元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
はい、おはようございまぁぁぁああ――。
どかぁぁぁああああんっ!!
わぁああ――っ。
敵陣から撃ち込まれた魔法で私は本陣に居ながらふっ飛ばされた。
奇襲なんて受ける訳が無いと高を括っていたのは昔の話。
既に我が軍は大混乱の極致で、所謂、軍は瓦解している。
士気は失われ兵は逃亡し貴重な物資は放置されて炎上している。
ああ――
神聖国の旗が倒されて踏みつけられドロだらけだ。
どうしてこんな事に……。
私の名はラスカンティア。
バスティア神聖国の第1軍軍団長だ。
「ラスカンティア様! 大丈夫ですかぁ!!」
「むっ……、お前は?」
「第1軍特別救護隊のユーリートと申します。軍団長、……最早これまでです。一旦、撤退しましょう」
「なんだとっ!? バカな事を言うな! 私達は神聖国の第1軍なんだぞっ! 私達は最後の一兵まで戦うのだ!」
誰が見ても明らかな状況を突き付けられただけなのだが、それを認めたくないが為に有能な部下の金言に逆らってしまった。
彼のいう事はもっともである。
この戦いは……いや、最早、戦いとすら言うのも烏滸がましい。
認めなければいけない……彼にもお詫びを……。
そう思って私は彼に声をかけようとした。
「ラスカンティア様、お急ぎください。申し上げにくい事ですが……軍はもう立て直し不可能です。帝国を甘く見ておりました。貴女様だけでもここを逃れれば幾らでも再起は可能なのです。逆に貴女が捕まる事だけは我が軍3万が殲滅されても避けなければなりません! 我が部隊が囮となりますのでお逃げください!」
「な、なにを言うのだ! お前こそ逃げろ! むしろこの惨状を招いてしまったのは私の責任、1人でも多くの兵士を無事に教皇様の元にお戻しする役割がある。私はここに残り事の顛末を見極める必要がある!」
なんと彼は私だけに逃げろと言ってきた。
あまり舐めるなよ、私は絶対にここを動かないぞ……。
まずは生き残りを取りまとめて使える物資を確認せねば……。
その前に防御魔法を展開して損害を食い止めねばいけない!
私が今後の事を考えているとユーリートが何やらアイテムを懐から取り出す。
あれはまさか……。
「ラスカンティア様、ご無礼を……」
「まてっ! それは!」
私の目の前の景色は絶望的な戦場から一転、次の瞬間には遠めに神聖国の城壁が望める風景へと変わっていた。
「な、なんという事か……」
馬鹿な……。
あの様な圧倒的無様な敗戦を喫し今更どの顔で教皇様の元に戻り何をご報告せよというのか。
私は自分では気づかなかったが片膝を突き項垂れてしまった。
☆★☆★☆★
頑固なラスカンティア様をこの場で説得するのは無理だと悟る。
仕方がないので虎の子の転送アイテムを彼女に使う事にした。
くっそっ、嫌な予感がしたから念の為に持ってきた避難用のアイテムを自分以外に使う事になるとはな。
「ラスカンティア様、ご無礼を……」
「まてっ! それは!」
彼女の姿が消えて辺りに戦場の音以外聞こえなくなった。
その戦闘音すら今となっては収まりつつある。
もはや我が軍は殲滅寸前の状況である。
相手の戦略はそれはそれは見事であった。
我が軍の多大なる油断の賜物であると言われればそれまでであるが。
我が軍の後方に少数であるが精強な部隊を気づかれる事なく回り込ませ退路を断ってから浮足立った我が軍の逃げる先に伏兵を忍ばせる。
魔物を主体としていたので使い捨てかと思えばこれも強靭な伏兵であった。
ここまできたらその後の展開は赤子の手を捻る程度の手間であっただろう。
敵軍の正規兵なのだろうか、ほぼ瓦解した我が軍の正面から襲い掛かり殲滅を開始したと同時に魔法部隊からの遠距絨毯離攻撃。
こうして我が軍は完膚なきまで叩きのめされ殲滅された。
いっそ清々しい気分である。
やがて俺の前には敵軍の将であろうか。
5人の女性――少女と言うのが正しい表現か――と一人の少年が現れた。
んっ? 少年の後ろにいる子供はなんだ?
「失礼、私は子供ではないの。淑女なの」
なぜか俺の心が読まれた。
「バスティア神聖国のユーリート将校ですね。ベレルメーゼン帝国皇帝アルビットです。貴方を世界条約に基づき捕虜として帝国へ同行を命じます」
これが噂の少年皇帝か。
信じられない身体能力と魔力を併せ持ち魔王の再来と言われている魔人。
嫌な予感が当たってしまったな。
魔王もさる事ながら周りの人物も相当な手練れであるな。
後ろの子……女性が特に得体が知れない。
強すぎるな。勝てる訳が無かった。
☆★☆★☆★
戦闘が終わった様だ。
とは言っても作戦通りに初めの布陣を終えた時点で勝負は決まっていた。
もっと言えば俺達に戦争の準備をさせた時点で神聖国は負け確なのだよ。
さて、敵本陣に残っている青年は恐らくユーリートという青年将校だろう。
事前に白雪に調べてもらった通り、堅物そうな顔しとるね。
まあ、俺は彼の名前は既に知っているのだが、名前だけはね。
過去に戻っても忘れる事はない、忘れてはいけない記憶だ。
お前らはおかしいと感じる事は無かったかい?
今回の周回でここまで親密になる事ができたマリア。
俺が魔王になる周回でも学園卒業後に交流は続いていた。
その名前を100年後の世界で一切聞かない事に。
マリアを殺したのは、ユーリートという。
この男だ。
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