「地上に戻……あれ?何か変な音が聞こえないか?」
「…私も聞こえるわ。何かしら?」
「ん?そんなの聞こえないが?」
「私も聞こえませんですけど…どんな感じの音ですか?」
「何かこうキーン、キーン、みたいな…」
「かなり耳に残る音の筈ですけど……あれ?止んだ?」
「俺も聞こえなくなったぜ。何だったんだろ?」
『…』
魔力の種の暴走により、巨大化したルルグアット卿を倒したドラグレッダーたちはアカリナの街へと戻る。そこはルルグアットが倒されたことで少しだけ喧騒した雰囲気が出始めていた。
「まぁ、色々あったが結果オーライ万事解決だ!そうだよなドラグ!…あれ?ドラグ、どこだ?」
「流石のドラグレッダーも疲れたみたいね…ミラーワールドでゆっくり休ませてあげましょ。」
「いいえ、まだ終わりではありません。」
テルティナ王女の目線の先には倒れたルルグアットとその左手から見える暴走した魔力の種。
「一度暴走した魔力の種は宿主が倒れようと何度でも復活して魔獣化させます。」
「なっ…それなら早く止めねぇと!」
「コレを止める方法は2つ…宿主を絶命させるか、種を人体から根こそぎ引き抜くしかありません。」
「根こそぎって…そんなの一体どうすれば…」
『特権解放・
「ヴォオオオ!」
テルティナは自身の胸から"魔力の種"を発現させ…中から巨大な狼を召喚した。
「なんで…テルティナ様が魔力の種を…!?」
狼狽える浅垣灯悟とイドラ・アーヴォルンをよそに狼はルルグアットを丸飲みした。
「おい!何やって…えぇ!?魔力の種がなくなってる!?」
灯悟とイドラの理解が追い付かないうちに狼は口に入れたルルグアットを吐き出した。ルルグアットの左手は血を流しているものの…確かにあった筈の魔力の種がなくなっていたのだった。
「これが人体から魔力の種を取り除く方法…そして、私の役割です。」
「テルティナ…お前いったい…」
「ふふっ。この子に触れてみますか?」
「…おぉ!すげぇモフモフだぜ!」だきっ
「ヴォオ♪」
「レッドずるい!私も…えいっ!うわぁ!匂いも良いわね!」スーハー
「ヴォオオ♪」
「無礼極まるぞ貴様ら!!」
狼へと抱きつく灯悟とイドラ…ロゥジー・ミストが怒鳴るものの狼は嬉しそうに尻尾を振る。
「そう言わずにロゥジーも一緒に撫でたらどうです?」
「私はテルティナ様に撫でて頂きたいです。」
「…そう。」
お前の方が無礼じゃね?とツッコむ者は誰もいない。
「けどこれって特権魔法だろ?本当に危険は無いのか?」
「これは"誰も傷ついてほしくない"、"魔力の種の宿主を殺さずに救いたい"という願いから生まれた特権魔法です。それ以外の能力はなく、こんな見た目でですが戦闘力はそこらの野良犬以下です。」
「えぇ…」
そして狼はテルティナの持つ魔力の種へと帰っていった。
「確かにこれはテルティナ自身が出向かなきゃいけないよな。」
「でも…どうして今まで私達には話してくれなかったのですか?」
「不要な心配をさせたくなかったのと…この力はばら蒔いている者にとっては邪魔な存在です。なので知る人間を出来るだけ少なくしておきたかったのです。」
「なるほど…」
「という訳で…私の能力は決して漏らさないようにお願いします。」
『おー!』
「残念~♪もう手遅れだよ~ん♪」
「誰だ!…いや、なんだアレ!?」
突然、宙から謎のギザ歯な口が現れる。その口が開くと中から黒い何かが吐血の如く地上へと注がれて、そこから頭に4本の角、独立した6本の腕、不気味な仮面を着けた道化師のような男が姿を見せた。
「初めまして勇者ご一行。ボクは魔王族の『アブダビ』!偉大なる
「ま…魔王族!?」
「魔王族ってなんだ?」
魔王族…千年前に封印された魔王の復活を目論む人類の仇敵。魔王の胎より産み出されし"魔王の血族"のことである。
「なるほど…この世界の悪の組織ってことか。」
「ここ数百年姿を見せなかった化物が…どうしてこんな所に?」
「害獣駆除だよ!人が蒔いた"種"を食い荒らす悪~い害獣を狩りにきたのさ!」
「…"種"ですって?」
テルティナがアブダビの言葉に反応する。
「そうだよん♪魔力の種をばら蒔いているのはボクら魔王族さ!」
「そうか…お前達が!お前達があんな物をばら蒔いたせいで!どれだけの人が傷付いたと思っている!?」
「テルティナ様!?」
普段のおしとやかな様子でないテルティナに灯悟たちも目を丸くした。
「ハンッ…知らないよ。魔力の種が花開くことでボクらの愛しの
そのままアブダビは6本の腕でテルティナを攻撃しようとするも…灯悟とロゥジーにより返される。
「ありゃりゃ♪さっきの戦闘でもうヘロヘロかと思ってたのに…」
「仲間を守るためなら限界を超えて力が湧きあがる…」ペッターン
灯悟はキズナブレスに絆装プレートをセットし…
「それが絆の力だ!」ドカーン
キズナレッドへと変身した。
「ナルホド…キズナ、ねぇ。それじゃあ、こっちも愉快な仲間を呼ばせてもらおうかな♪」
再び宙に大量の口が現れ開く。そこから大量の魔獣が姿をみせた。
「これって…魔力の種の暴走態!?」
「しかも何て数なの…!」
「待って!アレってグロッサさん!?まさかコレ全部反抗軍の人達!?」
「あの人達に何をした!?」
「街を守る力を欲しがってたから与えただけさ~♪まぁ、あげたのは精製に失敗した直ぐに暴走しちゃう粗悪品だけどねぇ♪」
「なんてことを…」
「それだけじゃないよぉ♪」
アブダビは手から大量のカードを取り出し…空中へと投げた。
「まだあるというのか!?」
『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』『ADVENT』
「カモ~ン、ミラーモンスターズ♪」
「ミラーモンスターですって!?」
しーーん
宙に音声が鳴り響いたものの…何の変化も起きない。アブダビは少し動揺を見せる。
「なんだ?はったりか?」
「…馬鹿な!?どうなって…」
『俺が全員食ったからに決まってんだろ………けぷっ。』
そして、キズナレッドの手鏡からドラグレッダーが姿をみせた。
「まさかドラグお前…ずっとミラーワールドで戦っていたのか!?」
「…何だこのミラーモンスターは?ボクは知らないぞ…というかお前があの10体を倒したというのか!?」
『レッド、俺も行こう…奴に聞きたいことがある。』
「おう!お前は…絶対に許さねぇ!」
キズナレッドとドラグレッダーはアブダビへと迫る。
「ロゥジー!貴方もレッドさんとドラグさんに加勢してください!」
「嫌です!この状況でテルティナ様から離れることなど…」
「この状況だからです!奴は魔力の種をばら蒔く元凶!なんとしてもここで確実に仕留めるのです!」
「わ…わかりました。」
テルティナに気迫も圧されながらロゥジーもアブダビへと攻撃を始めた。
「流石にあのミラーモンスターまで相手にするのは不味いな…仕方ない。とっておきを1枚使うとしよう。」
『ADVENT』
アブダビはまたカードを1枚、宙へと投げる…そのカードから巨大な黄色のクモが姿を見せた。
『ゴハン…イッパイ…イタダキマス。』
クモは口から糸を吐き出し…魔力の種で魔獣化した人間を1人捕らえて、そのまま自身の口まで引っ張り飲み込んだ。
『…ウマイ。』ゴクン
『なっ…まだいたのか!?』
「ドラグ!お前はアイツを頼む!これ以上は…誰も犠牲にさせるな!」
『…すぐに片付けよう。』
そのままドラグレッダーはクモのミラーモンスター…『ディスパイダー』へと狙い定めた。
『モット…ゴハン…』
『ふんっ!』ブンッ
『…イタイ。ダレダ!』ガチン
『硬い…今までかなりのエサを食べてきたな…さっきのまでの奴らとはまるで強さが違う。』
『オマエ…クウ!』
尻尾を叩きつけるドラグレッダーだったが…ディスパイダーの強硬な外殻により弾かれる。そして、ディスパイダーもドラグレッダーへと狙いを定めた。
『ホカノミラーモンスター…ミルノヒサシブリ…ドンナアジダ?』
『…食うことしか頭にないのかコイツは?はぁ!』ボッ
『オソイ。』さっ
今度は火の玉を放つも素早い動きで回避し…8本の爪を鳴らしながらドラグレッダーへと距離を詰める。空中へと飛ぶドラグレッダーだったが…そこにディスパイダーは糸を伸ばす。
『…ちっ。はぁ!』ボッ
『ヤッカイナホノオダ。』
しかし、ドラグレッダーの火の玉により相殺された。次にディスパイダーは街にある民家の屋根へと登り…ドラグレッダーへと飛び掛かった。
『ぬぅ!?』
『ツカマエタ。イタダキ…』
『舐めるな…ふんっ!』ざくっ
『ウガッ!?』
ディスパイダーはドラグレッダーに乗れたものの…伸びてきた背中のヒレが腹部へと刺さり怯み、そのまま地上へと落とされた。そして、そのままドラグレッダーは空中へと姿を消す。
『サテ…ジャマモノハキエタ。ゴハンニモドロウ。…ン?アノマドウシ…ウマソウダ。』
「曇天焦がす炎精の鉄拳!イフリート・ブロウ!」
ディスパイダーが目を付けたのは魔獣を攻撃しているイドラ。そのまま、気配と音を消し…糸を飛ばそうと狙いを定める。
『それは俺の獲物だ!』ブンッ
『ナッ!?』ガクッ
しかし、いつの間にか隣にいたドラグレッダーによる尻尾の一撃によりディスパイダーの左側にある4本の脚が全て切り落とされた。支えが無くなったにより、ディスパイダーの身体は左に傾き…
『…終わりだ!はっ、はっ…はぁあ!』ボボボッ
『グッ…アッ…ギャアァァアア!!』
ドカーン
そのままドラグレッダーの火の玉を3発食らい…爆散した。そして、爆発源から光の玉が宙へと浮かぶ。
『…すまない。』
ドラグレッダーは先程ディスパイダーに食べられた人間を思いながら…光の玉を捕食した。