元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
第67話 俺は未来に帰ってきた
正体不明の攻撃を何とか耐えきって辺りに静寂が戻った。
「ぷは――っ、耐えたったぜ~。さすがの俺も死ぬかと思っ……」
んっ?
俺は何とも言えぬ違和感を感じて辺りを見回した。
俺の近くに誰もいない。
俺の周りの地面が吹っ飛び、周りは荒野で、さっきまで近くにいた白雪姉妹とミツキ、ハツキ、そして部隊の皆が見当たらない。
ま、まさか、みんなはさっきの攻撃で吹き飛んでしまったのだろうか?
俺は埃っぽい風が吹きすさぶ荒野で膝から崩れ落ちる。
なんてこった、全力で防いだはずなのに俺だけが助かってしまった。
……けど、おかしいなー。
俺の魔法なら軽く半径500メートルは完全に防御できる性能があるはずなのだが。
俺は何の気なしに顔を上げる。
……と、瞬間的に息を呑んだ。
ここは……っ?!
「俺が死んだ魔王の館……跡か」
俺の目の前には一通り焼け焦げて崩れ落ちた魔王の館があった。
ただし、俺が死んでからかなりの時間が経っている様で燃えた跡が燻っている様子はなくハッキリ言って遺跡と呼ぶのが相応しい位の古さがある。
「これは……どういう事だ?」
俺は慎重に確認しながら歩き回ったのだが間違いなく俺の館……跡だ。
「間違いなく俺の住んでた館だ。……いったい今はいつなんだろう」
俺は確かにダメ神に過去の世界に飛ばされたはずだ。
実際に俺の今の姿はピッチピッチの18歳のアルビー少年である。
試しに集中してみたが身体中に十分すぎる満ち足りた量の魔力が駆け巡った。
強力な攻撃を耐え抜いた後にしては漲《みなぎ》る気力、頗《すこぶ》る絶好調である。
「君――ぃっ!! 何をしてるんだわっ!」
わっ!
ビックリしたっ!
俺が自分の身体の性能に惚れ惚れしていると突然怒鳴りつけられた。
声のした方向、背後を振り返ると……。
魔女帽子を深く被った少女が目の前に立っていた。
なにやらとてもお怒りのご様子だが何で俺は怒られたのだろうか。
「そこは魔王様の館の遺跡なのだわ! 国指定の保護施設なんだから近づいたり触ったりしたらいけないのですわ!」
やっぱりこれは俺の館の……遺跡なのか。
という事はここは俺の没後何年なのだろうか。
うん、ちょうどいい所にこの少年が現れたのだ。
この子に聞いてみる事にしようと俺は思った。
「おい、少女よ。すまないが今、魔王歴何年なのか教えてくれな……」
「おい、君。今なんて言ったのだわ?」
んっ?
少女ちゃんが急に雰囲気を変えて詰め寄ってきた。
ゴゴゴッという凄まじい威圧感まで感じる。
とにかくこれでは会話をする所の話ではない。
まずは落ち着かせなければ。
「どうした? 少女よ。何か気に障る事でもあったか?」
「き――っ!! また言ったんだわ! 許さないだわ! 絶対ニダわ!!」
うおっ!
少女は両手を振り上げて激しい憤怒を俺にぶつけてきた。
「落ち着き給えよ、少女。俺はただ今が魔王歴何年なのか教えてほしいと言ってるだけなんだが……」
「魔王歴ぃ?! そんなの魔王歴120年に決まってるのだわ。何言ってるのだわ、お兄さん」
近い、近いよ。
少女、俺はそんなロリ趣味は無いから少し離れてくれないか。
……というか今、魔王歴120年なのか。
俺が死んでから2年経っているんだな。
そりゃ俺の館も廃墟になるよね、遺跡とか良く言ってるけど廃墟だよね。
それに俺がまたまた、今度は未来に飛ばされた理由も全くわからん。
俺と悪魔の魔力が衝突して摩訶不思議なエネルギーでも発生したのだろうか。
「こら――……、私の……、聞きな……」
果たしてそんなアホみたいな理由で未来に飛ばされるなんて。
しかも絶妙に俺が死んだ2年後にばっちり送られるなんて……。
「ねぇえ――……、話を……、聞いて……」
何者かの意思が働いているとしか……、んっ?
「すんすん、どうせ私の事なんてどうでもいいんだぁ、すんすんすん」
「どうしたんだい? 少女よ。何かあったのかい?」
我に返って少女を見ると悲しそうにすんすんと泣いている。
とても悲しそうだ。
誰がこんな小さな可愛い少女を泣かせたのだろうか。
「大丈夫かい? 少女よ」
「大丈夫な様に見えるのだわ?」
「見えない」
「くっ、どいつもこいつも私をバカにしてぇ、私の話を聞いてって言ってるのだわ! お兄さんはぁ! こんな所で何してるのだわぁ!」
「うむむ、俺はどうやら102年前の過去から飛ばされてきたようだ」
「あら、そうなのだわ」
「……」
驚くほどに、すんなりと受け入れられた。
別に可哀想な人物と思われてる訳でもなさそうだ。
本当に俺の言った事を信用してくれたのか。
「君の魔力は……何だかおかしいのだわ。この時間の魔力の様ではあるけれども……なんだか消えてなくなってしまいそうな儚さもあって……。だから今の言葉を聞いて100%の確信を得たのだわ。あなたは時間旅行者、タイムトラベラーね」
凄いな。
こんなにもあっさり俺の状況を理解してくれるなんて。
身寄りも知り合いも既に居ないであろう今の俺にはとても有難い存在だ。
それにしても……。
「おい、少女よ。その
ふふん、恐れ入ったか、少女よ。
俺は……正確には18歳だが精神年齢的には約120歳なのだよ。
「あら、なら君が私を敬って諂うべきなのだわ。私は1,200歳を超えてるのだわ。それに私にもクレメンティーネ・ルクシアスという名前があるのだわよ」
なんかこの少女、年上だった。
そんで俺の身内だった。
ルクシアス家は俺の一族しかいないはずなのだが……。
「似てると思ったけどやはり君はアルビットなのだわ。でも、アルビットは2年前に死んだはずなのだわよ。だから君は過去から来た若き日のアルビットなのだわ」
「凄いな……君」
「私はルクシアス家の始祖なのだわ。君は私の子孫なのだわよ」
「えっ?! ご先祖様?!」
「君、自分が死んだ後の世の中がどうなったか興味あるのだわ?」
「ほほう、どうなったんだ?」
「君をハメたヴァルクス将軍とムカル宰相は覇権を争った挙句、共倒れ。反乱に加担した地方領主も含めて裏で糸を引いていたバスティア神聖国に全てのみ込まれたと言う訳なのだわ。君が命を賭して作り上げた魔王国は教皇一人の野望に振り回されたと言う事なのだわね。神聖国は神罰と称して反乱分子を潰してやりたい放題で国民は地獄を見てるのだわよ」
俺が死んだ後の魔王国、地獄過ぎないかね。
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アルビー君のご先祖様の登場です♪