✦亡国のフィエリア ─Another_WORLD TRIGGER─(統合中)   作:CABIN.

16 / 37


修練場にて、レイヴが奮闘を讃えられる頃。
ピュロンの象徴たる玉座の間では、錚々たる顔触れが一堂に会していた。




《第15話》宮廷十騎

 

「……騎士団は貴様の玩具ではない」

 

眉間に皺を寄せたエルゼンが、重圧を込めた声で言う。

 

「──やだなぁ。熟慮と審議の結果じゃないですか、エルゼンさん」

 

まるで意に介さず応えたニアは、集まった騎士達に視線を向けて立ち上がった。

 

「任務中と非番の騎士は生憎欠席ですが──参集どうも、皆さん」

 

ざわつく騎士達の前で、ニアが大袈裟に両手を広げる。

 

 

「結論から行きましょう。──本日より、皆さんには"宮廷十騎(デカリオン)"の称号を授けます!」

 

 

──────────

✦昨日、政務殿──

 

 

「──また貴様は突拍子もない事を!」

 

治安再建の手段について激論を交わす最中。

"使節卿"ニアの提案に、"歳出卿"ブランが叫ぶ。

 

ニアは、人差し指を唇に重ねてそれを制すると、宮廷五官それぞれに目配せをした。

 

「では──"資金がかからず"、"法制に則り"、"儀礼を重んじ"、"広報に資する"、"それら全てに配慮した"、治安再建の手段。……代案、あります?」

「……ぐ……」

「……ううむ……」

 

沈黙する宮廷五官を、ニアは満足気に眺める。

──静観していたエルゼンが、ふと口を開いた。

 

「……"習い事"の次は"お遊戯会"か」

 

呆れを隠さぬ声。

ニアは笑顔を崩さぬままエルゼンを見据えた。

 

 

──────────

 

 

「──改めて言うが、私は反対だ。数字に何の意味がある」

 

騎士達の困惑を代表し、エルゼンがニアの演説を遮る。

振り返ったニアが、悪びれもせず笑う。

 

「元"三英傑"の貴方がそれをいいますか?──ありますよ、意味」

 

人を喰ったような態度。

エルゼンが、明らかな苛立ちを表情に浮かべた。

 

「"箔付け"による民の信頼回復。騎士の皆さんの士気高揚。それから──万が一の際、誰が統率を取るかの可視化。……どうです? 名案でしょ?」

「──なるほど。筋は通っていると思う」

 

状況を静観していた騎士──マクセル=イェーガーが、小さく頷いた後、ニアを横目に見る。

 

「……それで、本音は?」

「皆好きでしょ? こう言うの」

 

ニアが、マクセルに視線を合わせて笑った。

 

 

「……気に入らん」

   ──"第一席" 守衛手

     騎士団長 エルゼン=ハワード

 

「はは。世代交代の契機に丁度いいじゃないか」

   ──"第二席" 重装手

     副団長  マクセル=イェーガー

 

「異論はありませんけど 順位付けはどなたが?」

   ──"第四席" 遊撃手

          クラリス=フランソワ

 

「いずれにしても、拝命頂き恐悦至極! 感謝します!!」

   ──"第七席" 守衛手

          ゴードン=シュタイナー

 

「……あのー……俺、非番なんすけど……夜警明け……」

   ──"第九席" 遊撃手

          シーザー=クリケット

 

「異論、ないようですね」

 

ニアの勝ち誇った目線に、エルゼンが溜息を溢した時。

 

「──ある」

 

玉座の隣で騎士達を眺めていた王子殿下──アルマが、ふてくされた表情で言った。

 

「お前の中で、僕は十番手未満か?」

 

……立ち直りが早いな。

虚勢もあるだろうが──普段通りの王子殿下に目を細めたニアが、大袈裟に肩を竦める。

 

「あなた謹慎中でしょ? アルマ王子。──そもそも、殿下に順位付けなんて恐れ多い」

「むっ、確かに! 特別枠のようなもの、お気になさらず! 王子殿下っ!!」

 

ゴードンの暑苦しさに、アルマが顔をしかめる。

 

「そもそも武勇のみで決めてませんし。──熟慮の結果ですよ、アルマ王子」

「──殿下ほどの腕前でしたら、実質六席には入ると存じますわ」

 

ニアの発言に付け足した"第四席"クラリスの発言。

アルマがぴくりと眉を動かした。

 

「……お前は僕より格上か、クラリス」

「いえいえ、決してそのような」

 

どこ吹く風とでも言いたげに、クラリスが微笑む。

 

「──よし、分かった。修練場まで来い」

「あらあら。果たし合いなど野蛮ですわ」

「だからあなた謹慎中でしょう、アルマ王子」

 

途端に騒がしくなる玉座の間。

その火付け役が息子である事実に、クラウスは静かに頭を掻く。

 

「……"禊"はどうした、アルマ」

 

その様子を、マクセルは微笑ましく見ていた。

 

「──意味、ありそうじゃないか。エルゼン」

「……つくづく気に入らん」

「"習い事"で終わるよりは良い傾向でしょうな! がはは!」

「──と言うことで」

 

収集がつかなくなる気配を察したニアが、手を叩く。

途端、玉座の間に静寂が訪れた。

 

「構いませんね、国王陛下?」

「……うむ」

 

立ち上がったクラウスが、ひとつ咳払いする。

 

「──只今より、貴殿らを"宮廷十騎"に任命する。良いな」

「「はっ!」」

 

各々の感情を胸に。

揃い踏みの騎士達が、斉一な敬礼を返す。

 

「……じゃあ、帰っていいすか?」

 

ふにゃりと力を緩めたシーザーが、目を擦りながら言った。

 

 





【登場人物】
✧エルゼン=ハワード(45)
 宮廷十騎"第一席"の騎士団長。守衛手。
 宮廷十騎制度とニア=ハドリーに不満。

✧マクセル=イェーガー(45)
 宮廷十騎"第ニ席"の副団長。重装手。
 宮廷十騎制度の創設を比較的高く評価。

✧クラリス=フランソワ(16)
 宮廷十騎"第四席"の女騎士。遊撃手。 
 アルマを無自覚に挑発。

✧ゴードン=シュタイナー(42)
 宮廷十騎"第七席"の御意見番。守衛手。
 国家の平和ボケを疑問視。

✧シーザー=クリケット(20)
 宮廷十騎"第九席"の若手騎士。遊撃手。
 夜警明けで疲労困憊。

✧アルマ=フィエリア(17)
 宮廷十騎"特別枠(枠外)"の王子。遊撃手。
 自己評価では第三席辺りらしい。


【用語解説】
✧三英傑
 大戦時代、獅子王を支えた英傑達の称号。
 現代三流派それぞれの原点でもある。

✧宮廷十騎(デカリオン)
 ニア=ハドリーが唐突に提唱したランク制度。
 本人曰く様々な思惑があるとか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。