✦亡国のフィエリア ─Another_WORLD TRIGGER─(統合中) 作:CABIN.
修練場にて、レイヴが奮闘を讃えられる頃。
ピュロンの象徴たる玉座の間では、錚々たる顔触れが一堂に会していた。
「……騎士団は貴様の玩具ではない」
眉間に皺を寄せたエルゼンが、重圧を込めた声で言う。
「──やだなぁ。熟慮と審議の結果じゃないですか、エルゼンさん」
まるで意に介さず応えたニアは、集まった騎士達に視線を向けて立ち上がった。
「任務中と非番の騎士は生憎欠席ですが──参集どうも、皆さん」
ざわつく騎士達の前で、ニアが大袈裟に両手を広げる。
「結論から行きましょう。──本日より、皆さんには"宮廷十騎(デカリオン)"の称号を授けます!」
──────────
✦昨日、政務殿──
「──また貴様は突拍子もない事を!」
治安再建の手段について激論を交わす最中。
"使節卿"ニアの提案に、"歳出卿"ブランが叫ぶ。
ニアは、人差し指を唇に重ねてそれを制すると、宮廷五官それぞれに目配せをした。
「では──"資金がかからず"、"法制に則り"、"儀礼を重んじ"、"広報に資する"、"それら全てに配慮した"、治安再建の手段。……代案、あります?」
「……ぐ……」
「……ううむ……」
沈黙する宮廷五官を、ニアは満足気に眺める。
──静観していたエルゼンが、ふと口を開いた。
「……"習い事"の次は"お遊戯会"か」
呆れを隠さぬ声。
ニアは笑顔を崩さぬままエルゼンを見据えた。
──────────
「──改めて言うが、私は反対だ。数字に何の意味がある」
騎士達の困惑を代表し、エルゼンがニアの演説を遮る。
振り返ったニアが、悪びれもせず笑う。
「元"三英傑"の貴方がそれをいいますか?──ありますよ、意味」
人を喰ったような態度。
エルゼンが、明らかな苛立ちを表情に浮かべた。
「"箔付け"による民の信頼回復。騎士の皆さんの士気高揚。それから──万が一の際、誰が統率を取るかの可視化。……どうです? 名案でしょ?」
「──なるほど。筋は通っていると思う」
状況を静観していた騎士──マクセル=イェーガーが、小さく頷いた後、ニアを横目に見る。
「……それで、本音は?」
「皆好きでしょ? こう言うの」
ニアが、マクセルに視線を合わせて笑った。
「……気に入らん」
──"第一席" 守衛手
騎士団長 エルゼン=ハワード
「はは。世代交代の契機に丁度いいじゃないか」
──"第二席" 重装手
副団長 マクセル=イェーガー
「異論はありませんけど 順位付けはどなたが?」
──"第四席" 遊撃手
クラリス=フランソワ
「いずれにしても、拝命頂き恐悦至極! 感謝します!!」
──"第七席" 守衛手
ゴードン=シュタイナー
「……あのー……俺、非番なんすけど……夜警明け……」
──"第九席" 遊撃手
シーザー=クリケット
「異論、ないようですね」
ニアの勝ち誇った目線に、エルゼンが溜息を溢した時。
「──ある」
玉座の隣で騎士達を眺めていた王子殿下──アルマが、ふてくされた表情で言った。
「お前の中で、僕は十番手未満か?」
……立ち直りが早いな。
虚勢もあるだろうが──普段通りの王子殿下に目を細めたニアが、大袈裟に肩を竦める。
「あなた謹慎中でしょ? アルマ王子。──そもそも、殿下に順位付けなんて恐れ多い」
「むっ、確かに! 特別枠のようなもの、お気になさらず! 王子殿下っ!!」
ゴードンの暑苦しさに、アルマが顔をしかめる。
「そもそも武勇のみで決めてませんし。──熟慮の結果ですよ、アルマ王子」
「──殿下ほどの腕前でしたら、実質六席には入ると存じますわ」
ニアの発言に付け足した"第四席"クラリスの発言。
アルマがぴくりと眉を動かした。
「……お前は僕より格上か、クラリス」
「いえいえ、決してそのような」
どこ吹く風とでも言いたげに、クラリスが微笑む。
「──よし、分かった。修練場まで来い」
「あらあら。果たし合いなど野蛮ですわ」
「だからあなた謹慎中でしょう、アルマ王子」
途端に騒がしくなる玉座の間。
その火付け役が息子である事実に、クラウスは静かに頭を掻く。
「……"禊"はどうした、アルマ」
その様子を、マクセルは微笑ましく見ていた。
「──意味、ありそうじゃないか。エルゼン」
「……つくづく気に入らん」
「"習い事"で終わるよりは良い傾向でしょうな! がはは!」
「──と言うことで」
収集がつかなくなる気配を察したニアが、手を叩く。
途端、玉座の間に静寂が訪れた。
「構いませんね、国王陛下?」
「……うむ」
立ち上がったクラウスが、ひとつ咳払いする。
「──只今より、貴殿らを"宮廷十騎"に任命する。良いな」
「「はっ!」」
各々の感情を胸に。
揃い踏みの騎士達が、斉一な敬礼を返す。
「……じゃあ、帰っていいすか?」
ふにゃりと力を緩めたシーザーが、目を擦りながら言った。
【登場人物】
✧エルゼン=ハワード(45)
宮廷十騎"第一席"の騎士団長。守衛手。
宮廷十騎制度とニア=ハドリーに不満。
✧マクセル=イェーガー(45)
宮廷十騎"第ニ席"の副団長。重装手。
宮廷十騎制度の創設を比較的高く評価。
✧クラリス=フランソワ(16)
宮廷十騎"第四席"の女騎士。遊撃手。
アルマを無自覚に挑発。
✧ゴードン=シュタイナー(42)
宮廷十騎"第七席"の御意見番。守衛手。
国家の平和ボケを疑問視。
✧シーザー=クリケット(20)
宮廷十騎"第九席"の若手騎士。遊撃手。
夜警明けで疲労困憊。
✧アルマ=フィエリア(17)
宮廷十騎"特別枠(枠外)"の王子。遊撃手。
自己評価では第三席辺りらしい。
【用語解説】
✧三英傑
大戦時代、獅子王を支えた英傑達の称号。
現代三流派それぞれの原点でもある。
✧宮廷十騎(デカリオン)
ニア=ハドリーが唐突に提唱したランク制度。
本人曰く様々な思惑があるとか。