仕事の話が一区切りすると、自然と話題は各自の近況に移った。
平和、休息の時期が長かったものの最近では、また多忙になり始めており、連絡が途絶えがちな所も多いのだ。
「そっか。ヴィヴィオ、調子がいいんだ」
「うん、中等部になって背もまた少し伸びたしね」
ヴィヴィオ、今はなのはが正式に引き取って、高町ヴィヴィオ。
聖王のゆりかご事件を通して、保護した少女で今は健全に魔法戦競技に励んでいた。
ライバルに恵まれて、今では全国級の選手にまで到達している。
「ミウラの所にも顔出さんとなぁ、八神家道場も休止が続きそうやし……」
はやてはそんな事をぼやく。
指揮官職を辞した凪の時節に始めた、民間の魔法戦道場。
部下でもあり家族でもある、ヴィータとザフィーラがいれば回せるかと思ったが、やはり多忙の時期になると続けるにも限界があったようだ。
「ナカジマ三佐の所では、ほらヴァイゼンの子、トーマを引き取る話があったんやけど少しの間、お流れになるらしいわ」
「あれ、何か問題があったかな」
「やっぱり元のご家族の事とか、心の整理が必要なんやろうね」
「……そっか。そうだよね」
法的処理には目を通していたらしく、首を傾げるフェイトにはやてが捕捉する。
フェイト自身、当人も元の家族とは死別し、ハラオウン家に引き取られた経緯もあって、ある種の共感も込めて頷いていた。
その話を聞いて、なのはは思い出していた。というのもトーマからの連想だったが。
ちょうど同じ年頃の少年が関わる事件に遭遇したのだ。
「そういえば、万が一だけど関係があるかも知れないから共有するね。数日前に廃棄都市区画で介入部隊が通称『ブラスリッター』と交戦したんだけど……」
「ブラスリッターといえば小規模の武装密売組織、だね。たぶん世間的には以前のクラナガン大規模テロ未遂が有名だと思うけど」
フェイトは記憶を頼りに詳細を語る。フットワークが軽く、戦力規模からして優先順位は高くないものの管理局の追跡を逃れ続けている。
ただ、それ以上に印象が強いのが、その組織を率いる少年の事だった。
自然となのはとフェイトの視線が、はやてに集まっていた。
「あー、三人だと面識あるのは私だけやね。ニアミスは多かったらしいけど」
はやては少し困った様子で、頬の辺りを指でなぞった。
ブラウ・クラレンス――管理局のデータベースにはなく、本名かも定かではないが。
彼は偽りの身分を得て、ミッドチルダで活動していた時期がある。
「管理外世界からの留学生として潜伏。大規模テロの未遂犯やけど要求もメリットも不明のまま、ミッドチルダから引き上げた……」
ちょうど中学から高校時代のなのはや、はやてに近い立場を装った訳だ。
ブラウは短期の交流と活動を経て、そして小さくない傷痕を残して去っていった。
「色々と聞いてはいるんだけど、実際の所、どういう子だったの?」
「あくまで潜伏してた頃の印象やけど……あまり積極的じゃないのに自然と場を纏めてる子やったね。羨ましいぐらいには指揮官適性があるわ。今思えば、素人じゃなかったし、上手く騙された事になるんやけど」
はやては肩をすくめた。彼には自然体での人望や説得力、そういうものが備わっていた。
彼女自身、自分の部隊を持つという夢を追っていただけあって、単なる適性の域にない天性を見出した気がしていた。
彼の将来にある種の期待を寄せなかった、といえば嘘になる。
「みんなから聞いた印象だけど、全部が全部ウソだった訳じゃないと思う」
はやての複雑な表情を見て、フェイトは寄り添うように囁いた。
気休めではなく、完全な嘘で人間関係は築けない。そう思うのだ。
犯罪者ではある。法に携わる人間として、そこは譲ってはならない。
だが、過去の経験から犯罪者というだけ、という物の見方はしたくなかった。
「うん。ミッドで築いた関係が更生の切っ掛けになってくれるといいんだけど。それに……人の為になる才能があるのに悪用は良くないって教えてあげないと!」
なのはが教官らしい気迫を漲らせて、拳を軽く握りしめると。
そっと、フェイトとはやてが視線を交わしていた。
あ、とっ捕まえて教導するモードに入ってる、と。
実際、教導官としては管理局が用意している好待遇とは裏腹に、喉から手が出るほど欲しい才能が犯罪方面に流れてる現状に、それなりに思う所があるのだが。
いつもの癖が出た、ぐらいの扱いも増えてきた気がする。
「なんか私の時だけ、対応がしょっぱい……ヴィータちゃんもそんな感じだし!」
「みんな学生や下積み時代に、熱血なノリは使い果たしとるからなぁ。スバルとティアナも特務六課では、こんな感じかもしれへんよ?」
「え、ええー!? それはなんか、凄く寂しいよ!?」
「それは大丈夫じゃないかな……」
本気でショックを受けていそうな、なのはにフェイトは苦笑していた。
だいぶ話が逸れた。
とにかく、なのはがもたらした情報は決して軽視できないものだった。
「たしかに、このタイミングでまたミッドチルダで活動していた……というのは気になるね。さすがにミッドに戻ってくるのはリスキーな話だし」
「偶然じゃない、って事?」
「現時点では分からないけど、調べてみる価値はあるよ。過去のテロ未遂だって目的が不明なんだから、何か繋がりがあるかも知れない」
すぐに切り替えて真面目なやり取りを始めた、なのはとフェイト。
それを、はやては一歩退いて見守っていた。
忘れもしない機動六課の時代。
かつての自分たちも、そして地上本部を統括していたレジアス中将も、しがらみと制約を受けて自分達だけで全てを救わなければならない、という間違いを犯していた。
あるいは、それは時空管理局自体が積み重ねてきた失敗で、それが聖王のゆりかご事件の惨事に繋がっていたのかも知れない。
きっと牛歩でも手を取り合う事が正しい道だ。そして様々な経験と関係を経て、自分たちの繋がりも今度は単なる身内の域を越えつつある。
また予言が覆せないという可能性を頭に入れつつも。
「今度こそ、乗り越えんとね」
改めて、部隊の長として背負うものを自覚して、はやては決意を新たにしていた。
ブラウと原作キャラの関係はトーマ方式、身内ではないにせよ少し関係があったやつ。
オリ主ガチャ、指揮官系後輩ピックアップで外れを引いたのだ……