元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん―   作:ヨシMAX

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第68話 俺とご先祖と未来の神聖国

 

 はい、おはようございます。俺です。

 

 俺はアーチデーモンの攻撃を受けた拍子に自分が死んだ2年後の世界にタイムトラベルしてしまった。

 そしてそこでクレメンティーネ・ルクシアスという幼女……女性に出会った。

 なんとその娘はルクシアス家の始祖だと言う。

 

 そうすると俺のご先祖様という事になる。

 実際、彼女は自分で1,200年の時を生きていると言っていた。

 普通、魔族は500年も生きれば相当の力を有すると評価される。

 それに単独で別個体、所謂、子供を生み出す事も可能になる。

 

 その娘、クレメンティ―ネは俺をも唸らせる洞察力、考察力を併せ持ち、今になって冷静に考えると俺に気づかれずに至近距離まで近づく魔力操作も持っていた。

 彼女の言っている事を俺は信じ始めていた。

 

 

 「それで君はこの後はどうするつもりなのだわ?」

 

 「んっ? ああ、……どうにかして102年前にまた移動できないかなぁ」

 

 「うーん、……現状、どうすれば君が過去に戻れるかは私にも分からないだわ。ただ同じシュチュエーションが再現できるのならチャンスはあるかもしれないだわ」

 

 「同じシュチュエーション?」

 

 「君がアーチデーモンの攻撃魔法を防いだ時のエネルギーが何らかの作用を起こし過去に移動するという現象を引き起こしたと思われるのだわ。だから同じ様なエネルギーを君にぶつければ現象が再現するかもしれないのだわ」

 

 「……同じエネルギーをぶつける……だと?」

 

 

 無理だよ。

 俺、もう一度あんなの喰らったら死んじゃうやんけ。

 いくら完全無欠な俺でも出来る事と出来ない事があるんじゃい。

 

 

 「自信が無いのだわ?」

 

 「そりゃそうだろ。俺だって普通のか弱い魔族だぜ」

 

 「か弱いが聞いて呆れるのだわ」

 

 

 酷い言い草だね。

 神聖国の俺に対する仕打ちは噴飯ものであるが怖い思いをするのはもうこりごりでもある。

 

 

 「でもそれでいいのだわ? 自分の国が滅ぼされて味方も死に歴史の汚名まで擦り付けられて悔しくないのだわ?」

 

 「歴史の汚名だと?」

 

 「教皇を始め神聖国は今の民の困窮は魔王アルビーの所為にしているのだわ。その他にも君に親交のある魔族達も死後に様々な汚名を着せられているかしら」

 

 

 ぷちぃ――んっ!

 

 

 俺の中で何かが切れた。

 もしかしたら俺は切れやすい性格なのかもしれない。

 もしくはこの娘は俺を上手く利用しようとしてるのかもしれない。

 でも俺だけならともかく仲間まで死んでも貶めようとする魂胆が許せない。

 

 

 「私は別に君を利用しようなんて考えていないのだわ。私は君の過去に戻るお手伝いをするだけなのかしら。そのついでに神聖国を粛清出来たら儲けものなのだわ」

 

 「少……ご先祖程の実力者なら神聖国や教皇位、簡単に倒せそうだがな」

 

 「簡単ではないのだわ。私は確かに悠久の時を生きて来たけどその代わりに事象に関わる力が薄れてきたのだわ」

 

 「……それは老化とはちが……」

 

 「それ以上言ったら殺すのだわ。子孫でも関係ない、絶対に殺すのだわ」

 

 「なんかスマン」

 

 

 ☆★☆★☆★

 

 

 俺はクレメンティ―ネにお願いしてバスティア神聖国に来てみた。

 灯台下暗しとは良く言ったもので前世や過去で苦しめられたのは事実なのだが実際に俺は神聖国に来た事は無かったのだ。

 

 一体全体、俺にあれだけ敵対してきた彼の国はどういった所なのだろうと来てみたら……驚愕した。

 

 白壁に藍色の屋根の建物が規則正しく並んでおり間を美しい石畳が繋いでいる。

 緑も多く寺院などの宗教施設が充実していた。

 そしてそんな街の中でも一際大きく威風堂々とした佇まいなのが教皇の住まうバスティア大聖堂である。

 

 街の中心にある小高い丘の上に大聖堂がありその麓に大小の寺院が並んで更にその下に国民が済む街がある。

 

 王でもないクセに国民を高い位置から見下しやがって……宗教家ってやつはどうも好きになれないぜ。

 

 

 「権力者と言うのはどれも似た様なものだわ。魔王アルビーが変なのかしら」

 

 「ひどくね」

 

 「国民と同じ目線を忘れない為に城は築かず平屋の館に住み、魔王自らが農業と酪農の年間事業計画に参加するなんてのは聞いた事ないのだわ」

 

 「おかしかないだろうよ。国の礎は民あってこそ。民を蔑ろにすれば必ずしっぺ返しを食らうんだ。俺はそれで滅んだ国を幾つも知ってる」

 

 「その内の半分は君が滅ぼしたのだわ」

 

 「確かに俺は敵対した国を幾つも滅ぼした、が、腐った王族や貴族は俺の国に併合する前に処分したまでだ。腐ったまま併合したら俺の国も腐るしな。それに関係のない民達は必ず戦争前に安全な場所に転送し戦後もその責任を追及した事は一切無いと思うが」

 

 「そうなのだわ。そして君はその後の亡国の民の生活も全力で支えてきたかしら。悪意があった訳じゃないのだわ。気を悪くしたのなら謝るのだわ」

 

 「いや、俺も気にしていない。誤解を解消しただけだ」

 

 

 俺とクレメンティ―ヌがそんな会話をしていると道を行く人達が急に膝まづいてお祈りを始めた。

 ふと大聖堂の方を見ると大きな時計があり丁度正午だった。

 お昼のお祈りとかなのかな。

 

 

 「今日の糧も平和な時間も教皇様が国民の為に祈りを捧げてくださるお陰なのです。みなさま、祈りと感謝、そして寄付を忘れなく!」

 

 「下品な説法だな。というか説法にもなっちゃいない、強請、集りに近いな」

 

 「あんまり大きな声でそんな事を言わないのだわ。目をつけられて動きづらくなるかしら」

 

 「だが安心した。俺がいた102年前と比べても順調に神聖国も腐ってたぜ」

 

 「……滅ぼす気なのだわ?」

 

 「教皇は元々倒そうと思っていたよ。その過程でその後を託せる人材が見つかればいいな。それに教皇と戦えばアーチデーモン級の攻撃を受けるチャンスが来るかもしれない」

 

 「私は絶対に……」

 

 「期待していないさ」

 

 「……」

 

 「……」

 

 ――――

 

 ――

 

 何だろう、静かな怒りを感じるのは気のせいだろうか。

 

 

 




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