【僕のヒーローアカデミア】志村転弧ヒーロールート トロフィー【IF..】獲得チャート   作:ぃぃぃぃん

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一話 裏

 

 

とある一軒家で、男性が小さな男の子の手を強引に引いていた。男の子は必死に反抗するものの、大人にかなうはずもない。その後を女性が追いながら男に辞めるように話す。男の子の名は志村転弧、5歳の無個性だ。手を引く男性の名は志村弧太郎、後を追う女性は志村直。この男性と女性は夫婦だった。若くして実業家となった彼には、妻の両親と一緒に暮らす二世帯住宅を建て、飼い犬、二人の子どもがいた。

 

「また英雄ごっこで人に迷惑をかけたな!?」

 

「わあああん!やだああ!!」

 

「弧太郎さんやめて!乱暴はやめて!」

 

「嫌ならいい加減聞き入れなさい。」

 

「やぁだああぁああ!!」

 

頬を掻きながら泣きじゃくる転弧を外に出して、弧太郎はカーテンを閉めながらは直に自分で謝るまで入れるな、と釘を刺す。

この家には一つのルールがあった。父親である彼が決めたたった1つだけのルール。

それは、ヒーローの話をしてはいけないというものだった。

その数日後、直は転弧に痒み止めを塗りながら口を開く。

 

「ほら、もう掻かないの。」

 

「だってかゆいんだもん。」

 

「何のアレルギーか分かんないのやだねぇ…。」

 

「なんかね、お家だとかゆいよ。」

 

会話が一段落し、直は改めて転弧にヒーローを目指しているのか尋ねる。

 

「……ねぇ、転弧。ヒーロー、まだなりたい?」

 

「うん。みっくんとともちゃんがね、仲間外れだったんだ。」

 

転弧は左目の付近を掻きながら続けて言う。

 

「僕ね、みっくんとともちゃんに一緒に遊ぼって言ってね、ヒーローごっこしてね、ちょうたのしかったんだよ。」

 

「したらね、みっくんが『転ちゃんはオールマイト』って言ってくれたの。なんでって聞いたら、『仲間外れなのに遊んでくれて優しいから』って!」

 

一息置くと、転弧は彼女に抱きつきながら心のなかで思っていた父への言葉を吐露する。前述した通り、転弧は無個性だ。個性という能力が一般的社会に浸透しつつある中、無個性でヒーローを目指すことは無理に等しい。不幸になる前に現実を分からせなければという、父の考えがあったのだが、それを知る彼女は彼の背に手を回しながら話す。

 

「なんでお父さんはダメって言うの!?僕のこと嫌いだから!?個性が出たら良いって言う!?」

 

「転弧のこと嫌いなんじゃないよ、お父さんは…。ただ知ってるの…。ヒーローは大変だってこと。」

 

子どもは、案外狡くて単純だ。未就学児の年齢において、親、もとい大人の言っていることは絶対のものとなる。周りにいた大人たちから慰められても、子どもの行動、考えを肯定されなければ、親への信頼はしづらくなってしまう事が判明している。

一緒に暮らしていたおばあちゃんやおじいちゃんは、「泣かないの。おばあちゃんまで悲しくなっちゃう。」だったり、「ほら、おはぎ!転弧好きだろ〜。美味しいものたべるとな、悲しい気持ちも吹っ飛んでいくんだ。」と、彼を慰めてはいたが、彼の憧れであるヒーローになりたいという思いを肯定することはなかった。

 

父親が建てたこの家は

 

志村転弧を優しく否定する。

 

 

 

 

ある日、彼は姉の華と一緒に父の書斎に入り、とある写真を見つけてしまう。

 

「ひみつだよ。この人おばあちゃんなんだって。ヒーローなんだって。

 

驚きつつも、転弧はなぜ自分にこの写真を見せたのか尋ねる。すると、華は転弧のことを応援しているからだと答えた。

 

「華ちゃん、なんでこんなの僕に……?」

 

「お父さんはああ言うけどねぇ、大丈夫だよ。私は転弧のこと応援してるから。

 

 

「お父さんに内緒で姉弟ヒーローになっちゃおう!」

 

 

「………うん。」

 

家族の中で初めて、自分の憧れを肯定された転弧。そんな出来事から数時間後、悲劇は起こってしまう。

 

────この日は、ひどく蒸し暑かった。

 

あの後、転弧は庭で飼い犬のモンちゃんとボール遊びをしていた。転弧は首元を掻きながら家族にヒーローがいた事に心を躍らせていた。

 

(おばあちゃんはヒーローだったんだ!家族にヒーローがいたなんて!)

 

「モンちゃん、僕はね、今どんな困難にも立ち向かえる気がするよ。」

 

そう言ってボールを投げる。その瞬間、掌から突然痛みが生じた。転弧は自分の手を見る。何の変哲もない自分の手だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。転弧が不思議に思っていると、突然大きな音を立てて弧太郎が庭にやって来た。鬼気迫る勢いで彼を問い詰める。

 

「転弧!!書斎に入ったな!?……見たな…!?」

 

────雨上がりの湿気が、荒れた肌をチクチクさして、腹の底から痒みが湧いた。

 

転弧は、奥で直に抱きついて泣いている華を見た。華ちゃんなら自分から言ってくれると思ったのだ。しかし、子どもは、案外狡くて単純だ。

 

「わぁああん!転弧がァ…転弧が見たいって言ったんだもぉぉおん!!」

 

弧太郎が転弧の頬を叩く。モンちゃんが吠えて、弧太郎に威嚇する。直が辞めるように訴えるも、弧太郎は辞めず、自身の母親、志村菜奈はヒーローではないと口にする。

 

「弧太郎さん!!」

 

あれはおばあちゃんじゃない、子どもを捨てた鬼畜だ。いいか、ヒーローというのは他人を助けるために家族を傷つけるんだ。

 

転弧は顔を掻きながら周りに助けを求めようとしたが、誰も動かなかった。この家は、父の建てた家。この家に住む誰も、彼の考えに従うしかなかった。

 

(たすけて…見てないで、ねぇ、たすけに来てよ!誰か!)

 

パンッと乾いた音が庭に響いた。

 

その後、弧太郎は書斎に戻り、志村菜奈からの手紙を開く。何年も経っているのか、紙の質が古くなっている。涙を流したのか、ところどころ文字がにじんで読みづらくなっているものの、内容としては、突然の別れになったことへの謝罪、悪い奴と戦わなくてはいけないこと、母親らしいことができなかったことへの謝罪、我が子のことを大好きだと伝え、笑って幸せに暮らしてほしい、というものだった。ひとしきり読んだ弧太郎は、小さくつぶやく。

 

「…いっそ嫌ってくれたらよかったよ。」

 

直とその両親が、書斎へと入ってくる。3人を代表して直が限界だと伝える。弧太郎は子ども2人はどうしたのか聞くも、直は続けて話す。

 

「限界だよ。」

 

「……やりすぎた。2人は?」

 

「手を上げるならもうルールには従えない。幸せな家庭をつくるって言ってたじゃん。」

 

弧太郎は手紙を封筒にしまいながら、ボヤく。

 

「こんなハズじゃなかったんだけどな……。」

 

その頃、庭でモンちゃんを右手で抱き寄せ、顔を掻きながら泣いていた転弧。彼は唯一信頼できるモンちゃんへ、もう嫌だとこぼす。

 

「うぅっ…ひっく、やだ…。僕もうやだよ…。」

 

「モンちゃん………、」

 

   ガリガリ

 

「僕っ……もうやだ…、」

 

 

  「みんな……」

 

ガリガリガリ

 

 

     ピキッ

 

 

     「嫌いだ。」

 

キュンと、音がした。そこにいたはずのモンちゃんがバラバラに崩壊して死んでいた。理解できなかった。呼吸が浅くなる。

 

「え……?モンちゃん?え?」

 

ハッ、ハッ、と転弧の浅い呼吸が響く。そこへ、華がやってきた。転弧に謝りに来たのだ。彼は姉にモンちゃんが死んだことを告げようとした、浅い呼吸だったが、何とか声を上げた。

 

「転弧ー。あのね…、あのね…、ごめんね。違うの。ひみつって言って見せたの私なのに…ごめん。」

 

ひゅっ、っー!は、はなちゃ……、も……もんちゃんがぁ……っ!

 

転弧の様子に違和感を感じた華が彼に駆け寄る。モンちゃんの死体を見ると、彼女は悲鳴を上げ、母を呼ぼうと逃げようとした。  

 

「転弧……!?……どうしたの………?!いやあああッ!!

 

転弧は、逃げようとした華に手を伸ばした。転弧はただ、守ってもらいたい、助けてもらいたいと思っての行動だった。しかし、彼の右手が彼女の服に触れると、彼女はモンちゃんと同じようにばらばらになり崩壊した。

 

「おか」

 

この時、彼は敵が自分たちを狙っていたのだと思っていた。モンちゃんや華ちゃんが崩れたのも、ソイツの仕業だとこの時はまだ思っていた。しかし、彼はこの時すでに理解していた。小さな小さな積み重ねが、結果としてこうなってしまったのだと。

華の悲鳴を聞いて、直と祖父、祖母が庭へやって来た。祖父と祖母が悲鳴を上げる中、母親である直は転弧の名を呼ぶ。それに反応し、彼は叫ぶように母に助けを請う。

 

「……おかあさん!!たすけて!!」

 

「転弧…。」

 

しかし、崩壊は既に彼女の顔まで及んでいた。彼女は我が子へ駆け寄るも、寸前のところで崩壊してしまう。祖父母はすでに崩壊していた。

 

大きな音を聞き、弧太郎が庭に行くと、そこには転弧を中心に周辺が崩れており、娘の華や妻の直の頭部の破片だったり、義両親のモノと思われるメガネが落ちていた。

 

彼は小刻みに震えながら、息子を見る。転弧は首元を掻きながら父親に謝罪する。

 

「おっあっ、おと、おとうさん、ごめんなざい。」

 

瞬間、崩壊が起きる。転弧は弧太郎に近づき、手を伸ばした。しかし、彼は、枝切り鋏をつかむと、思い切り転弧の頭を殴った。

そして、この崩壊をやめるよう大声を放つ。

 

「やめろ!!!転弧!!!」

 

頭を殴られた転弧は、素早く彼に近づき、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あああああああああッ!!!」

 

「死ねぇ!!!」

 

途方もない快感が全身を貫いた。彼は心のどこかでずっとこうなる事を望んでいたのだろうか。

 

痒みはもう感じなかった。

 

 

 

 




可哀想に……。一体誰がこんなチャートを組んだんだ……。
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