TRANSFORMERS:INVASION OF THE SPRITS 作:Kyontyu
今回からやっとトランスフォーマーの出番が……! こいつらの出番、待っていた方々、やっとです。
それでは、張り切っていってみましょー!
士道が寝ぼけ眼を擦りながら教室に入った。教室は昨日起きた空間震の話で持ちきりだった。その中にも姿の見えない生徒がちらほらといる。空間震は災害だ。予期せぬ時に起きる。いくら警報があっても必ず生き残れるという確証はない。
その時、昨日真那に言われた事を士道は思い出した。
四月十日深夜。
ようわからんオジサンに散々といろんな事を聞かれたり、やれ検査だ、やれ精神鑑定だの、帰って来た士道はくたくたになっていた。精霊のこともあるが、本当にいろんな事が起こり過ぎて体力的にも、精神的にも疲弊していた。
そんな時、お風呂から上がった真那がこんな事を言った。
「兄様、空間震の時、避難していやがってなかったそうですね」
「えっ?」
士道は思わず声が裏返った。精霊の秘密事項だ、とさきほどのオジサンに言われた事を思い出してなんとか踏みとどまるも、疑問が湧いてくる。
何故知ってるんだ?
「先生に聞きました」
真那は髪の毛を拭きながら素っ気なく言った。
「あ、ああ、そうか」
「でも、次は止めやがって下さい。兄様が死んだら、私、何するか分かったもんじゃありませんから」
そして真那はタオルを首に巻き、冷蔵庫から取り出したペットボトルのオレンジジュースを飲んだ。
「お願いしますよ」
そう言うと二階へと上がって行った。
「そうか……俺、死ぬかもしれなかったんだ……」
両掌を見る。思わず震えているのが分かった。そして気づいた。感謝しなければならない相手は沢山いることに。そして、これからも、感謝し続けなければならないことに。
HRが始まった。
「そういえば、訓練って、なんだろう?」
◆◇◆
五河家のガレージには赤い車体にアクセントで細い黒いラインが入ったスポーツカー、TOYOTA FT-1――アクセルが停まっていた。
「思いのほか暇だな」
そう思ったアクセルは車内に挿しこまれっぱなしのイグニッションキーを回した。エンジンフードがぶるりと震えてエンジンが始動した。
そして天宮市見学をするべく道へと乗り出した。
天宮市の中心にはシンボルタワーである「天宮タワー」が見える。天宮タワーは電波塔としてはもちろん、観光地や、空間の歪みを検知して空間震を知らせる警報器も設置されている。
警報機というのは空間震の前震である重力場の揺れを検知する物で、より正確に測定するために天宮市にあと四つ設置されている。
天宮市は娯楽施設なども充実されている。
「おお、こりゃでかいショッピングモールだな……でも、今の体じゃ買物出来ないな……」
と、駐車場で一人ごちていると、白ネコがこちらを向いていた。小さく首を傾げて「ニャー」と鳴いている。
「お? どうしたどうした」
白ネコは身軽そうに跳んでエンジンフードの上に乗り、丸くなった。
「そうかそうか。昼寝したいのか」
アクセルはしばらくこうしておいてやろうと動かないでおいた。
「?」
そこにもう一匹の猫が現れた。
~十分後~
アクセルはもはや白と黒とその他雑多な色で構成されたもこもこした物体になり変わっていた。
「んも~お! ちょっとはいい加減にしろぉぉぉ!」
車体をぶるりと思いっきり震わせた。それに驚いた猫達が足早に去っていく。そしてもう一度震えて、フレームについた毛を取り払った。
「オレはマタタビ発生器か!?」
トランスフォーマーになったのと同時にマタタビ発生器になってしまったらしい。
大量発生した猫を振り払い、アクセルは天宮市にある店が軒を連ねる大通りに出た。
靴屋、洋服店、ファストフード店……様々な店がある大通りは色鮮やかだった。
「思ってたより凄いところだな……天宮市って……んっ!?」
その時、アクセルの目を引いたのは、『きなこパンの店 キナパン』と書かれた店だった。
広告の黄色い旗には『きなこパン以外があると思ったら大間違いだ!』と書かれている。
「ネタが妙に古いな」
アクセルは呟いた。倍返しするつもりなのか、この店は。
店前には黒塗りのカワサキ ニンジャが停めてある。
その頃、『キナパン』の店内では二十歳ぐらいのグレーのパーカーを着たニンジャを所有すると思われる女が物凄い勢いできなこパンを頬張っていた。
女の左目は白い眼帯で覆われ、長い髪の毛はぼさぼさで、若い女性にあるまじき姿だった。女の前には既に十人前ほどの完食されて真っ平らになった皿が置かれている。
「よく食うね」
パンにきなこをまぶしている店主が言った。半ば呆れている。
「どうもっす」
女はきなこパンを頬張りながら答えた。
「いや、褒めたワケじゃないんだけど……ん、珍しいな。赤い車だ」
店主が外を見ながら呟いた。女もその方向を見てみる。確かに、そこには無人の赤いスポーツカーが停まっていた。
そして無人のまま走り去った。
「! ここ、無人運転の試験してんすか」
「いや? 知らないなぁ」
「ま、別にいっか」
女の優先度はきなこパンだ。
一通り見終えたアクセルは大通りを出て、五河家に戻ろうとしていた。ちょうど士道も帰ってくるころだろう。
その時、何か嫌な予感がボディを駆け巡った。
「! 嫌な予感……精霊か!?」
アクセルは急反転して来禅高校に向かった。
◆◇◆
「あー、もう散々だ……」
朝より見るからにげっそりとした士道は帰り道、呟いた。
琴里が言っていた訓練とは、『ギャルゲー』だった。
元々女性付き合いが苦手な士道にとって最高の訓練メニューだが、一歩でも間違えば、ドカン! 士道の知られたくない秘密が次々と暴露されていく。精神的に限界がきそうだ。
その時、後ろからパトカーのサイレンが聞こえた。振り向くと、パトカーには珍しいGTRがパトライトを点滅させながらこちらに向かって来ている。
そして士道の真横で停まる。
「?」
中には誰もいない。不審がって離れようとしたその瞬間、ドアが思いっきり開いて士道は弾かれた。
「ぐわっ」
ゴロゴロ転がってうつ伏せに倒れた。視界の先にはドアを閉めてこちらに向かってくるGTRの姿。
「うああああ、な、なんだ?」
士道は立ち上がってGTRから離れようと走り始めた。そう、あのGTRはただのGTRではない――この星の機械に偽装したディセプティコンのノックバックだ。
その時、大きいエキゾーストの咆哮と共に前方から赤く燃えるような塗装のスポーツカー、アクセルが走って来て、士道の横を通り過ぎ、ノックバックをドリフトで弾いた。その後、戻って来て士道に乗るようにドアを開けた。
「乗れ! 士道!」
「ああ、助かった!」
士道はアクセルの運転席に乗り込み、ドアを閉めた。アクセルがタイヤを鳴らして急発進する。
場所は市街地。二つのスポーツカーがカーチェイスを繰り広げる。ノックバックがアクセルに車体をぶつける。アクセルがよろめくが、その反動でノックバックもバランスを崩す。アクセルは巧みなハンドルさばきで後輪を滑らせながらノックバックを逃れる。しかし、それで諦めるノックバックでは無かった。ノックバックの車体の側面から流線型の銀色のミサイルが現れ、アクセルに向かって放たれた。
「うわぁぁぁぁ! 撃ってきた!?」
白煙を噴き出しながらこちらに迫るミサイル。士道は思わず鞄で頭を守った。その時、アクセルの後ろから円筒形のパーツがせり出しフレアをばら撒いた。そしてミサイルはアクセルの後ろで大爆発を起こした。同時にリアタイヤも少し浮かんだ。
「や、やっべー」冷や汗をどっとかく。
しかし、爆発炎を切り裂いてノックバックはなおも突進してくる。
逃げ切れないと考えたアクセルはドリフトして反転した。ドアが開き、士道は荒々しく外に放りだされる。
「逃げろ!」
そう言って変形(トランスフォーム)して身構えた。
爆発炎から飛び出したノックバックも変形(トランスフォーム)する。
そしてノックバックは一気に走り込んでアッパーを胴体にかませた。変形(トランスフォーム)したノックバックの両拳にはボクシンググローブのような形に変形したタイヤがある。拳がめりこむのと同時に腕のピストン運動によって速度を増す。アクセルは軽々と吹き飛び、支柱に激突した。支柱がへこみ、蜘蛛の巣状にひびが入る。
ノックバックはアクセルに歩み寄り、アクセルの頭部を握り、支柱にぶつけ始めた。押しては引き、押しては引く。
頭部がへこみ、金属が悲鳴を上げ始める。アクセルは朦朧とした意識のなか、右腕から剣を引き出し、頭部を掴んでいた右腕を切断し、腹に蹴りを加えた。
ノックバックは呻くような声を上げ、地面に倒れた。
「おおふぅ……」
アクセルはなんとか立て直すも、胸を押さえてその場にひざまついた。
「何やってんだよアクセル!」
「あぁ……くそ……」
アクセルは立ち上がり、両腕の剣を構える。
「うおおおおおおお!」
ノックバックは残った左腕を後ろに下げる。そして、突っ込んで来たアクセルの頭部に向かって振り抜く。しかし、そこにはすでにアクセルの頭部はなかった。アクセルは変形(トランスフォーム)してノックバックの股を抜けていたのだ。抜けたアクセルは再び変形(トランスフォーム)してバック転するように跳び上がった。それと同時に両腕を銃に変形させ、ノックバックに向かって乱射した。
一発放たれるごとに金色に輝く空薬莢が排出される。空気を切り裂いて跳ぶ弾丸はノックバックに突き刺さり、パーツを破壊していく。
アクセルは着地し、ノックバックの眉間に一発撃ち込んだ。
ノックバックは後ろに倒れて動かなくなった。
「司令、今すぐ転送を……」
士道の姿は既に無い。転送されたようだ。
そしてその後、一瞬の浮遊感の後、アクセルも〈フラクシナス〉へと転送された。
◆◇◆
「最近、なんだか精霊の限界数が増えてきたわね」
「そうでいやがりますね。全く」
天宮駐屯地の観測室の後方に、二人の女性が立っていた。一人は長身の黒髪の女性で、もう一人は青い髪をポニーテールに纏めた利発そうな女の子だ。
「それにしても……あの一般人、あなたのお兄さんなんでしょ?」
「ええ、困りやがります。あんな悪魔と一緒にいるんなんて、反吐が出やがりますよ」
その言葉使いに黒髪の女性――遼子はやれやれと肩をすくめた。
「その言葉使い、どうにかならないの? 『真那』?」
青い髪の少女――真那は答える。
「そうでいやがりますねぇ……無理でいやがりますね。多分一生」
真那は少し苦笑してみせた。が、その顔は一瞬で猟犬のような鋭い表情に変わった。