新人トレーナーの日常   作:サラダ味

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2話

「スカウトスカウトスカウトスカウトスカウトスカウトスカウト……」

 

今日こそスカウトを成功させる。そう毎日決意してから出勤してるけど、ここ最近スカウトする前に逃げられる気がする。というか、露骨に避けられている。なぜだ。…ずっと気を張っていても仕方ない、中庭に出てリフレッシュするとしよう。

 

「ニャァ」

 

猫か…理事長のアタマに乗っかってる子じゃあないな。動物にはあまり好かれないけど、俺自身はものすっごい大好きだ。特に猫は見かけたら手を出してみるくらいには好きだけどどうにも寄って来てくれない。それどころか死ぬほど逃げられる。

だが今回は違う。向こうから、しかも2メートルの位置まで来てくれている。戯れるなら今しかないだろう。俺は手を差し出して…

 

「おい「にゃんこおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

……………?

 

「ふむ、やはりもふりがいがあるにゃんこだ。しかも大人しくしてくれている。偉い」

 

思考がようやく追いついた。どうやら目の前のウマ娘が猫を掠め取ったみたいだ。一秒にも満たないあの一瞬でだ。思考したところでまだ若干意味が分からないが、まずはやるべきことがある。

 

「おいお嬢ちゃん…その猫ちゃんをこっちに渡してもらおうか?」

 

「何ですか貴方は。この子は私が手にしたにゃんこです渡すわけが無いでしょうが。」

 

「俺が先に目を付けたんだ!順番は守ってもらおうか!」

 

「順番を主張するなら先にもふるべきだったな。尤も、そのカタツムリより遅い貴方の手では無理でしょうけどね」

 

「か……カタツムリだとぉぉ?」

 

この俺をカタツムリ呼ばわりたぁ随分と舐めてくれるじゃあねえか。高校の50メートル走では7.6秒と平均的なタイムを叩き出して、競歩大会は半分は歩いてたんだ!カタツムリと呼ばれる筋合いはねぇ!

 

「…フン、良いだろう。貴様の主張を通してやろう」

 

「ナメクジ以下の貴方でもやっと理解できたようですね。では私とにゃんこはこれで失礼します」

 

「その猫ちゃんは力ずくで頂くとするぜ!」

 

焚きつけたてめぇが悪いんだぜ、往生せいやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「遅い、その服を赤くしてから出直してくるんだな!」

 

「何ぃッ!?」

 

渾身のドロップキックを避けられたと思ったらそのまま凄い勢いでどこかへ逃げやがった。どうしようもなくなった俺は強引に着地して鼻血で済ませる。

 

「あの野郎…次は負けねぇぞ…!」

 

 

 

 

 

今日も今日とてさも当然のようにスカウトに失敗して中庭で静かに発狂している。最初の頃はスカウト失敗した子と会うと少し気まずかったけど今じゃ何にも感じなくなった。いっその事もう一度アタックしてみるか?

 

「にゃあご」

 

「コイツは…」

 

昨日の猫だ。学園に住み着いてんのか?にしても、また俺の近くに寄ってくるって事は、相当に俺に構ってほしいんだな。可愛い奴じゃあねぇか。その期待にお応えして、今日こそ俺の膝にお迎えしてやろう。

 

「お「にゃんこおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」させるかあああああああああ!!」

 

てめぇが来ることは分かってたぜ!渾身の回し蹴りだ!そのスピードだ、コイツは避けられねぇぜ!

 

「甘い、あまおうよりも甘いその蹴りで私を止められると思っていたのか!」

 

そう言うと奴は回し蹴りをスライディングですり抜けながら猫を確保しやがった!

 

「マジかコイツ!」

 

「少しはマシになったようですが、その程度ではこのカルストンライトオの爪先にも及ばん。パタスモンキーになって出直してくるんだな。それでも勝てないでしょうけどね」

 

「貴様ぁ…!パタスモンキーさんを…霊長類の誇りである我らがパタスモンキーさんを愚弄するか!」

 

手心を加えてやるつもりだったがもう我慢ならねぇ、確実に始末してやる!その決意のもと、俺はアイアンクローの姿勢を取るとライトオに捉えられた猫が途端に暴れだす。

 

「くっ、なぜ暴れる!ぎゃあ!痛い痛い!」

 

「だーっはっは!引っ掻かれてやんの!今日は俺の日だったみたいだな、おとなしく敗北を認めやがりな!…さーて、こっちでちゅよー」

 

姿勢を低くして、両手を差し出しお迎え準備を万全にする。そのまま流れるように猫が俺に抱かれる。

 

「にゃあん」

 

「…おろ?」

 

ことは無かった。

 

「あれ、ブチちゃんだ。セイちゃんを置いて昨日はどこへ行ってたのかな?」

 

猫はそのままセイちゃんに連れて行かれてしまった。いや滅茶苦茶なついてたじゃねぇか。アイツ飼い主かよ。…なんかもうどうでもよくなってきたな。

 

「なぁライトオよ…猫って何なんだろうな」

 

「ネコとは気まぐれな生き物です。時にもふらせてくれたり、時に全く見向きもしてくれなかったり。貴方にもなつくそぶりは見せていましたが、そうなる運命だったようですね」

 

「ははーんさては俺の事バカにしてるな?」

 

「はい。ですがそれを言ってしまうと今日の私も貴方と同じ、嫌われる日だった。しょんぼり」

 

気付くと俺たちはベンチに並んで座り、仲良く肩を落としていた。バチバチにやり合っていたとしても、同じ猫好き、通ずるものがあるもんだ。

 

「まぁなんだ、これも一つの経験にして頑張ろうぜ。今度こそ猫を振り向かせるためによ」

 

「それもそうですね。五日連続で引っ掻かれた経験に比べればこんなものへでもない。世界のにゃんこが私を待っているのだから」

 

「その意気だ。ただし同じ猫に目を付けた時は、その時は容赦しねぇ。確実にぶちのめしてやる」

 

「それはこちらのセリフだ。では、私はトレーニングに行きます。…ハッ!トレーナーを待たせてしまう!待たせてしまうのは最速である私の信条に反する!トレーニングに行くのも私は最速、いざ!」

 

…あの速さ、今見ると恐ろしいな。直線だけだったらマジに天下を取れるんじゃあないか?よく考えたらあのスピードから回し蹴りを避ける反応速度…直感的なものだとしても簡単に出来る事じゃあない。トレーナーが付いて無いんだったらスカウトしたかったなぁ。

 

「安西先生…担当が……欲しいです…!」

 

 

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