元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん―   作:ヨシMAX

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第60話 俺と神聖国という国

 

 

 はい、私はラスカンティアと申します。

 

 今、私はバスティア神聖国の大聖堂、教皇公邸にある教皇様の私室にいる。

 なぜ私如きが教皇様の私室に居るのか、……なんて事はない、呼ばれたのだ。

 

 それはそうだ。

 あの様な無様な敗戦を喫した敗軍の将の責任を追及する為だ。

 私個人の失態の為にわざわざ教皇様にご足労頂くのは忍びなさすぎる。

 それに公の場で私を処罰しない……という教皇様の優しさも感じられた。

 

 教皇様は年の頃は20代半ば、180cmを超える長身で銀髪の髪を後ろで纏め奇麗に背中に流している。

 教皇服に包まれたその体型は服の為、よく分からないがかなり鍛えられている。

 その表情はこの様な状況にも関わらずとても温和で見る者を幸せにして緊張を解す優しい笑顔を讃えている。

 

 見た目も中身も生命力と活力に溢れ、周りを包み込む優しさに満ちている。

 そもそも20代という年齢も私の推測であり正確なのかは不明である。

 あくまで噂であるがある側近が教皇様は1,000年の時を生きていると聞いた事があるという……あくまで噂であるがね。

 

 

 「ラスカンティア将軍、お話は分かりました。戦いというのは時の運です。大敗は残念でしたが貴女だけでも助かったのは僥倖でした。神への祈りを絶やさずに鍛錬すれば次の戦いには必ず勝つ事が出来るでしょう」

 

 「はい、申し訳ございませんでした。教皇様」

 

 「もう謝罪の必要はありません、大丈夫ですよ。ラスカンティア将軍」

 

 

 何と言う慈悲に溢れた方なのだろう。

 3万の軍を一人残らず失ったこの私の罪を許すと申されている。

 この上は邪神様への祈りを今まで以上に捧げて再度軍を整えて汚名返上の機会を待たねば……。

 

 

 「謝罪の必要はありません、ラスカンティア将軍。ただ少し協力して頂きたい事があります。話を聞いていただけますか?」

 

 「私に……!? 是非にっ! 是非、私にお申し付けください!」

 

 

 教皇様の為に、教皇様の大恩に少しでも報いる事が出来るのであれば!

 この私の命など軽いものだ、最高の成果を出して見せる!

 

 

 「この魔道具を身に着けて再度ベレルメーゼン帝国に進軍してください。……今度は貴女一人で、ね」

 

 「えっ?!」

 

 「どうかしましたか? ラスカンティア将軍?」

 

 「き、教皇様……、私は……この国の為なら、教皇様のご指示であれば命を懸ける事も厭いません。ただ、私一人で彼の国に向かっても何もできずに死ぬのが落ちかと……。も、もちろんっ! 全力は尽くします! 尽くしますが……!」

 

「大丈夫ですよ」

 

 「……はっ?」

 

 

 私には教皇様が何を言っているのか理解できなかった。

 この敗戦を喫する前には……私が帝国を見下していた頃なら、この提案に乗ったかもしれない。

 だが帝国の実力が分かった今となっては無謀も無謀、何もできずに殺されるのが手に取る様に分かってしまう。

 

 ただ、教皇様はこの魔道具があれば大丈夫と言う。

 ……一体、どういう意味なのだろう。

 

 

 「この魔道具デーモンズリングは貴女をアーチクラスのデーモンにします」

 

 「……、……、……は?」

 

 

 教皇様は何を仰っているんだろう?

 私はこの魔道具の噂を聞いた事がある。

 これを使用するとアーチクラスのデーモンに変異する事が出来、凄まじい戦闘力を発揮できるが一度変異したら2度と元の姿には戻れないという事だ。

 

 

 「教皇様……、私にその魔道具を使えと仰るのですか……?」

 

 「おや? 何か不都合でもありますか? まさか使わない……と言う事ですか?」

 

 「いえ! そう言う訳では……。ただそれを使うと2度と戻れないと聞いていたもので……」

 

 「ええ、よくご存じで。この魔道具を使うと2度と脆弱な姿に戻る事はありませんよ。アーチクラスと言えばロードクラスに次ぐ高位悪魔です。1個体で幾つもの国を滅ぼした記録もあります。その能力を持てるのであれば元の姿等必要ないのではありませんか?」

 

 「た……確かに戦力的には申し分ないとは思いますが……戻れないのは……」

 

 「私の言葉は邪神様の言葉……」

 

 

 ――!

 私は息を飲む声にもならない声が自分の喉から発せられたのを聞いた。

 教皇様の指示に答えられなければこの国では生きていけない。

 彼は自分に協力と言ったが……そんな事はどうでも良い。

 この国では教皇様の仰る事が絶対で、全てで、正義なのだ。

 逆らうなどと言う選択肢は……ない。

 

 ただ……人の姿で彼を……ユーリートを助けに行きたい。

 私の代わりに命を投げ出してくれた彼を……。

 

 

 「えっ?!」

 

 

 私は急に身体の自由が利かなくなった事に気付く。

 周りを見ると私は高司祭2人に羽交い絞めにされていた。

 

 

 「どういう事ですか!? 教皇様! これはっ?!」

 

 「どうと言う事はありません。私が付けて差し上げますよ」

 

 「やっ! やめっ!」

 

 

 無情にも私の左手に魔道具がはめられた感触がした。

 どす黒い何かが魔道具から私の中に入ってくる悍ましい感覚。

 抑えられない破壊と怒りの衝動が思考を塗りつぶしていく。

 

 

 「ああ、言い忘れましたが……アーチデーモンに変異したら魔族としての理性は無くなります。デーモンは基本理知的ですが私が魔道具を改造しました。破壊衝動だけを残して他の感情は削ぎ落しておきましたので、快適ですよ……」

 

 

 それでは最早、獣ではないか。

 私は……どこで……間違えたのだろう。

 

 

 

 

 




ここまで読んでくださり有難うございます。
宜しければ評価いただけると嬉しいです(*´▽`*)
アルビー君と対等に渡り合える敵役が欲しかったので教皇様登場です。
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