TRANSFORMERS:INVASION OF THE SPRITS   作:Kyontyu

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映画の公開が決まり、盛り上がっている『デート・ア・ライブ』。
四月からテレビ放映され、盛り上がっている『トランスフォーマー』。
この二つが合わさればどうなるか、火を見るよりファイヤーですね。
それでは、張り切っていきましょー!


第八話「名無しの精霊」

「休校……まぁ、普通に考えればそうか」

 買物袋を両手に下げた士道は来禅高校の閉じた門の前で呟いた。

 あれから三日経ち、頭の包帯は取れたものの、まだ両手や体には包帯を巻いている。今はこうして体がなまらないように買物をしていたのだ。(犬養さんを説得させるためにはかなりの時間を有したが)

 校舎に目を向けた。

 空間震やらASTやらによってほぼ倒壊した建物は、復興部隊の作業が終わっていないのか、三日前の惨状をそのまま残していた。

 街中に突如として出現した戦場。士道は身震いした。今、こうして生きているだけでも奇跡だと思った。

 しかし、やるべきことは残っている。あの精霊を、何とかしなければならない。

「その為にはまず怪我をどうにかしねぇと……」

「おい、シドー」

「あ、ハンバーグ作るか」

「……無視するなぁっ!」

「え……」 

 後ろを振り返ると、士道は硬直した。そこには、紫と金の霊装を纏った精霊が立っていたのである。しかも両手を腰に当てて、いかにもご立腹な表情をしていた。

 士道は気まずそうに目を逸らして、後頭部を掻いた。

「あ、えっと……なんかごめん」

「フン! さっさとそう言えばいいものを!」

「分かったよ……って、君は、名前が無いんだよね?」

 思い出していた。初めて彼女に会った時の、あの影の差した表情を。

「む。何度言わせる気だ。私に名前は――」

「――十香。君の名前は十香だ」

 精霊の顔が驚きに変わった。四月十日に会ったから十香。安直すぎるネーミングだが、この名前が何故かしっくりくるような気がした。

「トウカ。十香か……」

 心なしか、十香の表情が少しほころばせた気がする。

「頑張って考えたんだ。だって、名前がなきゃ、悲しいだろ?」

「ああ、そうだな……良い名だ……呼んでくれないか? 士道」

「へ?」

「呼んでくれ。私の『名』を」

 あまりにも唐突だったので、士道は困惑した。こんなこと一生にあるかないか……いや、無いな。

「よ、よし。分かった……と、十香……」

「ああ! 何だ?」

 十香は満面の笑みを士道に向けた。

 この時、名も無い精霊は『十香』になった。

「で、でもさぁ……その服、なんとかならないのか……?」

「私の霊装を侮辱する気か? この神聖なる……」

「いや、ここでそれはかなり目立つんだ。今目立つとASTが来るかもしれないだろ?」

「む、むぅ……それは困るが……どうすれば……?」

「ああ……そうだな……」

 士道は周りを見回してみた。そこにちょうど来禅高校の黒い制服を着た女子が見えた。連絡が回っていなかったのか、休校だということを知らなかったらしい。

「ちょうど、ああいうのだと目立たないな」

 女子生徒を示してそう言うと、

「ああ、分かった」と右手を生徒に向け、黒い何かを発射しようとした。

「ちょい待ちッ!」

 士道が十香の腕を押したので黒い何かは生徒の頭部を外れ、ブロック塀に穴を開けただけだった。

「何をする。外れてしまったではないか」

「『何をする』じゃねぇよ! 何する気だったんだ!?」

「いや、あの女を昏倒させようと……」

 士道は額に手をやった。でも確かに納得できる。今ままで彼女は生きるか死ぬかの世界で生きてきたのだから。

「じゃあ十香は、あんなことをされても平気なのか?」

「流石に怒るぞ。それは」

「だろ? 自分がやって欲しくない事は他人にもしちゃいけないんだ。分かった?」

「あ、ああ……じゃあ自前で」

 パチン、と指を鳴らすと霊装が光り輝き、次の瞬間には来禅高校の制服になっていた。

「情報が限られていたから、細かく再現されてはないが、誤魔化すには十分だろう」

「できれば最初っからそうして欲しかったな……」

「で? どうするのだ?」

「で? って?」

「だって会いたかったのだろう?」

「う……」

 確かにそうだ。だがどうするのだろうか。そもそも琴里は何をさせたかったのだろうか。恋をさせるってもな……

「まぁ、とりあえず、少し話そうか。歩きながらでも」

 

◆◇◆

 

「……やっぱ暇だなァ……」

 アクセルはガレージの中でボソッと呟いた。平和が一番なんだろうけど、本当にする事がない。どうしようか。〈ラタトスク〉にハッキングして機密情報全部覗いてやろうか。

「……止めとくか。ってか士道帰るの遅いな」

 イグニッションキーを回してエンジンを始動させるとガレージを開けて走りだした。

 空間震があっても、この街は何事も無かったかのように回っている。東京とは大違いだ。あそこはまだまっ平らだというのに。

「ん?」

 高校近くの住宅街を走っていると何だか見かけた事のある人物が見えた。

「まさか……士道か!?」

 しかも隣には同じ来禅高校の生徒と思われる少女がいる。

「まさか、また訓練か……? 伝えてくれてもいいのに」

 なんだか仲間外れにされた気分だ。

「ま、訓練だったらいいや」

 アクセルは二人に見られない内に住宅街のさらに奥へと進んでいった。

 

◆◇◆

 

 士道と十香は並んで住宅街を歩いていた。

 士道はごくりと唾を飲み込んだ。隣には絶世の美少女がいる。しかし、終始無言で歩き続けている。なんだか気まずい。

「……なぁ、昨日あの後どうしたんだ?」

「む? ああ、気づいたら寝ていた」

「は、はぁ? 寝てた?」

「……何と言うべきか……急に感じたのだ。『呼び声』のようなものを」

「『呼び声』……」

「そう。それを聞いた途端私の体が『呼び声』に引きつけられ、気づくとまたここにいた」

「じゃあ、空間震ってなんで起きるんだ?」

「起こそうとして起こしている訳ではない。眠りから叩き起されるのと同時にこの世界に圧着される、その副作用のようなものだと考えていたが」

 聞いた話ではこれは事故のようなものなのだろう。士道は思わずホッとした。

「なんだ。そんなの事故じゃないか。話せばきっと分かってくれるって」

「相手が武器以外に交渉手段を持っていれば、だがな」

 十香の顔に再び影が差した。士道の嫌う顔色だ。

「別に全員がお前を襲うってワケじゃねぇよ……」

「………」

 十香は何かを考え込むようにそっぽを向いた。

「……なぁシドー」

「ん? なんだ?」

 十香は立ち止まって士道を見た。

「何故、私を助けようと思った?」

「それは――」

「――シドーの本心を、教えて欲しい」

「………」

 十香の真摯な眼差しが士道を貫いた。

「勘、かな」

「へ?」

 流石にこの答えに十香も驚いたのか、少しのけぞった。

「いや、誤解しないでくれ。なんか初めて十香を見た時、助けなきゃって思ったんだ。ただ純粋に。そうでもしないと世界が崩れてしまいそうで……」

 世界が崩れる? 何を言ってるんだ、俺は?

「……助けたかった。だから、助けたんだ」

「その言葉、信じるぞ」

「……ああ」

 その時、十香の鼻がひくついた。

「ん? なんだこのいい匂いは……」

 十香がいい匂いのする方向へ顔を向けると、そこには『キナパン』があった。そして店の前には黒塗りのバイクが一台、停められてる。

「ああ、そこは『キナパン』って言ってな……って、いねぇし!」

 既に十香は店内に入った後だった。

「全く、しょうがない奴だなぁ……」

 その時、携帯の着信音が鳴った。

 

 カランカラン、と鈴が鳴り、十香はキナパンに入った。匂いの元はどうやらこの黄色い粉をまぶした物質から放たれているらしい。

「いらっしゃい。お譲ちゃん」

「お邪魔するぞ」

 とりあえず席に着いた。ふと、隣を見ると、そこには物凄いスピードできなこパンを頬張る眼帯をつけた女性が座っていた。

 メニューを開き、手を挙げた。

「きなこパン。十人前で頼む」

 女性が食べる手を止めて、十香を見た。

「止めといた方がいい。後悔するよ」

「フッ、知った事か」

「いいねぇ。燃えるよ」

 そして再びガツガツ食い始めた。

「はい。十人前お待ちー」

 十香の前にどん、と十人前のきなこパンが載った大皿が置かれる。その時、女性が店の外を見るや否や今食べているきなこパンを急いで食べて、お金を置いてそそくさと立ち上がった。

「待て。逃げるのか?」

「ごめん。また会おう。大食いレディー」そう言って店から出ていった。

「………」

 十香はその背中を見送った後、きなこパンに手を伸ばし、一口食べた。

 何故あの女性がこのパンを食べたいのか、分かる気がした。

 

 天宮大通りのとあるカフェ。その店内に琴里と令音がいた。

「やっぱ平和がいちばんよねぇー」

「……そうだな」

 令音はハチミツたっぷりのアップルティーを口に含みながら、ぶっきらぼうに答えた。

「………」

「………」

 平和なのはいいが、平和すぎて何も無いのもちょっと……

 その時、携帯の着信音がなった。送信元は、アクセルだった。

『ああ、司令か。さっき士道が女の……』

「ああ、それは確実に見間違いですおつかれやまでしたー」

『いや、本当なんだって!』

「何言ってんのよ大体おにーちゃんが女の子をゲット出来るワケが……な……」

 琴里は思わず言葉を失った。手からするりと落ちた携帯からアクセルの『どうした!』という声が聞こえる。

 目線の先には、士道と女の子が並んで立っていた。

「嘘でしょ……」

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