「あれ殴って無傷ってマジかよ」
あの後保健室言ったけど何の異常も無かった。自分のことながら人間なのか疑問に思う。だが俺は目の横に耳がある。そして尻尾も生えていない。…うん、れっきとした人間だ。
さて、今日も今日とて暇だ。エアグルーヴに破壊されたドアを修正がてら何をやるか考えよう。あーあ、たづなさんに壊されて、槍に貫かれ…ドア、お前も大変だな。
「ほう、オマエも破壊と創造を嗜むものだったか」
「…誰だお前」
ドアを外した段階で眼帯のウマ娘に声を掛けられる。ははーん、さては中二病だな。
「タニノギムレットだ。共に破壊を嗜もうか」
「すまん、破壊を嗜むブロリーみたいなやつとは友達に慣れそうにない。というより俺が壊したわけじゃねぇよ」
そう、ギムレットが何を勘違いしたのかは知らないが俺は不慮の事故で無残な姿にされたドアを直そうとしているだけだ。なんでこんな面倒なことになったんだろうな。
「いや、俺の
「お前は何を言っているんだ」
「付いて来い。俺が活きのいい鉄柵を紹介しよう」
はっきり言って何言ってんのかまるっきり分からんし、ついていく意義ははっきり言って無い。だが活きのいい鉄柵とはいったいなんだ?その疑問だけでホイホイと付いて行ってしまった。
「さぁ、オマエの破壊をッ!オマエの美を見せてくれッ!」
成程、これが活きのいい鉄柵…。他の鉄柵と何が違うのか御教授頂きたいところだが、ギムレットの口ぶりから殴る蹴るなどしても問題無いのかもしれない。…ならば。
「マーシャルアーツプラスキック!」
渾身の後ろ蹴りを打つ。すると鉄柵の横棒の一本にクリーンヒットして少し凹んだ。…ほう、これは中々。
「少しは満たされたようだな。だがまだこれは
「…水を差すようだがちょっと待った。確かに、俺はまだ壊し足りないのかも知れない。破壊の感触が中々癖になるのを分かった。…ただ鉄を蹴った反動ってのは中々でかいんだ」
俺も鍛えちゃいるが頑張って見積もっても一カ月程度のもんだ。そんな俺が固いものを蹴った暁にはそれはもう悲惨な結果が待っている。右足が痺れてたまりません。
「そうか、ならば見ていろ。そして聞け!我が
そう言った次の瞬間、ギムレットが二発の蹴りを鉄柵に叩き込む。その二撃は刹那に打たれたのではないかと思わせるほどの鋭さと素早さを有していた。
「ハァーーッハッハッハッハ!!」
その次には三段蹴りが繰り出される。先程よりスピードに劣るが威力に比重を置いたと見える。
「これが
そしてギムレットがサマーソルトを繰り出すと鉄柵の一部が完全に破壊された。その一連の技もそうだが、何よりも…見惚れてしまった。ギムレットの破壊っぷりに…美しいとすら思えた。
「俺には
「…そうか。お前もまだ、道半ばなんだな」
「そうだ!俺の求める至上の美酒には未だ遠い!そこに至るまで、この歩みを止めるわけにはいかん!」
それがギムレットの信念なんだろうと実感する。そしてそれがシャンデリアに向けたグラスのように光り輝いているのが分かった。
「ま、その道に俺が付いていく事は無いのかも知れんが、応援はさせてもらうよ」
「案ずるな。既に俺に酩酊しているオマエならば、破壊という美に必ず辿り着く。その時まで待とう」
「それなら気長にな」
さて、ドアを直しに行くか。ほっぽり出したまま行ってしまったので部屋にドアを置きっぱにしてるし中の汚部屋っぷりを晒していることになる。
「待て、少しばかり手伝ってほしい」
「え?」
「破壊には再生が伴う…それが俺の
いや、知らねぇよ。第一こんな壊れ方した鉄柵なんて直そうなんて思わねぇよ。というか壊しちゃいけない類の奴だったんじゃあないのこれぇ?
「…オマエ、
「……ガス溶接技能講習修了証なら持ってる(実話)」
まぁ俺も一回蹴っちまってるし。仕方ねぇ、頑張って直すとするかぁ。…たづなさんとかエアグルーヴにバレなきゃいいなぁ。