緊急変身 ヒーローアカデミア   作:神剣狩刃

8 / 79
Episode8 アフター・フェスティバル

「むにゃむにゃ…デカミドリ…はっ!?」

英堵はリカバリーガールの保健所で目を覚ました。

爆豪との戦いで負った傷もおよそ治っている。

「頑丈な体でよかったねえ…

あんな派手な試合だったのに火傷と多少骨にひびが入ったぐらいだよ。」

「リカバリーガール…ああ…俺負けたんですよね…」

 

英堵は試合を思い出す。

爆豪のハウザーインパクトを食らい、爆豪に歩み寄って拳を振るい

そこで意識を手放した。

 

「…こんなんじゃあ『宇宙一のヒーロー』に…」

「『宇宙一のヒーロー』になんかなれない、か?本当にそう思っているのか、エイ?」

カーテンの向こうから聞こえた聞き覚えのある渋い声に英堵は跳ね上がる。

「く、来牙さん!?」

「警備の休憩がてら来たんだ。いい試合だったぞ?」

 

「『宇宙一のヒーロー』になんかなれない、と言っていたな。」

来牙は英堵の言いかけた言葉を拾い上げる。

「…負けたからか?」

「…『宇宙一のヒーロー』なら負けないはずです。どんな相手にも…」

「そうか…それじゃあ、お前は一生『宇宙一のヒーロー』にはなれない。」

「えっ…」

来牙の思いもよらぬ言葉に英堵は言葉を失う。

 

「言い方が悪かったな…

『誰にも負けない』を『宇宙一のヒーロー』としたら

誰も『宇宙一のヒーロー』にはなれない、だな。」

「…どういうことですか?」

「簡単なことだ。どんなヒーローも一度や二度ぐらい負けたことがある。

あのオールマイトだって俺に負けたことがあるからな。」

「えっ…本当ですか?」

「もちろん、プライベートだったしあいつは遊び半分だった。

だが、何かの拍子で負ける事なんて…正直、プロの世界でも起きることだ。」

 

来牙のとんでもない話に英堵は目をぱちくりさせる。

「だから、『宇宙一のヒーロー』は『誰にも負けない』が条件ではないんだ。

もちろん、負けない方がいいけどな。」

「じゃあ、『宇宙一のヒーロー』って…何ですか…?」

「それはお前が決めることだ。俺が決めることじゃない。」

英堵は考える。『宇宙一のヒーロー』とは何かを。

そもそも自分を支えていたものは何か。大切な何かがあるはずだ。

 

『諦めなければなんとかなる!』『正義は絶対勝つ!』『宇宙一のヒーローになれる!』

 

「…何か思い出したな。」

「思い出しましたよ…来牙さん…!」

英堵の声は震え、目には涙を浮かべている。

「…ここには俺とリカバリーガールしかいない。思い切り泣いていいぞ。」

その言葉を皮切りに英堵は泣き声を上げる。

 

「来牙さん…悔しいよ…めちゃくちゃ悔しいよ!

鍛えたのに!頑張ったのに!負けたんだよ!」

「そうかそうか…よくわかるぞ。俺も修行中によく負けたからな。」

「でも、一番悔しいのは『宇宙一のヒーロー』を諦めかけたことだよ!

あんなに憧れてたのに!」

「大丈夫だ。自分の目標が何なのか分からなくなる…

俺にもあった。今でも悩むぐらいだ。」

英堵の涙を来牙は優しく受け止める。かつて自分がそうされたように。

 

ひとしきり泣いた英堵の顔は晴れやかになっていた。

「ふー…すっきりしました。すみません、来牙さん…情けない姿見せちゃって…」

「どんなヒーローも一度は泣いたはずだ。謝ることじゃない。

むしろ涙の味を知っているのはいいヒーローの証拠だ。」

「…しょっぱいです。」

「そういう意味ではないんだがな、はっはっは。」

涙を受け止めた来牙は立ち上がり、保健所を出ていく。

 

「…俺もこうしちゃいられないな!リカバリーガール!俺、試合見て来ます!」

「はいよ、ハリボーとペッツお食べ。」

英堵はリカバリーガールからもらったお菓子を口に放り込み観客席に向かう。

 

保健室を出た来牙は塚内警部に話しかける。

「元気にやってるか、塚内君。」

「これは…元気にやっていますよ、『来牙警視正』。」

「来牙だけでいい。堅苦しいのはどうも合わなくてな。」

 

弩木井来牙の階級は警視正で、塚内の警部より上の階級である。

しかし来牙は

 

「現場に出たら上も下も関係ない。皆等しく『警察官』だ。」

 

という信念を持つため階級を呼ばれるのは好きではないのだ。

「…この間の敵襲撃に関して聞きたいことがあるんだ。」

「あの怪人ならいまだに反応はありませんが…」

「いや…逮捕された敵の中に『剣を携えた銀色の半魚人』みたいな敵はいなかったか?」

「いえ、そのような敵はいませんでした。」

「そうか…個人的に追ってる敵でな。もしかしたらと思ったが…

すまないな、個人的な話に巻き込んでしまって。」

 

観客席に英堵が現れる。

「おせーぞ、英堵!もう決勝戦だぜ!?」

「夢の中で温泉に入っていたからさ。…轟君と爆豪君か…」

両者一歩も譲らない戦いだが、爆豪が何かを叫ぶ。

 

「てめぇも西村みたいに全力を出せよ!勝つつもりもねえなら俺の前に立つな!!!」

爆豪が全力でハウザーインパクトを叩き込み、轟の場外によって決着がつく。

納得がいかず轟に詰め寄る爆豪をミッドナイトが眠らせ試合が終わる。

雄英体育祭1年生の優勝者は爆豪勝己に決まった。

 

爆豪のせいであまり締まらない閉会式が終わり、体育祭の幕が下りた。

明日明後日は休校となり、プロの指名を待つ時間となる。

英堵は帰路に就く前、ある人物と話をする。

 

「…勝己!」

「おう…西村。」

死闘を繰り広げた爆豪勝己である。

「…次は俺が勝つからな、勝己!」

「…次も俺が勝つからな、西村。」

目を合わせ、互いに微笑む。あの戦いで二人の間に何かが芽生えたのだ。

そして英堵は爆豪に歩み寄る。

 

「おーい!発目ちゃん!」

「…あ?」

…どころか通り過ぎ、下校中の発目に呼び掛ける。

「おや!西村さん!どうかしましたか!」

「いいベイビーの案が思いついたんだ!連絡先交換しない!?」

「いいですよ!三人寄ればいい知恵が出ますからね!」

「ああ、コイツ(爆豪)はカウントしなくていいよ。

センスはいいけど個性が爆発だから。」

 

「…んだとてめぇ…!」

「そうでしたか!爆発物は危険ですからね!工房も火気厳禁ですし!」

「そうそう!二人で最高のベイビーを作ろう!発目ちゃん!」

「ざけんなクソウニ!ぶっ殺すぞ!」

「わあ!ボンバーアーチン君が怒った!殺されちゃう前に逃げよう発目ちゃん!」

「わあ!?に、西村さん!?」

英堵は発目を抱え走り出す。爆豪は目をつり上げ爆発音をさせながら追いかける。

これからの学園生活も楽しくなりそうだ。

 

戦え、西村英堵。超えろ、西村英堵。

 

Episode9

「ヒーロー名…そうだ!先生、逆立ちしてもいいですか!」

「今なんつった!?」

「地球人峰田実…ジャッジメント!」

「Mt.レディがいい!」

次回、ゲット・コードネーム 君のハートにターゲットロック!




爆豪君の間に友情、発目ちゃんとの間に、が生まれましたね。
あー…私も発目ちゃんとベイビーを作りたい。
誤字脱字を自動で指摘してくれるベイビーが欲しい。

ちなみに弩木井来牙の元ネタはデカレンジャーのドギー・クルーガーです。
まんまですね。CVも稲田徹さんのつもりです。
轟君のパパと同じですね。そのあたりのネタもいつかやりたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。