目指せ人生一発逆転~アラサーがネット小説書いてみた   作:kuroe113

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第14話雫とのやり取り

 ネット作家あるある

 同じ作品に連続で感想を書くのに抵抗感がある。

 

 

 

20XX年1月〇〇日

 AM4:00。

 

 ぐっすり眠っていたのに、アラームが叩き起こしに来る。

 昔は目覚まし時計を使っていたのだが、管理が面倒なのでスマホに変えた。

 効率化社会万歳!

 

 とはいえ、技術が進歩しようとも、人間、特に僕が進歩するわけではない。

 起き上がることなく、ベットの中でうとうと。

 アラーム解除、覚醒の流れを数度繰り返していく。

 

 どうにか覚醒すれば、浪費した時間を取り戻さんとネット小説の執筆に向かう。

 

 

 

AM7:00

「やはりというかなんというか」

 

 凡そ2時間。

 集中して作業をした後に、朝食に向かう。

 その後は、休憩兼リフレッシュの為に、動画を見ていた。

 

 見ている動画は千尋さんの物だ。

 

 可愛らしい声で、作品を罵倒している。

 酷評されたと思っていたが、実際は気を使っていたんだなと思う。

 

「罵倒のきれ、音量共に段違いだ」

 

 まぁ、編集する時間のあるなしも関係していると思うが……。

 

 そして、下にスクロールしていく。

 すっからかんな僕の作品とは違い、大量の感想が書かれていた。

 動画と小説。その媒体の違いはあれど、素直にうらやましい。

 

「あ~あ、僕の作品にもこれくらいの感想があればな」

 

 そんな風に、文句を言いながらも時間が来たので仕事に出発する。

 

 

 

P:M6:00

 

 カタカタパン♪ カタカタパン♪

 

 仕事帰り、僕は疲れきっていた。

 とはいえ、執筆を休むという選択はない。

 気を張って、余裕があるふりくらいしてやろうと、遊び心を全開に、指先でリズムを刻む。

 

 この時間に執筆するのは日課だ。

 いつもなら、このくらいの時刻になると、数時間執筆をつづけた疲労から指先が重くなるのに、今日は指の動きがいつもよりも滑らかだった。

 

 千尋さんのアドバイスのおかげだ。

 昨日言われた、人気を獲得したいのならば褒めて褒めて褒めまくれ!

 新しいことをするワクワク感のおかげで、疲れも気にならない。

 

『なんて、すごいんだ』

『天才』

『これほどのことをできる奴、他にいない』

 

 とにかくわかりやすく、そして大げさに主人公を賞賛する。

 

 

「うん、不採用」

 

 最終的に、僕は千尋さんのではなく雫さんのアドバイスを思い出した。

 すなわち、こんな安易な方法に頼り切ってしまえば小説が死ぬと。

 

「いくらなんでも、話の展開が無茶苦茶になる」

 

 実際、無理に賞賛を突っ込んだせいで話が破綻した。

 いつも通りにするのが一番だと、せっかく書いた改訂版をお蔵入りにする。

 

 

「やっぱり、僕には才能ないのかな」

 

 集中力が高まると聞き、愛用している青のボールペンをメモ用紙にはしらせる。

 書いているのは新しい試みに関する感想文というか、反省文だ。

 

 

 失敗しているのは、何も、ほめ言葉だけではない。

 

 連載当初、僕は一つの目標を立てた。

 毎日同じ時刻、PM7:00に作品を投稿するという目標だ。

 最初は計画通りに進んでいた。

 が、自分の作品に思った以上に粗が多かった。

 作品のクオリティーを上げようと、推敲に時間をかけているうちに手遅れに。

 それでもしばらくは、時間を守ろうと努力したのだが。

 ずるずると、投稿できない場面が増えていく。

 最終的には、もう投稿時間なんて、気にすることないよねと、開き直ってしまった。

 

 1日1更新するという目標を最後の防波堤にしているが、それもいつまでもつことやら。

 

 この失敗を生かして、次回作では話を数話分はストックするぞと心に誓った。

 

 

「よし、できた~」

 

 最終的に、投稿できたのはPM8:45分だった。

 目標から1時間45分の遅刻だ。

 情けない。

 

 

「あ~、疲れた」

 

 集中して作業をやったせいか、一つタスクが終われば、気力でごまかしていた疲れが襲い掛かって来る。

 いったん、今日の作業を終わらせ、横になろうかという誘惑にかられるが、もう一仕事ある。

 

 感想への返信だ。

 

「すごい! 2つも感想がやってきている」

 

 

コメント:これはかなりきつい状況ですね。しかし、いつになったら作品のタイトルを回収するのですか。

 

返信:主人公の身に変化が起きるのは、この章の最後ですね。

 タイトル回収が遅れて申し訳ありません。

 

 

S コメント:あなたの作品を改めて読みなおしました。

 やはり何度も読み返したくなるほど面白いです。

 

返信:ありがとうございます。これからも頑張ります。

 

 

 よし、結構うれしいことを言ってくれるな。

 10行20行でも足りない感謝の気持ちを1行か2行で出力する。

 長くても、それはそれで痛い奴と思われるかもだし。

 

 これで、今日やるべきことは終わった。

 さあ、休むぞってところで。

 

「まて、このSって雫さん!」

 

 連想ゲームで、目が覚めた。

 

「自分のアカウントくらい持っているだろうに、それでコメントしてくれたらいいのに」

 

 と文句を言う。

 だってSだよ。

 確定だと言い張るには早すぎるのは自覚しているけど、勘ぐるなと言われると無理だ。

 

 だが、もしお気に入り登録をしているのであれば、登録してくれている人物の名前を確認できるかもしれない。

 

 

 お気に入り数6

 感想9

 PV215

 

 

「まさかの変化なし!」

 

 昨日確認したものと、比較してもお気に入りは増えていなければ減ってもいなかった。

 

 意外と薄情なんだな、雫さんも。

 それとも、Sさんは偶然の一致で、実は別人という線もあり得る。

 

「いや、可能性はもう一つある」

 

 雫さんはこっちのアカウントを知って、わざわざ自分の存在をにおわせている。

 それなのにお気に入りも、評価もしていない。

 単にそんなことをしない人物である可能性はかなり高い。

 が、あんな話をしたその日にだよ。おんなじイニシャルの人が感想を書いてきたんだよ。

 偶然じゃなくて確定とみてもいいはず。

 

 どうして偽名を使ったのかについては、一つ仮説を立てられる。

 

 自分の作品を顔も名前も知られている人物に知られたくなかった。

 

 そして、評価も、お気に入りも一切変化していなかったことから推測するに、もうすでにお気に入りも評価もしてくれた人物なのではないか。

 

 

「まさかね」

 

 最終的に自分の推測を笑い飛ばした。

 いくらなんでもそう都合よく話が進む訳がない。

 

 

「もう今日は休もう」

 

 まだ眠るには早い時刻だ。

 本当なら、あと少し、ほんのちょっとだけ執筆するべきなんだろうけど、作品を投稿できたという安心感が、まだ努力しようという気力を奪い去る。

 

 このままだらだらと時間を潰すのも悪くはないとスマホをいじくっていると、通知を見つけた。

 雫さんからだ。

 最後までメッセージを見ることはなかったが、今書いているクトゥルフ系の作品についての感想が書かれていた。

 

 あえて、返信を書くのを後回しにする。

 ベットの上で寝そべっていた身体を強引に起き上がらせる。

 たった一人でもいい。

 ファンが僕の作品を待っているのだ。

 だったら、勝手にここが自分の限界ですと言い訳して、作家業を休むわけにはいかない。

 

 とはいえ疲れたので、軽くできることがいいだろうと、プロットに書いている内容から連想した褒め言葉を口にする。

 

「これは一体何?」

「ああ、これは私たちが開発した最新技術でね」

「こんな高度なものを、信じられない」

 

 

「すげぇ!」

「さすが!」

「天才!」

「秀逸だね」

 

 前回は、ストーリーの中でうまく褒め言葉を組み込むことができないから、行動がとん挫した。

 今回は前回の反省を生かせいて、ストーリーの中に上手く組み込めるように初めから想定していく。

 

 もっとも、それができたのは最初の数回のみ。

 

 それ以降は、自分がやっていることに疲労感を感じてしまい、先ほどの焼き直しのように鏡に向かって、誉め言葉をつぶやくという流れになってしまった。

 

 そんなバカみたいな行為を、鏡に向かって、真剣にやりこんでいく。

 

 カッ、カッ、カッ、ピトッ。

 

 ああ、この靴音は……。

 普段ならノックもなしに入って来るなと言いたいところだが、まぁいいだろ。

 

「入って来ていいぞ、涼子。

 今は休憩中だし」

 

 というか、少しでもいいから気分転換したい。

 だというのに、涼子はなかなか部屋の中に入ってこようとしない。

 

「その兄貴ごめんなさい。この事実は墓場まで持って行くから」

 

「いや、何でそうなった!」

 

 10秒くらい扉の前でじっとしているかと思えば、少しだけ扉が開き、その隙間から涼子が申し訳なさそうに話しかけてきた。

 何か勘違いしているのが分かるぞ、これ。

 そして、たった今自分が何をやっているのかを客観的に思いだしてしまう。

 

「それでここに何しに来たんだよ?

 漫画でも借りに来たのか?」

 

 とはいえ、向こうに指摘されたわけでもないのに、言い訳をするのはどうかと思う。

 さっさと要件を済ませて帰ってもらおう。

 

「そうじゃなくて、昨日の話をしに来たのよ。

 ほら、約束したよね」

 

「残念だが、おみやげはないぞ」

 

 約束はまだ有効だったのか。

 何も言ってこないから自然消滅したと思っていた。

 

 

「そっちじゃない!

 私が本当に欲しているのはおみやげではなくておみやげ話のほう」

 

「そっちだって分かっているだろう。

 愉快なことなど起こっていないことくらい」

 

 涼子の要求を一刀両断した。

 

「漫画やラノベでもあるまいし、出かけるたびにトラブルや問題なんて起こらないから。

 現実には、酒場でからんでくるチンピラも、歩道橋の前で困っている老人もいないの!」

 

 忠告すれば、

 

「執筆しようとする人間がそれを否定してどうすんのよ」

 

 と返された。

 

 確かに。

 僕たち作家が相手するのはそういった人種なのだから。

 現実と漫画を混同する層こそ、ありがとうと感謝しないといけないという指摘は道理だ。

 

「でも、何もなかったってことには変わりがないし。

 トラブルといえば、雫さんを車で自宅まで送り届けたくらいだぞ」

 

「何それ、大事件じゃない。

 漫画やアニメの中で発生しても一切違和感がないほどの」

 

 涼子がこちらに詰め寄り、胸のあたりを掴んでくる。

 

「服が伸びる、やめてくれ」

 

「あ! ごめん。というか、女の子を家に送り届けたってどういうことなの!」

 

 涼子はぱっと服から手を放したが、その距離は近いままだ。

 食い気味で肉食獣のような目でこちらに質問を投げかけた。

 

 

「いい、経験したことを全て話して。

 さもないと、鏡の前で自画自賛していたことをばらすよ」

 

「あれが、小説の執筆の練習をしてたんだよ」

 

「演劇じゃなくて?」

 

 そっちかぁ!

 でも、一見すれば小説の練習ではなく、演劇の練習に見えるか。

 

「小説だよ。

 昨日、雫さんの友達と電話で話したんだけど、ネット小説では褒めることが何よりも重要だって教えてくれたんだ。

 小説に出す場面を実際に口にして想定してた」

 

「何だ。気持ち悪い姿を見せられて、ドン引きしたけど。ふたを開けてみればなんとやらね」

 

 涼子はセミロングの髪を指でいじりながら、少しその顔から険しさが消えた。

 

「確かに変なことをしていた自覚はあるけど、そこまでのことなのか?」

 

「そこまでのことだよ、実の兄が鏡に向かって、自画自賛してるんだよ」

 

「それは……」

 

 自分がそんな光景に遭遇したらどうなるか想像してみた。

 

「うわっ! 気持ちわる!」

 

 そしたら、思いのほかダメージが大きかった。

 

「一生このことを公言しないと約束するのも納得だよ」

 

 これは全面的に、自分が悪いな。

 反省反省。

 

 

「とはいってもさ、雫さんを送った件に関しては、千尋さ……雫さんの友達が急用でこれなくなったから、その友達の代わりに酔っ払った雫さんを家まで送り届けただけだぞ」

 

「それで」

 

「……? それでとは?」

 

「はぁ、これだから」

 

 僕の純粋な疑問に、涼子はまだ先があるでしょと続きをうながしてくるが、本当にこれっきりでお別れしたのだ。

 

「送り届けてそれだけなわけないよね」

 

「それだけだが」

 

 妖しいことをした自覚はあるものの、何でもかんでも色恋沙汰に結び付けるのはどうかと思うぞ。

 

 

「え~、本当にござるかぁ」

 

 あ! 涼子が納得するまで話しをループさせるつもりだ。

 

「そんなに疑うなら、昨日何時に帰って来たか教えてやってもいいけど。

 飯食って送り届けて、そのまま解散だよ、解散」

 

 そのループを終了させるべく、推理小説での鉄板。アリバイを提示した。

 名探偵ならばアリバイ崩しが可能かもしれないが、妹はベレー帽をかぶっているのに探偵の素質はない。

 そう、ベレー帽かぶってるくせに。

 

「分かっていたけど、何にもなかったんだね。詰まんなぁい」

 

 涼子はベットに座りこみ、全身を弛緩させた。

 よし、納得してくれたようだ。

 

 

「ところでさ、まさか別れて終わりってわけないよね。

 お礼のメールとか、メッセージを送った訳?

 そうした細かい気づかいがないと関係っていうのは希薄になっちゃうのよ」

 

「しているさ、今日、いや、正確には昨日だけど雫さんからの連絡が来た」

 

「まじで」

 

「まじ」

 

「あの、連絡をまともにしない兄貴が。

 メールを確認しないから一週間くらい放置する兄貴が。

 どうせ自分に連絡なんて来ないだろうから、携帯電話を一週間近く放置していた兄貴が。

 誰かと話すのがめんどくさいから、ソーシャルメディアの手を付けない兄貴が!

 誰かに連絡だと!」

 

 悔しい、事実だから否定できない。

 というか、こいつの頭の中で僕のイメージってどうなってるの。

 

 

「それって本当。

 妄想じゃない?」

 

 あんなに興奮してたのに、急に落ち着くなよ。

 付いていけないから。

 

「妄想じゃない。雫さんは本当に気が利いたメッセージを送ってきてくれてるんだ」

 

 そして、ネット小説の感想を見せてやる。

 

 

「兄貴、ナニコレ?」

 

「ネット小説の感想だけど」

 

「これが、こんなつまらないものが気の利いたメッセージ?」

 

「つまらない……だと!」

 

 こいつ! 今、言ってはならないことを!

 

「お前は、いったいどれほど感想を貰うことが困難なのか分かっていないのか!」

 

「え! え! え! 何?」

 

 先ほどとは逆に、こちらからグイッと距離を詰めた僕に涼子は困惑していた。

 その様子からは、自分がいかなる罪を犯したのか、自覚しているようには見えなかった。

 

「感想貰うのって、めちゃくちゃ大変なんだぞ!

 僕は個人サイトでブーストつけているけど、匿名で短編書いたところで評価すらつけられない」

 

「それは、ご愁傷様」

 

 こいつ、他人事だと思って。

 

「お前は、感想というもののありがたみを知らないからそんなことが言えるんだ」

 

「分かりました、わかりました。感想はとても素晴らしい贈り物です」

 

 絶対に分かっていないな。

 しっかりと教え込んでやる。

 

「大体さ、小説に関する感想ってみんな書いてくれてもいいんじゃない。

 サイトを使う人間の中でも、百人いて一人くらいしか感想書いてくれないし。

 いやさ、長編小説ならわかるんだよ。あえて感想を書かないってことは。

 自分の意見のせいで、次の展開が変わることもあるしね。

 自分もさ、感想で、作家が意図していたことを批判して、もしかしたら展開変えてしまったってことがあったし。

 でもさ、短編だと違うだろ。

 これ以上先がないって、自分自身で宣言しているようなものだしさ。

 書いてくれよ、感想。

 でもさ、感想って時々邪魔というか、面倒そうでもあるんだよね。第一に……」

 

「ストップストップストップ!! 止まって止まって止まって! 兄貴なんかやばいスイッチが入っているから!」

 

 だが断る。

 感想バカにしたお前に容赦しないぞ。

 

「もうその話はいいからぁ」

 

 初め、絶対に話を聞かせてもらうとやって来た涼子だが、今では、もう話を聞きたくないと逃亡しようとしていた。

 

 これもまた、因果応報か。

 

 

 

読み専1

 最近Kore117さんの作品、何か関わった。

 

読み専2

 明るくなった気がする。

 

読み専3

 そうそう、全体的に暗い感じの作品を書いてたのに、少し明るくなったな。

 

読み専4

 なお、ワイの頭は

 

読み専5

 太陽〇!

 

読み専6

 うわ、何をする。目が目がぁ!

 

読み専7

それで話を戻すけど。

 

読み専8

 おい、もっと話を広げてやれよ。

 

読み専9

 戦闘力たったの5か。ごみめ!

 

読み専10

 クックック、やつは所詮四天王最弱。

 我らの面汚しよ。

 

読み専11

 Kore117さん、いつかプロになってやるっていっているけど、なれそう?

 

読み専12

 正直めちゃくちゃ進歩しとるんよな。

 ネット小説の感想もなんか視点が違うというか。

 

読み専13

 前は、どこどこがおもしろいだったのが、今では話の流れが解説してるし。

 

読み専14

 ほんま頑張っとるし、応援したい

 

読み専15

 分かる!

 読んでると進歩の跡が見えるし。




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