【僕のヒーローアカデミア】志村転弧ヒーロールート トロフィー【IF..】獲得チャート 作:ぃぃぃぃん
ミルコのキャラ崩壊してるので注意!
雄英高校の職場体験が終わり、6月のじめっとした空気が街を包み始めた頃。事務所では、相変わらず明るい声が飛び交っていた。
転弧がエリに個性を上手に扱いたいか尋ねる。
「なりたい! 私、お兄ちゃんたちの役に立ちたい!」
そう元気よく答えたエリの瞳は、まっすぐで、眩しい。
だが、彼女が個性を使った瞬間、小さな人形が手の中でふっと消えてしまった。
「……あっ……!」
エリの目に涙が滲む。彼女は、自分の力がまた“壊す”ものだと感じたのだろう。
転弧はすぐに駆け寄り、その肩に手を添えた。
「最初は誰だってこんなもんだ。失敗しても良い。また頑張ればいい…な?」
圧紘がひょっこり顔を出し、手品のようにお菓子を取り出してエリの気をそらそうとする。仁もそれに便乗して、場の空気は和らいでいった。
その時、転弧のスマホが振動した。見ると『今から飲み行くぞ!』と、ルミからの連絡。
(家……?)
送られてきた住所は、彼女の自宅らしかった。エリを圧紘たちに託し、転弧は向かうことにした。
彼女の家に近づくにつれ、無意識に肩に力が入っていることに気づいた。
(まさか……もう飲んでるってことは……。いや、無えよな。)
そんなはずはないと思いつつも、チャイムを鳴らす。
「お〜〜!来たかぁ、待ってたぞ〜、てんこぉ……!」
ドアの向こうから現れたのは、赤ら顔のルミだった。頬はほんのりではなく、しっかりと染まり、呂律も怪しい。
「……もう飲んでんのか?」
「おう、ちょっとだけな!……いーだろべつにぃ?」
彼女はふらふらと身体を寄せてきて、転弧の腕を引いた。リビングに入ると、テーブルの上には空いた缶と、ほとんど手がついていないつまみが並んでいた。
「ほら座れよ〜!」
「いや、お前、酔ってるだろ。とりあえず横になれ。俺は帰る。」
「まだいけるっつの……。あっ、オマエも飲む? 一緒にさ!」
彼女は転弧の腕を取って、ソファへ引き寄せた。その仕草が、あまりにも自然で、そして少しだけ甘えるようだった。
「なぁ、てんこぉ……」
ルミがぽつりと呟く。
「……なんで、……連絡くれなかったんだ?」
言葉の端に、微かな棘と、寂しさが滲んでいた。
「私さ、考えてたんだ。……オマエ、今どこで何してんだろって。生きてんのか、またどっかで泣きそうになってんのかって……!」
「……悪い。」
彼女の視線はどこか遠くを見つめていた。酔っているせいだけではない。
抱えていた感情が、言葉となって漏れ出している。
「10何年ぶりに会えてうれしくて。……なのに、なんで私のこと放っとけるんだよ……?」
涙は浮かんでいない。でも、声が震えていた。
転弧はその言葉を受け止めるしかなかった。これは、全部、自分がまいた種だ。
「帰ろうとしてんのに……なんで帰るなって言ってんのかねェ。あ〜あ、らしくねェ、本当に。いい歳したヤツが…ガキみてェに…。」
言いながら、彼女はソファに身を沈め、目を閉じた。酒のせいか、少しずつ呼吸が深くなる。
やがて、小さな寝息が聞こえてきた。転弧はそっと布団をかけ、部屋を出ようとした。
そのとき、背中越しに聞こえた。
「……意気地なし……。」
小さく、寂しげに呟いたその言葉が、妙に胸に残った。
翌朝、事務所に顔を出すと、圧紘と仁がニヤニヤして待ち構えていた。
「よう、転弧〜。ミルコとはどうだった?おじさんたち気になっちゃって。」
「まさか?まさかのか!?いやそうじゃねえだろ!」
「寝たから帰っただけだ。」
そう言うと、ふたりは一瞬ぽかんとした後、同時に叫んだ。
「えええええ!? マジで!?」
「いや、お前……何もなかったの!? あのタイミングで!?」
「いや……」
本当に、それだけだ。
あの夜。
ルミはテーブルの上に用意した酒瓶を見つめながら、転弧の顔を思い浮かべていた。
連絡がなかった。彼は『忘れていた』と話していたが、あまりにも薄情ではないだろうか。
だから、飲んだ。そうすれば、少しだけ弱音を吐いても許されるような気がした。
「なんだよ……大きくなりやがって……。」
眠るふりをして、転弧の背中を見送った。
声は届かなかった。それでも、呟かずにはいられなかった。
「意気地なし……。」
彼に触れる勇気も、自分から引き止める覚悟もなかった。
7月上旬。エリの訓練は順調だった。
ご褒美と称して、皆で木椰区のショッピングモールに来ていた。
「ひとがいっぱい!」
そう言って駆け出すエリを見送り、転弧は「ちょっとトイレ」と言って列を外れた。
すると、前方に見覚えのある緑髪の少年が。雄英体育祭で見た、“後継”。
「すっげー、君だよなァ。雄英の……あれだ、緑谷出久だっけ?」
驚く彼に軽く肩を回し、近くのファミレスに誘う。
グラントリノの名前を出すと、緑谷は目を見開いた。
「OFA……知ってる。安心しな。ただ、ちょっと話してみたかったんだ」
その後、店を出ようとしたとき――
「お兄ちゃん〜っ!!」
後ろから走ってきたのはエリだった。
「あー!居たぁ!心配した〜、急にいなくなっちまうから!」
「悪ぃ、後輩クンに話をして夢中になっちまった。」
事務所の面々も合流し、結局、皆で買い物して帰ることになった。
緑谷には特製サインをプレゼントし、エリも人形を買ってもらい満面の笑みを浮かべた。
その後、ショッピングモール内でヴィラン連合の首魁『死柄木弔』が目撃された。
7月の終わり。転弧は手を差し出し、エリに言った。
「よし、やってみろ。大丈夫、落ち着いてな。」
「うんっ……!」
エリが個性を使う。
その瞬間、転弧の身体に、不思議な感覚が走った。紙で切った指先が、知らぬ間に治っている。
同時に、身体の奥深くが、何かに包まれるような……そんな温かさを感じた。
「エリ、お前……ちゃんとできてるじゃねぇか。」
エリは目を丸くしたまま、ぽかんと転弧を見つめていた。