元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん―   作:ヨシMAX

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序章 裏切りと魔王
第0話 プロローグ


 

 

 ……どうしてこうなった。

 

 

 俺は今、炎に包まれた魔王城謁見の間にある椅子に座っている。

 魔王城は石を組み上げ作っているので本来は火に巻かれるとは考えにくい。

 これは魔法の炎だ、しかもレベルの高い攻撃魔法、物質の可燃性関係なく燃える厄介な炎。

 既に部屋の調度品を始め、燃える物も燃えない物も燃えている、訳が分からん。

 

 とうとう俺自体にも火が付き始めた。

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 その日も俺はいつも通りに魔王城の執務室で領地運営の為、様々な書類に目を通していた。

 

 魔王城と言っても俺は戦いが嫌いだった。

 なので城と言うよりどちらかと言うと屋敷に近い。

 防衛施設と言うのも烏滸がましいが、申し訳程度の石壁で囲まれ堀もなければ水路もない。

 罠もないし常設の兵士団すら俺は作っていない。

 戦時に集まってくれればそれで良いし、そもそもそんなに高い給料を払えているわけでもない。

 

 戦争を極力避けて交渉で問題を解決してきた。

 なるべく民衆の迷惑にならない様に務めてきたつもりだ。

 そりゃもちろん血の気の多い魔族も沢山いる訳でそんな奴らとの戦いには俺も本気出す。

 でなければヤラレテしまうしな。

 

 誤解をされては困るが正直、俺は強いぞ。

 歴代魔王の中でも屈指の身体能力や魔力を持っている。

 図らずも実力行使した戦いでは一度も負けた事はない。

 部下達もそんな俺を見ていつも高い士気を持ち続けてくれた。

 

 だが繰り返すが俺は戦いが嫌いだ。

 なんでわざわざ痛い思いや辛い思いをして戦わなきゃいけないんだ。

 まあ、俺は強いので今までにそんなに酷い目にあってきた事は少ない。

 でもこれから現れる敵方に俺よりも強いやつが居ないなんてどうして断言できようか。

 ポッとでの魔王を目指している魔族にコロッと負けてしまうかもしれないじゃないか。

 だから、俺はできるだけ戦わない事にしている。

 

 突然、側近のエイミリア、エイミーが扉を突き破らん勢いで入ってきた。

 

 

 「大変です! 魔王様!」

 

 

 またこの娘は……。

 

 能力は非常に優秀なので俺が大抜擢したのだがガサツな所が非常に残念だ。

 

 

 「エイミー、入室の時はノックをして入る様に何度言えば……」

 

 「それどころではありませんよ! 魔王城に向け所属不明の軍隊が接近しています」

 

 「……なんだと」

 

 「それと民衆の一部も蜂起して軍団に加わっているようです……」

 

 

 俺は思わず絶句してしまう。

 

 

 「敵軍はヴァルクス将軍とムカル宰相、そして地方領主同盟から参加多数……」

 

 

 突如、背後から声がした。

 

 

 「ユリアか」

 

 

 ユリアは戦場で拾った魔族の娘だ。

 

 俺の片腕にすべく英才教育を施したはずなのだが今では腕っぷしの強い斥候というアンバランスな感じで成長した。その為、喧嘩っ速い。

 後悔はしていないがもう少し素直に育ってほしかった。

 

 

 「だからあの将軍には注意してと言ったのに……」

 

 「……そうだな、すまなかった、ユリア」

 

 

 ユリアは俺以外の魔族にはクールな対応なのだが俺だけには甘えてくる。

 今にも泣きだしそうな顔で責めてくるユリアに俺は詫びるしかなかった。

 

 

 「魔王様もユリア様も悠長に話してる暇はありませんよ! 早く脱出しましょう!」

 

 「おっと、そうだな。2人は早く城を脱出しろ。お前らなら向こうも目零すかもしれん」

 

 「何を言っている?! 魔王も早く逃げないと!」

 

 「俺は……もういい。寄りによって主力を地方の紛争に派遣している間に攻めてくるとは……用意周到だな。策は万全なのだろう。ならば、ここで将軍達に目に物を見せてやるよ。俺をなめるとどうなるか……」

 

 「馬鹿なっ! こんな所で死んだら何にもならないよ!」

 

 「そうですっ! 魔王様、早く逃げましょう!」

 

 「ヴァルカスは先日も反乱を起こした。あの時は今までの功績を鑑みて許したのに……そんなに俺が治める国が嫌なら出ていけば良かったのにな。こんな形で裏切られるとは……。俺はもう疲れた、すまないがこれからのお前達は自由だ。今この時から主従の関係を解く! 自由に生きてくれ」

 

 

 俺の突然の玉砕宣言に2人は言葉が続けられない。

 

 

 「ほとぼりが覚めたら……そうだな、海の見える丘の上に俺の墓標を置いて旨いものでも供えてくれ……なんてな」

 

 

 俺がそんな風に嘯くとなんと2人が声を殺して泣き始めた。

 こいつら……そんなに俺を大事に思ってくれていたのか、正直……意外だった。

 

 

 「諦めが……良すぎやしませんか、最強と言われながら平和を愛する異端の魔王と言われたあなたが……、ここまで善政を貫いてきたのに……民衆だって扇動されているに違いないですよ」

 

 「そうだな、でももう裏切られるのは嫌なんだよ」

 

 「そんな……、じゃあ私と逃げよう、魔王! どこか平和な所まで逃げれば……」

 

 「ユリア、お前はいつも俺にそう言ってくれていたな、大変なら2人で逃げよう……って。こんな事ならもう少し早く俺がお前の言う事を聞いていればな、将軍の事だ、どんな汚い手を使ってでも俺を逃すまい」

 

 

 俺の言を聞きしばし考え込む2人。

 すると突然、まずはエイミーが腰の剣を抜き放つ。

 

 

 「わかりました。魔王様がそれ程の覚悟であるならば私も地獄の底までお供します」

 

 「えっ?」

 

 「問題ない。私も付き合う」

 

 「えっ?」

 

 

 ユリアまで双剣を構えておかしな事を言う。

 

 

 「裏切られまくりの魔王様に私達だけでも最後まで一緒にいてあげないと可哀想ですしね」

 

 

 変だなぁ、俺、今逃げる様に言ったよな。

 それに俺がボッチみたいに言うな。

 ……本当にこいつらは俺の言う事を聞かんなー。

 

 

 「お前ら、最後位は言うこと聞けよ……」

 

 「主従の任を解かれましたから」

 

 「自由に生きるよ」

 

 

 はぁ、しかたねぇなぁ。

 

 

 「じゃあ、行くぞっ! 遅れるなよ!」

 

 「「はいっ!」」

 

 

 俺達は十重二十重に包囲している敵軍を蹴散らし何時間も暴れまわった。

 一時は少数であるが俺達に味方する勢力も駆けつけあわやと言う所まで託けた。

 しかし、最後には民衆を前面に出した敵軍の作戦に嵌り激しい反撃も終わった。

 

 いくら俺達でもまともに反撃が出来なければじり貧になる。

 

 まず元々非戦闘員のエイミーが魔法の一斉掃射で消し飛んだ。

 次にユリアがスタミナ切れでスピードを失い取り囲まれ討ち取られた。

 

 そして俺は――

 お供2人が壮絶な最期を遂げたにも関わらず無様に魔王城の謁見の間まで逃げてきた。

 炎に巻かれた謁見の間で佇み、何がいけなかったのか考える。

 まあ、そんな事を考えても意味はないか。

 俺が必要ないのは分かったよ。

 

 ならば、後はお前達の好きにすればいいっ!!

 

 ……俺はもう、御免だ。

 

 激しい炎が俺のお気に入りの魔王装束を焼き、俺の足を焼き、腕を焼き、全身を焼く。

 

 この日、俺の名は歴史上から消えた。

 

 

 




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