元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
はい、久しぶりに私のエピソードから始まります。
マリアです。
私は白星さんと帝国郊外を巡回パトロールしていた。
本来ならこんな偵察任務は帝国の兵隊さんかゴーレムさん達に任せれば良い事なのだがどうにも私は嫌な予感を消す事が出来ず自ら申し出てこの役割を受けていた。
その日も何事もない為、偵察を終えて引き上げようとしてた時だった。
私の飛空艇が撃墜され白星さんが魔法の攻撃を受けたのだった。
「白星さ――ん!」
私はゴムボールの着いたベルトを外すと攻撃を受けた白星さんが落ちていった方向に駆け出した。
「白星さ――ん、大丈夫ぅ――?」
私は大きな声で呼びかけながら森の中を走る。
――と、急に背後から口を塞がれ羽交い絞めにされた。
うそっ! 全然気が付かなかった。
ヘタクソだけど探索スキルを展開してたハズなのに……。
「お姉ちゃんやで、静かにしてな。大きな声出したらあかん」
あ、白星さんだった、良かった。
彼女は煤だらけで身体中真っ黒だったがほとんどダメージは無い様に見えた。
さすがドラゴンは丈夫なんだね。
あ、口から煙漏れてる、面白いね、それ。
「手、放すけど落ち着くんやで」
(コクッ! コクッ!)
私は必死に頷き、騒がない事を白星さんに伝えた。
「マリアちゃんはケガあらへんか?」
「大丈夫だよ、白星さんも大丈夫そうで何よりだよ」
「ははっ、丈夫が取り柄やからね」
「私達、攻撃受けたんだよね?」
「せやな、的確に偵察部隊をつぶす手際は見事やね。これは恐らく軍隊や」
「えっ? だって私、探索スキルならずっと使ってたよ」
「そうやねん、私も警戒してたはずなのに何も感じなかった。恐らくスキルも妨害されてたかもしれん」
「妨害ぃ?!」
「し――っ、静かにな。それでもマリアちゃんのスキルは妨害しきれんかったんやな。ずっと嫌な予感、してたんやんな?」
「そ、そうだけど。撃墜されちゃったら意味ないよね?」
「でも確かマリアちゃんのカチューシャには識別信号を発信する機構がついてたん違うかったか?」
「あ、そうだね。付いてたよ。アルビー君が帝都から出る場合は絶対に手放すなと何度も言ってたよ」
「マリアちゃんはアルビー様に大切にされてるやんなぁー。羨ましい、羨ましー」
「何言ってんの?! 白星さんだって絶対に私と離れない様にって言われてたじゃん。2人一組で活動する様に。何かあっても2人で必ず無事に帰って来いっていわれてたじゃぁーん」
「へぇー、そんな事あったんか、しらんわー」
「もうっ! 私達みんなをアルビー君は大事に思ってるよ!」
「わかった、わかったって。大丈夫やで、マリアちゃんとお姉ちゃんがいれば軍隊だろうが返り討ちやで。まずは情報収集や」
「う、うん、そうだね。私達が攻撃されたのってあっちだよね」
私達は敵が居るであろう方向に慎重に歩き始める。
何かおかしいのは人々の気配はするのにスキルには何も反応が無い事だ。
森の木の向こう側に大勢の足音がする。
私達が認識疎外の魔法をMAXパワーで発動させて向こう側を覗くと……。
夥しい数の兵士は整然と行進していた。
全身鎧に身を包み鈍い光を反射させながら無言で前進している。
不気味なのは一言も発せず余所見もせず静まり返った森の中を帝国の方向に進んでいるのだ。
背後で白星さんが息を飲むのが分かった。
「これは……アンチスキルの魔法か何かがあのヨロイに掛かってる可能性が高いかもしれんね」
なに、それ?
そんなヨロイがあったら近付かれても一切分からないよね。
私自身の心臓の音もうるさい位に高鳴っている。
「う――ん、これはマズい感じやね。武装歩兵に魔法部隊、兵站部隊に鍛冶屋に医療部隊まで居るで。これは完全に全面戦争の準備やんか」
「ぜ、全面……戦争?」
「せやね。これだけの規模だと国の首都を陥落させる勢いやね」
「え、そんなに……? でもアルビー君なら勝てる……よね?」
「そうやなぁ、アルビー様なら大丈夫やろ思うけど、でも彼は今や皇帝やからな。直接の戦闘に出る事を白雪が認めるやろか」
「でも、でも、出ないと国が滅びちゃうかも」
「う――ん、確かに。これは帝国も全力を出さないと危ないかもしれへんね」
「全力かぁ……。じゃあ直ぐにでもアルビー君にこの事を伝えないと」
「そうやね。何としても帝国に帰らないといけんね」
「うん、帝国に帰らないと……」
私達はこの緊急事態をアルビー君に伝えるべく帝国に帰還する事にした。
この場から離れるべく一歩、二歩、後ずさりしたその時――。
……ペキリッ。
なんとお約束、私は小枝を踏んでしまった。
「しまったぁ……」
「マリアちゃぁん……」
「ごめんよぉ……」
静まり返った森の中に甲高い音が響いたその瞬間、一番近い位置にいた兵士が一斉にこちらを向いた。
フルフェイスのヘルメットの目の位置には何もない暗闇が広がっているのに視線を感じて正直に言って物凄く怖い。
どうやら最悪な事に見つかってしまったらしい。
私達2人でこの軍を凌ぎきれるのだろうか。
「マリアちゃんっ!! 逃げるで!!」
白星さんの切迫した声が聞こえたかと思うと腕を強く引かれた。
「うわぁ――っ!? 追っかけてくるよぉ! 白星さ――ん!」
「当たり前やろ――っ! バレたんやからなぁ――っ!」
「きしょいよぉ、あいつら、走り方がきしょい!」
後方から響くガチョン、ガチョンという金属の擦れる音に怯えながら私達はとにかく走った。
その方向が帝国とはまるで逆方向である事には気づいていながら……。
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