平行世界の英堵が語る。
「明ちゃんがいなくなって…来牙さんがいなくなって…皆いなくなった。
そんな世界で生きていくのは…辛い。俺も死んで、皆に会いたい。」
大切なものを守れず、己以外のすべてを失い、生きていく。
心に受けるダメージは造像を絶するものだろう。死を選びたくなるもの無理はない。
「馬鹿野郎!パパとママが守ってくれた命を無駄にするんじゃない!
『諦めなければなんとかなる』!だから生きるんだ!」
本来の英堵が激怒する。
「…懐かしい言葉だな。だが…もうおそ」
「遅くなんかあるもんか!あんたは諦めないで俺の世界に来たじゃないか!
世界を救おうと、世界を守ろうとしようとしているじゃないか!」
本来の英堵の言葉に、平行世界の英堵が力なく笑う。
「守った後の話だ。俺達は間違いなく勝てるだろうさ。『正義は絶対勝つ』からな。
勝ったあと…もう何も残っていないだろう?だから生きていたって」
「『あんたが守った世界』が残っているだろう!
一度守ったものを無責任に見捨てるのがヒーローなのか!?」
ヒーローという言葉に平行世界の英堵が怒りを露にする。
「俺はもうヒーローじゃない!なにも守れなかったんだ!」
「いいや!あんたはヒーローだ!それも…『宇宙一のヒーロー』だ!」
『宇宙一のヒーロー』。本来の英堵が目指し、成しえてなお、目指すものである。
「何度失敗したって、何を失ったって…!守りたいと思ったものを守れたら…!
誰だって!何時だって!何回だって!『宇宙一のヒーロー』になれるんだ!」
『宇宙一のヒーロー』。平行世界の英堵が諦め、手放してなお、憧れるものでもある。
平行世界の英堵が涙を流す。
「…なあ…俺…またなれるかな…?『宇宙一のヒーロー』に…なれるかな!?」
その言葉に『宇宙一のヒーロー』がにっと笑って答える。
「なれるさ。でも、その前にやらなきゃいけないことがある…笑うんだ。」
本来の英堵がにっと笑って平行世界の英堵を諭す。
「泣き顔で人を助けるのもいいけど…やっぱ、笑顔で人を助けたいだろ?」
その言葉を聞いて平行世界の英堵が何かを察する。
「…そうだな…!『おまじない』があるもんな…!」
「「1+1は…にっ!」」
夜が明け、朝日が昇る。二人の英堵はベッドで目を覚ました。
「んー…よく寝た…良い抱き枕があるとこうも違うか…」
「…抱き枕?昨日寝た時にはそんなものなかったはずだが…」
寝起きの二人の英堵は、抱き着いている抱き枕を確認する。
人肌ほどに温かく、モチモチと柔らかな肌触りをしている。
見た目はペールオレンジで、ところどころに傷が付いている。
そして、まるで女性のような形をしていて、呼吸をしている。
「んー…美男二人に囲まれて寝るのも悪くないわね…」
「「うおおお!?抱き枕がしゃべったあああ!?」
「うるさいわね!あたしを抱き枕代わりにした責任は大きいわよ!
今すぐドーナツとアイスミルクを持ってきなさい!」
その正体は、外で寝ているはずの相心終であった。
朝食の為に5人が終の部屋に集う。
「すまない。簀巻きにしたぐらいでは駄目だったようだな…
今日はコンクリートに詰めて外で寝させるようにしよう。」
「新しいプレイね…ゾクゾクしちゃうわ…」
「色々と最低ですわ…平行世界がああなるのも納得ですわ…」
「深く考えない方がいいぜ、ヤオモモ。そういう存在なんだ、アレは。」
「敵に回したくないな。色々な意味を込めて。」
朝食が済んでしばらく経ち、ホークスが創と百姉さんを連れてきた。
「いやー…なんか大変そうっすね。俺は深く関わらないことにするっす。」
「み、皆さん…おはようございます…」
「おはようございます!今日も張り切っていきましょう!」
何故か創はゲッソリしていて、百姉さんはツヤツヤしていた。
「…これはお楽しみだったな…」
「卒業式ってそういう意味での卒業式か?」
「あら、あの二人はしょっちゅうしてるわよ?公安の取調室で。」
「ええ…私ながら信じられませんわ…」
何の事かは皆の想像にお任せしよう。
平行世界に転送されて24時間が経った。
もう一度転送できるようになった一同は準備をする。
「さて…まずは俺の世界のヤオモモを戻すべきだな。」
「お手数をお掛けして申し訳ありません…」
「大丈夫ですわ、私。もとはと言えば私達のせいなのですから。」
「今回は僕と百姉さんと西村さんと西村さんの世界の百姉さんですね。」
「…俺はこの女とまだ一緒にないといけないのか…」
「あら、昨日はあんなにノリノリでやっていたじゃない?今日も」
「終?」
「ごめんなさい…」
4人は平行世界を検索し、時間と座標を設定する。
「あの日の…体内時計とのずれが起こると面倒だから今の時刻がいいな。
座標は…まずは俺の家に戻るか。で、そこから各自行動で。」
4人は本来の英堵の世界に転送される。
本来の英堵の家では、美洲華とトガちゃんと芽楼ちゃんが遅起きな二人を説教していた。
「兄弟子、睡さん。気持ちは分かるが…ほどほどにしろよ?」
「「すみません…」」
「愛し合うのは大切です。でも、周りの人に迷惑をかけちゃダメです。」
「「ごもっともです…」」
「めー。」
「「反省しています…」」
しょんぼりする二人に発目がフォローを入れる。
「まあまあ!悪気がった訳ではないのですから!ここは良しとしましょう!」
「「ありがとうございます…」」
そんな中に4人は転送された。
「いやー…来牙さんもミッドナイト先生もそういう仲だからねえ…」
「西村さんは発目さんとの件がありますから、強く言ってはいけませんよ?」
「そう言われると…僕と百姉さんも強く言えないね。」
「うっ…そ、それは…そうですわね…」
一同は何があったのかを説明する。
「…なので俺はヤオモモを連れて雄英に行きます。明ちゃんも一緒に来てね。」
「そうですね!英堵さんにあらぬ疑いがかかってはいけません!説明します!」
「平行世界の説明はしないでくださいね、発目さん?ややこしくなりますから…」
英堵と発目とヤオモモが家を出ていく。
「僕と百姉さんは家で待機ですね。せっかくですから家事のお手伝いをしますよ。」
「ありがたいなあ…昼飯づくりを手伝ってくれるか?」
「百ちゃん、芽楼ちゃんにオモチャを作ってくれますか?」
「もー、もー。」
「もちろんですわ。どんなものがいいでしょうか?」
この様子を見て、来牙がミッドナイトの手を引く。
「…俺達も何か手伝いましょうか、睡さん。」
「えー…せっかくの休みだから、私はまだ来牙さんとイチャイチャしたいわ…」
ミッドナイトの思わぬ発言に来牙が動揺する。
「そうですよ。警察とヒーローの夫婦で、一緒の休日はとれないでしょうから…」
「そうですわ。迷惑をかけた分、今日は私たちが頑張りますわ。」
「それもそうだなあ…兄弟子、睡さん。腹減ったら適当に下りてきな。」
「ゆっくり愛し合ってください。ねー、芽楼ちゃん。」
「あーいー。」
一同もミッドナイトに賛同していて、来牙は引くに引けなくなった。
「…ありがとう、皆。それじゃあ、睡さん…行きましょう。」
「ええ、二人の愛の巣へ…今度は控えないわよ、来牙さん。」
夫婦が二階へ消えていった。
「…そういえばミッドナイト先生は18禁ヒーローでしたね。」
「そうです。睡さんはすごいです。もう、いろいろ激しいです。」
「そういう道具を作って渡すべきだったでしょうか…」
「意外だなあ…そっちの八百万はアケスケちゃんなんだな。」
「なー。」
(一部の人を除いて)平和なパートですね。