「イドラ、手鏡だ。ドラグ…2人を頼む。」
『…あぁ、任せろ。』
「頼みましたよロゥジー、レッドさん。」
水浴び騒動のあった翌日…ドラグレッダーたちはルルグアット卿の屋敷の前へといた。そして、昨日の作戦通り、浅垣灯悟とロゥジー・ミストが中へと入っていく。また、ドラグレッダー、イドラ・アーヴォルン、テルティナ王女の2人+1頭はその場で報告を待つ。
「本当に大丈夫かしら?」
『…問題ない。レッドが多少ミスをしようともロゥジーがフォローしてくれるだろう。』
「あらドラグさん、ロゥジーのこと信頼しているのですね。」
『…奴は常に俺へと殺意を向けている、十分な理由だ。』
「いや、何で自分を殺そうとしてる奴を信頼出来るのよ?」
『ククク…食う時の反応が楽しみだからな。』
「答える気が無いのは分かったわ。」
ボカーン
『戦闘が始まったようだ……なっ!?』
屋敷に爆発が起こる。灯悟がキズナレッドへと変身したかと思いきや…違っていた。屋敷の中から血を流した灯悟が飛ばされており…水路へと落ちて流され始めた。
『トウゴ!!』
「ドラグさん!?」
「テルティナ様はここでお待ちください!」
「イドラさんまで!?」
ドラグレッダーとイドラが水路へと飛び降りた。水流が速いためかテルティナのいた所からかなり離れたものの何とか追い付き、ドラグレッダーは爪で掴んだ灯悟を背中に乗ったイドラへと渡して近くの岸へと降りる。
『何故だ!?何故こうなる!?初見こそあんな戦いとなったがあの使い魔はレッドにとってはそこまで強くないはずだ…イドラ!レッドはどうだ!』
「傷は魔法で治したけど…不味いわ。呼吸が止まっている。」
『何だと!?イドラ、俺はどうすればいい!?』
「人工呼吸をするから…10分…いえ、5分だけ…ミラーワールドに戻っていてくれるかしら。出来ればそれまでは私たちを見ないでほしい。」
『分かった…ならば、俺はテルティナの護衛に戻ろう。レッドが復帰したらすぐに戻って来い。』
「…えぇ。」
ドラグレッダーは水路からミラーワールドへと戻っていった。
………
一方、ロゥジーはテルティナも撤退を進言されるも1人でルルグアットを倒そうとしていた。前日に使い魔の動きを見ていたこともあり、聖剣の形態を使い分けつつ、使い魔を何度も倒していたものの…テルティナが狙われたため聖剣を捨て、自身の身体だけでテルティナを守る体勢となった。それは一方的に使い魔の攻撃を受けることを意味する。
「貴方単体は確かに強い…しかし、"守る戦い"は不馴れなようですね。私の心の秩序を乱した罪は重いですよ…勇者様。」
「テルティナ様…私が隙を作ります…その隙にどうかお逃げ…!?」
「大丈夫。」
テルティナはロゥジーの顔へと手を添える。
「私達には仲間がいるわ。」
『グォオオオ!!』ブンッ
屋敷の窓ガラスよりドラグレッダーが現れ、尻尾の一振で周りの使い魔を消し去った。
「クソ龍…!」
『レッドは無事だ…直ぐに戻ってくる。それまでは…俺に任せろ!』
「何だ…この龍の使い魔は!?だが…我が使い魔の方が強さは上だ!」
ドラグレッダーの姿に目を丸くするルルグアット。しかし、数で圧そうと次々に使い魔を召喚する。
『俺は使い魔じゃねぇ…C級の冒険者だ!』
屋敷中を自由自在に飛び回り、
「ドラグ!」
『レッド、戻ったか!早く変身しろ!』
「悪い…今は絆装プレートが無くて…」
『…なら、今回は俺が片付けてやる!イドラ、3人を頼む!』
「えぇ!結界を貼るから…しばらく任せるわ!月夜も鎖す、闇精の外套…オーバー・シェイド!」
ドーム状の黒い竜巻のバリアが4人を覆う。ドラグレッダーは再び、使い魔達を攻撃し始めた。その場を圧倒するドラグレッダー、倒されるごとに何十体も同時に召喚するルルグアット、2人の戦いはしばらく平行線であったものの…ここでドラグレッダーの身体に変化が起きる。身体から光の粒が溢れ始めたのだ。
『…ちっ。』
「どうやらここまでのようですね…此方はまだまだ…!?」
『この爆発音は…!』
「待たせたなドラグ!!俺とロゥジーの結んだ絆で悪を断つぜ!」
「勝手に結んだことにするな。」
結界のあったところから爆発音が聞こえ、振り向くと変身したキズナレッドと聖剣を持ったロゥジーの姿があった。
「ドラグレッダー!早くミラーワールドに戻りなさい!」
『すまない…倒せなかった。』
「時間を稼いでくれただけ十分だぜ!」
ドラグレッダーはイドラの持つ手鏡からミラーワールドへと戻る。
「…龍の次はまた貴方たちですか。今度こそ我が秩序で圧し潰して差し上げましょう。」
数十体の使い魔を召喚するルルグアット。しかし、背中を合わせた2人に死角はなく…召喚出来る使い魔の数は減っていく。
「馬鹿な!?我が領域でも死角が捕捉できないだと…なんなのだ!?その秩序のとれた連携は!?」
そのまま2人はルルグアットへと距離を詰め…
「「
「ぐぁあああ!!」
それぞれの攻撃をルルグアットへと叩き込んだ。
「俺達の絆の勝利だぜ!」
「結んでない。」
『勝利したな。』
「ドラグレッダーの美味しいとこどりな気もするけど…息はピッタリだったわね。」
「─!2人とも後ろ!」
「「え?」」
灯悟とロゥジーの2人が後ろを振り返るとボコボコと膨張するルルグアットの姿があった。
「しまった!魔力の種が宿主を取り込んで暴走を…!」
「ちょっ…どこまでデカくなる気よ!?」
「早く屋敷から脱出を!!」
イドラはキズナレッドに、テルティナはロゥジーに抱えられ屋敷の外へと出る。魔力の種に取り込まれたルルグアットは顔のような球体状態でどんどんと大きくなり…街1つ簡単に潰せる程の大きさで宙へと浮かぶ。
「なんなの…この大きさは!?」
驚く4人と1頭。さらには…
「な、なんだアレは!?」
「あんなのが落ちたら…私達の街が…!!」
屋敷から離れていたグロッサたちにも当然、その姿は見えていた。
「倒した敵が巨大化するなんて日常茶飯事だぜ!来い!キズナビースト!」
「あんたの日常は絶対におかしい…」
キズナレッドが呼び出した5体のキズナビーストが合体する。
『絆装合体!マキシマム・キズナカイザー!』
「な、なんだここは?」
「あらあら、貴方もコレに乗れたのね。」
「口ではツンツンしながらもしっかりと絆を感じていたのですね。」
『俺は最初から分かっていたがな。』
初めて入ったロゥジーに少し混乱はあったものの、そのままキズナレッドはキズナカイザーを動かし始めていた。
「それでレッド、アイツをどうするつもり?」
『あそこまでデカいとなると…ここで止めをさす訳にはいかないぞ?』
「あぁ!これ以上は街も人も傷付けさせはしない…だから、爆散させても大丈夫な所までコイツを連れていく!」
キズナカイザーは球体を掴み…更に上昇していった。
「く、雲を抜けた…!」
「大丈夫な所ってまさか…蒼穹の天蓋を抜けるつもりですか!?」
『なるほど、ここではそう言うのか…』
キズナカイザーはついに大気圏をも突き抜ける。そこに広がるは未知の空間。
『宇宙だな。ならばこれをしておかなれば……宇宙キター!!』
「ドラグレッダー!?てか宇宙って何!?」
「…雲の上に天使の国があるという言い伝えは嘘だったのですね…」
「何て景色だ…」
「ここなら遠慮なくコイツをぶっ倒せるぜ!」
未知の景色に見惚れる3人。それらをよそにキズナレッドはプレートを操縦桿にセットし…キズナカイザーの剣を呼び寄せた。
『グレート・絆ソード』
キズナカイザーが手に持っているのとは別に等身サイズの剣が操縦席に現れる。
「コレは…?」
「剣の扱いはお前に任せたぜロゥジー!」
「貴様に指図されるのは気に食わないが…この景色に免じて乗ってやろう。」
『ククク…』
そのままロゥジーはその剣を手に取り…目の前の球体へと向ける。キズナカイザーはロゥジーの動きと合わせるように…球体へと切りかかる。
「背中合わせの絆が防ぐ!虚空を断ち切る極光の剣!
剣の一撃により球体が両断され、眩い閃光と共に無数の破片が宇宙に散らばった。その様子はアカリナの街からも見えていた。