【僕のヒーローアカデミア】志村転弧ヒーロールート トロフィー【IF..】獲得チャート   作:ぃぃぃぃん

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ミルコのキャラ崩壊してるので注意!


七話 裏

 

 

 雄英高校の職場体験が終わり、6月のじめっとした空気が街を包み始めた頃。事務所では、相変わらず明るい声が飛び交っていた。

 転弧がエリに個性を上手に扱いたいか尋ねる。

 

「なりたい! 私、お兄ちゃんたちの役に立ちたい!」

 

 そう元気よく答えたエリの瞳は、まっすぐで、眩しい。

だが、彼女が個性を使った瞬間、小さな人形が手の中でふっと消えてしまった。

 

「……あっ……!」

 

 エリの目に涙が滲む。彼女は、自分の力がまた“壊す”ものだと感じたのだろう。

 転弧はすぐに駆け寄り、その肩に手を添えた。

 

「最初は誰だってこんなもんだ。失敗しても良い。また頑張ればいい…な?」

 

 圧紘がひょっこり顔を出し、手品のようにお菓子を取り出してエリの気をそらそうとする。仁もそれに便乗して、場の空気は和らいでいった。

 

 その時、転弧のスマホが振動した。見ると『今から飲み行くぞ!』と、ルミからの連絡。

 

(家……?)

 

 送られてきた住所は、彼女の自宅らしかった。エリを圧紘たちに託し、転弧は向かうことにした。

 

 彼女の家に近づくにつれ、無意識に肩に力が入っていることに気づいた。

 

(まさか……もう飲んでるってことは……。いや、無えよな。)

 

そんなはずはないと思いつつも、チャイムを鳴らす。

 

「お〜〜!来たかぁ、待ってたぞ〜、てんこぉ……!」

 

 ドアの向こうから現れたのは、赤ら顔のルミだった。頬はほんのりではなく、しっかりと染まり、呂律も怪しい。

 

「……もう飲んでんのか?」

 

「おう、ちょっとだけな!……いーだろべつにぃ?」

 

 彼女はふらふらと身体を寄せてきて、転弧の腕を引いた。リビングに入ると、テーブルの上には空いた缶と、ほとんど手がついていないつまみが並んでいた。

 

「ほら座れよ〜!」

 

「いや、お前、酔ってるだろ。とりあえず横になれ。俺は帰る。」

 

「まだいけるっつの……。あっ、オマエも飲む? 一緒にさ!」

 

 彼女は転弧の腕を取って、ソファへ引き寄せた。その仕草が、あまりにも自然で、そして少しだけ甘えるようだった。

 

「なぁ、てんこぉ……」

 

ルミがぽつりと呟く。

 

「……なんで、……連絡くれなかったんだ?」

 

 言葉の端に、微かな棘と、寂しさが滲んでいた。

 

「私さ、考えてたんだ。……オマエ、今どこで何してんだろって。生きてんのか、またどっかで泣きそうになってんのかって……!」

 

「……悪い。」

 

 彼女の視線はどこか遠くを見つめていた。酔っているせいだけではない。

抱えていた感情が、言葉となって漏れ出している。

 

「10何年ぶりに会えてうれしくて。……なのに、なんで私のこと放っとけるんだよ……?」

 

 涙は浮かんでいない。でも、声が震えていた。

転弧はその言葉を受け止めるしかなかった。これは、全部、自分がまいた種だ。

 

「帰ろうとしてんのに……なんで帰るなって言ってんのかねェ。あ〜あ、らしくねェ、本当に。いい歳したヤツが…ガキみてェに…。」

 

 言いながら、彼女はソファに身を沈め、目を閉じた。酒のせいか、少しずつ呼吸が深くなる。

やがて、小さな寝息が聞こえてきた。転弧はそっと布団をかけ、部屋を出ようとした。

 

 そのとき、背中越しに聞こえた。

 

「……意気地なし……。」

 

 小さく、寂しげに呟いたその言葉が、妙に胸に残った。

 

 

 

 翌朝、事務所に顔を出すと、圧紘と仁がニヤニヤして待ち構えていた。

 

「よう、転弧〜。ミルコとはどうだった?おじさんたち気になっちゃって。」

 

「まさか?まさかのか!?いやそうじゃねえだろ!」

 

「寝たから帰っただけだ。」

 

 そう言うと、ふたりは一瞬ぽかんとした後、同時に叫んだ。

 

「えええええ!? マジで!?」

 

「いや、お前……何もなかったの!? あのタイミングで!?」

 

「いや……」

 

本当に、それだけだ。

 


 

あの夜。

 

 ルミはテーブルの上に用意した酒瓶を見つめながら、転弧の顔を思い浮かべていた。

 

 連絡がなかった。彼は『忘れていた』と話していたが、あまりにも薄情ではないだろうか。

 

だから、飲んだ。そうすれば、少しだけ弱音を吐いても許されるような気がした。

 

 「なんだよ……大きくなりやがって……。」

 

眠るふりをして、転弧の背中を見送った。

声は届かなかった。それでも、呟かずにはいられなかった。

 

「意気地なし……。」

 

 彼に触れる勇気も、自分から引き止める覚悟もなかった。

 

 


 

 7月上旬。エリの訓練は順調だった。

ご褒美と称して、皆で木椰区のショッピングモールに来ていた。

 

「ひとがいっぱい!」

 

 そう言って駆け出すエリを見送り、転弧は「ちょっとトイレ」と言って列を外れた。

 

 すると、前方に見覚えのある緑髪の少年が。雄英体育祭で見た、“後継”。

 

「すっげー、君だよなァ。雄英の……あれだ、緑谷出久だっけ?」

 

 驚く彼に軽く肩を回し、近くのファミレスに誘う。

グラントリノの名前を出すと、緑谷は目を見開いた。

 

「OFA……知ってる。安心しな。ただ、ちょっと話してみたかったんだ」

 

 その後、店を出ようとしたとき――

 

「お兄ちゃん〜っ!!」

 

後ろから走ってきたのはエリだった。

 

「あー!居たぁ!心配した〜、急にいなくなっちまうから!」

 

「悪ぃ、後輩クンに話をして夢中になっちまった。」

 

 事務所の面々も合流し、結局、皆で買い物して帰ることになった。

緑谷には特製サインをプレゼントし、エリも人形を買ってもらい満面の笑みを浮かべた。

 

その後、ショッピングモール内でヴィラン連合の首魁『死柄木弔』が目撃された。

 

 

7月の終わり。転弧は手を差し出し、エリに言った。

 

「よし、やってみろ。大丈夫、落ち着いてな。」

 

「うんっ……!」

 

 エリが個性を使う。

 

 その瞬間、転弧の身体に、不思議な感覚が走った。紙で切った指先が、知らぬ間に治っている。

同時に、身体の奥深くが、何かに包まれるような……そんな温かさを感じた。

 

「エリ、お前……ちゃんとできてるじゃねぇか。」

 

エリは目を丸くしたまま、ぽかんと転弧を見つめていた。

 

 

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