目指せ人生一発逆転~アラサーがネット小説書いてみた 作:kuroe113
ネット小説家あるある。
疲れたときは体勢を変えて作業するけど余計に疲れる。
20XX年5月〇〇日
「うぐあああぁぁぁ!」
背伸びをすれば、口からは気妙なうめき声が、腰からはゴキゴキと骨がきしみ音が漏れでた。
時計を見れば、もう二時間はパソコンの前で作業している計算になる。
少し疲れた。
気分転換でもしようかな。
とりあえず台所に移動し、味気ないインスタントコーヒーをカップになみなみと注ぐ。
カップを床に置けば、自分もまた床に寝そべった。
「楽ちん、楽ちん!」
負荷がかかる場所が異なるからか、全身がほぐされるようだった。
とはいえ、床と平行なままではキーボードをタップすることが難しく、上体を少しそらす。
「うん?」
さぁ、快適な作業をと思ったのだが……。
何か変だ。
最初は小さな違和感。
そして、その違和感はすぐに確信に変わる。
いつもよりも肩がこるのが速くなった気がするぞ?
この体勢で眠る人がいるほど楽な姿勢なはずなのに。
全身が締め付けられるようだ。
これなら、もう普通に座ったほうがいいかな、と椅子代わりにしたバランスボールを眺めた。
でも結局、ボールを足でつつく。
体勢を変えたのは気分転換のためだしね。
しばらくはこのままでいいや。
「……?」
しばし、寝そべったままで画面に集中していれば、ふいに扉が動いた。
「涼子か……」
こういう時、この姿勢は不便だ。
後ろを見ようにも見れないのだから。
それでも、人が入ってくれば感知できる。
最初は、妹だと思い首をひねり確認するが誰もいない。
風かな?
あるいは気のせいか。
どちらにせよ、だれもいないというのが真実だ。
「ふっ!」
真実が明らかになると、気にしすぎたことがばかばかしくなってくる。
だが、後に僕はこの判断が見当違いであったことを知る。
扉の動きが勘違いでないことも、もうすでに侵入者が部屋の中に侵入していることも……。
この時の僕は気づきもしなかった。
そいつは、足音を殺しながらも、我が物顔で、僕の汚ならしい部屋を闊歩していた。
――そろりそろり。
マイペースに歩いているだけなのに、その足音は忍者の
十分に距離を詰め、そいつは狙いを定めた。
「やめろ!」
ようやく存在を認識し、叫ぶ。
もう、奴は机の下までやってきている。
狙いを定めたこいつを止めることなどもはやできない。
「もうやめてくれよ」
僕にできるのは
こいつのしつこさに根負けし、もう何度も賄賂を渡している。
今日だけで三度目だ。
なのに……。
こいつはもっとよこせ、さらによこせと、こちらの訴えなんてものにお構いなし。
ただ一方的に自分の要求を押し通そうとする。
その姿はまさに悪魔だった。
「ああ!」
僕が悲鳴を上げるのと、そいつが机の上に飛び乗るのは同時だった。
「御免ね、今は忙しいんだ」
いつもならここで根負けしてる所だが、今回は違う。
かまってやれるかと、俺は勇気を出して、そいつの首根っこを掴んで放り投げた。
乱暴な手つきで放り投げるもそいつ、ネコのワンは空中で身をひねり見事に着地。
お見事!
そして、即再出撃。
懲りることなく机の上に飛び乗る。
もう勘弁してくれ。
再度の空中浮遊。
諦めることなく再出撃。
しかも、今度はペシペシペシペシとノートパソコンを腕で叩いてくる。
そんなことをされると当然作業ができない。
というかパソコンに異常が出かねないから。
マジやめて!
「あぁ、もう!」
最終的に僕は根負けした。
「ほうら、こいつを献上するから、もう邪魔しないでくれよ」
ネコにとられないようにと、本棚の中においてあるキャットフードを皿の上に置く。
お猫様はご機嫌そうにしっぽをぴんと張りながら
「ほら、もう今日はこれでおとなしくしてくれよ」
そいつを
まぁ、時間的に無理だろうけど。
「というか、壊れたら怖いから、パソコンをぺしぺしと叩くのをやめてくれよ」
今度は目を合わせて訴えかけるも、ワンはごろごろとご機嫌に喉を鳴らすだけ。
当然だけど、分かってないな。
「かまってやれなくてごめんな」
でも、甘えてくるこいつを見て悪い気はしなかった。
それどころか、罪悪感を感じてしまうほどだ。
小説執筆開始前は十分な時間があった。
飯くれと訴えかけてくると直ぐにえさをやったものだ。
「執筆を始めてから時間が無くなってきている気がする」
こいつからしたら変わったのは僕なのだろう。
執筆に時間を取られてこいつと遊ぶ時間もないのだから。
「それにしても猫か」
ワンを見ていると何かを思い出せそうだった。
今悩んでいる物語のプロットに関する何かを……。
ワンの髭を引っ張ったり耳を裏返したりして記憶を刺激すれば、目当てのものが浮上してきた。
「確か、ネコに関連する物語の創作論があったはずだ」
あの日、居酒屋で雫さんにプロットについて話したことを思い出した。
「物語の構成、つまりプロットを学んだことでスランプから脱却したんだっけ」
プロットを自分なりに書いているが迷走している。
なら、自分も彼女のまねをすればスランプから脱却できるかも。
「そうと決まれば善は急げだ!」
と、覚悟を決め情熱を燃やすも。
「うわぁ、きったないなぁ!」
押し入れを見ると僕の動きは凍り付いた。
要らない物を片っ端から押し込めたそこは本のジャングルだった。
所狭しと本が並べられ、少しでも刺激を与えれば雪崩が発生することだろう。
持ち主である僕ですら、侵入はおろか触りたくもない。
「え! ワン」
そこに飛び込む影が一匹。
ネコは狭いところが好きだから仕方ないよね。
けど、危ないから帰ってきて。
「兄貴、ワンこの中に入って……。
うわ! 汚な!」
ワンと入れ替わるように涼子が来た。
まったく、タイミングがいいのか悪いのか。
「ワンなら押し入れの中」
隠す必要もないので、ワンの居所を教えてやった。
すると、露骨に表情をゆがめる。
確かに汚いけど、そこまでか。
「一応、聞いておきたいんだけど、この本の山って、いったい何」
天井すれすれまで積み重ねられた本の山をみて、涼子はよくもまぁここまでため込んだと感心している。
その足は一歩後ろに下がった。
「資料だよ。
作家志望なもので……、いつの日にかこの本も役に立つと思って」
「嘘だ!
時間が無くて読めなくて本がたまって行ってるだけだよね」
ちっ、これだから勘のいいガキは嫌いだ。
でも、一部はちゃんと読んでるからね。
そんなやり取りをしている間も、にゃんこ隊員の冒険は続行しているようだ。
押し入れからはガサゴソと音がする。
「こら、ワン。崩れたら危ないじゃないの」
そんな物理的にも精神的にも入ることをためらわせる要塞ではあるが、その中にはワンが潜入しているわけで……。
「ニャー」
という鳴き声を耳にすると、
「待っててね、今助け出してあげるから」
涼子は我慢できなくなったらしい。
慌てて泣き声に向かって手を伸ばす。
「ゆっくりね。
手を伸ばすにして……も」
僕の耳が騒がしい音を捕らえる。
忠告は遅すぎたようだ。
「ああ、言わんこっちゃない」
「その……。ごめん」
案の定
強引に伸ばされた手によって、絶妙な力関係で成り立っていた本の
「ニャァーー」
念のために行っておくと、ワンは危険を察知した瞬間に押し入れの中から飛び出し、難を逃れた。
「あ、まって!」
妹もまた、ワンを追うように走り去ろうとして、その首根っこを猫にやっているようにひっつかんだ。
「お前が待てよ」
ビシッと床に散らばった本を指さして。
「片づけていけ、というか、せめて追いかけるにしても、頭の上に乗っかっている本くらい……」
とっていけ。
と、頭に乗っている本をつまんで、忠告しようとして開いた口が閉まる。
その本こそがお目当てのものだからだ。
「私の頭に載っている本よね。
何それ、ネコの法則?」
「ああ、この本を探してたんだ」
探す手間が省けた。
騒動は嬉しくないけどこの点だけは感謝してもいい。
「つまり、私のおかげで探し物が見つかったわけよね」
「ああ、感謝している」
「つまり、兄貴の役に立てたわけだし」
長い付き合いだ、こいつがいったい何を要求してるかなど簡単にわかる。
僕は妹へにっこりと笑いかけた。
「それとこれとは話が別」
「ですよね~」
「さぁ、きりきり働け」
ベットに寝そべりながら、僕は妹へ指図する。
「自分の部屋なんだから、少しは手伝ってよ」
やーだよ。
でも、言い訳くらいはしとくか。
「手伝いたいのはやまやまなんだけど、今忙しいんだ。
さっさとこの本を読まないといけないからね」
「そんなの後でもできるじゃん」
うん、自分もそう思った。
「そういう訳にもいかないよ。
前に雫さんと話してけど、プロットが創作をする上で非常に重要だって。
今のスランプというか、手が止まってしまった現状を何とか打破するために、プロットについて学びなおしたいんだよ」
「……!」
「おい、手が止まっているぞ」
片付けの為にせっせと動いていた涼子の手がぴたりと止まった。
僕としてはさっさと掃除を終わらせてほしいんだけどな。
「雫さんって誰」
目を細め、虚偽を許さない鋭い目が僕を捕らえた。
涼子はコミュションの僕の口から人の名前が出たのが信じられないようだ。
「居酒屋で出会った人だよ。
同じネット小説家だったから連絡先を交換したんだ」
本当にいい人だった。
「いったいどんな感じの女なの?」
あれ?
涼子に女って教えたっけ?
まぁ、名前を聞けばわかるか。
「いや、何でそんなことを教えないといけないんだよ」
「そんなのきまってるでしょ。
兄貴に女の影があるんだよ。
おかしいでしょ。
この兄貴に女の影があるんだよ。
そんなの、騙されているに決まってるじゃない。
お金をだまし取られてない」
妹よ、お前は僕のお母さんか。
「失礼だな、騙すも何も、たった数分話しただけだよ。金銭的なやり取りは一切発生していない」
「そう、なら大丈夫そうね。
兄貴がいつも通りボッチで安心したよ」
いやぁ、いつもそのことで心配されているのに、初めて安心材料になったぞ。
まったく、嬉しくないけど。
「それで雫さんとどこまで行ったの。
連絡先くらい交換したよね」
「まぁ」
「なら、顔写真とか、相手のプロフィール分るものは?」
ラ〇ンだし、登録している顔写真が出て来るのでそれもあった。
「ほれ」
結局あれから一度も連絡していない他人だ。
顔写真くらいどうでもいいだろうと開示した。
「へぇ、これはなかなか……、結構な美人よね」
まぁ、若い女であり体系も標準的なものであればよほどおかしな特徴さえなければ皆美人といえるだろう。
それでも、目鼻立ちが整っていることは否定しないが。
「それでどんな話をしたの」
「プロットの作り方、あとはそう、家の外でもどうやって執筆するとか」
「何それ、色気の欠片もないとか。
まあいいわ。どうせそんなところだと思っていたし」
へいへい、面白みのない男で悪うございました。
「それで、そっちは可愛い妹が苦労している間に何やってるのよ」
「プロットの勉強。
そのためにこの本を探してたんだ」
猫の法則の表紙を涼子に見せつける。
「へぇ、意外にちゃんと本を読んでたんだ」
「いや、何してると思ってたんだ」
「収集活動?」
こいつ。
「確かに、押し入れの中にただ押し込んでいる本のほうが多いのは認めるけど、まったく手つかずという訳でもないんだよ」
「正直な話、私にはそんな細やかなことはできそうにないから、そんなにコツコツと作業を進めることができる兄貴がうらやましいわね。
部屋が散らかり放題になってるから、さっさと捨てればいいのにって思ったけど」
「確かに半分くらいは捨ててもいいかなって思うけど。
ほとんどが宝の山だから」
実際、この手には宝といっても過言ではない貴重な情報が握られている。
「なんか以外、ちゃんと準備してたんだ」
「これでも、本気で作家を目指している身でね」
今でも自分のセンスを磨くために暇があれば読書はしている。
まぁ、執筆活動をしているのでその暇な時間が大きく削られたけど。
「作家になりたいって言ってたの、今でも本当になれるか半信半疑だけど、これだけ準備してるんだから、絶対、本物の作家になりなさいよ」
はて、何で妹は急に応援してきたんだ?
ああ!
「残念だけど、お世辞くらいで片づけを大目に見ることはないからな」
妹よ。お兄ちゃんお前の作戦くらいはもうお見通しなんだ。
「そ、そんなこと初めから考えてなどいませんことよ」
「その口調、貴様初めからそれが狙いだったな」
行儀が悪いというのは知っているけど、ビシッと指させば、妹は逃走を諦めて押し入れの
その片付け僕よりうまい。
いいんだよ、このゴミ山が片付くなら。でもなんか複雑。
「じゃ、私はワンの追跡に戻るから」
片付けが終わると、妹は部屋を出た。
もう追跡は諦めたのか、その足取りはゆったりとしていた。
僕もまた猫の法則を読み込んでいくが、あまりにも情報量が多いからかゆっくりとしか読み進めることができない。
そんな風にこっちに集中しすぎたせいでな〇う出の投稿は滞ってしまった。
本当なら完結まで行きたかったけど、話しを進められず、もういいかなって思った。
「でもまだ、一日一更新を諦めたわけじゃない」
プロットをしっかりと学び、下準備に下準備を積み重ねればいつか必ず……。
それに手ごたえはある。読み始めたばかりだというのに、自分の執筆時の問題点がこれでもかというほどに自覚させられる。
まだまだ問題点も改善点も山積みだ。
でも、それを一つ一つ克服すれば、夢は必ずかなう!
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