決闘が終わった翌日…ドラグレッダーたちの魔力の種を回収するための旅が始まる。ドラグレッダー、浅垣灯悟、イドラ・アーヴォルンの3人は最後の準備をしていたのだ。といってもドラグレッダーがイドラへと渡す物があるだけなのだが。
『イドラよ。これは何処に置けばいい?』
「これって…薬草か?」
「正確には魔草ね。それも周りの植物の成長を大幅に早めるかなりの貴重品。魔導師でも無ければ存在すら知れもしない筈なのだけど…どうやって手に入れたの?D級やC級でそんなクエストは無いと思うけど…」
『依頼人が報酬とは別にくれた。俺もレッドも使い方が分からない物の場合は断っているが…イドラには世話になっているからな。何かの役に立てばと今回は貰った。』
「流石はドラグだぜ!」
「レッドはレッドでドラグレッダーに養われるってどうなのよ…」
「あははは………はい。」しゅん
一瞬にして灯悟の顔が沈む。自覚はあったようだ。
『気にするなレッド。これも非常食のお前を離さないための処置だ。先程のイドラへの土産もな。』
「はいはい、そう言うことにしておくわ…で、どんなクエストだったの?依頼人は誰?ランクは?」
目が¥に成ってるイドラがドラグレッダーへと話を聞く。
「あー、イドラ。ドラグが受注してるクエストなんだけど…」
『基本的に全てEランクになる。』
「Eランク!?じゃあ、私でも受けれるの!?」
『話は最後まで聞け。内容だが…失せ物の回収だ。』
「回収?なるほど…一般人が魔物から逃げる時に落としてしまった貴重品とかかしら?」
『その場合もあるが…大体はクエストをリタイアした冒険者からの依頼で武器の回収だ。普通に落ちている場合もあれば魔物に刺さっている場合もある。後者ならば倒して、引っこ抜いて回収しているな。さらに魔物を倒したことで依頼者が受注していた討伐クエストが俺の功績にもなる。』
「そりゃそうよね?」
『故に稀にだが同行を求める者もいた…功績が半々になるからだろう。その場合は魔物から無理やり引っこ抜き、依頼者と共に討伐だ。…殆どが俺1人で倒すことになったがな。』
「うわぁ…良いように利用されるわね。」
ドン引きな顔になるイドラ…ドラグレッダーは淡々と話を続けた。
『…依頼人は冒険者だけではない。その魔草をくれたのは商人だ。崖に落ちた馬車を回収しろとの内容だった。仕事道具に加え、大切な荷物が積んであったらしい。』
「崖に落ちた馬車って…それもEランクなの?」
『あぁ。失せ物の回収は全てEランク扱いとなる…故に宙に浮いている俺の適材適所という訳だ。』
「魔物に刺さってたり、崖下だったりと誰も受けたがらないってのもあるけど…ドラグのお陰で多くの人が助かってる、ってギルマスから聞いたぜ!…勿論その中には俺も含まれてます、はい。」
「私も帰ったら受けてみようかしら…」
『…受けるなら…覚悟するがいい。』
「ドラグ!?」
「…え?」
突然に声色を強くしたドラグレッダーにイドラは目を丸くする。灯悟も灯悟で先程とは違う顔で暗くなる。
『失せ物のクエストには稀にだが死体の回収もある。魔物に食われてバラバラになったモノもあれば炎により焼かれたモノ、毒や消化液により皮膚が爛れたモノ、食料としての保存のために晒すように巣や土に置かれたモノ、中には人間からの暴行を受けて亡くなっていたモノもあり、ミラーモンスターの俺ですらもこう………来るものがあった。故に受けようとする者は少ないのだろう。』
「…ドラグレッダー、貴方って本当に優しいのね。」
「本当にお前って奴は…」
『ふんっ!そうは言ったが別に依頼者の事情などどうでもいい。俺がそれを選んでいるのは同時に大量に受注出来るからだ…クエスト中であれば好きに魔物が食えるからな。』
と、ここまで話をしていたドラグレッダーに変化が起きる。身体から光の粒のようなものが発生し始めたのだ。
「ドラグレッダー!?身体が消えかけてるみたいけど…ずっと此方にいて大丈夫なの?」
「…ぬぅ!?話はここまでだ…その魔草は確かに渡したからな。レッド、鏡!」
「…おう。…また、後でな。」パカッ
ドラグレッダーはそのまま灯悟の手鏡からミラーワールドへと戻っていった。
………
「留守は頼んだわよポセイドン。」
「あの引きこもりのイドラお嬢様がまさか旅とは…」
ポセイドンに見送られ、4人と1頭は屋敷を後にした。
「結局、全然住むことなく出ていくことになったな…」
『まぁ、俺は基本的にミラーワールドにいるから関係ない話ではある。』
「お陰でポセイドンに去勢されずに済んだじゃない。」
「─!?」バッ
反射的にズボンの股間を抑える灯悟。
『去勢とは何だ?』
「あんまり食いついて欲しく無い話だけど…まぁ、いいわ。簡単に言うと人間の男が子孫を残すために必要な部位を身体から取り除くことよ。」
『…男?子孫?』
「あー、そこから分からない感じかしら?そういえばドラグレッダーの身体の構造って生物ですら無さそうなのよね。」
律儀に説明をするイドラだったが…相手が
『…すまぬ。ギルドで過ごしている間に人間のことを理解していたつもりだったが…』
「簡単だぜドラグ!胸があるのが女!無いのが男だ!」
『胸か…なるほど。』
ドラグレッダーは4人の胸を見て…
『イドラが女、後は男であっているか?』
「…」ブチッ
テルティナ王女の怒りを買った。
「ロゥジー…私、龍の串焼きが食べたくなってきましたわ。ちょっと、用意してもらえます?」
「承知しました。死ね、このクソ龍……ぐあぁぁぁ!!」バチン
そして、ロゥジー・ミストが指示に従いドラグレッダーに斬りかかるも…尻尾の一撃で近くの草木へと飛ばされたのだ。
『す…すまぬロゥジー…って聞こえないか。テルティナも…その……はっ!そうだ、テルティナよ!服を脱いでくれないか!そうすれば、ちゃんと胸が…』
「ドラグレッダー、あんたはしばらく黙ってなさい。…そしてレッド、貴方の説明が悪いわ。」
「ごめんなさい。」
「ドラグレッダー自身はかなりの理解力があるようだし…ゆっくり教えてあげるから今は考えないこと。いいわね?」
『…ぬぅ、分かった。』
「しかし、ロゥジー…遅いですね。」
『そ、そこまで強い力では無いからな!きっとすぐに戻ってくるからな!』
ロゥジーが戻るまで少し待つこととなった。
「そういえばドラグ、お前って男でいいんだよな?俺って言っているし。」
『前の主の影響だろう。』
「…主?」
『いつか話してやる。しかし…俺自身が分からぬ以上は男ということでよいだろう。イドラ、前に渡したサンプルで何か分かったことは無いだろうか?』
「あー、その件なんだけど…ドラグレッダーってミラーワールド以外の空間に暫くいたら消えちゃうのでしょ?」
『あぁ。先程見た通りだ…故にこうして何時でもレッドの手鏡に入れるように近くにいる。』
「…実はね、ドラグレッダーの爪と牙…私の目の前で砂のように消えちゃったの。だから…こっちにずっと保管出来ないことしか分からなかったわ。」
「そういえば先程『ドラグ様の身体の構造が生物じゃない』とか言っていましたね。」
「まぁ、舌と唾液が無い時点でそういう結論にはなりますけど…」
「ただいま戻りましたテルティナ様。」むすっ
不機嫌な顔でロゥジーが戻ってきた。慌ててドラグレッダーが話しかける。
『さっきはすまぬロゥジー。反射的に尻尾が出てしまってな…えーと、その…はっ!そろそろ俺はミラーワールドに戻らねばならぬ。もし俺に用があるなら何時でも呼ぶがいい。』
そういうとドラグレッダーは逃げるように灯悟の手鏡へと戻っていった。
「…えーと、ドラグは悪い奴ではないんだ。そこは分かってやってくれ!」
「…私にとってそんなことはどうでもいい。テルティナ様。」
「はいはい。では、目的地についてですが…」
テルティナが地図を広げ、目的地について説明をし、アカリナの街に行くことが決まる。その後、灯悟とロゥジーのひと悶着があり、イドラは内心に不安を抱えながらも…4人+1頭の魔力の種回収の旅が始まった。