元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
はい、おはよう。私なのだわ。
私は2年前に滅んだ可愛い子孫である魔王アルビーの館に山賊が住み着かない様に今日も見張りに来たのだわ。
私は長い事生きているのだけど歴史を変える程の干渉は出来ないししない事にしているかしら。
なぜなら私が何をしても結果が変わらない事を自分自身で嫌と言う程に確認してしまったからなのだわよ。
あとは私の力も年を追う毎に衰えてきてしまったからなのだわ。
まあまあ悲しい現実を見たという事かしら。
その日は何か胸騒ぎがして遺跡の近くまで様子を見に行ったのだわ。
そしたらなんか魔王アルビーがいたじゃないの。
最初は似てるなと思ってただけだけど話を聞いているうちに確認をもったかしら。
確かに死んだはずなのにおかしいなと思っていたら過去から来たとか話す始末。
私の子孫はおかしな奴が多いと思ってたけど極まれりだと思ったのだわ。
私は魔王アルビーの死後世界がどうなったのか、現在の神聖国の薄汚い有様を彼に話して伝えたのだわ。
ついでに彼に親交のある勢力が悪意にまみれて滅んだ話もしてあげたのかしら。
そしたら彼の頭の方向から何かが切れる音が聞こえたわ。
その後、私は彼の希望を聞き彼をバスティア神聖国に連れてきたわけ。
なので私は魔王アルビーに聞いてみたのよ。
「で、君。神聖国をどの様にして滅ぼすのかしら?」
「ん? 物理、及び魔法によるみなご……完全制圧だが?」
「絶望的に脳筋だったのだわ」
「何か問題でも?」
「……神聖国の兵士が総勢どの位いるかご存じなのかしら?」
「ん――、情報部門や補給部隊を含めて10万人位か?」
「140万人なのだわ」
「は?」
「140万人と言ったのだわ。神聖国は宗教国家なので国民全員が兵士なのだわ。教皇はいざとなったら『聖戦』という儀式魔法を使うのだわ。そして君が現れると同時に神聖国全体で不自然な魔力の流れが起きつつあるのだわ」
「まじか……。俺がここに来るのもバレているのかなぁ。くっそぉ、国民全員を殺す訳にもいかんが教皇の野郎をこのままにしては置けないしなぁ」
そんな事を言いながらアルビーは私の方をチラチラと見てきたのだわ。
それにしても……ほらほらほら、来たのだわ。
思ったとおりかしら。
私の力に頼ってくると思ってたのだわ、……だけど。
「残念ながら私の力は役に立てないのだわ。期待してもダメなのかしら」
「おと……事象に関わる力が薄くなったって奴かぃ?」
「そうなのかしら。私の能力ではせいぜい視覚に収めた生命体を一日眠らせる位なのだわ」
「はっ?」
「ほら、見なさいな、しょっぱくてしょぼい能力だと思ったのだわ。私をバカにするなら命を懸けるかしら」
私は全身の魔力を活発に流して極大魔法の準備をするかしら。
彼なら耐えるでしょうけど万一、このまま未来に飛んでしまってもモヤモヤするので半分は冗談なのだけど……。
「……してない! してない! メチャクチャ強いじゃないか! どんな相手でも1日眠らせるのか?! それは視覚に収めさえ出来れば人数は幾らでもいけるのか?!」
「近い、近いのだわ! 先祖に食指が反応するなんて変態なのだわ! 先祖プレイなのだわ!」
私の能力を聞くなり魔王アルビーは私の肩をガッチリと掴んで鼻先が付く程に顔を接近させ質問してきたのだわ。
私が声を上げるとアルビーはハッとして肩を離すと頬を搔きながら詫びたかしら。
なので許してあげたのだわ。
……なんだかドキドキして顔が暑くてしかたないのだけど何とか気を落ち着けて彼の質問に答えるのかしら。
「私よりも魔力が大きければ大きい程に眠る時間は短くなるのだわ。だけど戦闘力ならともかく魔力であるならこの時代で私にかなう人物はいないのだわ。教皇でも半日程は練るかした。あと視覚に収めればと言う話は君の言う通りかしら。何万人、何十万人、何百万人、何千万人……」
「分かった、分かった。人数は分かったから続けてくれ」
「こほん。私の視界に入りさえすればその効力は発揮されるかしら」
「なんてこった……。これは簡単に神聖国を落とせるぞ」
魔王アルビーは邪悪な笑みを浮かべて考えを巡らせるのだわ。
我が子孫ながら恐ろしい子なのかしら。
☆★☆★☆★
神聖国に忍び込んだのは良かったのだがクレメンティ―ネが言うには俺の敵はこの国の全ての国民140万人だと言う。
教皇の使う儀式魔法『聖戦』によりバスティア神聖国で祝福を受けた国民は洗脳状態となり死を恐れぬ戦士となるのだそうだ。
ちなみに神聖国の国民は産まれた時と成人した時、そして結婚した時に祝福が義務付けられている。
なので俺の敵は140万人の国民全てという事になる。
ちなみにもちろん死んだ時にも祈りを捧げるのはバスティアの司祭達だ。
噂の域を出ない話ではあるが神聖国は死体さえも兵士として使役するという。
まあ、噂は噂でしかないのだが……。
クレメンティ―ネによると少なくとも聖戦が発動しそうな兆候が見られるという。
そうなると俺の敵は140万以上と想定しておくべきだろうな。
でも死体であるならば俺の魔法で一瞬で勝負はつくからまあ良いか。
はてはて、生きてる連中はどうするか……なんて悩んでいる振りをしながらクレメンティ―ネの方をチラチラと見ていると彼女はとんでもない事を言い始めた。
クレメンティ―ネの能力の一つでなんと視界に収めた人物を1日単位で眠らせる事が出来るというのだ。
俺は当初、大聖堂に真正面から乗り込んで千切っては投げ、千切っては投げ……教皇が出てきたら最大火力で葬ろうなんて考えていたのだが……。
正直なところ、140万人なんて質より量も甚だしいし殺さずに何とか出来る様な数字ではない。
だが彼女の能力ならどれだけの人数が居ようとも傷つけずに武装解除できる。
ならば国民を1か所に集めてしまえばよいのだ。
一流の戦略家としての俺様の頭脳を見せつけてやろうではないか。
俺はこれから起こる事を妄想していると思わず頬が緩む。
なんだかクレメンティ―ネが怯えていたのだが俺のご先祖様を脅かす奴は許さないと俺は思ったのだった。
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