千年無双の夢の続き   作:うろ底のトースター

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(ブルアカは)初投稿です。
にわかです許して下さい。
推しは富田勢源です。


エロジジイと夢の中で

銃が嫌いだった。

 

敵に狙いを定めて、撃つ。それだけ。何が楽しい?違うだろ、武器ってのは。違うだろ、戦いってのは。

 

辺りを見回す。皆銃を持って歩いている。

 

仮に今、私が手にしている銃を他の生徒に向けて撃つとする。一部は逃げ、一部は応戦し、一部はその様を囲んで眺めるだろう。

 

仮に今、私がそこらの鉄パイプを引きちぎり、生徒に向けて振るうとする。

 

一部は逃げ、一部は怪訝な目を向け、一部は私を狂人と叫ぶだろう。

 

おかしいだろ。発砲と殴打で何が違う。むしろ銃なんぞより余程健全ではないだろうか。

 

そんなことはない?どっちもどっち?ならあんたも敵だよ。

 

試したことあるのかって?ないよ。だって風紀委員会面倒臭いんだもん。しかも公共物引きちぎったら弁償させられそうじゃん。

 

ともかく、私は銃が嫌いで、銃社会全盛のキヴォトスが大嫌いだ。

 

私はとにかく斬り合いたい、殴り合いたい。近接武器を持って戦いたい。じゃないと楽しくない。

 

そんなことを思いながら、私はゲヘナ学園の中等部へ進学した。そして、兼ねてより企んでいた作戦を開始する。即ち、剣道部の設立である。

 

うん、頓挫した。当たり前だ。銃弾食らって痛いで済ませる私達が、わざわざ鎧を着てちと硬い程度の竹刀を打ち合う、皆からすれば何が楽しいんだって感じだろう。てか言われた。

 

私はキレた、それはもうキレた。早めの思春期を迎えていたということもあり、反骨精神全開で一つの結論を導き出す。

 

そうだ、近接武器で銃に勝てるくらい強くなろう。そしたら銃弱くね?ってなって皆ちゃんと武器を握ってくれるはずだ。

 

有り体にいえば馬鹿だった。だったが下手にセンスがあった。

 

とりあえず買ってしまった竹刀を持ってゲヘナ中を走り回り、いわゆる不良やらヘルメット団やらを片っ端からぶっ飛ばした。なんか温泉温泉うるさい奴らもぶっ飛ばした。市街地を掘るなよ。

 

そして半年が過ぎた。

 

飽きた。

 

飽きてしまった。復讐のため襲ってくる奴は増えたし、一部私並の馬鹿が竹刀を持って襲ってきたけど、如何せん弱すぎる。マトモな戦いを蟻に期待するようなもんだった。

 

つまらない。あーつまらない。

 

いっそ、風紀委員会に喧嘩でも売ろうか。もしくは気に食わないトリニティの羽根付きに喧嘩売ろうか。

 

そんな、ある種の自棄に陥っていた頃、変な夢を見ることになる。

 

あの、剣聖だの武神だのって名乗るエロジジイに会ったんだ。

 

 

 


 

 

 

これは()()()()()()()ではない。

 

時は西暦一六〇〇年。

 

()()()()()()()()()を果たしてから十年が経過していた。

 

死期を察した信長は、次代の将軍を決めんとしていた。息子に託すか?臣下に譲るか?決を取るか?

 

曰く、それら全てつまらぬ(ゴミクズ)と。

 

魔王は欲した。血肉飛び交う決戦を、阿鼻叫喚の地獄を。故に天下は、日ノ本一の武芸者を連れてきた者に譲らん。

 

即ち、代理国獲合戦”テンカイチ”。

 

かくして歴史は我々の知る道を大きく逸れ、名だたる強者達の勝ち抜き(トーナメント)戦に委ねられることになる。

 

 

 

 

 

彼女は、そこにいた。誰も彼女に気付かず、彼女もまた誰にも触れられない。

 

歳は十二か十三程度だろうか。頭上に妙な輪をこさえ、よく使い込まれた竹刀を握っている。その表情に焦りはなく、むしろ歳不相応の落ち着きが見えた。

 

彼女は、名を”上泉イセ”という。数百年程先の未来、キヴォトスという場所で生まれた彼女は、この光景を夢として見ていた。

 

景色が歪み、切り替わる。

 

瞬間、イセは酷い寒気に襲われた。唐突に気温が下がったわけではない。

 

辺りを見渡せば、見るからに殺しを経験してきたであろう武芸者達が時を待っていた。

 

濃密な、殺気未満の戦意に、彼女は呑まれたのである。

 

彼女のいたキヴォトスは比較的平和な地だ。()ならまだしも、まだ表側の人間である彼女にとって、一線を超えている彼らの圧力は死を覚悟するほどに重い。

 

だが、そんなものはすぐにどうでもよくなった。

 

銃がない。誰も銃を持っていない。代わりに彼らが持っているのは、刀だ。先に見た通りなら、これから彼らは戦うことになる。殺し合うことになる。

 

()()()()使()()()()

 

感覚で分かる。彼らは銃を使わない。ところどころ丸腰の人もいるが、それでも銃は使わない。

 

だって私と同じ目をしているから。

 

イセは歓喜していた。見たい、見届けたい、彼らの戦いを。軋むほど竹刀を握り締めながら、彼女もまた、時を待つ。

 

そして───開戦の号令が響いた。

 

 

 

 

 

夢の終わりが近い。まだ終わっていないのに。もう目覚めが近い。

 

一戦ごとに変わる戦場。武芸者ごとに特色ある戦型。目を見張る激戦。何より、燃え盛るような彼らの命に、消えていく灯火に、信条に、執念に、耐え難いほどに焦がれている。

 

もっと見ていたい、あと少しでもいいから。

 

滲む視界の先、また一つ消えんとする命の更に向こうに、見覚えのある影見えた気がした。

 

そして、意識が落ちる。

 

 


 

 

「おほ、将来性たっぷりのイイチチ」

 

「───あ?」

 

目を覚ます。視界は白く、天井どころかそれすら見えない。おそらくはまだ夢の中なのだろう。ならあの戦いの先を見せてほしいと思ったが、どうやらそう上手くいかないらしい。

 

「ホホ、おはよう」

 

そうだ、私以外にもう一人いたんだったと、声が聞こえるほうを向く。そこにはヨボヨボの老人がいた。見覚えがある老人だ。

 

「か、上泉伊勢守信綱!?」

 

剣聖、或いは武神。テンカイチに出場した武芸者の一人だ。

 

「あ、しっとる?」

 

知ってるも何も、この老人が死んだところを見ている。壮絶な戦いの後に、寿命を迎えて息絶えたはずだ。

 

「なんで生きてだよ・・・ですか」

 

「チミ変な言葉遣いすんね」

 

「うっさい」

 

メンゴメンゴ、とふざけ倒した謝罪に少し腹が立った。

 

「ンー結論から言うなら、ワシ死んどるよ」

 

「じゃなんでここにいんすか」

 

「知らん」

 

「・・・まいいや」

 

どうせ夢だ。夢なんて基本よくわかんないものだし。夢の中で死んだはずの上泉伊勢守信綱が、また夢の中でできてもそういうもんだと納得するしかない。

 

「上泉イセ、13歳。我流」

 

夢ならやりたいことやってもいいよな。

 

「───ほうかほうか、ここはそういう場所か。まーだ延長させて(ボーナス)くれるのね」

 

気付けば伊勢守の手には、鞘に納まったままの刀が握れていて、私の竹刀も真剣に変わっていた。

 

恐怖も躊躇いもない。そんなもの、邪魔(いらない)

 

「あんたに果たし合いを申し込みたい」

 

「うん、わかってるじゃない」

 

意識より速く身体が動き出す。逆袈裟に真剣を振り上げ、即座に振り下ろし、下から突き上げ、水平切り、勢いそのままの体当たり、水平突き。できるだけ最小限の繋ぎに最高率の動き。短時間にできる限りの攻撃を詰め込んで伊勢守を追い詰めようとする。

 

奇妙な感覚だ。テンカイチの一片を見てから、自分の動きの理解度が跳ね上がっている。刀を振る度に精度が高まり、意識が研ぎ澄まされていく。

 

「すごいねチミ、とんでもない才能だよ」

 

けれど、目の前の妖怪ジジイにそんなものは効かない。春先の爽やかなそよ風と同じようなもの。分かってはいたけど当たらない。

 

「にしても、その歳でその揺れ・・・ホホ」

 

「どこ見てんだエロジジイ!」

 

渾身の縦振り、また手応えはない。伊勢守の刀はまだ鞘に納まったままだ。

 

───禁じ手。その世界において、強すぎた者に見られる、自らに課した縛り。伊勢守は、抜刀を禁じ手にしている。

 

「2人も将来有望な子に会えて、ワシ嬉しい」

 

「なら抜けよ刀」

 

「や〜だ」

 

「クソジジイめ」

 

やはり強い。このままじゃ()()勝負なんてできやしない。全てを引き出せ。あの国獲合戦で見た全てを。

 

「構えを変えたね」

 

身体を半身に弓を引くように刀を後ろめに置き峰にもう片方の手を添える。俗に、牙突と呼ばれる技の構えだ。

 

尤も、これは牙突ではない。

 

「───槍、それも長い。圧だけで幻視させられるとは」

 

”仁王”本多平八郎忠勝。死ぬそのときまで徳川最強の矛であり続けた、忠義の武芸者。彼の得物は、槍だった。

 

それを、私の身体で再現する。

 

「なかなかどうして、様になってるじゃない」

 

おいで、そう言われている気がした。

 

「───っハァ!!」

 

「お!?」

 

目算5mの距離が消える。さすがに見開いた伊勢守の額に、全霊の突きを打ち込んだ。

 

ドンッと、鈍い音がして。

 

「────ッッッ」

 

地面に叩き付けられたのは私だった。肺から空気が絞り出され、一瞬呼吸ができなくなる。大きく開いた口からは悲鳴どころか少しも声が出ない。

 

こっちの速さを利用された。力の流れをくるりと変えられて、投げれた。いや、あれは投げですらない。なんせ伊勢守は、ちょんとこちらの刀を押しただけ。それだけで姿勢が崩され、背中から落ちたんだ。

 

剣聖、武神。あまりに遠い場所にいる伊勢守に、思わず奥歯を噛み締める。

 

「軌道が単純すぎたねぇ。じゃ、次を見せてみ」

 

「く、っそ・・・」

 

呼吸を落ち着かせて、再度槍の構えをとる。

 

「またそれ?」

 

「うっさい」

 

もとよりこれは、見様見真似のまだまだ未完成形。本家である仁王の足元にも及ばないお粗末な型。だから、完璧になるまで試行錯誤(トライアンドエラー)だ。

 

「はぁ!」

 

目算5mの距離が消える。冷静な伊勢守の眉間に切っ先を突き刺し───

 

「おお?」

 

───直前に角度修正、狙うは心臓。

 

「すごいけどまだまだあまっ!?」

 

停止。伊勢守の突き出した、未だ納まったままの刀を抑える。大本命は、首──!

 

「ざんねん」

 

視界がくるんと反転した。背中から落ちる。

 

痛みより先に混乱が私を襲った。わけが分からない。確かに伊勢守のカウンターを抑えることがてきたし、返す刃の速度も軌道も完璧だったはずだ。

 

なんで、転ばされた?いや投げられたのか?

 

「うーん一手目を抑えるのは良かったんだけどねえ。もしかして観てた?長光ちゃんとの戦い」

 

「・・・対手の力に自身の力を上乗せして返す技」

 

「せーかい」

 

戦いの最中は集中しすぎで気にしてなかったけど、まだ”門”も開いてないのにできんのかよそれ。いや、死に際に更に上に登ったのか。

 

「で、そんなワシが持ってる刀なんて掴んじゃったらねえ」

 

「そこ起点で投げるとかできんのかよ」

 

掴んだのが私なのに、掴まれた刀をそのまま()()()投げる。理解できないが、この妖怪ジジイならやれるという確信がある。

 

「で、まだやる?」

 

「当たり前じゃん。勝つまでやるよ」

 

この時間がいつまで続くか知らないけど、せめて”最奥”まで引き出させてやる。武神の全力、もう一遍拝んでやるんだ。

 

その思いで、私今一度柄を握りしめた。




イセは身体操作だけならキヴォトストップクラスですが、如何せん経験が浅い上に銃嫌い極めすぎて銃下手くそなので戦闘能力は中の上程度です。加えてちょっとおバカさんです。
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