目指せ人生一発逆転~アラサーがネット小説書いてみた 作:kuroe113
20XX年9月〇〇日
「1、2、3、4、5」
猫の法則を読み進めることで、小説家として僕は大きく躍進した。
証拠がこのナンバリング。
「ここが、スタートで、主人公の目的を提示したうえで、登場人物を紹介して……」
と、言葉にして自分自身の分類に誤りがないのかを確認する。
話のあらすじを決められた階層ごとに区分して、それぞれに一言二言要約文を書く。
以前までの話の要約は、だらだらと本当に必要なのかどうかすらも分からない情報を記載していたのだが、新しい技術のおかげで文章の量が半分以下にまで縮小された。
もっとも、そのキャラクターがいったいどんな人物であるのかを把握するために長ったらしいセリフを記載するという面倒ごとを行う時もあるのだが。
それは例外枠でいいだろう。
「昔の人ってすごいよな」
こうしてプロットのことを学べば学ぶほどに先人の偉大さが身に染みる。
意外なことに、物語を一体どのような順番で並べればより映えるのかは神代の時代から変わっていないらしい。
「ここまで書いたら、舞台を次の場面に移して、新しい登場人物、主人公に試練を与えてと……」
信じられないと思うだろ。
でも、最近ネット小説ではやっている異世界恋愛。
その話の流れがシンデレラとほぼ同一のものであるのと言われると信じられるだろうか。
さぁ、話のあらすじを見るがよい。
1 シンデレラの経歴。家族関係、心情。
2 母親が死んでしまい、父親が新しい妻を迎える。
3 継母とその家族にいじめられ、使用人扱い。
4 城で舞踏会が開かれるのだが、主人公は置いてきぼりにされた。
5 魔法使いが現れ、舞踏会に行けるようにしてもらえる。
6 そこで王子様に見染められるも、約束の時間が来て、主人公はその場を後にする。
7 ガラスの靴を置いてきてしまい、それを頼りに王子様がシンデレラを探し出す。
8 シンデレラは王子様と結婚し、継母がひどい目に合う。
さてと、これをネット小説の展開に落とし込めば。
1 主人公はどんな人物か。(能力や家系、性格など)
2 婚約者が別の女を好きになる。
3 王子様に主人公は冤罪をでっち上げられる。
4 地位を失う。辺境、どこか遠い場所に追放される。
5 主人公のチート能力で活躍。
6 チート能力を駆使した結果、高貴な立場の人間に見染められる。
7 その高貴な人物の力を借りて、主人公は元の地位を取り戻す。
8 主人公はその人物と結婚し、冤罪をかけた人物は破滅する。
どうだ。
大体一緒だろう。
もちろんシンデレラだけではない。
落語やネット小説の人気作。
それらを読んで、得た知識を自分の作品にフィードバックしていく。
20XX年9月〇〇日
「よしと、下書きはこれくらいでいいだろう」
一話一話、話の下書きを作る。
その速度も前回と比べて半分以下にまで短縮された。
それもこれも、読んだ作品の設定をコピペ……げふんげふん。
リスペクトし、それにアレンジを加えるように動くと決めたからだ。
もちろん、それだけではない。
吸血鬼の小説を書いていた時はノート丸ごと使いきっても話のまとまりができなかったというのに、今は大まかなあらすじならノート一枚ですむ。
あの時、ノートに必死に設定を書いても次に何をすればいいのか分からない苦悩は何だったんだろう。
と思わなくないが、過去のことを気にしてもしょうがないので切り替えていく。
もちろん、こうして文章の構成を意識しつぇ読書をしたうえで、それを自分の作品に反映させる。これにも欠点がある。
それは、この読書方法。ものすごく疲れるのだ。
おかげで集中力のガス欠が早まった。
「ZZZ……ZZZ」
対処法として編み出したのがこれだ。
寝息を立てているが、実際には眠ってなどいない。
寝たふりである。
本当に本当だからな!
――ピッー!
証拠にほら、休憩を知らせるタイマーと共に僕は起床し……。
「あと少し、あと少しだけだから」
と自分に言い訳し、3分程度の時間を浪費してテーブルの前に座った。
これはポロドモールトレーニングだ。
25分5分周期でタイマーが鳴り、それに合わせて執筆する。
かみ合ったことで寄り多くの燃料を消費する僕が編み出したクールダウンの手法だ。
それでも、疲れ切っているのは一切変わらないので、テーブルに向かう時は蛇のように床に身体をこすりつけているが……。
「ねぇ、兄貴。本当に大丈夫」
「ダイジョブダイジョブ、本気でやばくなったら休憩をとるから」
僕は失念していた。
本当の問題は体の疲れではなく、勝手に部屋の中に侵入してくる厄介者であることに。
恥ずかしいところを見られたなぁ。
もう!
これ以上恥の上塗りを避けねばならぬ。
親指を立て、さも、寝ぼけてベットの上から落ちましたよとでもいうように起き上がる。
その上で、何も問題は起きていませんよとばかりに涼子に親指を立てて見せた。
「ちょっと待ってて」
そんな僕を信用していないのか、妹は何か悪戯を思いついた顔になった。
「そんなあなたに、肉球ぺしぺし」
その技は!
相手を強制的に魅了する必殺技。
僕ですら厳しい修行の果てに会得したこの技を、涼子はたった一度目にしただけで習得して見せたというのか!
「やめろ、やめてくれ!」
嫌がる僕に、しかし涼子は一切の容赦をしない。
「それで兄貴、鳥肌は」
「あれ、何ともない」
何気ない言葉に、自分の体調の変化を悟る。
「やっぱりね、鳥肌は単なる体調不良だって。そんなおかしな体質の人いるわけないし」
「いいや違うな、俺はねっこの愛と小説愛を等価交換したんだ、見ろ」
そういって、小説を腕に近づければ、そこには鳥肌が立ったのであった。
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