「今年の演習試験も実戦を想定したものになる。今回は1対1の形式だが…
教員だけでなくプロヒーローの方々にも来てもらっている。心してかかれよ。」
2-A一同の前には名だたるプロヒーローが並んでいる。
早速英堵の試験相手が発表される。
「久しぶりだなァヘロス!私の両手両足を治してくれた礼をしてやるぜ!」
ラビットヒーローミルコである。
超常解放戦線との戦いや最終決戦で両手両足を義手義足にしたミルコだったが
英堵の救済拳によって修復され五体満足に戻っている。
なお、左耳が少し欠けているのは『戦った証は残してェ』というミルコの要望である。
「だと思ったよ…俺の明確な弱点だもんなあ…
『身体能力で上回ってくる異形系』…ライジングじゃ無効化できないんだよ…」
英堵のエイドモード・ライジングで無効化できる"個性"は発動型がほとんどで
異形型の身体から放たれる攻撃は無効化できないのである。
今回の演習試験も『己の課題にどう立ち向かうか』が焦点になる。
勝てば合格というわけでもなければ、負けたら不合格でもない。
会場を移し、英堵の林間合宿を賭けた試験が始まる。
「四の五の言ってたって始まらない!その胸、借りますよ!
緊急変身、『エイドモード』!」
コールを受けた英堵の個性因子が活性化し、微粒子状に分解され拡散される。
そして英堵の体の表面に定着し『エイド』スーツとなるのだ!
「フェイスオン!そして『ディープ・アンダースタンド』!」
これは進化した『アンダースタンド』である。
すべてのスーツの能力を得たエイドモードで行うことにより
思考能力を上げながらエスパー能力を使えるのである。
「おらあ!!!」
「マジかよ!?」
ミルコの強烈な蹴りが空を切る。少しでも遅れていたら英堵の顔に直撃していた。
「いい反応じゃねェか!重りを付けているとはいえ私の攻撃を避けるなんてよ!」
(こいつは心を読むんだよな?だったら『考えずに』攻撃すりゃあ読まれねえはずだ!)
「脳筋過ぎる…でも、それが最適解なんだよなあ、畜生!」
ミルコの戦闘経験はプロヒーローの中でもトップクラスである。
その経験から攻撃動作を思考を挟まずに直観的に繰り出すことができる。
心が読めない攻撃に英堵は悪態をつく。
「…だが、『見えた』。思考能力の上昇は情報処理能力の向上につなが」
「考えてる暇はねェぞ!」
ミルコの脚による連続攻撃を英堵は捌いていく。
「避けてばかりじゃ勝てねェ」
「『剛力拳 パワーフィスト』!」
英堵はミルコの蹴りを左手で掴み、右手で飛び上がる。
「マジか!?」
驚くミルコの右足を英堵は両手で掴む。
「『雷撃拳 エレクトロフィスト』!」
英堵はミルコに電撃を浴びせる。それと同時にミルコは左足で英堵の両手を振り払う。
解かれた両者は着地し、再び構える。
「ちィ…ちょっと痺れたぜヘロス…!」
(増強系の技もあるのか…こいつは聞いてなかったな…面白れェ!)
「『面白い』ですか…こっちはもう余裕ないって言うのに…!」
英堵とミルコの経験と身体能力の差が明白に出てきている。
「今度はお前が攻めて来いよヘロス!
1対1で守ってちゃァ、大勢相手に立ちまわれねェぞ!」
ミルコはかかってこいと言わんばかりに指で挑発している。
「ナンセンス。格上相手に勇み足をしたらそこでおしまいです。
『慎重すぎる』ぐらいでちょうどいいんですよ。」
英堵は冷静に挑発を躱していく。
さて、どうするか…ミルコさんの強みはその『脚』にある。
正直な話、『脚』を止めれば何とかなりそうだ。
でも、折るわけにはいかない。流石にやりすぎだからな。
俺の"個性"で足止めに使えるのは…『足止め』?
てめぇの"個性"は万能なんだ。
スタートと同時に轟が足元を凍らせる。轟が氷で固定…
「そうかこれだ!」
英堵は逆立ちを止め、ミルコに向かって指を差す。
「ミルコさん!そんなに言うなら…俺のとっておき受けてみてくださいよ!」
「敵はそう言ったら当ててくれると思うか!?当てて見せろよ!」
発言と同時にミルコは英堵に向かって突進する。
「『光速拳 ライジ」
「そいつの対策はこれだ!」
英堵の声を聞き、ミルコは高く跳ぶ。
「…なにィ!?」
英堵の身には何も起きていない。
「必殺技が有名なのはいいことだ!エイドマグナム!」
英堵は空中のミルコに対エネルギー弾を連射する。
「ちィ!小賢しいマネをするじゃねェか!」
ミルコは空中で両手を使いエネルギー弾を防ぐ。
「それでは俺のとっておきをどうぞ!『光速拳 ライトニングフィスト』!」
1秒後 ミルコが着地する。
2秒後 ミルコが着地した地面が氷に覆われる。
3秒後 ミルコの体が氷に覆われる。
4秒後 英堵はミルコの首を思い切り締め上げる。
5秒後 ミルコが耳で英堵の顔に触れる。
「それは…降参のタップということでよろしいですね…?」
「早く解け…正しい締め方を教えてやるから…!」
英堵はミルコに勝利した。
「…最後のアレは賭けでしたよ。ミルコさんなら聞き分けられるでしょうから。
でも、『聞いた瞬間に体が動く』ほど『本能』で動いていたんですね。」
英堵はミルコの身体能力と経験による本能を逆手に取ったのだ。
「まさか私が負けるなんてな…あー!チクショウ!
ヘロス!卒業後は私のサイドキックにならねェか!?
なったら毎日全力の私と戦えるぞ!」
「なりませんよ…俺ルミリオンの所に行くんですから…」
「こうなったら…おい、ヘロス。お前、男だからこういうの好きだろ?」
ミルコは巨大な胸を揺らす。英堵はそれを見てため息をつく。
「俺には明ちゃんがいます。色仕掛けもダメです。
そういうのは相棒にやってください。」
「ちッ…連れねェ奴だな…」
…ミルコが負けたことよりも悔しそうに見えたのは気のせいだろう。
Ex17
「明ちゃんがいなかったら誘いに乗ってた…危ねェ危ねェ…」
「英堵さんは私のものです!誰にもあげません!」
「おい、ブドウ球菌。血涙を流すんじゃねぇ。」
「オイラも見たかった…!ミルコのバニーおっぱい…!
こうなりゃヤケだ!次回の林間合宿で女湯を覗いてやる!」
次回、ディシプリン・キャンプ 君のハートにターゲットロック!
重り無しのミルコと戦ったら流石に英堵君も勝てません。
次回は温泉回の予定です。