この世界はいま、強大な悪の手によって崩壊しようとしています。
何故そのような事になったのか、それはこのキヴォトスに「ある生物」が異世界よりやってきたからです。
諸悪の根元、正義の悪、世界の敵、そんな風に呼ばれるほどに残酷で残虐で非道なものたち。
そんな彼女ら、異世界からの来訪者の正体は魔法少女。それは皆様が想像しているようなテレビや漫画、ライトノベル、ゲーム等に出てくる可憐で可愛らしい容姿と不思議な力、魔法を使う少女たちです。
私たちは、そのような不思議な力を持つものたちを探しています。彼女らは非常に狂暴な力を持ち、いつキヴォトスへ牙を剥くか分からない、例えるなら世界を滅ぼすほど威力の時限爆弾のような極めて危険な存在です
『凄く綺麗で可愛いけど変な格好の人を見た』『素手で○○を簡単に壊してた』『まるで魔法みたいなおかしなものを見た』等の非現実的な事に心当たりがありましたら当局の方までご連絡ください。
皆様の力で、この学園都市に平和をもたらしましょう。
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【(掠れて読めない)の国『キヴォトス支部 (虫に食われている)部門』】
蹴って殴って殴って溶かして
◇袋井真梨子
ウグイスの囀ずりが春の訪れを伝えるかのように職員室に届く。未だ真梨子以外の教員がいない職員室は普段とは違った静けさを見せ、落ち着いてほのぼのとした雰囲気に真梨子は一人ゆったりと佇んでいた。
一週間ほど前に春休みを迎えて、殆どの生徒は学校へ来ていないため、真梨子たち教師陣は授業をする必要はない。とはいえ、春休みは教師の繁忙期だ。
新年度に向けての準備や会議、教材研究に各教員たちとの打ち合わせ等々、2週間という短い期間ではあるものの仕事は常に回ってくる。
それに加えて真梨子は科学部の顧問を勤めていたり、情報主任という真梨子のような臨時教員にやらせるような仕事でないものもしているため、とてもじゃないが羽を伸ばして休むなんて出来る訳がなかった。
今もこうして真梨子が人のいない職員室でゆったりとコーヒーを飲んでいられるのも、真梨子が高校の鍵を預かり朝早くに学校に来て鍵を開ける『鍵当番』であるからで、あと三十分程経てば一人二人と職員室にも人は増えてくるだろう。
鍵当番の事もそうだが、もともとは産休の先生の代わりに雇われた臨時教員であるにも関わらず、一つの学級の担任をしている上、科学に詳しいからと科学部の顧問を任されたり、PCを扱えるからと生徒用PCの管理、職員用PCの管理の末、遂には要録資料の殆どの管理も半ば押し付けられ情報主任を任されるなど、この高校は何かと面倒事を真梨子に回してくる。産休の先生の復帰もあと少しだというのに、真梨子の仕事は増える一方だ。
春休みは生徒がいないため、科学部の方も活動はしていないが、減った仕事に新たな仕事を捩じ込まれる。人使いの荒さに真梨子はてんてこ舞いとなっていたが、仕事なのだからしょうがないと今まで何とかこなしてきたのだ。
そんな忙しさのなかでの数少ない自由な時間だ。職員室で一人コーヒーを飲むぐらいは許されるべきだろう。
職員室に備え付けられているコーヒーメーカーのコーヒーを入れたカップを手に持ち、職員室の窓辺に立つ。白衣を着た真梨子の姿がうっすら窓に映り、その先に見える校庭には見事なまでに満開に咲いている桜が規則正しく並んで来年度の新入生を迎える準備を終えていた。
「……こっちも早く終わらせないとなぁ」
コーヒーを一口啜る。砂糖を入れすぎたか、少し甘ったるい。だが、仕事で脳をフル稼働させていた真梨子にはこれぐらいの糖分がちょうど良い。
春の日差しが真梨子に差し掛かっているのも相まってか、うつらうつらとした眠気が真梨子を襲う。昨日も徹夜で教材研究に追われて就寝したのは遅めだったのに加え、鍵空け当番なので朝早くに起きて車を走らせたのもあって十分な睡眠時間を取れていない。
体力と度胸に関しては見た目に反して意外と持っていると自負していたが、こうも睡眠時間を削られると後で眠気がやってきてしまう。この春真っ盛りの状況も眠気の後押しをして、真梨子は自身の席に戻ると、コーヒーを少し離れた場所に起き目蓋を閉じた。
先生方が来るまであと三十分ほどか。少ない時間ではあるものの、珈琲だけでは解消されないこの眠気を少しでも解消するため、うつらうつらと船を漕いでいた真梨子は、やがて意識を失った。
◇袋井魔梨華
カラッとした冷たい風が頬を撫でつけ、真梨子は重い目蓋を開いた。目前に広がる一面の砂を目の当たりにした瞬間、袋井真梨子は魔法少女『袋井魔梨華』へ変身した。
先ほどまで感じていた眠気、疲れは魔法少女に変身した時には既に欠片も残っていない。思考も透き通り、今を生きるため素早く脳を回転させている。
真梨子が今までいた場所は、真梨子の働き先の高校の職員室だ。当然、このような場所へ転移される覚えなどはない。
自然、考え付くのは真梨子以外の誰かが真梨子をこんな場所に飛ばしたという事だ。当然、真梨子を飛ばした下手人は一般人ではないだろう。
一体何が起きたかと疑問が沸くと同時に辺りを見渡し、真梨子を飛ばした下手人を探す。
周りを見れば、砂、砂、砂と少しばかりの壊れた人工物ばかりだ。春うららの桜が舞い散る校庭の砂場とは訳が違う。
日もいつの間にか落ち、灯りの一つも灯らない深夜の砂漠が地平線の先まで広がっている。普通の生物なら闇目が効かずただ暗闇だけが視界を覆い尽くすだけだが、
今回の下手人がどういう理由で魔梨華を襲ったのか、常日頃から魔法少女の恨み、妬み、怒りを買っている魔梨華には心当たりが有りすぎて逆に分からないほどであったが、この袋井魔梨華に何かをしたというのは紛れもない事実だ。
売られた喧嘩は買う。売ってない喧嘩も買い上げる。魔梨華の目の前に魔法少女が立つのなら、それはつまり魔梨華への挑戦状と勝手に受け取って、お返しに殴って戦いのコングを蹴り鳴らす。
要するに通り魔的犯行を繰り返し行ってきた魔梨華に報復と称して喧嘩を吹っ掛ける魔法少女などザラにいる。ならば今回もそうした者の仕業か。
辺りを見回すと、砂に埋もれた斜めに傾いたビルの残骸のようなものや、埋もれた建物の上階が隆起している部分も見える。他にも電柱の上部部分や車の屋根部分などがまるで野菜畑のように生えているのも見えたが、魔梨華にはそんな事はどうでも良かった。
問題は魔梨華の餌はどこにいるか、だ。そして、それは砂漠の向こうに見えた。
黒いヘルメットを被った集団だ。距離は目視で約三十kmほど。殆どが中学生、高校生のような体つきで皆手に獲物である銃を持っている。銃の種類については魔梨華には畑違いでよく分からなかったが、手に獲物を持った集団が魔梨華のいる方角へ進んでいるという事が分かっただけで十分だった。
集団を視認した直後、魔梨華は姿勢を低くして前のめり気味に走り出す。魔法少女の脚力は人間のものと比べると格段に高く、たかだか数十kmの距離もものの数秒で走りきれる。その上、魔梨華の脚力含む身体能力は並みの魔法少女と比べても段違いだ。
今回の襲撃は魔梨華にとっても非常に嬉しい事だった。
いつ爆発するか分からない魔梨華の戦闘欲求は学校生活で教師に扮している間は決して解消する事が出来なかった。
何も教師生活に不満があるわけではない。むしろ充実しているといっても良い。だが、それはそれで、これはこれだ。
そんな欲求を抱えている最中に魔梨華の大好物である暴力が向こうからやってきたのだ。更に、魔梨華に不意打ちで太陽の光のない深夜の砂漠へ飛ばすという行為も、魔梨華の弱点を知り、魔梨華を確実にこの世から滅っするという気概も感じられる。確実に強者だ。魔法少女だ。挑戦者だ。乗らないなんて論外だ。
ヘルメット集団へ歩を進め、魔梨華は途中にあった斜めに埋もれた電柱柱の上へ上ると右足に力を込めた。途端、電柱の上部がヒビと同時に粉々の鉄欠片へと変貌し始め、そこを中心に広がった衝撃波によりその場に渦を巻くように砂埃が宙へ舞い、魔梨華は空高く跳ね上がった。
おもむろにコスチュームのポケットに手を突っ込み、二つの種を取り出すと魔梨華はそれらを無造作に口の中へ放り、嚥下する。
今回の戦場の舞台は夜間の砂漠だ。太陽もない、水もない、空気もカラッと乾いていてとても『植物』を育てる環境には程遠い。使える戦術は大幅に削られる。が、そんな環境下でも懸命に生きている植物はいる。
魔梨華の眼下には、小さな粒のような者たちが群れている。魔梨華は小柄な体型を生かして体の向きを変えると、集団の中心へ急降下した。
◇サラサラヘルメット団団長
何が起きたか理解するのに数秒かかった。
突然、後方を歩いていた団員の一人が声を上げ、それに反応するため後ろを振り向いた時には既に団員の叫び声を中心に勢い良く巻き上がった砂の塊が団員達へ降りかかっていた。
騒ぎの中心地から最も離れていた団長と最後尾の団員は辛うじて砂はかからなかったが、辺りは黄土色の土煙がもくもくとたち、視界が塞がれた。
「な、何が起きた!」
「わ、分かんないっす!いきなり空から――」
幸いなことにヘルメットをしていたため、砂で喉がやられる事もなく、砂漠に少女の声が通る。が、その声に被さるように破裂音と団員の呻き声が聞こえる。そして砂埃の向こうから何かが団長の横へ飛んできた。
吹き飛ばされたそれは、バイザーの割れたヘルメットだ。市販のヘルメットに、我々サラサラヘルメット団の紋章と今時流行りのカッコいいアートで彩られて――
いつの間にか、震えていた足は砂埃の中へと走り出し、手にしていた
「敵襲だっ! 全員撃てっ!」
団長の合図はすぐさま周りに溢れだした発砲音でかき消され、辺りに銃弾が飛び交った。団員の全員がそれぞれの愛銃を喧騒の中心点に叩き込む。
サラサラヘルメット団の掟に「一心同体」というものがある。一人の喜びは皆の喜び、一人の悲しみは皆の悲しみ。社会から迫害されて人生の地の底へ落とされた我々に残されていたものは、掃き溜めに追いやられた者同士による強い結束力なのだ。
仲間が目の前でみすみすぶっ飛ばされているのを黙って見ている訳にはいかない。相手が誰であろうと、必ず同じ目に合わせてやる。
砂煙を掻い潜り、やがて一つのシルエットが浮かぶ。そのシルエットはなにやら片手を地面につけ、何かを砂の下へと沈めている。
――アイツか
シルエットだけでも分かる。あんな見た目の奴はサラサラヘルメット団の団員の中にはいない。打ちっぱなしにしていたSMGの照準をシルエットに定める。銃弾が次々とシルエットへと打ち込まれる。いくらキヴォトス人でもこれ程の弾を食らえば只ではすまない。
シルエットは体勢を崩したのか、先程より体を地面に近づける。あと少しだ。待っていろ、いまお前の体に風穴を開けて――
不意にポツリと声が聞こえた。まるで鈴を転がしたかのような透き通った声だ。その声だけで、可愛らしい少女の姿を連想できる程だ。
だが、何故だろうか。団長の背中に冷たい何かが駆け抜ける。
冷や汗が、体の穴という穴からぶわっと吹き出し、同時に団長は足に力を込めて、今の自分の体力を全て使わんとする勢いで後ろへ下がった。
何かが来る。その予感が脳をよぎり、突如、気配が団長の頭上へ沸いた。
頭上の何かが影を団長に落とす。瞬間、団長は体を無理やり捻ると、後ろへ行こうとする力を少しずらして横へ跳んだ。
瞬間、団長の横にはそれがあった。
植物の蔓をそのまま肥大化させたかのような太い蔓が団長の横に存在していた。おそらく振り下ろされたのだ。砂がへこみ、制服に砂が掛かる。風圧で体が持っていかれそうになるが、制服が汚れることも厭わずその場に転がった。
見えなかった。ほとんど直感でその場を凌ぎ切ったが、あの蔓が頭上に現れた時も、それがいつの間にか団長の隣に振り下ろされた時も、全ての事が一瞬で終わっていた。見て避けるなんて出来るわけがない。
そもそもこれはなんだ。植物か。ならこの植物は何故急に出てきたか。あの襲撃者の仕業か。だとしたら――アイツは一体何者なんだ。
砂埃が先ほどよりも盛大に吹き荒れ、その砂埃も蔓の風圧で全て吹き飛んだ。口の中がじゃりじゃりする。いつの間にかヘルメットが外れてしまっている。団長の長い髪が地面に這っていた。
幾つもの蔓は未だそこに存在している。まるで一本一本にオーラを纏っているかのように、力強く破壊的だ。その蔓に視線を這わせて先を辿ると、その蔓の発生源は例の襲撃点の中心だった。
砂埃が晴れたおかげで、襲撃者のシルエットが剥がされていた。
その襲撃者はまるで人のように見えて、人には本来あるはずの無いものがあった。見た目は中学生ぐらいの女の子か。見るからに毒々しい色のグラデーションの髪の先に幾つかの植物の葉を生やし、その頭の頭頂部からこの太い蔓が生えていた。
姿勢を低くして上に蔓によって襲撃者の姿は一部隠れているが、その襲撃者は右手を地面につけている。右手の先には一人の女の子が砂に埋もれる形となって沈められている。最初に悲鳴を上げた団員だ。ヘルメットは外れている。
「おっと……一人逃したか。にしても、たいして強くねぇなあ」
襲撃者が声を上げる。あの時聞こえた鈴のような可愛らしい声だ。
挑発的だ。明らかにこちらを敵視している。それに――一人逃がした?
ふと辺りの惨状を注目する。仲間たちの銃声は聞こえない。誰の姿も見えない。まるでこの世界からまるっきり存在が消えたかのように仲間たちはいなくなっていた。地面に降ろされた蔓の下に視線を移す。女の子のようなしなやかな手と足が蔓の下に埋もれている。一本や二本ではない。襲撃者を中心に放射線状に延ばされた蔓全て、その下に仲間たちの体が埋もれていた。
頭が熱くなるのを感じる。仲間が皆、この襲撃者にやられたのだ。それも、ただヤるのではない。潰されて埋められたのだ。
襲撃者は先ほどの銃弾の弾幕の傷など一切見せずに、ただ不敵に笑っている。
ふざけている。仲間たちをこんな目に合わせたこの女の頭に今すぐ鉛玉を食らわせたい。そうしたいと思っているはずなのに、体が動かない。本人の意思とは関係なしに、体は目の前の存在を前に震えている。
動け、動けと頭で念じても、決して動かない。未だ右手には団長の愛銃のSMGが握られている。これをあの女に向けるだけでいい。あとは引き金を引けば、あの女に風穴を。
「ん? お、まだ動けるか? よーし、じゃあやるぞ、いいか? いいよな?」
女の目が、団長に向けられる。そして向けられた時には、既に地に伏ちていた体は反射的に立ち上がり、SMGを女に向ける。引き金は引けなかった。
自分は馬鹿か。こんな化け物に勝てるわけがないだろ。この場の最適解は今すぐに逃げる事なのに何故気づかない。本能の警笛が団長に語り掛ける。だが、ここで逃げて仲間を見捨てるというのは、既に団長――『桃園 アンナ』の選択肢にはなかった。
目の前の女、化け物に生えた蔓がみるみる内に色褪せていく。まるで植物が枯れるかのようにぱりぱりと音を立て初めると、その蔓が化け物の頭から落ちた。
アンナはSMGを両手に持ち体の前に持っていく。瞬間、前から衝撃が来る。いつの間にか目の前に移動していた化け物がSMGごと足蹴りを繰り出していた。
SMGがあり得ない形にひしゃげている。長年の付き合いとなっていた愛銃ではあるが、今のこの状況ではお荷物にしかならない。
世界が回る。酸素が追い付かない。先の攻撃で肺の空気を吐かされた。地面に顔をつけているから呼吸も出来ない。顔から血の気が引いていく。
意識が遠のきそうになり、ふいに視界に光が射す。首根っこを掴まれ引き上げられたのだ。
また地面に叩きつけられ、今度は空を見上げていた。雲一つもない綺麗な夜空だ。そこに化け物の顔がこちらをのぞき込む。表情は顔を歪ませて、まるで玩具を取り上げられた子供のような不機嫌な顔だ。
「はあ……たくっ、やっと暴れられると思ったのにもう終わりかよ……つまんねえ奴だな」
なんて身勝手な化け物だ。一方的に襲撃してきたのはコイツの方なのに、ここまで好き勝手やった後は『つまんない奴』だと? ふざけている。
今すぐにでも体を起こしてその顔面に拳をめり込ませようとする。だが、もうすでに体が限界なのか、指の先すらも動かせないでいた。
早くこの化け物を何とかしなければいけない。早く仲間たちを救出しなければいけない。早く、早くしなければいけない。焦りばかりがアンナの中に積もる。
化け物は相も変わらず不機嫌であり、ついにはため息まで吐き始めた。どこまでこちらをなめ腐っているのか。そして、化け物は先ほどまで蔓のような植物のところまで歩いて行った。
まずい。このままでは化け物が仲間たちに何かをするかもしれない。そうなってはならない。そうさせてはならない。
だが、アンナの体は動かない。もうここまで来たのだ。今更自分の体がどうなろうともはやどうでもいい。
視界の先には倒れた仲間たちの一部が見える。何も為せず、学校を退学させられ、人生をめちゃめちゃにされた、アンナと同じ人生を歩む少女達。
それぞれアンナとの出会い方も違い、それぞれが掲げる理念も違う。アンナに同調してついて来た者も居れば、アンナと衝突し、傷つけあい、過去を語り合い、一夜を過ごしてた者も居た。少しづつ共に行動して、やがて家族と呼べるような仲間が、確かにそこにいたのだ。
そんな仲間たちが、目の前で無残に潰され、傷を負いそこに打ち捨てられている。
――あぁ……駄目だ。そんなの、駄目だ。
駄目だ。絶対駄目だ。そんなこと、駄目に決まっているだろう。
仲間たちの元へ向かう化け物を今度こそ止める。体が起き上がり、化け物を見据える。狙うは一点。
どんなにそれが異常で馬鹿みたいに強い化け物では、生物なら首の骨を折れば皆黙る。
化け物が進む。それに合わせてこちらも進む。音を立てずに、決して悟られないように。ふらふらに揺れ動く体を動かし、首を砕かんと近づく。
あと少しだ。歩幅を大きくする。相手は化け物でも、油断している。あと少しだ。
化け物とアンナの距離が残り数歩まで縮まる。そして、アンナは飛び込んだ。
化け物の首を絞めんとして。化け物の命を狩らんとして。そして、気づいた。
――袋?
化け物の頭に袋がいくつかぶら下がっている。緑色で構成された袋はまるでアンナが奇襲することを感づいていたかのように、その蓋を開けてアンナが飛び込んでくるのを今か今かと待っていた。
既にアンナは跳んでしまっている。当然、避けられるわけがない。そのままアンナは、何かの液体で満たされた袋の中に入った。
また、化け物の声が聞こえた。液体がアンナの体に触れる。異音がアンナの体から出る。なんなのか、これは。その疑問を解消できないまま、袋は閉じられ、唯一差し込んでいた光も消え去った。
◇袋井魔梨華
所属:元・魔王塾(非公式の暴力集団サークル。あまりに暴れん坊だったため破門された)
外見年齢:10代後半
身体能力:非常に高い
危険度:非常に高い
魔法:『頭にいろんな魔法の花を咲かせるよ』
説明:読んで字のごとく、頭に自由自在に様々な魔法の花を咲かせることが出来る。(はな○っぱをイメージすると分かりやすい)
頭から咲かせる魔法の花は様々な効果を及ぼし、武器にするなり盾にするなり、戦闘に関して臨機応変な対応をすることが出来る。
同時に、戦闘以外にそこから採れた野菜や植物は、基本毒物の利かない魔法少女にも摂取すれば肉体的にも精神的にも影響を及ぼすことが出来る。
ただし、魔法の花を咲かせるには事前に魔法の種を飲み込んでおく必要があり、その魔法の種も外部から逐一入手しなければいけない。
現在は袋井魔梨華の変身前である『袋井真理子』が研究、開発をして魔法の種を生み出している。また、一度咲かせた花が枯れた際にも魔法の種が手に入るため、魔法の種の再利用は可能である。
しかし、あくまで植物であるため、育てる植物に適した環境に遠ければ遠いほど育ちづらく、育ってもすぐに枯れる(すぐに成長させる荒業もあるが、当然すぐに枯れる)
本人の肉体も植物に近い構造をしているため、三半規管をめちゃくちゃにされようが、全身をずたずたにされようが死には至らず、『日光』『土』『水』などがあれば治りが早くなる。
《必殺技について》
今回出てきた作品の必殺技について解説します。「☆」マークがついているものはオリジナル必殺技です。
ちなみにこの必殺技の名乗りは魔王塾生だけです、魔法少女全員があのような個性的な技を叫ぶわけではありませんので、ご了承を<(_ _)>
『奇妙な果実(ストレンジフルーツ)』
モチーフ植物:不明
説明 :巨大な蔓を複数本生やして周りの敵に叩きつける技。
太さは20㎝。長さは10m。叩きつけるだけではなく、締め上げて振り回すことも可能。
☆『飽く亡き悪食袋(キャプチャーイーター)』
モチーフ植物:ウツボカズラ
説明 :人一人を丸々と飲み込める魔法のウツボカズラを生やす技。
本人の意思で自由に中身を酸で埋めることが出来、成人男性ほどの大きさのものなら何でも入る。
また、一度捕らえられた場合は魔梨華が解放するか、内部から強い攻撃を加えるしか出る方法はない。
ウツボカズラの数は全部で7つ。
戦術として
・対象を咥えてそれを砲丸投げのようにブンブンと振り回して攻撃につなげる。
・拘束した敵を魔法の酸で溶かす(溶かした分、生き物なら栄養を吸収できる)
・魔法の酸の濃度制御
などがある。