時は流れ文化祭前日。備品の補填に緑谷が朝一番に行くということになったのだが…
「俺も行くぜ出久。」
「英堵くんも来てくれるの?嬉しいけれど…どうして?」
「…お前から明ちゃんの匂いがする。」
「えっ…」
実際はサポートグッズを受け取るぐらいの仲なのだが、英堵は何か誤解しているようだ。
翌朝、緑谷はあらぬ誤解を解くため英堵を連れて森に向かう。
「やはり居ましたね緑谷くん!!え、英堵さん!?」
「隈がでかわいい顔が台無しだよ、明ちゃん?」
「あ、その…文化祭終わったら36時間寝るので…
じゃなくてですね!緑谷さん!例のブツです!どうぞ!」
緑谷は発目からグローブ型のサポートグッズとマニュアルを受け取る。
「流石だね明ちゃん、今日はお互い頑張ろうね!」
「…!英堵さんも頑張ってください!それでは!」
一同は解散し、それぞれの目的地へ向かう。
「売っててよかったな出久。」
「結構時間かかっちゃったね…!急がないと…!」
「おっと…」
英堵と緑谷は背の高い男と小さな少女の二人組と出くわす。
「気を付けたまえよ。
ゴールドティップスインペリアルの余韻を楽しんでいたのだから。」
「あの家サ店なんだ…明ちゃんとのデートにいいかも…」
その発言に背の高い男が食いつく。
「君…分かる人間かね!?」
「当然ですよ、『宇宙一のヒーロー』としてね。」
「いい心がけじゃないか…」
「待って、英堵くん…ルーティンってやつですか?」
緑谷が何かに気付く。
「…なにをするつもりだ、『ジェントル・クリミナル』!!」
「…ああ、あの迷惑系配信者か!よく気が付いたな!」
「迷惑系配信者とは失礼な!」
ジェントルは外套を脱ぎながら高らかに自己紹介をする。
「私は救世たる義賊の紳士ジェントル・クリミナル!!
今回の企画は『雄英!!入ってみた!!』だ。」
「そんなことさせない!」
緑谷は飛び掛かるが、透明な何かに阻まれる。
「私の"個性"は『弾性』何にでも…たとえそれが空気だろうと弾性を付与できる!」
緑谷は空気に跳ね返され吹っ飛ぶ。
「出久!ふざけるなよお前!緊急変身、グリーンモード!そして『アンダースタンド』!」
これはグリーンモードでのファイティングスタイルである。
これをすると思考能力を高めながらの戦うことができるのだ。
弾性、逃亡ルート、空中…
「これだ!」
英堵は腕での跳躍でジェントルに近づく。
「逆立ちしながら戦うとは面白い!だがこれはどうかな!?
『ジェントリートランポリン!』」
ジェントルは咄嗟に弾性を持った空気を頭上に作る。
英堵はそのままの体勢で上に飛ばされる。
「さらば!!青春の煌きよ!!」
ジェントルは空中に飛び跳ね、逃げようとする。
「『デラウエアスマッシュエアフォース』!」
緑谷が突き出した拳から空気砲がジェントルを捉える。
「しかし、足止めにもならな」
「ユーキャントゴー、バッドピーポー!」
ブルーモードに変身した英堵のブルーライフルがジェントルを打ち落とす。
「なんということだ…ラブラバ…これは非常にまずい…」
「ジェントル!思い出したわ!西村英堵と緑谷出久よ!」
「死穢八斎會のMVPと自己犠牲の化身か…!ラブラバよ、出し惜しみはできない!」
「…!わかったわ!『愛してるわ、ジェントル』…」
その言葉を受けたジェントルの様子が変わる。
ラブラバの"個性"は『愛』。
「愛」を囁くことで最も愛する者一人だけを短時間パワーアップさせるのだ!
「暴力的解決は好みじゃないから…いつもカットしているんだ。」
異様な雰囲気に英堵と緑谷は思わずたじろぐ。
「…出久…戻って準備してろ。」
「何で!協力して戦ったほうが!」
「…俺の『新しいモード』は下手をすれば出久を巻き込みかねない…
大事な友達を巻き込みたくないんだ。それに…お前の方が早く帰れそうだしな。」
にっと笑う英堵をみて緑谷は頷く。
「…分かった。英堵くんを信じるよ!」
緑谷はフルカウルで雄英へと向かっていった。
「おやおや…一人で勝てると思っているのかい?」
「『正義は絶対勝つ』からな…」
「その正義は負けるだろう。なぜなら…私にも成し遂げるべき夢があるのでな。」
その言葉は英堵の逆鱗を貫いた。
「…馬鹿なことを言っちゃあいけない…
誰かに迷惑をかけて…小さな女の子の笑顔を奪ってまで成し遂げるべき事なんてない…
あるわけがないだろおおお!!!緊急変身、『ブレイクモード』!!!」
コールを受けた英堵の個性因子が活性化し、微粒子状に分解され拡散される。
そして英堵の体の表面に定着し英堵スーツとなるのだ!
「フェイスオン!」
英堵は死穢八斎會で見せた白いスーツに身を包む。
「無法な悪を迎え撃ち!恐怖の夜をぶち破る!夜明けの時が来た!」
「君も本気ということだな…」
「ナンセンス。俺はまだとっておきを残していますよ。」
「『ジェントリーサンドイッチ』!」
幾重にも重なった空気の層が英堵を襲う。
「『剛力拳 パワーフィスト』!」
英堵の左手が輝き、振り抜かれる。空気の層をぶち破った。
「なんだと…!?」
「…『竜巻拳 トルネードフィスト』!」
再び英堵の左手が輝き、振り抜かれる。竜巻が走る。
「きゃあ!」
ラブラバが吹き飛ばされる。持っていたカメラが落ちる。
「ラブラバ!!!」
ジェントルは飛ばされたラブラバを追いかけ抱きしめる。
「…!『光速拳 ライトニングフィスト』!」
英堵の体が強く輝く。
5秒後、英堵は二人の敗北した姿をカメラに収めていた。
「…次悪さしたらこの動画をネットに流す。いいな?」
英堵は彼らに背を向け、立ち去ろうとする。
「まて…!なぜそこまで私たちを侮辱する…!通報すればいいではないか…!」
その言葉に英堵はピクリと反応する。
「馬鹿野郎!そんなに汚名を残したくないならこうしてやる!
『破壊拳 ブレイクフィスト』!」
英堵の左手に白いオーラが纏われる。そして英堵はその拳を振り上げる。
「やめろ!彼女にひどいことをするな!」
「やめて!ジェントルにひどいことしないで!」
ジェントルとラブラバは互いを庇い合う。
そしてその拳は振り下ろされる。
「…これで俺とお前たちの記憶の中だけだ。」
カメラが粉々になった。
「…こいつが俺のとっておきだ。これ使うと1時間変身できなくなるんだ。
…げっ、もう50分か…帰りは全力で走らないと…」
緊急変身が解けた英堵はため息をつく。
「…それを使えば私などたやすく倒せただろう!」
ジェントルの言う通りで、何かが違えばもっと早い段階で
しかもカメラの代わりにジェントルが粉々になっていてもおかしくない。
英堵はジェントルに質問する。
「…なんでこんなバカげた企画を考えたんだ?」
「…有名になるため」
「違うだろ?その子のためじゃないのか?」
英堵はラブラバを指さす。
「守りたい人のため、愛する人のため無茶をする…
よくわかるよ。俺だってそうだからな。」
「…まさか君は…」
ジェントルは英堵の考えを悟った。
「俺があの子の笑顔を守りたいように…お前もその子の笑顔を守りたいんだろ?
もし俺が通報…ましてや破壊しちまったらその子は笑えなくなる。
誰かの笑顔を奪って誰かの笑顔を守っているようじゃ
『宇宙一のヒーロー』にはなれないからな。」
ジェントルは英堵の考えに感服し諦めたような笑みを浮かべる。
「…私も君のようなヒーローになりたかったよ。」
「いや、お前はとっくになってるよ。『その子のヒーロー』にな。」
ジェントルはハッとしラブラバの方を見る。
「…ラブラバ…」
「そうよジェントル…ジェントルは『私のヒーロー』なのよ!!!」
「…完敗だ。自首するよ。…ラブラバ、一からやり直そう。」
「もちろんよジェントル…!ジェントルと一緒なら何でもできるわ…!」
「自首するなら良い人を紹介するぜ。お前達の罪は重いだろうが…
お前達の愛をあの人なら分かってくれるさ。」
「…お願いするよ、西村英堵。」
「もしもし、来牙さん?自首したいっていう人がいるんだけど…」
悪を倒すだけがヒーローではない。
人を救ってヒーローになれるのだ。
戦え、西村英堵。超えろ、西村英堵。
Episode27
「いやー、どうしても急にゴッティッペルが飲みたくなってさ。」
「出久、あれできた?」
「明ちゃん!後で話があるんだけど!」
「エリちゃん、1+1は?」
次回、ラフィング・ガール 君のハートにターゲットロック!
自画自賛になりますが、この話の英堵がかっこよすぎて泣きました。
次回、お楽しみの文化祭回です。シリアスなしで笑顔になれる回にします。