元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん―   作:ヨシMAX

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第59話 だから俺は未来を後悔している

 

 

 はい、おはようございます。俺です。

 

 今の周回で大活躍している割に100年後にいない人物。

 その子の名前はマリア、リアマリア・ヴァイオレット。

 彼女も魔族なので100年そこらで寿命が尽きるなんて事はない。

 

 彼女は戦場で敗れて死んだ。

 俺が反乱で討ち取られる20年前の事だ。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 「マリア……、今回の戦争に病み上がりの君が出る必要は無いんだぞ。確かに戦力的には俺達が劣っているかもしれないが……現状、それでもお前に無理をさせる程に劣勢ではないぞ」

 

 俺達は来る日も来る日も各地で起きる他国との紛争に明け暮れていた。

 そんな時に一瞬の隙を突かれ夜襲された俺達は大急ぎで本拠に撤退していた。

 マリアは前の戦闘で負傷し、そのケガが思いの外に悪化してしまった為に従軍はしていたが馬車に乗せて戦闘には出していなかった。

 

 

 「アルビー君、夜襲で被った損害は小さくはないよ。物資も焼き払われてしまったし……そのせいで私の傷も悪化してしまったしね。でも、だからこそ、私が戦わなくても大丈夫な程に余裕はないと思うけど……」

 

 

 マリアは愛馬のグラニに騎乗し俺の隣を進んでいる。

 明らかに彼女の顔色は悪いのだが俺には笑顔で話しかけてくる。

 心配をかけまいという彼女の優しさなのだろうが……困窮しきっている今と言う状況では物悲しくなってしまうのだ。

 

 

 「まあ、ようやく俺の領土まで戻ってこれたし、この街道は情報公開していないし認識疎外の魔法をかけてあるので見つかる訳はな……ぐわっ!」

 

 

 どさっ!

 

 急にマリアが馬ごと体当たりをしてきた。

 不意を突かれ俺は抵抗する事も出来ずに縺れる様に馬から落ちたのだが、どうにか俺が下敷きになってマリアを守る事が出来た。

 

 

 「どうした? マリア、何かあったのか?」

 

 

 彼女の身体を持ち上げようとしたら滑って上手くいかない。

 何故かと自分の手を見ると深紅に染まっていた。

 それはマリアの背中から流れる血液だった。

 

 マリアは2本の矢を背中に受けて気絶している。

 一瞬で彼女が俺を守って代わりに受けたと理解した。

 

 

 「魔王様――っ!! ご無、ぐふっ!!」

 

 

 随伴の歩兵が俺達の方に駆けてくるが続けて矢を喰らい絶命する。

 

 俺は彼女に向けられた弓矢の射出元を特定する為、スキルを使った。

 

 ……あの崖の上か。

 とすると、伏兵が居るな。

 なぜこの街道に……なんて考えている場合ではない。

 逃げないと……これはやられる!

 

 

「敵襲だぁ――っ!! 警戒しながら撤退しろ! 撤退ぃ!!」

 

 

 俺は急ぎ部隊に号令をかけた。

 スキルを使い隅々まで届く様にしたが逃げ切れるかはわからん。

 

 くっ、俺の馬は足をやってしまった。

 ……すまない、置いていくしかないだろう。

 

 グラニの方は無事だったので俺はマリアを鞍に乗せて騎乗した。

 

 

 「グラニ、俺が乗ってスマンが主人を助ける為に魔王城まで走ってくれ!」

 

 「ブルルゥ」

 

 

 グラニは承知を示す様に魔王城の方角を向き低く嘶いた。

 恩に着るぞ、グラニ。

 

 合図を出すまでもなくグラニは全速力で駆けだした。

 美しい灰色のタテガミをなびかせて魔王城までの隠し街道を疾走していく。

 これならば逃げ切れるかもしれない……マリア、死ぬなよ。

 

 部隊の兵士もどれほど逃げ切れただろうか。

 こんな無様な魔王についてきたばかりにこんな目に遭うなんてな。

 

 ……もう、疲れたなぁ。

 ここで逃げ切っても、またどこかで襲われてこうやって逃げ回るのかな。

 もう、魔王なんか辞めて山にでも籠るか……。

 

 

 「……アルビー……くん、なんか……厄介な事……考えてる……ね」

 

 

 背中でマリアの声がした!

 

 

 「気がついたのか! マリア、動くなよ、安静にしていろ。直ぐに魔王城のドクターに見せてやるからな!」

 

 「私も……アルビー……くんも……解毒……魔法、苦手……だもんね」

 

 顔は見えないが彼女はいつもの笑顔を浮かべているんだろう。

 彼女はこんな時でもいつも通りだ。

 

 

 「アルビー……くん、追手だ……」

 

 

 彼女は静かに絶望的な事を言った。

 確かに数十の敵影が俺の探索スキルにも引っかかった。

 

 

 「マリア、俺よりも探索スキル、上手くなったんだな」

 

 「アルビー……くんは……天才肌……だからね……少しは……努力……してね」

 

 

 おっと、痛い所をつかれたぞ。

 学生時代から俺は特に練習をしなくても一度その魔法を見ると出来てしまった。

 マリアはどちらかと言うと剣術は得意であったが魔法はそうでもなかった。

 だがこの80年間、彼女はとても頑張った、それはそれは頑張った。

 

 なのである程度の攻撃魔法は上達した様だ。

 だが彼女も俺も他人に効果を及ぼす魔法は苦手なままだった。

 彼女が唯一凄まじい勢いで上達した魔法が一つだけある。

 

 ……と、急に眠気が襲ってきた。

 俺に効果を出す程の睡眠魔法の使い手。

 それは俺の後ろに乗っているマリアだった。

 

 

 「なっ、なんで睡眠魔法……を……」

 

 「グラニ……、アル……魔王様を……頼むね」

 

 

 マリアは上体を起こすと剣を抜く。

 

 

 「まて、そんな身体で……」

 

 「私は……毒が……効きにくい……から……大丈夫……だよ」

 

 「無茶だ……、やめろ、マリア……」

 

 「……なかなか、寝ないね……、アルビーくん。……格なる……上は……」

 

 

 ドコスッ!!

 

 

 「ぐはっ!!」

 

 

 マリアが剣の柄でしこたま俺の後頭部を殴った様だ。

 なんつー力業だよ。

 

 マリアはグラニの鞍に立ち上がると追手の方角に飛んだ。

 そしてそのまま駆け出し敵軍の先頭を駆けてきた一人の将軍と一騎討ちを始める。

 

 あいつは……弓矢を撃った男だ。

 グラニ、戻れ! 戻れ!

 

 あいつは俺に気付かれない様に弓矢を射かけた手練れだ。

 あんな満身創痍のマリアがかなう訳がないんだ!

 

 戻ってくれー! グラニ!!

 

 

 「ブルルルルララァァァアアア――っ!!」

 

 「――っ!!」

 

 

 グラニに一喝された気がした。

 「マリアの命懸けの舞台を汚すんじゃねぇ!!」と言われた気がした。

 

 涙が頬を伝う。

 もう嫌だ、こんな思いをする位なら……。

 仲間や兵の命がこんなに簡単に奪われるなら……。

 俺の全てがこうも理不尽に奪われるのなら……、

 

 もう御免だ!! 

 いい加減にしろ!!

 

 もうお前達が勝手にやればいいだろう!

 俺はもう……疲れた。

 

 俺はグラニのタテガミに突っ伏して気を失った。

 その直前に後方で起きた大きな歓声を聞きながら……。

 

 

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
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