TRANSFORMERS:INVASION OF THE SPRITS   作:Kyontyu

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皆様! 本当にお久しぶりでございます! 受験戦争を生き残ったKyontyuです!
いやぁ、ホントいろいろありましたよぉ~。前回の投稿から。
詳しいことは言いませんが、なんだかデート・ア・ライブが映画化するそうですね!(相変わらず情報が古い)
トランスフォーマーも新しいテレビ放映が始まるみたいですし、盛り上がりがハンパない!



第七話「嵐の後」

「うわぁぁぁぁぁ!」

 士道は咆哮しながら空間震でぽっかり開いた銃弾飛び交う教室の穴に飛びこんだ。

 そして一瞬の浮遊感。胃が持ち上がるのを感じながら士道は意識を失った。

 

 

 

 深い闇へ、落ちていく――

 

 自分の体は認識できるが、その他の物は認知出来ない――

 

 温度、音、光――

 

 ずっと落ちていった先に、何があるのか――

 

 士道は、ただ落ちるだけだった――

 

 

 

「はっ……」

 士道は目を覚ました。

 クリーム色の天井と、白い光を放つ蛍光灯が見える。ここは〈ラタトスク〉の医務室だ。士道は直感的に分かった。

 立ち上がろうとすると体の節々が悲鳴を上げた。

「あ、いっつ……」

 うずく傷口を手で押さえながら再びベッドに横たわった。どうやら全身包帯だらけらしい。

「あ、起きましたか」

 純子の声が聞こえ、目の前ににこにこした純子の顔が見えた。その優しそうな笑みは見た者を安心させる笑みだ。

「はい……」

 手を額に当てるとそこにも包帯が巻かれていることに気がついた。

「しょうがないわ……対精霊用ではないといえ、弾丸飛び交う空間を一人で突っ走ったんだから――はい、りんご」そう言いながら純子はきれいにカットされたりんごの皿を手渡した。

 士道はそれを受け取って、一口頬張ってみた。シャクリ、という感触と共に甘味が口の中に広がった。

「でもまぁ、無理は承知ですけど、ここまでしなきゃ助けられないと思って……」

 彼女は、「また会おう」って言ってたけど、本当に会えるのだろうか……?

「あんまり無茶は――」

「――そういう人間よ。士道は」

 いつも通り赤いジャケットを着て、リボンを黒に変えた「司令官状態」の琴里が入ってくるなりそう言った。

「琴里……」

「まぁみっともない姿を晒してくれたわね。士道。そんなんじゃ命いくつあっても足りないわよ?」

「そりゃこっちのセリフだ――と言いたいところだが、実際、その通りだな」

 琴里は腕を組んで「ふーん」と鼻を鳴らした。

「なぁ! 琴里、俺にもっといろいろ教えてくれ!」

 士道は上体を起こし、琴里の方を見た。その言葉には真摯な響きがこもっていた。

 琴里は答える代わりに中指で士道の額をでこぴんした。しかもそれがちょうど傷口にクリーンヒットしたものだから士道にとっては堪ったものじゃない。

「うおぉぉぉ!? 痛ってぇぇぇぇぇ!?」

「何言ってるのよバカ士道。第一そんな怪我じゃ何も出来ないじゃない。とりあえず今は休むことね」

「………」

 士道は渋々ベッドに体を沈ませた。

「……そうだな。今は休まないと、かもな」

「後はこっちで何とかしておくから、じっくり休みなさい」

「ああ、そうするよ……」

 士道はそう言うと静かに瞼を降ろした。

 

◆◇◆

 

 アクセルは怒っていた。それは何故か。あのASTのトランスフォーマーのことだ。あんな物が配備されているなんて聞いていない。

「どういうことか、説明を求めたい」

 流暢なロシア語でアクセルは〈フラクシナスⅡ〉の艦長であるアジンに訊ねた。

『どうやらKSIのプロトタイプ弐号機がDEMに流れていたらしいわ』

 DEM――デウス・エクス・マキナインダストリーズ。この地球上で顕現装置(リアライザ)を製造できる数少ない会社の一つだ。詳しい事は知らないが、名前くらいなら聞いた事があった。

「なら当然、リアライザ搭載機か」

『そうね。かなり厄介な敵になると思うわ――それと、オートボット達が月に行ったそうよ』

「月? いったい何で今になって?」

『さぁ? でも余程重要な事なんでしょうね。彼らにとって』

「そうだな……こっちでも最近ディセプティコンと交戦している。警戒を強めた方がよさそうだな」

『ええ、現在エネルゴン探知用のソフトウェアを製作中よ』

「分かった。では、交信終了」

 ガレージの扉が開かれ、薄暗いガレージに太陽の陽が差し込んだ。

 扉を開けたのは令音だった。

「アクセル、しばらくつき合ってくれないか」

「いいですよ。俺も訊きたい事があったんで」

 イグニッションキーを回してエンジン――専用顕現機関(リアライズ・エンジン)――を始動させた。

 

 令音がハンドルを握り、天宮市内を快調に飛ばしていた頃、沈黙を破ってアクセルがスピーカーから声を出した。

「何故、士道なんです?」

「何がだ?」

「精霊との交渉役ですよ」

 令音は少し考え込んだ後、口を開いた。

「……そうだな。アクセルは知らないか。まぁ、士道の『運命』のようなものさ」

「『運命』……」

 高校生には重すぎる運命かもしれない、アクセルは思った。その肩に世界の命運がかかっているのだから。

「そう。人類と精霊の救済……士道はそのためだけに生まれたようなものだな」

「ちょっと決めつけ過ぎじゃないんですか? いくらなんでも」

「いや……」

 令音は目を伏せた。

「……同時に私への罰でもあるんだ……」

 『運命』、『罰』、その言葉を頭の中で転がしてみた。どうやら、精霊を救ってお終い、ではエンディングを迎えられそうにないな。

 不意に令音がブレーキを踏んだ。

「……ここだ」

 令音が窓の外を見やる。

 そこはキナパンだった。

 またここか……アクセルは心の中で溜息をついた。

 

 キナパンの店内にはあの眼帯の女性がガツガツきなこパンを食べていた。扉が開き、珍しいなと思って顔を上げると、女性は凍りついた。何故なら、そこにいたのは目の下を隈で彩る女性。こんなのは自分の母親以外に存在しない、見間違えようもなく母親だった。

「か、か、母さん……」

「元気で何よりだ。詞透(しすか)」

 店内に入って来た女性――令音が言った。

「なななな、何でここが……?」

 詞透の隣に令音が座る。

「まぁ、母親の勘さ」

「マジ……?」

「それよりも、NESTでの仕事はどんな感じなんだ? 大学を中退したくらいなのだから、さぞかし素晴らしい仕事なんだろうな」

「そ、そんなことまで……」

 NESTの存在自体最高機密扱いなのに……我ながら恐るべき母親だ。

 詞透はアメリカのマサチューセッツ工科大学に留学していたのだが、そこでいろいろあって令音に知らせず勝手にNEST入ってしまったのだ。

 詞透はバツが悪そうに令音から目を逸らした。

「ま、まぁ、いい仕事だよ。収入は良いし、トランスフォーマー達と一緒に仕事するのはスリルがあって面白いし……」

「精霊に復讐する気なら、止めた方がいい」

「!」

 詞透の脳裏にあの日の事がまざまざとよみがえる。

 

 阿鼻叫喚の街。

 崩れるビル群。

 お母さん……どこ……?

 雪が降り始める。

 爆煙の切れた間から見えた紫色の人影。

 殺してやる。

 お母さんとお父さんを殺したアイツを……

 止めてくれ。そんな悲しいことを言わないでくれ……

 誰かに抱きかかえられた。

 詞透は思わず泣いた。

 灰色の空に泣き声がこだまする。

 

「詞透、辛いのは分かるが……」

「無理だよ。母さん。だってアイツがこの街に来たって、知っちゃったからさ」

 詞透は立ち上がると、おやじに向かって「お勘定!」と言った。

「そうか……」

「だから諦めてよ。あ、後、士道によろしく言っておいて」

 財布から札を取り出しておやじに渡すとそう言って詞透はキナパンから出ていった。

 令音は前髪を掻きあげた。

「いろいろ大変だねぇ」

 パンを揚げながらおやじが言った。

「少し、静かにしてくれませんか」

「……スイマセン」

 

◆◇◆

 

 天宮駐屯地のAST用格納庫に、左腕を失った〈キュプクロス〉がガントリーに保持されて佇んでいた。その目の前で〈キュプクロス〉を見つめているのは、パイロットである刀納沙耶だった。

「……ごめんな……」

 そう呟くと、〈キュプクロス〉の特殊金属で造られた左手に触れた。冷たい感触が返って来た。いくら出動時に『繋がる』と言っても、所詮相手は機械。意思は無い。

 〈キュプクロス〉の意思を持たぬ単眼が沙耶を見下ろしていた。

「君は、刀納沙耶だね?」

「……日下部隊長」

 振り返ると、作業着姿の遼子が立っていた。

「少し話さない?」

「………」

 

 敷地内の建物にあるレストルームで遼子と沙耶はお互い向かい合うような形でテーブルに座っていた。

「どうしたんですか? 急に」

「まぁ、ちょっと話が聞きたくてね」

「……はぁ」

 遼子はグラスに注がれたアイスコーヒーを一口含んで口を開く。

「なんでテストパイロットになったの?」

「なんでって……」

「私はね、君たちみたいな子供が、戦場にいるのが好きじゃないんだ」

 そう言いながら遼子は沙耶の瞳を真っすぐに見詰めた。沙耶は思わず目を逸らした。

「……他にやるべきことが見つからなかったんですよ。空間震で住んでた街が瓦礫に変わって……何もかも失ってしまったから……でも、何か人の為にすることはいい事ですよ……辛い事を忘れられるから……」

 沙耶は目を伏せた。その目には深い悲しみが浮かんでいる。

「そっか……大変だったね」

 遼子はそう呟くと背もたれに寄りかかってグラスの氷を掻きまわし始めた。

「忘れもしない、九月十一日……」

 その言葉に何かを読み取った遼子は眉をピクリと動かした。

「……京都大空災、か」

 十年前に発生した大規模な空間震。その被害規模は東京大空災に次ぐものでかなりの被害者が出ている。目の前の少女はその数少ない生き残りか。

 沙耶はゆっくりと頷いた。

「復讐、したいんだ。精霊に」

「いや、別にそんな訳では……」

「嘘。あなたも同じ目をしてる。精霊に復讐を誓う隊員達とね」

 ASTにも精霊の被害に遭った者が当然存在する。その数は把握しているだけでも過半数はいるだろう。

「〈キュプクロス〉がいないと、私は戦えません。人間は弱い……今回の事でそれをよく理解したつもりです」

「沙耶……」

「でも相手はヒトじゃないんです。だから私たちはヒトを超える必要があります。では、〈キュプクロス〉の修理もあるので、失礼します」

 沙耶は起立して敬礼するとレストルームを出ていった。

 それを見送った遼子は手を組んで、その手を額に当てた。

「『ヒトを超える』、か……その先に、何があるんだろう……」

 その問いに答えるように、溶けた氷がカランと音を立てた。

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