魔法戦記の戦記もの【リリカルなのは】   作:ヤドリ

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グレンデル一家1

 次元港。次元航行艇を迎える、いわばミッドチルダの玄関口にあたる。

 一般の施設としては最上位のセキュリティを誇るが、身分証もヴァンデイン・コーポレーションの圧力でリベルタに発行させた本物で、所持品も合法であれば通過の難度はさほど高くはなかった。

 

 ガラス張りが目立つ開放感のある施設で、雑踏に紛れながらブラウは所感を述べていた。

 

「技術偏重……かな。運用が杜撰か、そもそも人手不足ならこうなる」

「我々としてはありがたい話ですが」

 

 長身でミッドチルダでは、あまり見かけない黒い肌を持つマケランはかなり衆目を浴びてはいたのだが、それが職務質問に繋がる様子もない。

 次元港を出てしまえば、次は用意された自動車に迎えられ出発する。

 

「自動運転ですか。手筈を整えたのはハーディス・ヴァンデインですが……」

「まずは活動の体裁を整える。おそらく、民間警備会社としてクライアントに会う形を取るんじゃないか?」

 

 さすがに準備もなく首都クラナガンに向かえば、管理局の反応は不可避だろう。

 そこで一度は地方都市に向かい、そこで自分たちの息が掛かった有力議員と顔を合わせる手はずとなっている……というのがブラウの想定だったが。

 

 実際に自動運転システムに運ばれた先は、郊外の廃屋だった。

 ブラウとマケランは視線だけで警戒を共有すると、動かなくなった自動車から降りて、廃屋の入口へと向かっていく。

 

「私は外で警戒を」

「いらない。ミッドに残してきた手駒(・・)がある」

 

 ブラウはそのままマケランを伴う形で、廃屋に足を踏み入れ、周囲を確認した。

 外観こそ荒れていたが、内装は最低限、客人を迎える形とはなっている。

 

 そして、一室の中心には球形のドローンが一つ浮遊していた。

 

「それで、ヴァンデイン。こんな所に呼び出した理由は?」

 

 ブラウは切り出した。さすがに音声通話機能は備えているだろう。

 想定通り、一瞬だけ間をおいて、どこか稚気のある青年の声が屋内に響いた。

 

『一言でいうなら顔合わせさ。ブラスリッターは半ば潜伏、半ば分散し逃走中だろう? 現地で使える手駒が入用だと思わないか?』

「殺ししか能がない奴は却って邪魔だ」

 

 ハーディスの提案にブラウは即答する。

 彼が秘密裏に研究を進めるエクリプス・ウィルスの性質は端的にいえば、人体の兵器化と重度の殺人衝動だ。

 当たり前だが、衝動的に殺人事件を起こされては隠密活動に支障がでる。

 

 だが、ハーディスは返答を予想していたかのように笑いを滲ませて続けた。

 

『もちろん、そこは配慮させてもらった。そろそろ到着するだろう』

 

 その瞬間、廃屋の建材を貫かれ無数の穴が穿たれた。

 同じ数だけ質量弾が屋内を直進し、その場全ての者に殺意の雨を見舞っていた。

 

 非武装の人間を殺傷するには十分な威力を伴う弾丸は調度品、椅子や机、さりげなく飾られた花瓶などを粉々に粉砕していく。

 

『少々、痛めつけても良いと言い含めてある。なに彼らなりの歓迎だ。楽しむといい』

 

 その声は破壊音の最中でも明瞭に響いていた。

 元より退場するつもりか、ハーディスと通じていたドローンも撃たれ、その機能を失う。

 後に残ったのは金属の残骸だけだった。

 

「覚えてろよ、あの野郎」

「チンピラみたいな物言いをしないように」

 

 思わず舌打ちするブラウを、マケランはなだめた。

 銃弾の雨の中で、いかなる防御によるものかブラウとマケランは無傷。

 それでもデバイスを取り出し、防護服を身に纏う。

 

 向こうも、最初の乱射で終わるとは思っていないだろう。

 必ず第二波が来る。幸い、廃屋に開いた穴から射手の方向は推測できた。

 

 しかし、その推測の裏をかくように射撃の影響で弱った廃屋の壁を蹴破り、金髪をショートにした少女が突風を巻き起こして猛進してきた。

 

「壁抜きから、白兵戦か……!」

 

 上手いやり方だが、それ以上にハーディスから与えられた情報が活きている。

 すでに先手は打たれていた。主導権はそうそう奪い返せない。 

 

「――首筋×2!」

 

 ノコギリのような形状の刃が、獲物に喰らい付くように伸びた。

 

 ブラウは一歩だけ退き、未知の手段で再び防御。

 マケランも即座に、シールドを張り――しかし、一瞬でシールドごと両断され、咄嗟にナックルダスター型のデバイスで防御。

 体格では勝っていたが、勢いで押される。

 

「……っ!」

「そいつ、EC(エクリプス)感染者だ。普通の魔法は分が悪いぞ!」

 

 ブラウは警告しつつ、フォローに入ろうとするが。

 またしても、壁越しから魔力弾が襲い掛かった。サイズの割に威力が重く、瞬く間に廃屋の壁が粉砕されていく。

 

「また、新手か。派手な連中だ」

 

 最初の質量弾の射手は、高台を陣取っている。有利位置からあえて突撃してくる事はないだろう。消去法で新手という訳だ。

 

「カカッ! 真打ち登場って訳だ」

 

 粉塵に塗れて現れたのが、銀髪でバンダナのチンピラめいた男だった。

 シャツの胸元にはデカデカと髑髏マークがプリントされている。

 

 バンダナの男は笑いながら短銃剣型のディバイダ―を振り回し、無差別、全方位に魔力弾をばら撒いている。

 景気づけ、あるいは無思慮な乱射に見えたが、ブラウの防御陣に引っかかり、いくつかは弾かれていた。おそらく防御の性質を確認している、らしい。

 

「俺様はグレンデル一家の(ヘッド)、カート・グレンデル! 自慢じゃねえェが他人の下に付けるような性格はしてなくてなァ!」

「本当に自慢じゃないな」

 

 ブラウは真顔で応じると、目を鋭くして品定めを始めた。

 なんでヴァンデインは、こんなやつを選出したんだ。と言いたくなるが、壊し屋でもなく扱いやすい手駒という条件は案外、厳しいものなのかも知れない。

 

 実際、立ち回りは悪くない。むしろ上手い。

 どうも頭が悪く見える点も、故意に演じている節がありそうだった。

 

「どちらが上に相応しいか、コイツで白黒つけようじゃねえか!」

 

 ブラウの分析を知ってか知らずか、カート・グレンデルは短銃剣で軽く肩を叩きながら、好戦的な笑みを浮かべていた。

 

 チンピラの抗争か、と思う一方で悪いやり方ではない。

 異なる集団を連合させるのは本来、困難極まる事だ。

 最初に少々、腕っぷしを比べる程度で纏まるなら、ありがたい話だ。

 

「乗った。そういうのは嫌いじゃない」

「おい、こっちは二人……ですよ!」

「マケラン、腹をくくれ。どうせ使えるか試す必要はある」

 

 快諾するブラウに、マケランは慌てた様子で若干、地を出していた。

 




やっぱり原作が手元にないとエミュるのキツいなぁと思って、電書買ったけど、やっぱ出番自体が少ないな、ってなった人たち。
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