ようこそ先生、呪われた地へ…   作:nr/成

6 / 16
clue.2と3のあいだ、マナがサヨコにつけられた訓練の話


interlude. ルイスパリッシュの歩き方

「200mの地点から撃って、6発中4発が胴体と体の端々…」

「残り2発が明後日の方…うん、及第点じゃない?サヨコちゃん。」

 

射的用の人形をサヨコともう一人、シルバーブロンドの髪を揺らすイマドキの少女

鉄道復旧委員会の山城リリが射撃跡を評価していた。

サヨコに連れてこられたマナは、駅舎から少し離れた射撃場にて

調整された銃器とこれから、学園内を探索するにあたって

2人から強化訓練を受けていた。

 

「あ…ありがとう…ございます。」

 

射撃だけとはいえ、普段から十全に扱えていたという訳では無い銃

ストックが付いて多少反動が楽になった感じがするが、

使用感がまるで違うかつての銃に四苦八苦しながらもマナは射撃を続けていた。

それに加え、音に釣られて異形達が忍び寄ってくるのを音や視界の端にうつる。

それらは待機してる協会員やサヨコとリリの2人が始末しているが

マナの精神を圧迫しているのには充分で、彼女は既にマラソンを完走したくらいの

疲労感を感じていた。

 

「次、とは言っても最後だけどね。」

「マナにはここから行った先の小屋まで、

 "1人"で、このシーリングスタンプを取ってきて貰う。」

 

サヨコはポケットから、木の柄が特徴的なスタンプを取り出し

マナに見せる。

 

「ひ、1人で…ですか…!?」

 

突然の申し出にマナは驚きながらも聞き返す。

サヨコは頷き、マナの顔は不安で曇る

弱音を吐きそうになるが、漸く掴めそうな友達の手掛かりの為

下唇を噛んで飲み込んだ。

帽子にに隠れた表情を察したリリはマナを励ます。

 

「1人とは言っても、あーし達も監視してる

 なにより、マナちゃんにも同じ闇を見る力があるよね。

 恐怖を忘れないで、あーし達も同じだから。」

 

マナの手を握りながら、リリはゆっくりとマナに言い聞かせる。

一言一句飲み込みながらマナは頷いた。

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

荒れる息を手で抑えながら、木々の間を隠れ歩く

先程までいた射撃場とは違い、まばらに異形が彷徨う

ルイスパリッシュの静かな地を1人で立つ不安がマナを襲う。

うるさいほどに内側から聞こえてくる自身の息に気を取られている内に

パキりと枝を踏み抜いた音が響いた。

 

「!?」

 

ぐるん!とゆっくりながら歩兵の首が木の裏に隠れているマナを追う。

マナは暗視を使い音を立てないように、近づいてくる歩兵から距離を取るが

彼女は目の前に気を取られているばかりに背後の気配に気が付かなかった。

 

「えっ……!?」

 

寸でのところで転がり回避すると、マナの背後から新たな歩兵が現れた。

整わない態勢のまま、マナは銃を構える。

ほぼ至近距離と言っても差し支えない距離

銃弾は歩兵を貫くが、その音は別な異形を連れてくる。

マナは強行突破と言わんばかりに目的地の小屋に向かって走り始めた。

 

小枝や葉を踏みつける音を鳴らし、

何処からともなく飛び出してくる異形を振り切って

小屋へ滑り込み、すぐさま扉を閉め鍵をかけた。

 

「はぁ…はぁ…あ、あとは……スタンプ…を……」

 

肩で息をしながら振り替えると

人2人分ほどの小さな小屋のなかには

鋭利な爪と膨れた外皮を持った異形、装甲兵が佇んでいた。

 

「あ、開かない……!?」

 

小屋から出ようと扉に手をかけるが

先程、自信が鍵をかけた事実は突然の事態により

頭から抜け落ちていた。

 

爪を振りかぶりながら近づいてくる装甲兵に

銃弾を浴びせるが、固い外皮が威力を減衰させる。

 

振り下ろされる爪を避けると

装甲兵の爪は深々とドアに突き刺さった。

マナはその隙に狭い部屋内を見渡し

机の引き出しにしまってあったスタンプを見つけ出す。

 

「あ、あった…あとは戻れば……」

 

ドアから爪を引き抜いた

装甲兵と目があった、同時に穴が空いたドアの外から

歩兵のうめき声が聞こえてくる。

 

「い…いちかばちか……」

 

マナは再び爪を振り上げた装甲兵に距離を取りつつ発砲する。

シリンダーが回り残った弾丸は装甲兵を飛び越え

扉の鍵を破壊した。

 

「次は…」

 

情けなくも這うように移動し壊れかけの扉を背に

装甲兵と対峙する…腰に下げた散弾銃に手を添えて。

 

眼前と扉一枚隔てた迫りくる脅威を耳で感じとる。

神経が一斉に逆立った瞬間、マナは体を横に転がす。

装甲兵の爪が振り下ろされると同時に

扉が開き2体の歩兵がなだれ込む。

鋭利な爪はもつれ込んだ歩兵にからめとられ

両者は一瞬動きを止めた。

 

転がり、地に伏せた態勢のマナは

これなら反動を気にせず確実に狙えると確信し

オブジェと化した異形に引き金を引いた。

 

視界の先には散弾により

バラバラに砕け散った異形と破壊された扉。

マナは暗視を使い周囲の確認を行うといくつかの

小さな光がこちらに向いていることがわかった。

 

マナは一応、銃弾の装填が0なのを確かめると

兎もかくやと言わんばかりに全力疾走を決め込んだ。

 

 

 

「マナちゃん、よく頑張ったね!

 陰からいつでも助けられるように見てたよ。」

「うん、ちゃんと持ってきてる。

 お疲れ、マナ。」

「………」

 

目的のスタンプをサヨコに渡し、見事訓練を完遂したマナだが

異形に会わないように一目散にサヨコ達のもとまで走った。

そのおかげか、労いを受け取れないほどに憔悴しているが

サヨコとリリは些細なことと言わんばかりに身支度を整える。

 

「そろそろ会長と先生も話が終わるころかな。」

「ちょうどよかったね、マナちゃん。

 あーし達も行こっか。」

 

差し出されたリリの手を取るマナだが

一休みさせてくれませんか?と目で訴えるも

サヨコとリリは何も言わず、マナは顔を青くしたまま

2人に手を引かれて駅舎まで戻っって行った。

 

 

"そ、その前に大丈夫?マナ。"

「だ、大丈夫…です。」

 

先生にはしっかりと心配された。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。