んー、いい感じですねー」

 屋外に特設されたテントの中でタブレットに映された情報を見ながら、ミルドレッド・藤村は呟いた。

「ん、何やってんの?」

 そこに訓練を終えたのか、タンクトップ姿の日下部遼子が訊ねた。

「ああ、今ですね。DEMから送られてきた人工トランスフォーマー試作一号機、〈キュプクロス〉のテストをしてたんですよ」

「人工トランスフォーマー?」

「えぇ、まぁ、作ったのはKSIっていう会社なんですが、これがなかなか良く出来てるんですよ」

『全マニュピレーター正常を確認。動作テストを開始します』

「お、来た来た」

 キュプクロスが格闘の構えを取って、一通り動き始める。その巨体からは考えられない俊敏さだ。

 そして拳を前に突き出し、動きを止め、再び直立に戻る。それと同時に特設フィールドに顕現装置(リアライザ)を用いたフィールドが張られる。

 すると障害物の陰から戦術的顕現装置(コンバット・リアライザ)を装着した魔術師(ウィザード)が三人、現れた。それぞれの顔はバイザーで覆われていて表情は窺えない。いや、窺う必要もない。何故なら、彼らは顕現装置(リアライザ)で投影した実体をもつホログラフだからだ。

 顕現装置(リアライザ)とは、コンピュータ上での演算結果を現実に反映するという科学で魔法をやるような機械である。人類がこの技術を手にしたのは今からちょうど三十年前、最初の空間震が起きた年である。

 キュプクロスの両腕が六連のバルカン砲に変形させ、三人のウィザードに向かって弾を放つ。

 濃い弾幕の中、三人のウィザードはキュプクロスに迫るも、一人のウィザードが避けきれず、頭に弾丸が命中して頭部が吹き飛んだ。頭部を吹き飛ばされたウィザードは地面をゴロゴロ転がりながら姿を消した。

 残った二人のウィザードは剣状に魔力を出力したレイザーブレード、〈ノーペイン〉を引き抜き、キュプクロスに肉迫した。

 キュプクロスは後ろにバック転しながらその体躯を変形させていった。胴体が捻じれ、パーツが畳まれ、変形(トランスフォーム)を終えたキュプクロス――白と黄色のラインが入ったハマー――はバックして斬撃を避け、車体の側面からミサイルポットを引き出し、数発放った。

 放たれたミサイルは見事二人のウィザードに命中し、辺りを爆炎で包んだ。

『テスト終了』

 その声と同時に結界が解除され、ハマーのヘッドランプが消えた。

 

◆◇◆

 

 来禅高校の前に停まる天宮警察署の白と黒の警察車両、スカイラインGT-Rに偽装しているのはディセプティコンだ。しかも名前もあり、その名をノックバックという。

 ノックバックは現地時間の昨日に起きた空間震について興味があった。小さい女型の生き物に話しかける小さな生物。そこからエネルゴンに似たエネルギー波を探知したのだ。

 ノックバックは一秒以下の通信電波を宇宙のメガトロンに届けた。

 

『こちらノックバック。面白い対象を発見した。これより調査を開始する』

 

 そしてほくそ微笑むようにドルルン、とエキゾーストを鳴らした。




読んで分かったと思いますが、結構本筋と関係無い話とか出てきたりします。実は作者、作品当時の世界の状況とかを考えるのが好きなんですね。デモの話もそうですが、他にもASTに少女を採用するときに何が起きたのかとか書いてみたいですね。
出来ればいいですが。
では、また次回会いましょー!
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