元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
はい、おはようございます。俺です。
俺とクレメンティ―ネはバスティア神聖国で潜伏し数日が過ぎた。
恥ずかしげもなく魔王アルビー様を討ち取った教皇を狙うチャンスが無いか街中を駆けずり回り情報収集を重ねた。
そんな毎日を過ごす中で俺達は有効な情報を得る事に成功した。
俺達を倒し残党もほぼ掃討した教皇が勝利宣言と共に法王に就任するらしい。
俺には良く分からないが教皇は宗教的な指導者の意味合いが強く、法王は政治的な側面を持つと言われている。
法王に就任するという事でそれまでは協会の指導者的立場であったのが本格的に国のトップとして動き出すつもりなのだろう。
本人も相当に気合が入っているという事かその日は街の真ん中の協会広場で演説を行うそうだ。
そうなればもちろん国民は広場に集まる。
さすがに140万人全てが広場に集まる事はない。
だがここで注目。
教皇の演説は通信式の魔道具で街中に電波で送られ各家庭の受信器具で映像として受け取られ国民が見る事になる。
それだけならそれがどうしたで終わる。
だが、クレメンティ―ネのスキルが更に驚愕する性能なのが電波でつながっている状態であれば魔道具を通して受信側の人間も眠らせる事が出来るのだそうだ。
なんじゃそりゃの世界である。
都合が良すぎるだろうが。
まあ、さすが俺のご先祖なだけはあるな。
……と言う訳で俺達は策を弄した。
教皇の演説は明日。
それまでに送信式のより強力な魔道具を手に入れ教皇がどこでどの時間に演説を行い協会の送信式魔道具がどこに設置されるのかを調べつくした。
「おいおい、君。さも自分が苦労したみたいなモノローグは止めたまえなのだわ」
「ご先祖御も心を読んでくるのかよ。恐ろしいな」
「君の考えは顔を見てれば手に取る様になのだわ」
「なるほど、道理でご先祖も考えが分かりやすい訳だ」
「……! 私もチョロかったのだわ……」
「もちろん俺は情報収集の様なこまい作業が苦手なのでご先祖の手を借りたぞ」
「誰に言っているのだわ?」
気にしないでもらおうか。
それにしてもクレメンティ―ネは力を貸さないと言いつつ結構な感じで手伝ってくれた。
なんだかんだ言って子孫は可愛いのかな、てへっ。
☆★☆★☆★
何事もなく夜が明け演説当日。
通信の魔道具は教皇の演説席を上空から捕らえられる様に広場の南側、高い建物の屋上に取り付けられているらしい。
俺とクレメンティ―ネは周りを警戒しながら該当の建物の屋上へと向かう。
クレメンティ―ネは自分だけでも大丈夫だと言い張ったが俺の都合で彼女を動かしている以上、彼女の安全は俺が担保しなければな。
「君、敵は屋上の入口に1人、魔道具の側に2人なのだわ」
訂正、彼女だけで大丈夫だったかもしれん。
俺は気を取り直して敵を始末するべく物音も気配も消して動き出した。
右手に凄い剣を出してまず正面にいる敵に一閃。
「うわっ! 誰……」
敵は言葉の途中で崩れ落ちる。
「……殺したの?」
「いや、気を失っただけだ。凄い剣は意識だけ絶つ事も出来る」
「ダサ……、分かりやすい名前なのだわ。私のスキルよりその剣の方が有用に思えるかしら」
「俺に140万人を切って捨てろと? それが嫌なのでご先祖に頼んだんだぞ」
「そうだっただわ」
「さっきの敵の声は聞こえてなかったんだな。残りは奥か」
俺達は通信魔道具を制圧するべく右側に折れた屋上の奥側に向かう。
そして物陰から飛び出すと先ほどの巻き戻しの如く凄い剣を振るう。
見張り2人は不意を突かれて同じ様に崩れ落ちた。
「鮮やかなのだわ。魔王の肩書はエセでは無いようなのかしら」
「見張りだから手練れの可能性も考えたがどうやら大丈夫らしい」
「君の戦闘力が高すぎるのだわ」
酷いね、人を人外の様に。
俺は屋上越しに広場を見ると既に教皇が到着し国民の声に応えている最中の様だ。
今に見てろよ……という気持ちを抑えつつ魔道具を見る。
淡く白色に輝く魔道具は水晶の様でその中央に広場の様子を映していた。
呼吸をする様に白色の光は明滅を繰り返している。
「大丈夫。既に通信状態になっている様だから直ぐにでもスキルを使えるのだわ」
「ご先祖様、行けそうかい?」
「モチのロンなのだわ」
クレメンティ―ネが念を込めて水晶に触れると若干映像が乱れるがやがて効力が出始め白い光が街中に散らばっていった。
そして一瞬の静寂の後、街の気温が少し下がった様に思えた。
広場を見るとその効果は一目で次々と広場に集まった国民が意識を手放し始めたのが見えた。
「凄いぞ! ご先祖、上手く行ったな!」
「浮かれてる暇はないのだわ。もう気づかれているだわ。広場に急ぐかしらぁ!」
「分かっているよ!」
俺は屋上から飛び出し空中を滑空し華麗に広場に降りるつもりだった。
だが悲しいかな、俺は高所恐怖症だった。
途中でバランスを崩した俺は広場の真ん中に頭から突っ込んだ。
どかぁあああ――ん!!
いたたた……。
周りの地面の抉れ方を見るに相当な破壊力で地面に叩きつけられたらしい。
「いたたで済むのが信じられないかしら」
クレメンティ―ネが呆れた様に側に着地した。
そう言うなよ、俺だって今の今まで忘れてたんだから。
全く元魔王なのにさえないね。
「ふっ。やはり来たか。魔王アルビーとクレメンティ―ネだな」
おっと、なぜか身元が完全にバレているのだが?
教皇は周りの人間すべてが意識を手放している現状に驚くでもなく慌てるでもなくいつもの通りの様子で話しかけてきた。
「どうしてわかったのか……と言う様な表情だな。当然だ。私は教皇だからな、いや、今日から法王か。私の能力なら未来を覗く位は容易いのだよ」
相変わらず何を言っているのか。
このおっさんとは生前から接点はあったが正直ずっと苦手だった。
挙句の果てに俺を討伐した黒幕なのだ、好きになれるはずがない。
ここでお前との因縁を断ち切らせてもらうぞ、教皇!
ここまで読んでくださり有難うございます。
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