「君のオペラも中々のモノになって来たね!また呼ばせてもらうよ!」
「あーはいはい、そん時はよろしく頼みますよ」
強制参加させられたオペラが終わってようやく平穏な時間が訪れた。アヤベさんめ、俺を売ってどっか行きやがって…。その布団をごわごわにしてやろうか。さて、部屋に戻ってお仕事の続きと行こうか。俺だって一応仕事してるんだぜ?
「…ん?なんだこれ」
中庭の端の方に薄い本が落ちていた。中を軽く改めるとそういういかがわしいものではなかった…ッチ。だがしかしなんでこんなものが?…丁度いい、少しばかり読んでみるか。
「ほう…これは…」
恋愛系…しかも百合。大好物です。成程ぉ…そう来たかぁ。先輩に惹かれていく後輩。そしてその好意に先輩も気付いて行って…ベタではあるが、中々引き込まれる展開だ。ついついページをめくってしまう。そうそう、恋愛系っていうのは爛れた奴も好きっちゃあ好きだけど純愛もいいと思う。…うわ、そんな大胆な!ネカフェに行くのか!?さっき見落としてただけで…そういう奴だったの!?ど、どうなんだ、次のページじゃあどうなってんだ!?
『ねぇねぇ君たち、今って暇?』
「入って来てんじゃあねぇぞくそオス共があああぁぁぁぁーーーー!!!なめやがってこの俺をぉ!どう落とし前付けてくれるんだぁ漫画家さんよぉ!!」
烈火のごとくキレながらページを引きちぎらんばかりの勢いでめくる。
『なんだ貴様ら、私たちが暇そうに見えるのか?』ギロッ
後輩を守るようにしながら物凄い眼光でナンパクソモブ共を一掃する先輩。あ、こういうカッコいい女の子好き。いつからか分からないけど俺はこういう女の子がタイプというかドストライクになってしまった(二次元限定)。だってカッコいいって成宜じゃん?さぁ、ネカフェに行ってムフフな展開になってしまえぇ!
「あー!ありました私の極秘書類!」
「うわびっくりした!」
本から声のする方に視線を移すとピンク髪のウマ娘が俺の持っている本を指差している。
「そちら、あまり世に出てはいけないものなので返してもらってもいいですか!?」
「良いけどちょっと待ってくれ!今いい所なんだ!今からあんなことやこんなことが始まるところなんだから!」
「この本に濡れ場はありません!」
「マジで!?」
体から力が抜けていく。夜のお供が決まったと思ったのに…。
「そっかぁそれなら返すわはい」
「下心だけで読まれるのも考え物ですね…」
そういう訳で本を彼女に返す。あーあ、折角興奮してきたのに。まぁ、読ませてもらったから感想だけ言って立ち去るとするかな。
「あぁそうだ。展開や設定はよくあるものだと思うけど、内容は中々引き込まれるものだったよ。それに絵柄も俺好みだし…他に何か書いてるなら読みたいくらいだよ。そんなに黒歴史認定するようなものじゃないと思うけど」
「いやぁ、お褒め頂けるのは嬉しいのですが…表に出せない理由があるんですよ」
「なんだよ、気になる事言うなよ首突っ込みたくなるじゃねぇか」
その理由に興味を持つとそのウマ娘は静かに語りだす。
「私、アグネスデジタルは全てのウマ娘ちゃんを推しています。推しの為ならダートだろうと芝であろうとどこであろうと赴く次第であります」
「なんかスゲェ忙しそうだなお前」
「そして追いかけていきますと必然と溜まってしまうものがあります」
欲か?…などと茶々を入れたくなってしまったが真面目に話している最中では野暮ったいだろうと思い何も言わない。
「そう、ネタが溢れてくるんですよ!そして推したちへの愛を表現するために同人誌という形にさせていただいているのですが…」
「ですが?」
「本人たちにお見せできるようなものではないので個人的に楽しむものとしているんですよ。なのでそちらも禁書という事で…」
なーるほど。いいなー。絵が描けて。一回描いてみたことあるけど俺には画才が無かったからその場でライターで燃やしてやった。…あれ、という事は今呼んだ奴も何か元ネタがあるって事だよな。誰だろうな。当ててみたくなったぞ。
えーっとぉ、確か鋭い眼光でカッコいい系の女の子。後輩から慕われててボブカットで…。
「お前さぁ、エアグルーヴをそういうふうに思ってるのか?」
「え、はい。エアグルーヴさんの後輩ウマ娘ちゃんへの面倒見の良さに慕う後輩!これだけでも十分にネタになるのですがそこにルドルフさんを入れてしまうだけで一瞬で三角関係の構築に成功してしまうんです!ですがこれ以上は私の口からは語れません!推しを貶めるようなことを私はしたくありません!」
「お、おう…そうか」
いや、十分手遅れだろ…とは言わない。しかし後輩に慕われてるとかは理解できる。だがお前は重要な事を理解していない。
「お前は知らんかもしれんけどあいつは案外攻撃的だぞ?」
「そんな訳無いですよ!確かに厳しい一面はありますがそれはエアグルーヴさんの優しさからくるものですからみんなから慕われているんです!」
「待て話を聞け、現に俺は一回殺されかけたんだ。そんでもってその後ブライアンをボコって連れてきた奴だぞ?…どうだ、バーサーカーみたいだろう?」
「え~ほんとにござるか~?」
「ほんとにござるよ!」
「おいお前ら、何をもめている」
「あ、ちょうどいい所に来た!俺はコイツにアンタは攻撃的だって言ってやってたのよ!」
「私はエアグルーヴさんは三角関係がとても似合うって力説してたんですよ!!」
言って気付く。物事とはやらかしてから初めて事の重大さに気付くものだ。なんせ本人に全部ぶちまけてしまったから。
「貴様ら、この近くに空き教室があってな。そこで少し話し合おうか」