元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
PVの伸びが凄くモチベに繋がります。
俺達の乗る大型クルーザーは真夜中の海を煌々と照らしながら海上を進む。
幾つかの船舶とすれ違ったがきっと見張りの船員は二度見した事だろう。
目撃情報が、が、が……。
俺はマリアに操舵を習い操舵輪を握っている。
なぜこんな事になっているかと言うと……俺の後方、操舵室のソファーに青い顔してマリアとレティが転がっている、酔ったんですと……。
マリアは分かるけど、レティは神様なのに船酔いするんかい。
空でも飛んでろよ。
このクルーザーは大型ではあるが操作は非常に単純だ。
右手で操舵輪、左手でスロットルレバー、足は一切使わない。
確かに簡単ではあるが知識も何もない俺が操舵する事になるとはね。
酔い止めの魔法でも覚えるか。
そして一番重要な行先であるがこのクルーザーにはなんとレーダーが付いている。
レーダー画面には大まかではあるが海図と海流が確認できる。
そして目的地の座標が入力できる様になっており光点で表されている。
おまけに自動操縦機能も積んでいるのではっきり言って俺がこうしている理由もない。
ただ、せっかく操舵方法を聞いたし他の2人は倒れている為、暇なのだ。
それにこうしていないと不安でもある、俺は機械を100%信頼していない。
海上の波は静かだし前方を眺めているだけでも落ち着くもんだ。
何気なく空を見る。
星がキレイだなー。
この船はとてつもない光量で光っているが流石に空の星は見えた。
ががぁーーーんっ!!
「な、なんだぁっ!」
「ぶへっ!」
『ふぇえええっ!』
急に船体が大きく傾いた。
自動操舵中なので流氷や海底の岩に衝突したとも思えない。
「アルビー君っ! 何、今の?!」
「分からないっ! レティ! 外を確認してくれっ!」
『わかったよー!』
レティが操舵室の窓から飛び出していった後も船は大きく左右に揺れる。
何とか舵とレバーを駆使し船体の安定を保とうと試みるが厳しい。
一瞬、レーダー画面の自機後方に大きな影が映りこんだ。
「なんだっ?! 今の!」
「どうしたのっ?!」
「わからんっ! でも何か見えた! しっかり捕まってろ!」
『アルビー、大変だっ! クラーケンだよっ!』
最悪だ。
巨大な海の魔獣。
足が通常は15本程度、中には20本以上ある個体もおり海上で出会ったら絶望しかない。
「マリア! しっかり捕まって! レティもポケットに入ってっ!」
「う、うんっ!」
マリアは壁に取り付けられている手すりに掴まりレティは俺の胸ポケットにもぐりこんだ。
ちょっ、くすぐったいぞ。
さて……、
このままでは長い足に捕まって沈められてしまう。
俺がスロットレバーを思い切り引き倒すとクルーザーは船首を上げてモーターボートの様に海上を物凄いスピードで走り出す。
後方に飛ばされそうになった為、俺は身体強化魔法をかけて足を踏ん張った。
ちらりと後方を見やるとマリアも仄かに光っているので身体強化をかけているのだろう。
ビッタン、ビッタンとクラーケンが足を海面に叩きつける度に高い波が起こり船を左右に翻弄する。
その度に舵を操作し一直線に海上を進むがこれではいつまでも振り切れない。
「マリアっ! こっちに来れるか?!」
「ふぇっ?! わ、わかった、ちょっと待って!」
マリアは壁に掴まりながらも一歩ずつこちらに来てくれた。
「はあっ、大変だったぁ。アルビー君、何かいい方法あるの?」
「マリア、舵頼む。ウマいかどうか分らんけど、イカ焼き死ぬほど食わしてやるよ」
「えぇっ?! どういう事?!」
「全速力で突っ走れ!! 俺が仕留めてくる!」
いい加減にしろや、イカ野郎。
もう許さねえぞ、絶対にだ!
俺は振り落とされない様に慎重に操舵室から出ると船尾に進んでいく。
よしんば、振り落とされたとしても俺、飛べるんだけどね。
でも、怖いね、空飛ぶのは……。
船尾に着いた。
見えたぞっ!
海上に頭と足先を数本出して凄いスピードで船を追いかけてきている。
んっ? あれって頭じゃなくて胴体だっけ?
胴体から足が生えてるんか、あれ? 足じゃなくて手だっけ?
……まあ、何でもいいか。
海だから……地獄の落雷でも受けと……うわぁっ!!
びたぁあああんっ!!
ぶふぁああっ!
つめてぇえええっ!!
死ぶ、死んでしばうっ!
『どぅわああぁぁあああっ! 冷たいよ! アルビー、何やってんのよ!』
仕方ないやろっ!
あいつ、急にスレスレの海面を引っぱたきやがった。
高波を浴びて頭から海水浴びちまったよ。
もう許さん、海だし俺の最凶の雷で消し飛ばしてやる!
「シュゲトの地より来たれり 魔を率いる大いなる地獄の伯爵に願わん 我が召喚に応じ真実の口より残虐な落雷を振るうがよい 嘆き悲しみのない安らかな死を ハースティードマー ヘルビディズ!!」
俺が詠唱し終わると光り輝く三角錐の魔法陣が出現。
その中に鹿に羽が生えた様な悪魔が召喚された。
地獄の大伯爵フールフールだ。
『ひぇええっ、下界で悪魔に会うと生きた心地がしませんねー』
うん、俺も魔王なんだけどね、元だけどね。
一番偉かったんだよね、一応ね。
フールフールは三角の魔法陣の中に召喚されると天使の様な姿に変わる。
そして……、
どかーーーーーーんっ!!!
空が一瞬光ったと思ったら凄まじい轟音と共に落雷がクラーケンに落ちた。
一瞬で黒焦げになったクラーケンがプカプカと浮いている。
確認するまでもなく絶命しているので沈む前に回収し足を何本か切り取り捨てる。
本体デカいしね。
さて……そろそろ来るかな。
空中の魔法陣の中のフールフールがゆっくり振り向く。
『ひっ?!』
奴がにたりっと笑ってから掻き消えるとそれは来た。
『アルビーッ!! 好き好き好き好きぃーーーーっ!!』
「アルビーくーんっ!!! 愛してるぜぇぇえええぇぇぇーーーっ!!」
なぜか分らんが奴の能力には稲妻、落雷、突風の他に男女間の愛を促進するという物があり近くに異性がいるとこうなってしまうのだ。
俺は何ともないけどね、元魔王だからさ。
でもこうなるとどうしようもないんだよね。
治まるまでさ。
この後、メチャクチャ……何もしてないぞ。
魔法で眠ってもらった。
この状態なら魔法抵抗力ゼロなんでね。
俺の下手クソな精神魔法でも簡単に寝ちゃうよね。
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