元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
はい、おはようございます。俺で~す♪
現在、俺はバスティア神聖国から来たアーチデーモン部隊の対応の為、出陣している白雪部隊に従軍している。
アナとマリアのBG君主体の部隊を先行させた為、今回は帝国の兵士も大分混じっている。
それは先のあの大戦を生き延びた帝国兵と帝国民から志願した者達を含めた5,000人程の部隊だ。
え、先の大戦ってなんだって?
そりゃあれだ、BG軍団による帝国の城崩壊事件――36話参照――の事だよ。
とにかく俺は現在とても浮足立っている。
なにしろ久しぶりの戦場なので抑えようと思ってもウキウキしてしまうのだ。
そんな俺の気持ちが溢れてしまったのか白星が怪訝な表情で話しかけてきた。
「アルビー様? なんでそんなにワクワクしとるん?」
「えっ? 俺、そんなに分かりやすくワクワクしてた?」
驚いた。
普段、そんなに感情を表に出さない様に気を付けていたのだがそんなの関係なく嬉しさが表に漏れ出してしまったのだろうか。
「何を意外な顔をしてるん? アルビー様は考えてる事が分かりやすいねん」
「ぐぬぬ……、だって久々の出陣なんだ。多少、心が躍ってしまっても、それは仕方のない事だろう?」
「出陣で心が躍るなんて……皇帝陛下は魔王様の様ですね」
「ん? そうだが?」
「「「「へっ?」」」」
白雪と白星、ミツキとハツキが同時に声を上げた。
んっ? 俺は何かおかしな事を言っただろうか。
俺は俺と仲間達を邪魔する者が居る限り悉く沈める決意をしたのだ。
それならば俺は自ら魔王を名乗ろうではないか。
スローライフとか後回しだ、まずは邪魔ものを排除する。
慈悲は――ない。
俺は行軍する部隊から騎乗する騎馬を駆け出させ少しだけ先行する。
そして部隊の方向に向き直り白雪達や兵達を見る。
みんな、俺が何を言うのかを待っている様だ。
「いいか、みんな! 俺はこの日、この時をもって皇帝の位を辞し魔王を名乗る事に決めた!」
俺の言葉を頭の中で繰り返してようやく理解したのか、一瞬の静寂の後、兵達が一斉に歓声や咆哮を上げた。
しばらくの間、思い思いの反応を示していた兵達だったが俺はそれを静かに見守り落ち着いたのを待って言葉を続けた。
「俺は元々はサンレイム士官学校の士官候補生に過ぎなかった。平凡に魔王軍士官として軍務に従事して平和に生きていくつもりだった。……だが!! 世界がそれを許さなかった! 丹精込めて自分の住みかを作り上げた島を襲撃し! 今度は発展の為に力を尽くしていた帝国に攻め込んでくる! だから俺は決めた!」
俺に5,000余りの視線が集まり次の言葉を待っている雰囲気を感じる。
……俺、こういう沈黙が苦手なんだよね、わろうてまう。
おっと、いかん。
悪い癖が出たぜ。
「俺の邪魔をするなら、俺に故意に悪意を向けてくるなら! 徹底的に潰す! 俺の全力でこの世に塵一つ残らない程に叩き潰す! 俺はこの世界を統一する!」
この場を包む空気が一瞬張りつめ、弾けた様な感じがした。
俺は右手を突き上げ後方にいる5,000人に向けて声を張り上げた。
「この世の果てを見たい奴は……俺に付いて来いっ!!」
「「「「「おお――――っ!!!」」」」」
皆が俺と同じ様に右手を突き上げて高々と咆哮を上げた。
地面を揺るがす様な轟音が辺りに響き渡る。
いいね。
兵達の鼓舞には成功した様だ。
俺は前の人生でも魔王だった。
だがそれは前任の魔王が逃げたから回ってきただけであって根回しも子飼いの直臣も居なかった俺には苦難の道のり以外の何物でもなかった。
俺の魔王就任直後には魔王軍は既に半ば瓦解状態。
俺の実力のみで纏めてる様な有様だった。
それはそうだろう。
如何に俺が優秀でもポッと出の若造がいきなり魔王だ。
内部から崩壊し各地から攻め込まれ挙句の果てに側近から裏切られて死ぬとか。
今回は仲間を募り本拠地も整備し人員も揃える。
そして何より俺自身が大体的に先頭に立って世界を席巻するつもりだ。
世界の損害を気にして以前は全力を出すのに躊躇してしまったのだが、もう遠慮する事はやめたのだよ。
「よしっ! まずは我国を脅かす悪魔を征伐に行くぞ! 俺に付いて来い!」
決まった。
後は颯爽と戦場に到着してザコ悪魔共をワンパンで退治すればOKやな。
俺が久しぶりに戦場に立つこの日をそれに相応しい勝利で飾ろうじゃないか。
そんな事を考えながら騎乗から雲一つない空を見る。
……ん、何だあれは。
遥か彼方上空に黒い点の様な物が現れそれが段々と数を増やしていった。
なんだろう……渡り鳥の群れかな?
一瞬、その鳥の群れらしき黒い点が光る。
……マズい!!
俺は言い様の無い不安に焦る。
反応出来る限りの速度で部隊の前方に防御魔法を展開させるが、正直、スピード重視なので防御力自体は落ちる。
……が、それでも俺の防御魔法は一般の魔導士のそれとは雲泥の差がある。
俺は初めの防御魔法とは別に更に同じ魔法を3重に展開させた。
合わせて4重の防御魔法だ。
本来ならこれで部隊は完璧に守られるはずだった。
光から2秒後に着弾!
瞬く間に3枚の防御魔法が破られる。
馬鹿な……。
さすがの俺も驚きを隠せなかったが動揺しつつも両方の手でアンチマジックの魔法陣を描き既存の防御魔法の崩壊に備えた。
最後の1枚が破られた瞬間、俺は着弾した攻撃魔法らしきものを受け止める。
……なんて……圧力だ。
この俺をここまで追い込む魔法を放てるなんて神聖国の司祭級じゃないのか。
やばいぞ……、くだらない事を考えている場合じゃない。
魔王になるなんて偉そうな事を言った直後に奇襲で死ぬとかありえん!!
「ぬぅおりゃぁぁぁあああああ――っ!!」
「陛下っ!!」
「アルビー様! 無茶したらアカン!」
「「アルビー様っ!!」」
光は徐々に小さくなりやがて消えると辺りに静寂が戻ったのだった。
前話と同じ様な引きになってしまいました。
油断……ではないでしょうが多少浮かれすぎたのかもしれません。
ここまで読んでくださり有難うございます。
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