「ぼく達が見える光は、青い揺らめきなんだよ。」
青い光…マナは炎の様な光と言っていた
それを聞いて、私は赤やオレンジと言った
明るい色を想像していたが、リコの言うことが本当なら
マナとリコ達では見えているものが違うのだろう。
"どうして見えてるものが違うのかっていうのは?"
「見当もつかないねぇ、そもそも「暗視」事態も不可思議なモノ…
それ以上の事は分かってないよぉ…」
「唯一言えるのは「暗視」に必要なのは
この地で育った葡萄、この地で湧いた水、
そして…この地で伝えられた言葉、それだけだよぉ。」
彼女達にも原因は不明らしい。
私はもう一つの疑問を投げる。
彼女達がどうして、ここに残っているのか…
"君たちはどうして廃校となったこの学園に?"
「それは、理由を知ってて聞いているんだよねぇ?
だとしたら少し…意地悪じゃないのかい?」
"うん、調べさせてもらったよ。
連邦生徒会の報告では災害により荒廃が進行
学園の維持が困難になり、土地ごと封鎖されているって。"
「まぁ、そんなとこだねぇ…
災害ね…公にはそう記録されてるんだねぇ。」
"本当の原因は昨日私とマナを襲った…"
「そう、突如としてこの地を覆った闇から這い出るモノたち
原因もなにもかも不明、ぼく達に仇なす事くらいかねぇ。」
詳細はこれだよぉ、と棚から分厚い資料を取り出した。
パラパラとページを捲ってみると、発生時期や習性、写真に考察
リコ曰く当時の3年生と共に数ヵ月で記録したと言っているが
そうとは思えないほど仔細に纏められており、昨日私とマナが出会った
異形、"歩兵"の情報も載っていた。
資料を閉じて、私は自分に言い聞かせるように、リコに宣言した。
"うん、状況は分かった。
私に私にどこまで、できるか分からないけど
「先生」として君たちの力になるよ。"
リコは目を丸くしたと思ったらすぐに表情を戻し私に忠告をする。
「とても嬉しい言葉だけどねぇ…
昨日ニィナにも言われたんじゃないのかい?
信じすぎるのもどうかとって…」
"そうだね、けど君たちの話を聞いて
先輩の、学園への想いを冒涜するような子達じゃないってのは
既に知っているよ。"
「……はぁ、なんというか…いつか後悔するよぉ、先生。」
手で顔を覆い呆れたようにリコはぼやく
稀にこのような反応を生徒達からもらうなと片隅で考えていると
リコは雰囲気を正して、私に問う。
「先生、知った通り、この学園は危険だよぉ…
それでも、あのお嬢さんに着いていくのかい?」
"もちろん。"
「だよねぇ…、先生、ひとつ約束してほしい
協会の外では絶対に我々から離れず、我々の指示に従うこと。
この学園はあなたにとって、危険すぎるからねぇ。」
射貫くような視線に、静かに強く頷く。
「そろそろ、お嬢さんの訓練も終わっているだろうねぇ。
気を付けてねぇ…先生。」
リコとの話し合いを終え、駅舎の表に出ると
疲れた表情をしたマナが出迎えてくれた。
「せ、先生…話は終わりまし…た?」
"そ、その前に大丈夫?マナ。"
「だ、大丈夫…です。」
「厳しいようだが、ここは広大だし危険だからな。
その体調のまま走って逃げるくらいは出来てもらわないと困る。」
「あはは…、けどサヨコちゃんの言うことには同意かな。
頑張って!マナちゃん!あーし達もサポートするから!」
サヨコの後ろからピョコっと飛び出した
綺麗なシルバーブロンドとそれに見合った溌剌な少女は
フレンドリーな様子でマナをフォローする。
"えっと君は…"
「ちゃんとした挨拶がまだだったね。
あーしは、山城リリ!
ルイスパリッシュ観光協会で鉄道復旧委員会をやってるよ。
ニィナが今日はお仕事だから、あーしが代わりに手伝うって事。」
"よろしく、リリ。"
「マナ、先生、準備はいいね…行くよ。」
資料:異形
闇から出づる人ならざる亡者たち
普段は、昼夜問わず学園内を彷徨い音に敏感、見つけると襲い掛かってくる。
倒しても倒しても何処からともなく現れており、調査を行った者たちは
ここはある意味、時間が止まった悪夢と称した。
この中でも、「ターゲット」 と呼ばれる大型の個体は
特定の建物内を占拠する形で現れ、倒すと神秘を有した純金や純銀のような
"証拠" を残すため、噂を聞きつけた怪しい勢力が学園内に侵入する理由にもなっており
学園閉鎖の原因にして、協会の悩みの種となっている。