新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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14話

「半額シール!!」

 

やぁみんな、スーパーの中からこんにちわだぞ。俺は今一週間分の食材の買い出しをしている。新人トレーナーとは言え、中央の給料っていうのは中々にいい。だから普通に暮らす分には半額シールを狙う必要はない。だが俺は上京してきた身。こっちの物価に目ん玉飛び出てしまった。

 

「これなら…よし、イケる」

 

メモに書きだした食材は全部カゴにぶち込んだ。そして予算には若干の余裕が出来た。ならばやることは一つしかない…。そう!贅沢である!スイーツもいいが……そうだなぁ、果物でも頂こうか。

 

青果コーナーに行き吟味する。この時期だともも、トマト、スイカ、メロン…へぇ~サクランボもあるのか。

 

「あーたし錯乱坊ー…なんつって」

 

結構気に入っている一発芸を口ずさむ。これの欠点は言っただけでは全く伝わらないこと。文字に起こさない限り異常性はない事。…説明しないと伝わらないギャグって悲しいよね。お前らもそう思うだろ?

 

さて、果物選びに戻ろうか。リンゴがありゃあそれで確定なんだが、この時期にリンゴなんか基本無い。あってもくそ不味いこと請け合いだ。この時期にリンゴを味わうならジュースだな。確か家にあったはず。他は…イチゴも少しばかり先だから…やーめた。バナナクレープ買お。

 

「あ~…やっぱり無いなぁ…」

 

どこからかそんな声が聞こえる。とは言え俺には関係ないだろう。

 

「ようやく決心がついたけど…仕方ないか。…やっぱりりんごは厳しいなぁ」

 

「リンゴ食うだけのことでそこまでするか?」

 

ついうっかり声を掛けてしまった。たかだかりんごにそこまでの情熱をかける子がいるとは思わなかった。お前自身がリンゴの化身みたいな髪色してるんだからささっと食っちゃえばいいのに。

 

「あ、はい。りんごは尊い食べ物ですから。半端な覚悟じゃ失礼になりますから」

 

「えぇうそぉ」

 

そんなこと言ったら俺の食い方なんて冒涜も冒涜だ。地元にいた時は近所の道の駅で買って帰り道に丸かじり…コイツが聞いたらいったいどんなリアクションを取るのやら。泡吹いてぶっ倒れるかもしれない。

 

「でも今の時期に出回るりんごは少ないのでもしかしたらと思ったんすけど…」

 

「案の定無かったと。まぁそりゃあな。そもそも今出てるリンゴなんか蜜は乗ってないわ大味だわでそこまで美味くないだろ」

 

「なんてこと言うんすか!確かに旬のりんごと比べると味は劣るかもしれませんけどそれでもりんごの可能性は無限なんす!」

 

「お、おう」

 

彼女の勢いに押されてしまうが、そんなことがあるんだこれが。時期から外れたくらいのリンゴを何度も食ったことあるけど物凄い青い味だったのを覚えている。それに何といっても甘くない。ハッキリ言って食えたものじゃない。だがこれを言ったら戦争になるので心に留める。

 

「でもよぉ、無いモンは無いんだから加工品で代用したらどうだ?スイーツの所に行けば何かしらあるんじゃないか?」

 

「そうっすね。そっちの方も探してみます。失礼するっす」

 

そう言ってスイーツコーナーへ足を運んでいく様子を見届ける。…ああいった手前、あることを俺も願うけど正直あると思えない。俺この手のスーパーでそういうのを見たことが無い。

 

「さて、帰るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっべバナナクレープ買い忘れた」

 

寮に帰って冷蔵庫に食材を入れていると悲しい事実に気付いてしまった。仕方ねぇ、今日のデザートはこんにゃくゼリーで我慢するか。

 

「…あ。コイツは…」

 

冷蔵庫の中を見ると冷やしてあったリンゴジュースが何本かあった。賞味期限は…良かったまだ死んでない。調味料は大概死んでるが、コイツもそうなってなくてよかった。…そういえばアイツ、結局買えたのか?

 

「ちわーっす、三河屋でーす」

 

「ここにお酒を飲める子はいないんだけどねぇ。どうしたんだい、奥沢さん」

 

伝手があるのである分全部お届けすることにした。とは言え、トレセンの制服着てたってだけだから情報ナッシングで来てるわけだけど。

 

「ようフジ寮長。人探し…ウマ娘探しって言った方が正しいのか?そこは今はいいや。リンゴの化身のような髪色した子ってここにいる?」

 

情報はこれだけ…さて、引っかかるかな?

 

「…りんごとなると多分シオンだね。この子で合ってるかな?」

 

どこからともなく写真を出してきて見せてくる。それは昼間スーパーで見た赤髪の子だった。

 

「そうそうこの子だ!それじゃ、コイツをシオンに届けてくれるか?俺ここから先に入れねぇからさ。嫌だと言っても強引に渡しといてくれ」

 

「了解、すぐに配達するよ」

 

 

 

 

 

「残念でしたね……」

 

「まぁ、しょうがないっすよ。時期が時期でしたし、今はまだその時じゃないってりんご様が言ってたかもしれません」

 

結局スイーツも見つからず、目についたバナナクレープをシュヴァルさんと分けて食べている。もっとしっかりと覚悟しないといけなかったって事かな。

 

コンコン

 

「やぁシオン。夜遅くにごめんね、今いいかな?」

 

食べ終わったころにフジさんが訪ねてきた。何か用事でもあるのかな。

 

「どうぞ、何かあったっすか?」

 

「奥沢さんは知ってるかい?彼からシオンへの贈り物を預かっていてね。強引に押し付けてくるように言われてるから貰ってもらえると嬉しいな」

 

「あ、はい。じゃあ貰っておきますね」

 

奥沢さん…多分昼間にスーパーで会った人かな。トレーナーさんだったんだ。全然気付かなかった。袋を貰ってフジさんと別れる。その中にはりんごジュースと一枚の紙が入っていた。紙には『トレーニング後に飲んでみな。飛ぶぞ?』と書かれていた。その言葉通り、後日トレーニング後に決心して飲んでみたら…その圧倒的なりんごの濃さに本当に飛びそうになってしまった。

 

 

 

 

 

「どうだ、これが長野のリンゴだ」

 

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