目指せ人生一発逆転~アラサーがネット小説書いてみた 作:kuroe113
ネット小説家あるある。
押しの作家であろうとも、その作品を追いかけたりしない。
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感想11
PV330
お気に入り数が一つ減っていた。
もしかしてを確かめるべく、僕は動く。
ものすごく迂遠な方向でだが。
まだかな、まだかな。
雫さんの作品に感想を書いたのである。
きっと、直ぐに返信があるだろうなと期待していた。
このころには、もう、胸の内から湧き上がってくる高鳴りに戸惑わない。
感情に名前を付けることができたからだ。
その名前は尊敬だった。
「昨日はぎくしゃくしたし、今度はこっちから連絡なり、約束に誘ってもいいよな」
自分から、誰かをさそうことに慣れていないからか、あえて形に残るように言葉にする。
ピッポッパ! っと、スマホ画面をタップ。
そして、待つ。
昔から、日本人らしく待つのも待たされるのも大嫌いなのに、どうしてだろう。
今だけはこの静かな時間が嫌いになれなかった。
「あの、もう私に話しかけないでくれませんか」
6コール、7コールめが過ぎ去り、8コールで着信があった。
その初っ端で、雫さんは無茶苦茶言いだした。
「あなたにとってもこんな女と関わるなんて面倒なだけでしょ。
後、昨日はごちそうさまでした」
こうして電話しただけでも、彼女をめんどくさいと思ったことは否定しない。
昨日まではそうではなかったけど、今日は一体どうしたんだ。
「そのめんどくさい態度、一体どうしたんだよ」
「めんどくさい、今めんどくさいっていった」
自分で、こんな面倒な女といったくせに、それを肯定したらなんか怒り出したんだけど。
マジめんどくさい。
「嫌、そういう事じゃなくて、僕友達なんて一人もいないから、人と話すときは絶えずめんどくさいと心の中で思っているだけだから。
雫さんが特別という訳ではないから」
「うわっ、マジ」
声が震えた。
雫さんのリアクションに、焦りのせいで余計なことを言ってしまったなと後悔したがもう遅い。
「と……友達がいないことくらいたいして問題じゃないからね。
そう、友情に年齢なんてものは関係ないから。
きっと、新字さんにもすぐに友達出来るよ」
ねぇ、さっきもう私とは関わらないでって、いってきたやつに同情されてるんだけど。
この状況どうすればいいんだよ。
「そんなことよりも、小説の件なんだけど」
「小説。
つまりは私をバカにしてきたの。
あなたも、みんなと同じように私をバカな陰謀論者だって笑うつもりでしょ」
何かトラウマでもあるのかな?
雫さん、なんかやけにリアルな未来予想を始めたんだけど。
電話の向こうで、頭を抱えている姿がありありと想像できるぞ。
「そうよ、私はネット小説を通して、政府が隠している宇宙人に関する機密情報を自分なりの推測して発表する痛い女よ。
休日もオカルト雑誌読み込んで、宇宙人に関する特集を編集してます。
ねえ、ここまでわかれば満足」
満足も何も、そもそも聞いていないんですけど。
話に割り込む暇がない。これがマシンガントークか。
「雫さん。興奮すると人の話を聞かないって言われたことない」
「……」
この反応。似たようなことがあったな。
「会話の基本はキャッチボールだよ。
相手に一方的に話しを振るようなデットボールを投げ続けたら話し相手が困って逃げだしちゃうから」
「ねえ、新字さん。あなたは会話のキャッチボールできてるの」
いつもデットボールですが何か。
「……もう、この話はやめようか」
「うん」
これまで、僕の中で雨宮雫という女性の印象は静かな文学少女だった。まぁ、少女という年齢でもないけどね。
だって、眼鏡かけてるし、ネット小説書いてるし、眼鏡かけてるし(ここ重要だから二回言った)。
その大人しそうな外見としぐさの奥底にこれほどまでの情熱があるちは全く思わなかった。
絶対違うだろうが、これがギャップ萌えかと思ってしまった。
「雫さんはクトゥルフ神話好き」
僕はどうしてこんな時に自分の小説、あるいは押しの作品の紹介をしてるんだろう。
「好きね。
何しろ、このどこまでも広がっている宇宙の中で、生命を描いた作品だから。
宇宙というのはここまで強大なんだから、どんなものがそこにあるのか、あるいは眠っているかなんてこと、だれにも分からないじゃない」
「そうだよね。
僕もあの世界観が大好きで、大学時代は全集を読みあさっていたんだ」
「え~っと」
僕の言葉に、雫さんは戸惑っていた。
「つまりさ、コズミックホラーにドはまりして僕にとって、今さら宇宙人程度のことはもう通過した道なんだよ」
「ぷふっ!」
うわっ、笑われた。
こっちに遠慮してか、電話から遠ざかっている足音が聞こえるし。
「まあ、分かったよ。
新字くんが意外に愉快な人だってことが」
これさあ、もしかしてだけどバカにされてない。
「じゃあ、質問です。生命が生息可能な環境を持つ惑星を何と呼ぶ」
「ハビタブルゾーン」
「世界で最初に発見されたミステリーサークルはどこ」
「1978年イギリス」
「アメリカ合衆国ニューメキシコ州に1947年に起きたUFO墜落事件は」
「ロズウェル事件」
「それでは最後の質問です。あなたは宇宙人を信じていますか」
「信じている、何せいたほうが面白い。
でも、君の作品の中にいる宇宙人は無条件の信じるよ」
「はっ?」
足をパタパタさせる音が聞こえた。
ベットの上で、足を動かしてるのだろうか。
「その、どうして私の話なら信じてくれるの?」
「雫さんだから、あるいは一緒にネット小説を書いている仲間だから」
電話の向こうで、足をベットに叩きつける速度がさらに早くなっていた。
「いや、あの、その、私たちまだ出会ってそんなに立っていないし、いきなりそんな話をされても……、困るというか……」
「……?」
ごめん、何を言っているのか本気で分からん。
「僕たちは読者なんだ。
作家が構築した世界を、書かれているものを読んでいる間は無条件に信じる。
それが正しいあり方ってもんだろ」
「あっ! 小説の話」
「え? 小説の話以外したことあったっけ?」
「いやいやいや。合ってるよ、合ってる。
こっちが勝手に変な勘違いしただけだから!」
まったく、変な雫さん。
「それにしても……、新字さんて本当に変な人ですね」
パタパタという足音が止まった。
電波が悪いのだろうか、声がくぐもっている。
そのまま、お別れの挨拶もなく電話が切られた。
いやさ、変人だ扱いは慣れてるよ、でも、君に言われたくないんだけど。
お気に入り数8
感想11
PV331
それからすぐ、感想への返信された。ついでにお気に入り数も戻った。
きっと、この関係は他人から見れば薄弱なものだろう。
しかし、僕は確かに雫さんとの絆を感じていた。
ただ、同じ方向を見て、ゆっくりとだが、確かな足跡を刻んで進んでいく。
同じ道を進んでいる誰かがいる。
それを感じるだけで、この長く険しい道に光が差してくるのだから。
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