目指せ人生一発逆転~アラサーがネット小説書いてみた   作:kuroe113

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第3話ネット小説家は○○な人間だ意外な才能

 ネット小説家あるある。

 趣味のことを小説で書いているが、小説を書いているせいで趣味の時間が無くなる。

 

 

 

20XX年5月〇〇日

 土曜日。

 朝。

「兄貴、こんな早くから小説書いてるんだ」

 

 夕方。

「兄貴ご飯の時間って、え! まだ終わってなかったの」

 

 夜。

「漫画返しに来たんだけど! え!

  ……もしかして一日中。いや、まさかね」

 

 場面場面を切り抜いているから、妹と絶えず会話をしているように見えるかもしれない。

 が、実際に妹と話したのは朝、昼、晩の三度のみである。

 

 

「兄貴、一つ聞きたいんだけど、今日どうしてた?」

 

 少し早口で、涼子が質問して来た。

 

「今日のこと。

 小説書いてた、あとは……小説書いていてたな」

 

「他は! 他に何かないの!」

 

「買い物と、本読んだり、あとは疲れて眠ることも」

 

「それだけ?」

 

「それだけ!」

 

「うわああ、うわああぁぁ!!」

 

 涼子は髪を振り乱しながら、変態だと呟いた。

 

「急に暴れだしてどうした!

 今日のお前少し変だぞ!」

 

「兄貴の日常のほうがずっと変よ!」

 

 心配する僕を、妹はさらに心配そうに見つめてくる。

 

「これは命令よ。

 外に出て、少しの運動くらいはしなさい!」

 

「でも……」

 

「でもじゃない!

 一番上の兄貴は太りだしたの気にしてテニスやりだしたのよ。

 そんな簡単なこともできないわけ!」

 

「できないね。

 執筆っていうのはものすごく時間を取られるんだぞ」

 

 すごい剣幕で詰め寄って来る涼子に、執筆で忙しいというカードを切る。

 

「でもさ、一日中部屋の中に閉じ込もってるのはいくら何でも不健康じゃないの」

 

 その対抗策に妹が切ったのは健康で文化的な生活というどんな場面でも使える人権カードだ。

 ぐぬぬ……、これは分が悪いのはこちらか。

 

「というか、マジで一日中やってるわけ。

 趣味とかないの。小説書いてるんだし、他にも何か趣味とかあればそれが題材になると思う訳よ」

 

 追撃で、別方面からの説得。

 でも、譲るわけにもいかない。

 

「むり!

 小説を書きながら他の趣味も同時にとか、時間がいくらあっても足りないよ。

 ほかの人ならできるかもしれないけど僕にはむりだって」

 

「それでも、一日中部屋の中にこもるのだけはやめてよね!」

 

「もしかして心配してくれてる」

 

 最近なんか妹が優しいぞ。

 

「当然よ!

 一日中部屋の中にこもって、何か変なことをしているひきこもり。

 そんなのが家族の中にいるとなると、肩身が狭いのよ」

 

 僕のこと心配してくれていると思ったけど、結局は自分の心配かよ!

 

 

「でも、外に出ろってのは本心だからね」

 

 そして、怒りを感じてもふいに見せる微かな優しさだけですべてを許してしまう。

 

 これがツンデレかぁ!

 僕は生まれて初めてツンデレヒロインの魅力に気がついたかもしれない。

 

「それで、今日一日の成果は?

 朝から晩までやっていたんだから、それなりに進んだんじゃないの?」

 

「その……」

 

 妹の質問に、僕は答えたくないとうつむいてしまう。

 

「成果は?

 一日頑張ったんだから、数話はかけたのよね?」

 

「まだ一話も書けていません」

 

 再度の問いかけに、隠しきれないと悟った僕は真実を口にする。

 

「そのまぁ、がんばって」

 

 こちらを心配しての言葉なのは重々承知だ。

 だが、ひねくれものの僕からすればその声にどこかあざけりを感じてしまう。

 これだけはいわせてもらう。

 執筆の大変さを知らないからそんな目ができるんだ、と。

 

 

「その疲れたでしょ、コーヒーでも飲む」

 

 でも許しちゃう。

 だって、可愛い可愛い自慢の妹だし。

 

 実は、インスタントコーヒーをさっき飲んだばかりだった。

 僕の舌はコーヒーという苦い刺激に慣れ切っている。

 それなのに、無意識のうちに手が伸びていた。

 

 コンビニで売ってる安ものとはいえ、ひいたばかりの豆からは芳醇な香りが漂う。

 買ったばかりなのを示すようにカップからは白い湯気が立ち上る。

 ただ思いっきり息を吸い込むだけで、安物の豆で塗りつぶされた僕の鼻が新鮮な刺激に上書きされていく。

 

 それに、疲れ切ったこの身には集中力を向上させるカフェインはありがたい。

 

 日頃の憩いであると同時に、働く人間の頼りになる見方。

 それがこの黒い豆の一面であるのだ。

 

 カフェインの効果は服用してすぐには出ないと知っているけれど……。

 ただ、匂いを嗅いだだけでも、目が覚める思いだ。

 

 口をつけると、火傷しそうな熱が舌先に広がり、熱い湯気が顔を覆っていく。

 その香りを吸い込めばコーヒー独特の、何とも言えぬ香ばしいにおいが鼻腔を刺激した。

 

 口の中では炒った豆が持つ苦みと、妹が入れた砂糖の味が調和する。

 

 苦みと甘み、正反対の味が広がる。

 異なる味が調和しているのはまろやかなミルクのおかげだろうか。

 ただ苦いだけ、ただ甘いだけではなしえない味の高みへコーヒーを導いていた。

 

 

「執筆作業ってそんなに時間がかかるんだね。私には到底無理だわ。

 でもまぁ、それだけ長時間集中できてるってことは、才能があるってことでいいんでない」

 

 気前よく気持ちいいこといってるけどさ……。

 ヘイ! マイシスター!

 この手はいったい何なんだい。

 

「お金よお金。

 そのコーヒーの代金を払ってよ」

 

 優しさが身に染みたと思ったが、どうやら幻想でしかなかったみたいだ。

 意地悪で生意気な、こいつはいつも通りの妹だ。

 仕方ない。

 コーヒー代、100円渡そう。

 

 

「最近だと、コーヒー値上がりしてるんだけど」

 

 しかし、涼子は不満そうだ。

 

「本当にインフレっていやだな。何でもかんでも値上げ値上げ。

 コーヒーなんて原価相当安いだろうに料金据え置きにできないものかね」

 

 といって、財布を覗き込んだのだが小銭の持ち合わせがない。

 ならもういいと、涼子はいってくれた。

 

 ふっ! 勝った!

 何に対してかは分からないけど。

 

 

「でさ、どんな人がネット小説の才能あるかわかる」

 

 それはつまり、僕にはネット小説家の才能がないといいたいのか。

 というか、今現在進行形でスマホ検索しているお前の知識なんてありがたくもなんともないわ。

 

「お前絶対条件分っていないよね」

 

「知恵袋の偉大さを知らないの」

 

 負けたくない。

 このまま涼子の思い通りに知恵袋に敗北するのはいやだ。

 どうにか、妹の想像を超える答えを返してやろうと考え、思いついた。

 間違いない、この答えは知恵袋では出せまい。

 

 

「ズバリ! 孤独であること……だ!」

 

 もしくは友達いないことでも可!

 

 

「う……わ」

 

 疑っているな涼子。

 でもさ、考えれば考えるほどにこれ以上の答えはないのだよ。

 

「どうして、そんな悲しい答えに行きついたわけ?」

 

 よし、スマホを閉じた。

 勝った!

 何に対してといわれたら、先ほどよりも困るけど。

 

 

「答えは単純だ。

 執筆作業は時間を湯水のごとく使うんだよ。

 今日だって、小説書いて、休んで本読んで休んで小説書いてで、一日一話も進んでないんだから」

 

「それだけ休んでたら、書けなくても当然じゃないの」

 

「じゃあ聞くけど、1時間ぶっ通しで机の前に座れるのか。先生なり教授が授業して話を聞くだけの場面を除いて」

 

「……疲れるけど、無理すれば」

 

「なら、それを一日何セットできる」

 

「すいません、私にはそんな苦行無理。

 休憩も執筆作業のうちなんだね」

 

 分かればよろしい。

 

 

「大体さ、ネット小説家なんてほとんどが本業と兼業だよ。

 毎日更新しようとしたら確実に友達と遊ぶ時間無くなるよ」

 

「確かに。

 まとまった量を執筆しようとすれボッチでないと一日一更新は無理ね」

 

「そうだろうそうだろう」

 

「すごい! 今までぼっちてただのコミュション糞雑魚ナメクジだと思ってたのに」

 

「いやナメクジってなんだ」

 

 もしかしてだけど、喧嘩売っている?

 

「でもよかったね、人間何か一つくらいは才能あるって話だけど。

 こんなすごい才能があるなんて」

 

 あれ、今笑顔ですごくえぐいこと言われた気がしたぞ。

 

 

「もう一つ条件を口にすれば、ロマンチストかな」

 

 これに関してはネットに情報があるかもしれないと思った。

 

「小説の執筆には膨大な時間がかかる。

 今やっているけど、その進捗はナメクジみたいに遅いし」

 

「適当に言ったのに、そのたとえ気に入ったの」

 

 ……使いやすいのは否定しない。

 いや、でもどうだろう……。

 

「執筆には最低でも数か月はかかる。それでも評価されないなんてざら。むしろ、評価されないほうが多い」

 

「ああ、部屋の外から聞いたけど、自分の作品が人気出てないって愚痴ってたよね」

 

 確かに、そんなこと言った気がしたけど……。

 聞いてたの!

 

「だからさ、金もうけなんて関係ない、ただ書きたいものを書いてやるって人しか、ネット作家は無理だと思うんだ」

 

「つまり、ボッチのオタク気質が向いてるってことね」

 

 間違ってないよ、間違ってないと思うけど!

 言い方ぁ!

 

 

「さてと。

 ここまでいえばわかるだろ。

 僕には時間がないってことくらい」

 

「まぁ、意外に大変な日々を過ごしてるくらいは分かったよ。

 でも、つらくないの」

 

「ああつらい、ただし、自分の才能が!

 こんな優れた小説があるなんて、本当につらいわぁ」

 

「それ本気で思ってるの……。

 一人でいることに苦痛を感じないの」

 

「ああ……。

 一人教室の隅で食べるぼっちめし。体育の時間の一人ボール投げ、単独で回ることになった修学旅行。何もかもがいい思い出でだ」

 

 ああ、つれぇ。

 

 

「そ、そう。

 あ、これ。やっぱり事前に取り決めもなしに百円もらうのもどうかと思うし、返すね」

 

 え! やりぃ。

 お金を返せば、妹はそそくさと部屋から出ていった。

 

「でも、妹と話して再確認できた。僕には才能があると」

 

「これからも、ボッチ道を極め小説を書いていくぞ!」

 

 でもこれ以上、ボッチ道を極めるにはどうすればいいのだろうか。

 

 友達と遊ぶ→なし

 SNSでのやりとり→なし

 付き合い→なし

 

 あれ、あらためて改善点がないか確認したけど、改善できる点がないぞ。

 もしかして、僕はとっくの昔にボッチ道を極めていたのか!

 

 

読み専21

 Kore117の作品って実際どう

 

読み専22

 まぁ、がんばってる。

 

読み専23

 ルーキーとしてはいいほうじゃないの。

 

読み専24

 新しく長編書くんやろ。

 

読み専25

 そう、短編で日間総合ランキング一位の目標は諦めたらしい。

 

読み専26

 うわぁ。

 

読み専27

 まぁ、しゃあない、あいつ、異世界恋愛好きじゃないみたいやし。

 

読み専28

 人気ジャンル書かないであの成績ならまずまずやないかな。

 

読み専29

<<27

 実際、異世界恋愛って、女性向というか、男性には結構きついものがあるよな。

 

読み専30

 分かるわかる、どうも、ラブコメはなぁ。

 男には理解が難しいところがある。

 

読み専31

 何でや、おもろい作品たくさんあるやろ。

 

読み専32

 確かにね、確かにそうなんや。でも、ランキングでも良作を見つけるのがきついし。

 

読み専33

 同じものばかり作られる弊害が出ているよな。

 

読み専34

 ランキング内でも、たまにこれ絶対ほかの作品をコピペしたって作品あるしな。

 

読み専35

 話は戻るけどKore117の作品はどう。

 

読み専36

 人気ジャンルは絶妙に外れてるけど楽しいよ。

 

読み専37

 長編の方よ長編。

 

読み専38

 テンプレのダンジョンもの

 

読み専39

 正確にはそこにバトルロワイヤルものを足した感じやな。

 

読み専40

 それはまた難しいジャンルを。

 

読み専41

 ただでさえ、人数が多いと話を進められんし。

 

読み専42

 エタらへんかな

 

読み専43

 ワイ、過去にエタった経験あり。

 

読み専44

 おお同士よ。

 

読み専45

 まぁ、ワイらにできるのは陰ながら応援することくらいやろ。

 




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