元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん―   作:ヨシMAX

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第2話 新しい俺、こんにちは

 

 

 アル……、アルビ……、アルビット……。

 

 

 誰だ、俺を呼ぶのは。

 俺は今眠いんだ、寝かせてくれないか。

 そしてその名前で俺を呼ぶんじゃない!

 そもそもその名前をなんで知っているんだ。

 

 

 アルビット! アルビィーット!

 

 

 野太い声が俺の安眠を妨害する。

 うるさい、うるさい。

 誰かそいつを黙らせろ。

 

 

 アルビット!

 まだ起きないとは良い度胸だ。

 

 

 この声……、どこかで聞いたような。

 そうだな、遠い昔にどこかで……。

 階段を上ってくる音が段々と大きく、近づいてくる。

 

 

 アルビー、先生が来ちゃうよ。

 起きた方が良いよ、アルビー。

 

 

 おっと、今度は可愛らしい女の子の声か。

 良いね、寝覚めに君の様な可愛い声を聞けるとテンションが上がるね。

 

 

 「ほう、俺の声は聞き心地が悪いと言う事か。そんなに眠たいのなら永遠に聞こえなくしてやろうか」

 

 

 あーあ、しらないよ、アルビー。

 

 

 「むむむっ、うるさいぞー! 静かにしないか!」

 

 

 俺がそう言って立ち上がると視界に映るのは俺を見る目、目、目……。

 なんだ? この状況は。

 

 

 よし、分かった、OK。

 今の状況を落ち着いてまとめよう。

 

 今、俺はすり鉢状の講堂の中段程の席で立ち上がっている。

 

 一番、階段側に位置取っておりその隣、階段には講師と思しき男が立っている。

 清潔感があるせいか壮年ではあるがシュッとしたスタイリッシュさがある。

 一目見ただけで激おこなのは分かるが理由は分からない。

 

 そしてその反対、俺の隣には明るい桃色の髪、茶色の大きな瞳、整った鼻筋に小さめの口。

 はっきり言って美少女だ。

 小柄であるが幼児体型と言う訳ではなくとても良いスタイル……になるであろう事が伺える。

 敵軍の尋問官コスで捕まった捕虜ごっこがしたくなる程だ。

 

 そしてなぜかその娘は呆れかえった表情でおでこに手を当てている。

 あれ? 俺、なんかやっちゃいました?

 

 

 「アルビット・ルクシアス訓練生! 俺の講義で居眠りするとは良い度胸だ!」

 

 

 へっ?

 訓練生? 何言っとるの?

 俺、魔王だよ? 元だけどね。

 

 

 「全ての講義が終わったら講師室に来るように! 逃げても無駄だからな!」

 

 

 なんでこんなに怒っとるの、この人。

 プリプリしながら教壇へ戻っていったけど。

 

 

 「アルビー、コマ先の講義で居眠りするなんて珍しいね、昨日夜更かしでもした?」

 

 

 俺が混乱していると隣の美少女に話しかけられた。

 どこかで見た事あるね、君。

 えーと。。。まさか、君は……マリアか?

 

 リアマリア・ヴァイオレット。

 通称、マリア。

 俺が魔王軍士官学校に通っていた頃の同級生。

 頭脳明晰、人柄もよく見てくれも一流の美少女ときたら人気がないわけがない。

 だが不思議と彼女は入学当初から俺と仲良くしてくれたのを覚えている。

 

 でも、待ってくれ。

 そんな馬鹿な事が……。

 ……いやいやいや、まてまて。

 そうするとここは本当に100年前なのか?

 

 ……思い出したぞ。

 確かにここはサンレイム魔王軍士官学校に間違いない。

 1階の端にある101講堂だ。

 

 そしてここは講義で俺がよく座る席だ。

 この机の傷も間違いなく記憶にあるのと一緒だ。

 何を隠そう俺がつけた。

 マリアのお昼ご飯を一口つまんで食ったらフォークを持って鬼の形相で追いかけられた。

 俺はあれで食べ物の恨みは美少女を鬼にする事を知った。

 

 あいつ、まぢで神様だったのか。

 いやぁあああーーーっ。

 ふざけんなよ、あのクソ女神ぃ!

 

 だから、戻りすぎだって言ったんだ。

 この士官学校は全寮制で絶対に脱走できない様に海の真ん中にあるんだぞ。

 そして魔法での脱出も出来ない様に外からも内からも転送魔法を無効にする術式が学校全体にかけられている。いやいや、全く、学校ではなくて完全に牢獄じゃないか。

 年に数回、訓練生が姿を消す事があるのだが、脱獄を画策して講師達から折檻を受け挙句の果てに海の藻屑になったと学園で噂されていた。

 

 自由に動き回ってスローライフを楽しむ為にもさ。

 ここを卒業した後に戻してもらいたかったぜ。

 本当に嫌な記憶しかないんだよな……ここにはさ。

 まあ、自分の中では折り合いはついてるんだけどね。

 

 俺が自分の考えに耽っていると隣に座るマリアが話しかけてきた。

 

 

 「せっかく今日の講義後さー、一緒に演習の買い出しに行く約束してたのに……ちゃんと埋め合わせしてよねー、アルビー」

 

 

 ……可愛いな、やっぱりこの娘は。

 守りたい、この笑顔……、いや、笑顔じゃなくて呆れられてるんだけどもさ。

 

 

 「聞いてるー? 仕方ないから演習に必要な買い出しは私一人で行ってくるからね」

 

 「んっ? ああ、分かったよ。すまないな。よろしく頼む」

 

 

 俺の返答に満足したのかマリアは、ふふんっと微笑んで自分のノートに目を戻した。

 

 

 もはやここが100年前の学園である事は認めざるをえないだろう。

 学園は魔王軍が大きな島を一つ使って学園と訓練生用の街を作り上げた一大都市と言える。

 

 建前ではどんな身分の魔族も学園に入る事は可能であるが、やはりそこは貴族の子息が多い。

 なのである程度のヒエラルキーは伝統として出来上がっており、それも嫌な記憶の一つである。

 

 学園は3年制で入園は15歳以上と決まっている。

 なので18歳の筈である俺は1年以内に卒業出来るはずだ。

 もう少しで自由の身か、少しの辛抱だな。

 

 俺は幼少期に両親を戦争で亡くした。

 所謂、貴族様等のエリートではない。

 母方の爺さんに引き取られ育てられた。

 

 とは言え、爺さんも高齢だ。

 俺の行く末を案じた爺さんにこの学園に入れられたという訳だ。

 まあまあ能力のあった俺は結構な上位で試験を通った。

 妬まれ、嫌がらせを受ける下地は十分にあったという事だ。

 

 俺は戦いや争いは嫌いだが苦手ではない。

 戦いや争いを避けても向こうから襲ってくるなら受けて立とう。

 実際、俺の死因、それが原因だしね。

 

 2週目の人生は平和? に過ごさせてもらうぞ。

 

 

 




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