新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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16話

「じゃあ奥沢、サポートは頼んだぞ」

 

「任してくださいよぉ沖野さん!ゴルシがUFOに連れて行かれようとマックちゃんがモーニングスターを出してこようが対処してみせますよ!」

 

「どういうことだよ…」

 

お前ら驚け!ようやく俺もトレーナーっぽいことが出来るぞ!沖野さんからサブトレーナーをお願いされたんだからなぁ!

 

「大丈夫ですの?まともに業務を行っている所を見たことが無いのですが」

 

「まぁ大丈夫だ。大船に乗った気持ちでいていいぞぉ。これでも一応、トレーナー試験を一発で合格した男だからな」

 

「じゃあ聞くぞ。京都の三コーナー付近の高低差は何メートルだ?」

 

何メートルだったかな…。結構なもんだと記憶はしているけど……あ!

 

「43メートル!」

 

「壁じゃねぇか」

 

ん!?間違ったかな。

 

「4.3メートルよ。本当に大丈夫かしら」

 

「あぁ、小数点が抜けてたか。これは失敬。まぁサポートだけならはっきり言って免許要らねぇから大丈夫だろ」

 

「一気に心配になって来たぜ……」

 

ダスカ、ウオッカにめちゃ心配される。そこまで心配されるとは…もしかして俺って頼りない?

 

 

 

 

 

「よし、スぺ、スズカ、テイオー、マックイーンはインターバルに入れ!スカーレット、ウオッカ、ゴルシ、キタサン!ウッドチップでタイム計るぞ!」

 

「調子良さそうね、スぺちゃん」

 

「はい!今日はまだまだ走れますよ!」

 

「うへぇ、さっき物凄い食べてただけあるなぁ。マックイーンも食べれば3600メートル以上走れるんじゃない?」

 

「誰がスイーツ大魔神ですって!?」

 

「んなこと誰も言ってねぇよ。ほらよ、白い粉から作った元気になる謎ドリンクだ」

 

「何か嫌だなぁその言い方」

 

四人にスポドリを渡してタイムを記録した紙を見ながら続ける。

 

「スぺとスズカは併走で落ち着いて走れているし、マックちゃんはラップタイムが良くなっている。テイオーはラインを自由に出来るようになってる。良いんじゃねぇか?まだまだ現役って感じだ」

 

みんなドリームトロフィーのウマ娘だからかトレーニングもレベルが高い。タイムを見ても今シニア現役で走っているウマ娘と比較しても遜色ない。なおデータは俺クオリティ。

 

「でもさ、今のままだと現状維持なんだよね。ボクとしてはもっともっと上を目指したいんだけどなぁ。それこそカイチョーみたいにさ!」

 

「何言ってんだ、現状維持だって十分立派じゃあねえか。鈍ってはいないって証拠だからな」

 

「確かにそうですが、私もテイオーと同じ意見ですわ。走っている以上、現状に満足は出来ませんわ。もっと高みを目指していかないと…」

 

スぺもスズカもうんうんと頷いている。まぁ、目指す先があると言うならそれが一番だろう。

 

「ねぇ奥沢君!君ならこういう時なんて言う?」

 

「えぇ?」

 

「トレーナーなんだからさ、担当が伸び悩んでたらどう声を掛けるか、テイオー様が査定してあげよう!」

 

うーん、困ったな。当然のようにそんな経験ないからなんて言ったものか。シャレた答えを期待されてんだろうなぁ。

 

「さぁ、どう声を掛けるかな?」

 

催促してきやがる。それじゃあ心に思ったことをそのまま言ってやるよ。

 

「…さぁな、おめぇの悩みなんか俺が知るわけねえだろ」

 

「そ、そんなに突き放した言い方ですか!?」

 

スぺに…というかその場の四人に驚かれるが構わずに続ける。

 

「トレーナーになっといてこんなこと言うのもアレだが、理解しようと努力したところで、相手の一挙手一投足や思考のすべてを完璧に理解できるとは俺は思っていない」

 

「でも、長く時間を共にしてきている訳ですし、ある程度のことは理解できると思いますが」

 

「その通りだスズカ、ある程度はな…。じゃあお前ら、今沖野さんが何考えてるか当ててみろ」

 

シンキングタイムをスタートして十秒くらいでマックイーンが喋る。

 

「私たちの明日のトレーニングメニュー…ですかね」

 

「んー…ボクは今日のトレーニングだと思ったけど」

 

「案外明日の朝ごはんのことかもしれませんよ!」

 

「お財布事情…かもしれないわね」

 

四人とも確かに考えていそうな事を言う。スぺ、それはお前のことじゃあねぇのか?後お財布事情は俺もそうだ。舐めんな。

 

「ほらな?俺より付き合いの長いお前らですら答えがばらばらなんだ。担当になって一カ月かそこらの子の考えなんか分かる訳ない。取説があるってんなら話は別だけど」

 

「ですが、だからと言ってそのスタンスでいる訳じゃないですよね?」

 

「当たり前田のクラッカーだ。理解しきれないとは言っても対話を遮断してるわけじゃない。打ち明けさえすれば、解決するまで付き合ったらぁ。兎に角、危険と判断しなければこちらからの干渉は出来る限り控える…これが俺のスタンスだ」

 

あえて言葉にはしないけどあんまりべたべたとし過ぎるとデメリットの方が多くなると思っている。なあなあになるのは少し違うと思うし。

 

「それじゃあ、もしあなたに担当が付いたとして、その方が積極的にコミュニケーションを取ってきたらどうするおつもりですか?」

 

「それはそれ、これはこれだ。あっちから来たならそりゃあバカ話だろうが下世話な話だろうがどんとこいだね。というより、真面目な話しかしないとなると俺が蕁麻疹出して最終的に死に至るね」

 

「まー確かにね。奥沢君はそういう感じだし!」

 

理解が早くて助かるよ。そんなバカ話をしながら時計を見るとそろそろ休憩が終わる頃合いだった。

 

「そろそろ時間だぞ、さあ準備準備」

 

四人を沖野さんの所へ行くように促して俺は再び白い粉を取り出す。それに水を入れてスポドリ完成っと。…これ美味いのか?

 

「しょっぱ!!」

 

スゲェしょっぺぇじゃねえかこの粉。なめるんじゃなかった。さて、スカーレットたちの最後の一本のタイムはどうかな?

 

「スパート掛けてけよぉ!」

 

「分かってるわよ!」

 

一斉にスパートを掛け始める。勢いよくウッドチップを掻き上げて加速していく。やっぱウマ娘ってスゲェ。…なんか飛んできてね?

 

ブスリ

 

「目がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

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