平行世界へ移動して数日、四人は情報を集めていた。
「鹿角の手下以外の敵はいない。鹿角が処刑したのだろうな。」
「AFOも敵連合もいないのはありがたいっすけど、本拠地を構えてるのはきびしいっすね…」
「そこに強い人がいる…僕たち四人で勝てるかなあ…」
「『秩序の三柱』に加えて黒騎士…でもこの黒騎士は見覚えがありますわ。」
創と百姉さんが黒騎士に関しての情報を提供する。
「『ありとあらゆる物を作り、ありとあらゆる事象を引き起こした』。
英堵さんの話に嘘がないとしたら…多分、僕だと思います。」
「『終さんを具現化した創さん』かと思われます。
平行世界から連れてきたのではないでしょうか。」
平行世界の英堵がいるのであれば、平行世界の創がいてもおかしくない。
鹿角が連れてきて、自身の目的の為に利用し、美洲華と真利名の死体を"想像"させた。
そして『絶対秩序制度』を施工させた。
状況証拠による推理だが、そこまでおかしな話ではない。
あまりの身勝手さに平行世界の英堵が怒りを露にする。
「そのために来牙さんが…!鹿角…!絶対に許さん…!」
三人も同じ思いを口にする。
「正義の形は人それぞれかもしれねえけど…やり方は間違っている…!」
「やって良いことと悪いことがある…!」
「必ず倒しましょう…!そして、この世界に平和をもたらしましょう…!」
「平和をもたらすね…それに関しては同感よ。」
改めて決意を固めた三人の下に、鹿角の手下の女性ががやってくる。
四人は戦闘態勢を取る。女性は八百万を見て驚いていた。
「平行世界にも八百万がいるのね…もう一回、心をぶち折ってあげるわ!」
女性が叫びながら、八百万に向けて突進する。
「…と言いたいところだけど、事情が事情なのよね…」
が、八百万の前で立ち止まる。
「あんた達、鹿角を倒したいでしょ?アタシに協力してくれない?」
女性の発言に一同は唖然としていた。
「アタシ、塩導基子(えんどうもとこ)。支配者やってるわ。
"個性"は『塩基』。バカの芦戸の塩基性バージョンだと思って。」
聞き覚えのある名前に、本来の英堵が反応した。
「バカの芦戸…もしかして、雄英の芦戸の事か!?」
塩導がうんざりした顔で説明する。
「そうよ。アタシは訳アリで雄英生から敵になったの。
で、支配者になったんだけど…鹿角のクズがアタシを攫ったのよ。」
創が何かを察したような顔で話しかける。
「もしかして…裏切るつもりですか?」
創の言葉に、塩導が溜息をつきながら反論する。
「裏切るほどあいつのことを信頼していないわ。
元の世界に戻るために嫌々従ってたのよ。」
八百万は不信をぬぐい切れず、質問をする。
「では…『秩序の三柱』と黒騎士について教えてくれますか?」
塩導は邪悪に微笑みながら、嬉しそうに語る。
「まずアタシ。恐怖担当で、処刑をやっているわ。
で、白キノコの『孤ヶ見響(こがみきょう)』。
ギャンブル狂で、命を賭けることに快感を覚える変態よ。
最後に金髪の『土口精(とぐちせい)』。マジの変態よ。
ただ…"個性"が無いのに滅茶苦茶強いわ。これが『秩序の三柱』よ。
黒騎士は…とんでもない"個性"なのは分かるけど、良く知らないわ。」
四人がが嫌そうな顔をしながら頷く。
「終だ…」「終さんだ…」「終姉さんだ…」「終さんですわ…」
「なによ、人がありがたい情報を言ってるのに『終わり』だなんて失礼ね?
とにかく、鹿角の本拠地に行って、あいつをぶちのめして、早く帰りたいのよ。」
この横暴さに、四人は終に通じる何かを感じ取った。
流石に手放しで信じる訳にはいかない、と平行世界の英堵が質問をする。
「お前が裏切らないっていう保証はどこにある?」
塩導は簡単に言ってのけた。
「あたしの"個性"を破壊してちょうだい。それならいいでしょ?」
その言葉を聞いて、平行世界の英堵がすぐに行動した。
「『壊拳 ブロークンフィスト』!」
殴られた塩導は機嫌よく笑っている。
「肌がピリピリしない…塩基でよく荒れるのよ。気分いいわ。」
「…これで大丈夫だ。身体能力だけだったら俺で制圧できる。」
平行世界の英堵がよしといった以上、三人は特に何も言わなかった。
一同は創と八百万が創った『自動で目的地に行く車』で、鹿角の本拠地へ向かう。
「敵になったと聞くが…なぜ敵になったんだ?」
「端的に言うと…トガちゃんを好きになったからよ。」
「トガちゃんは悪い奴から好かれるな…って、トガちゃんは元々敵か。」
「類は友を呼ぶってやつですかね…塩導さんなら終姉さんとも仲良くやれそうです。」
「塩導さんなら、終さんの手綱を握れそうですわね…」
なんだかんだと話していくうちに、鹿角の本拠地に着いた。
「さて…鹿角の鼻を、角を、プライドをぶち折ってやるわよ。」
「お前が仕切るな。道中は助かったがここからはそうもいかない。」
「最悪、人質として使いましょう。縛っておきますわ。」
「もう縛ってる…発想が敵だよ百姉さん…」
「というわけで…どうもーピザーラ神野店でーす。」
本来の英堵がドアを蹴破ると、眼帯をした白いマッシュヘアーの男、孤ヶ見がいた。
「うへっ、本当に来やがった…あァ、堪んねェな…!」
拳銃を構えながら、舌を出し、笑っていた。
「ただ殺すのはつまらねェ…一対一のギャンブルで決めようぜ!」
「アタシが行くわ。少なくとも…鹿角よりあんた達についていった方がよさそうだわ。」
「…八百万、解いてやれ。弾避けぐらいにはなるだろ。」
平行世界の英堵の指示で八百万が拘束を解く。
「おら、やってこい。勝ったら信用してやる。」
平行世界の英堵が左手で塩導の背中を押す。
「身内だろうと容赦はしねェ!"キル・オア・ダイ"!」
孤ヶ見が指を鳴らすと透明なドームが現れ、塩導と孤ヶ見を包んだ。
「俺の"個性"は俺と誰か一人を閉じ込めるドームを作れる!
そのドームはドーム内のどちらかが死ぬまで壊れない!」
「出れらる方を決める命を賭けたギャンブルするって訳ね…」
いやそうな顔をする塩導に対し、孤ヶ見が狂ったように笑う。
「うへへへ!その通りだ!そのギャンブルは単純!
自分に向けてか、相手に向けてか引き金を引く!相手に向けて聞いたら手番が変わる!
先に死んだ方の負けだ!弾はお前が込めていいが、俺が先手だ!
どうだ、分かりやすいだろ!」
「分かりやすいわね…顔がピリピリして、むかつくほどに…!」
塩導は底嫌そうな顔をしながら、拳銃と弾を受け取る。
「一応全員に見えないように弾を入れるわね…はい、良いわ。」
塩導は手早く孤ヶ見に銃を返した。
「…俺は拳銃に込められた弾が、重さである程度分かる。入ってて一発だな?」
「さあね?あなたの想像に任せるわ。早くやってちょうだい。」
孤ヶ見は二連続で自分の頭に向けて引き金を引いた。
「ひゃっはっはっはァ!これでこそ生を実感できる!死ねや!」
そして、塩導に向けて引き金を引いた。弾は出なかった。
「あー、惜しいなあ!ほらよ!1/3だぜ!」
孤ヶ見は塩導に拳銃を渡そうとした。
「いえ、0/3よ。でも、アタシの勝ちだわ。」
塩導は孤ヶ見の腹部を思い切り殴った。
「ぼ…ごえ…」
「『先に死んだ方が負け』…死に方に関しては何も言ってなかったわね。」
塩導が孤ヶ見の顔に触れる。孤ヶ見の顔が溶け、破裂する。
塩導は平行世界の英堵に話しかける。
「…これを見越していたの?」
「…通信機がついていることぐらいは考えた。そしたら敵も油断するだろうともな。」
「鹿角を倒したらアタシの世界に来ない?いい役職に座らせるわ。」
「俺は『宇宙一のヒーロー』でな。敵にはならん。」
一瞬の惨劇に、三人は呆然と立ち尽くすしかなかった。
秩序の三柱の二柱がなくなりましたね。
ちなみに、この孤ヶ見君は
『もし彼がヒロアカ世界にいたら』という平行世界の存在で、
本来の孤ヶ見君ではありません。