ようこそ先生、呪われた地へ…   作:nr/成

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clue.14 一匙の灯りに拐されて

トウモロコシ畑を抜けて、崩れかかった桟橋を渡る。

周囲は水没した様子で水面には建物の一角が顔を覗かせ辺りには水草や蓮が浮かび、

荒廃していながらも不思議と綺麗と思わせる神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 

「こ、これも……異形の、影響?」

"……やるせないね"

「あっ、ここは関係ないよー」

 

マナと私はえっ。と目を丸くする。

 

「ルイシアン地区は多湿なんだけど一部地盤が緩くてさ

 ここは3校時代に、地震が起きて地面が液状化……今じゃ立派な湿原」

"そ、そうなんだ……"

 

見当外れな事に顔が熱くなる、マナを見ると帽子に隠れた顔が赤くなっていた。

水辺のひんやりとした空気が気持ちいなぁ……

 

「ここの蓮根美味しいのにねー、今は食べれない―」

「水と泥の栄養が高いからなぁ、水辺にウォーターデビルがいるから採取も面倒

 諦めてニィナ」

 

ありし日を語りながらサヨコとニィナは先を歩く、ボロボロの桟橋はギィギィ……と危なげに軋みながらも私達を目的地まで導いてくれる。

 

「先生、マナ、見えてきた」

 

サヨコが指をさす先には瀟洒な造りの教会。

鐘を含めた櫓の一部が木々の間から荘厳さを覗かせていた。

 

 

 

教会に近づくにつれて建物も植物も少なく視界が拓けていった

同様に異形もこちらを見つけやすくなり襲ってくるのをサヨコとニィナが槍とナックルダスターで淡々と処理していく。

 

「マナちゃん、どうー?」

 

教会にたどり着いた私達は、正面扉の前で最後の確認を行う。

 

「はい……この中に、光が……見えます」

"周辺には異形は見えないね。アロナにも中の様子は分からないみたい"

「了解、準備が出来たら突入する。いい?」

「そのまえにー」

 

サヨコの確認に、ニィナは待ったをかける。

 

「マナちゃん……見えてるー?」

「え……?あ、あの……」

"マナ、ここに来るときもずっと目を気にしていたよね。

もし君の体に、なにかが起きてるなら無理をさせることはできない"

 

マナは少し俯くと深呼吸をして自身に起きていることを話した。

 

「そ、その……暗視を使ってないのに、見えるんです。闇の中が……」

「それって、セイブルの時の?」

 

マナは頷いた。

 

「今は大丈夫です……多分、呼ばれているんだと、思います……日記のクシロと

 ううん、クシロに……呼ばれてる」

 

片目を抑えながら、そう答えるマナに私は目を合わせて尋ねた。

 

"マナ、いま私たちは見えているかい?"

「はい……」

"うん、よかった。絶対に無理はしないでね"

「憂いは全部話した?それじゃ、行くよ」

 

改めて私とマナは頷く。

サヨコは扉に手をかけ、ゆっくりと力を入れる……が、扉は何かに引っかかる音を上げるのみで

うんともすんとも言わなかった。

 

「え?」

「サヨー、カギ閉めたの忘れてたー?」

「いや、ここはずっと開いてたはず……ニィナ裏口を見てきて」

 

サヨコの指示に従いニィナは裏口へ向かったが少しして、開かなかった―。と言いながら戻ってきた。

 

「ど、どうしますか……?」

"他に入り口はあるの?"

「あぁ、あるよ。そこが駄目だったら扉か窓でも壊そうか……」

 

サヨコに案内され教会の外周を回ると外壁に沿うようにひっそりと地下へ続く階段が、手招きをしているように大口を開けていた。

 

階段を下りた先は薄暗く埃っぽい地下室、ひんやりとした空気が体を包む中、サヨコを先頭に礼拝堂までの階段を目指す。

 

「い、異形は……見えませんね……」

「上のターゲットだけだね……こんな暗いとこで襲われるよりはマシか」

 

見つからないように音も光も最小限にして進む。それにしても随分と立派な地下室だ。

ライトを周囲に照らしてみると、埃や布で見えにくいが大型で金属っぽい樽の様な物も見える。

 

"ここって貯蔵庫だったりする?"

「先生、突然だねー。えっと、ここはねー」

「大方その通りだよ。避難所みたいな扱いでもあったからいざとなったらって事で……」

 

ニィナの言葉にサヨコが被せるように答える、ちらっと見えた視線は釘を刺してるように鋭い気がした。わざわざ被せて答えることなのかな?と不思議に思いながら暗い室内を進むと、礼拝堂に繋がる階段に辿り着いた。

 

「さて、ここから先にターゲットがいる」

「扉も動くのは確認済みー」

「だ、大丈夫です……!」

"うん、準備は出来てるよ"

 

お互い一度目を合わせると、ゆっくりと扉を開けて礼拝堂に私達は入り込む。

 

埃や煤が目立つが、長方形の広々とした空間に薄汚れたステンドグラスから淡い光が差し込んでいる。荒れていても神聖な雰囲気を未だ醸し出している空間に不規則で不釣り合いに有刺鉄線が撒かれていた

正面扉の対岸、祭壇には大柄な成人男性程の人影が忙しなく首を動かしながら佇んでいた。

 

「スクラップビークかー……」

 

ニィナが呟いた瞬間、ペストマスクの様な頭部を持つ異形スクラップビークは雄たけびを上げるかの如く体を仰け反らせると背部のバックパックから手斧を取り出しこちらに向かってくる。

私はシッテムの箱を起動させた。

 

"サヨコは前に!ニィナはその後ろ、マナは2人のフォローをお願い!"

「了解」

「おっけー」

「は……はい!」

 

手斧を振りかぶり向かってくるスクラップビークをサヨコとニィナはライフルで迎え撃ち、がら空きの体に銃弾が撃ち込まれた

嫌がるようにスクラップビークは腕を振りながら向きを変え柱の陰に隠れていく。

暗視で柱の向こう側を見透かしながら、サヨコとニィナは挟み撃ちをしようと両側から柱の後ろを伺う。

 

サヨコが姿を捉えた瞬間スクラップビークは手斧を投げ不意打ちを狙う、サヨコは倒れこむように転がりながら回避するがライフルを取り落としてしまう。

背後からもニィナがスクラップビークに狙いを付ける。充分な選択のはずだった……

 

「がら空……って、おっとー!?」

 

ニィナは横から伸びてきた爪にすぐさま反応しライフルを手元に引くようにして体を半回転させて回避する。

 

"サヨコ!ニィナ!異形の反応が室内に出てる!"

「嘘!?」

「えー!」

 

ニィナを襲ったのは突如現れた装甲兵でよたよたと走りながらニィナに向かう

効果が薄いと分かりながらもライフルで足を撃ち抜き装甲兵の速度を落とすと即座に、ニィナは狙いをスクラップビークに変えサヨコの援護に入る。

マナは鈍くなった隙を逃さず装甲の隙間に弾丸を通し装甲兵を倒すが、その直後に今度は歩兵が柱の影から姿を現すのと先生がそれの出現を伝えるのはほぼ同時だった。

 

「どうなってるの!?ターゲットがいる室内に異形は出ないはず!」

「わかんないー、対処するしかないよー」

 

ニィナがスクラップビークの注意を引いている間にサヨコはライフルを回収し距離をとるが、床に撒かれた有刺鉄線といつのまにか現れる異形に足を取られ思うように退がれない。

 

『先生、後ろです!』

"うわっと……!"

 

背後から振りかぶる歩兵の攻撃をすんでのとこで回避した先生に、もう一体の歩兵が襲い掛かろうとするのをマナのリボルバーがくいとめる。

 

「せ、先生……大丈夫ですか!」

"大丈夫、マナ危ない!"

 

マナの頭を庇うように抑えつけるとその上を手斧が通り過ぎた。

スクラップビークが手薄になったこちらを狙うが異形を振り切ったサヨコが文字通り横槍を入れて、再度注意を自身に向ける。

 

「先生ー、一度立て直すー?」

"駄目だ、扉に有刺鉄線が撒かれてる!"

「開かなかったのはそういうことね……!」

 

槍を振るって装甲兵ひるませると、片手に構えたライフルで先生とマナに向かう歩兵を撃つ

近づく異形にたいし足払い、ライフルのストックで殴りつけニィナはどうにかサヨコとマナのカバーに入る隙を作りだすがそこをスクラップビークの投擲が邪魔をする

リボルバーを抜いたニィナは片手というのを物ともしない早撃ちを披露し飛んできた斧と周囲の異形を撃ち落とした。

 

「サヨー、これってー!」

「分かってる、いつもと違う!入れ知恵されてる!?」

"2人とも、ひとまずこっちに!"

 

異形を倒すのも程ほどに合流を優先するサヨコとマナ。2人のカバーにマナが入るが手数が足りない

ここに来て、マナ達3人の装填が安易ではない銃を使っている弊害が出てしまっていた。

 

「先生、これで扉を破壊する!」

 

サヨコは槍の穂先を正面扉に向けるが、瞬間手斧が飛んできてすぐさま穂先を翻し斧を叩き落とす

いつのまにか正面の扉を陣取るようにスクラップビークが立っていた。

 

"サヨコ!"

 

一瞬の気を取られたサヨコに歩兵の魔の手が迫るのを、先生は咄嗟に懐からこぼれ落ちたガラス瓶を拾い歩兵に投げつけた。

頭部に命中した歩兵はよろめき、マナの弾丸が歩兵を貫く、サヨコは異形達の間にボルトを撃ちこむとタイミングを見計らって飛び出した。

ボルトは炸薬し撒かれた有刺鉄線ごと異形を片付けるがそれでも形成はよくならない。

 

「チッ、弾がキツイかも」

「サヨは槍があるでしょー」

「わ、私はまだ……大丈夫です!」

 

マナはスピードローダーを使いすぐさま再装填するが装甲兵が歩兵を守るように前に出ていて数を考慮してもリボルバー程度では話にはならない。

 

じりじりと追い詰められる先生達……状況を打破するには、サヨコのボルトが有用と先生は考えるがスクラップビークがいる限り逃走経路を有刺鉄線で奪われる

全員の心に最悪の焦燥感が生まれ始めていた。

 

スクラップビークが新たに取り出した手斧を振りかぶる瞬間、ステンドグラスがけたたましい音を奏でた

汚れと陽に染みた鋭角の結晶はそれでも、広く差し込んだ光を豊かに反射して礼拝堂内に降り注ぐ

1つの影と共に───

 

"リコ……"

 

異形と先生の間には、ルイスパリッシュ観光協会会長『周藤リコ』が色彩の破片と共に静かに降雨した。




資料:観光協会

周藤(すどう) リコ
ルイスパリッシュ観光協会の協会長
本人曰くお飾り会長とのこと
迷い込んだ先生とマナを歓迎し力を貸す。

使用銃器は、日本刀と

【挿絵表示】

ライフル弾仕様のレ・マット・リボルバー

【挿絵表示】


※画像は下地にしたゲームのスクリーンショットです。
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