元魔王は平和に暮らしたい -俺が殺したい程に必要ないなら勝手にしろ ただしスローライフを邪魔するなら絶対に許さん― 作:ヨシMAX
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サンレイム魔王軍士官学校
それは絶海の孤島サンレイム島にある。
この島は訓練生の生活だけで経済が成り立つ程のマンモス校であり、ヒンガーナイン家の重要な資産の一つなのだ、……ああ、ヒンガーナイン家はネンダーテイル君の実家の侯爵家だ。
普段、この島に侯爵様はおらず代官が政務を務めているはずなのだが。
俺とネンダーテイル君が揉めた日にたまたま滞在中なんて間が悪いにも程があるよね。
これは不幸な出来事だったんだ……誰も悪くないんだ、誰も。
「アルビー君、早くこっちだよ。見つからない内に早く出発しようよぉ!」
俺の事をマリアが呼んでいる。
マリアの横にはいわゆる高級クルーザーが灯りを煌々と灯して佇んでいる。
80フィート級の大型で船の上に別荘が乗っているかのような豪華な仕様。
甲板上も広く作られパーティーでもバーベキューでも出来そうだ。
……こっそりってなんだっけ?
「なぁにしてるのさぁ! アルビー君、早くしないと見つかっちゃうよ?!」
マリアが俺の近くまで戻ってきて腕をグイっと引っ張る。
「……大丈夫だ、見つかっても、……多分、大丈夫……」
俺の視線の先には完全に瓦礫の山に沈み廃墟と化した侯爵の屋敷があった。
まだ黒い煙をそこかしこから立ち上らせ辺りには死屍累々の惨状が……、いやいや一人も殺してないんだけどさ、あんまりしつこいのでちょっと力入れて殴ったり蹴ったり張り倒したら誰一人動かなくなっちゃってさ。……生きてるよね?
当初は侯爵も後方で騒いでいたけど途中から見えなくなったんだよな。
まあ、俺も気が付いてたけど段々頭に血が上ってケアを忘れちまったんだけど……。
侯爵の屋敷の先の暗闇には訓練生の寮があり、そこはクルーザーとは真逆で真っ暗闇だ。
ただ人の気配は多々感じられ全てが絶望と恐怖の感情で塗り固められている。
俺、元魔王なせいか、そういうの分かるんだよね。
人のネガティブ感情っていうの?
とにかく俺達が一刻も早く居なくなれ……みたいな感情であふれている。
みんな息をひそめて災厄が過ぎ去るのをひたすら待っている。
こういった感情に晒されるのは前世? で慣れてるはずなんだけどやはり体験するとキツイ。
もう、この光景は見なかった事にして逃げるしかない様だ。
とてもじゃないが弁解の余地はない。……またもや、やり過ぎた。
『今更何をいい人みたいに落ち込んだ振りなんてしてるんですかー、アルビー』
「そうだよぉ、侯爵様の屋敷を粉々にしたのはほぼほぼ君なんだからねー、アルビー君」
よせ、残り少ない俺のライフポイントを削るのは止めてくれ。
マリアは敵軍に幻影魔法をかけたり俺に強化魔法をかけたりして支援してくれた。
レティは俺の肩で、……その応援していた。
正直うるさかったが完全に俺がキレない様に制御してくれていた。
まあ、それでもこの様なんだけどさ。
昔からダメなんだよねー、話して理解し無い奴にはイライラしちゃってさ。
もしかしてこれだから前世で滅ぼされちゃったのかな、俺?
いやいやいや、断じて違う、俺は可能な限り話し合いで解決したのだ。
拳で語り合ったのはほんの数回程度、大丈夫だ、大丈夫。
すー、はー、すー、はー、……よしっ。
「マリア、確かに俺は派手に暴れた。しかし出来ればこっそりと出港したい。……灯り、消さない?」
「えっ、嫌ですけど。暗いと海面見えなくて危ないじゃん。怖いし」
だめかぁー。
じゃあ仕方ない、この眩しい位の明るい船で海上を進むしかないか。
これ目立つなぁー、乗りたくないなぁー。
「これ、凄いでしょー、アルビー君。お父様のとっておきを借りてきちゃったー、返せないけど……」
「へっ? やばくない?!」
「何を今更ぁー、大丈夫、永遠に借りておくだけだよぉ。早く逃げないと追手が来ちゃうぞ♡」
ぞ♡じゃねぇ! ぞ♡じゃ。
でも確かにこの状況は早く逃げるに限るな。
侯爵に援軍を呼ばれたらまぢで面倒な事になる。
下手をしたら援軍を一気にふっ飛ばさなければならない。
そんな事をしたら国が動くぞ、……まあ、この時点でも動きかねないけどな。
「マリア、すぐに出向できるか?」
「だから呼びに来たんだよ! ほらほら、早く行こう!」
そして再び俺の腕をグイグイ引っ張る。
マリア、当たってます、ささやかだけど気持ち良いです。
本当に有難うございました。
『アルビーさぁ、真面目過ぎるのもよくないよぉ。こんだけ命懸けで付き合ってくれるんだから大事にしなよ、この子』
「……そうだな。こんな状況でも引く訳でもなし、貴重な仲間だな。分かったよ」
クルーザーは化石燃料ではなく魔力で進むようだ。
船体の後方に機関室があり操作パネルに50センチ程の水晶がはめ込まれていた。
それを通して魔力を補充するとマリアの説明があった。
俺が水晶に魔力を注いでいくと操作パネルに繋がっている2基の魔導エンジンが始動し静かにアイドリング状態になった。
マリアがエンジンの回転を上げたのか稼働音が大きくなり始め船体がゆっくりと前進し始めた。
……と、館内放送でマリアの可愛い声が辺りに響く。
「アルビーくーん、魔力有難う、100パーセントになったので出港するねー」
俺達はド派手なクルーザーに乗りこみ真っ暗な海を真昼の様に照らしながら出港したのだった。
追手が来ないといいなぁ……。
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