「16ギガで十分だと思ってたんだけどな」
カフェテリアにてパソコンをカタカタして不意にUSBメモリを確認したらいっぱいになる寸前まで来てしまっていた。ここ最近はめぼしい娘のデータやらをまとめた資料を入れていたせいかもしれない。まぁ、PSPのバックアップを入れているせいもあるかもしれないけど。
「仕方ねぇ、一旦PSPのバックアップ消すか。どっかのタイミングでまたバックアップとろう」
「あ、奥沢君!ごきげんよう」
作業しながら声のした方を向くとファインがこっちに来ていた。
「おぉ、ファインか。良いラーメン屋でも見つかったか?」
「そうなんだよ!ここからだと少し遠いけど美味しい中華そばのお店があったんだよ!この前もトレーナーと行って来たんだ!」
いいなー担当の子がいるトレーナーは。こうやって合法的に女子高生、ないし女子中学生とお出かけという名のデートが出来るんだから。俺も行きたい。
「あーくそ、リア充爆発しろ」
「何か言った?」
「いや何も。お前のトレーナーの国籍がさっさと変わらねぇかなって言っただけだから…いてぇ」
若干羨んでぼやいたら後頭部に少しばかりの衝撃を受ける。
「簡単には変わらねぇよ。ほらファイン、動画の編集終わったぞ」
「お疲れ様シャカール。いつも任せっぱなしだし今度は私が編集しようかな?」
「やめとけっていうかやめてくれ。収拾がつかなくなる」
俺の後頭部をどついたそいつは話しながら俺の横に座りパソコンを開く。その対面にファインが座るとシャカールが画面をファインに見せる。
「…ん、視線?」
謎の視線を感じて後ろに目をやる。しかし何もない。普段通りのカフェテリアの風景だ。
「どうかしたの?」
「いや、何も。それにしても、これシャカールが編集してたのか。すげぇな」
「うん、いつ見ても素敵な動画にしてくれるんだ!これでウマチューブにアップしちゃおう!」
「あいよ」
ふーん、動画編集って結構な労力らしい。全く知らないけど。だが結構な容量になることは間違いないだろう。参考がてら聞いてみるか。
「シャカール、簡単な街角アンケートだがUSBって何ギガの奴使ってる?」
「USBぃ?外付けSSDの方が楽だからそっちしか使ってねぇが……使うなら16ギガって所か?テキトーな書類しか入れねぇだろうし」
「残念だったな。その16ギガでいっぱいになってるから困ってるんだ。助けておくれ」
「そりゃお前の使い方のせいだ。俺には関係ないね」
正論パンチは止めてもらおうか。俺が泣いてしまうぞ?
「じゃあ俺は何ギガを使えばいいんだろうな、教えて有識者のシャカールさんや」
「…お前、さっき俺が言ったこと聞いてなかったのか?問題なのはお前の使い方だ。私用と業務用と分けて使うかしろ」
「はーい」
そこまでぼろくそに言われたら言う通りにしよう。それよりも…この子のルーティン的にこの時間は空いてそうだな。この時間にアタックするか。
「光るものはあるんだけどなぁ」
コーヒー片手にカタカタする。ずずいっと優雅に喉に流し込む……。
「ゲッッフ!」
不意に気道の方にコーヒーが流れてくる。これ本当に人類のバグだと思うの。この前なんて廊下でつばのみ込んだ時になって突然むせてせき込む明らかに体調悪い人になってしまった。だがむせたことは問題じゃあない。
「だ、大丈夫二人とも!?」
「おいてめぇ、何してくれてんだ?」
「…不可抗力っす…げふ」
シャカールさんにコーヒーを毒霧のように吹いてしまっていた。ここ最近ウマ娘を怒らせる頻度が高いような感じがする。さて、弁明するか。
「悪かったって。ちゃんとクリーニング代出すからさ、手打ちにしてくんねぇか?はいこれハンカチ」
「分かってるっての、気道に入ったんだろ。PCのデータが無事だったら何も言わねぇよ」
俺のハンカチを受け取ってびちゃびちゃになった制服を拭きながらパソコンをいじくる。頼む何もなっていないでくれ。
「まあこの程度じゃ問題ないわな。だがまぁ、詫びの品は貰おうか?お前の集めたウマ娘のデータ全部寄越せ」
「あーはいはいそれで済むなら安いモンだ。この中に入ってるから自由に持ってってくれ」
USBを引っこ抜いてシャカールに渡す。シャカールはそれをパソコンに差して…訝しんだ顔をする。
「お前、これPSPのバックアップしかないぞ」
「そんなバナナ。チョイ見せて」
画面をのぞき込むとスカウト用に俺が丹精込めて集めたデータを入れていたファイルが綺麗にごっそりと無くなっていた。なんでだ?確かにさっきまではあったんだけどなぁ。というか消したはずのバックアップがなんで残ってんだ?
「…あー、間違えて消したなこれ」
「作り直すにしてもお前の記憶容量五メガバイトのアタマじゃ期待できねぇだろうな」
「ふざけんなお前!馬鹿にしすぎだろ!フロッピー二枚分くらいはあるわ!」
「以下じゃねぇか…まぁなんだ、言ってみただけだ。それにこういうのは慣れてる」
「マジか災難だなお前」
慣れているという事は災難の頻度は俺より上かも知れない。いったいどういう生活してたらそうなるんだ?
「同室の奴がな。これ以上のことなんかざらだ」
「避けてぇえええええ~~~!」
「こんな感じにな」
そう言いながらシャカールが机の下に隠れるようにしゃがむ。ファインもほぼ同時にそうする。何が起こっているのか分からないまま声のした方を向くと
「わーお」ブスリ
椅子の脚が飛んできた。ああ、なんということだ!それは見事に俺の額に刺さってしまった!出血はどうにも止まらない!意識が薄れていくのを俺は静かに受け入れるしかなかった!
残念!俺のトレーナー生活はここで終わってしまった!